尾木ママ流 凹まない生き方論「ま、いっか」

スクリーンショット 2013-09-25 22.14.38

新しい仲間が増えました。新たに入ってきてくれた人も迎える人も、誰もが働きやすく、一人ひとりが活き活きとできる職場にしていくためのヒントを、尾木直樹先生に聞きました。尾木ママ流のコミュニケーションとは・・・

まずは受け入れよう

――この春、新入職員を迎えます。新しい仲間とともに活き活きと元気に働くコツ、尾木ママ流の「凹まない生き方」のヒントを教えてください。

組織というのは、上に立つ人が何を大事にしているかで決まってきます。素敵な役員だと、みんなの雰囲気も良いの。仕事でも組合活動でも、何かをしようとしたとき、上司や同僚が共感するのか否定するのかで全然違いますよね。

人 間って弱いし、組織だって強固なものではなくて、人間がつくっているものです。しかも労働組合は権力との闘いが前提で、相手側の立場の方が強いわけ。弱い 者がみんなで力を合わせていい仕事をして、いいまちをつくろうとか、働きやすい職場環境や、権利を守ろうとしているのよね。だから「お互いに力を合わせて いこう」ということを大事にしなくちゃ。もちろん、情勢分析力や交渉力も問われますけれども、その前の段階がすごく重要だと思いますね。

――新しく仲間になる新社会人はどうしたらいいのでしょう?

新 社会人へのアドバイスよりも、「職場として新人をどう迎え入れるか」という受け入れ側の視点の方が、実は大事なんです。だって今、新卒で入社して3年以内 に辞める率が、52%と非常に高いのよ。かつてのように「ずっと勤めていく」という意識は学生にはないんです。だから「どうして1ヵ月で辞めるのか」と思 うのはおかしいの。「合わない」とか「嫌な奴がいるな」と思ったら辞めるの。それはいいとか悪いとかではなくて、時代の変化です。そういう考え方の違いや 価値観の違いを、まずは受け入れることが大事です。

実際、入社式当日に2人退職した職場の話があるの。その退職理由は「こんなキツイ仕事 やっていけない」じゃなくて、「私のことを誰も構ってくれない」なんです。最初は机の配置とか片づけとか指示されていたんだけど、それをやり終えたら次に 何をすればいいのか教えてくれない。「みんな仕事をしていて構ってくれない。これじゃやっていけない」っていうの。でも、それを否定したらみんな辞めちゃ う。職種を問わず、同じ現象が起きています。
それは、ボクら教育の専門家から見れば当然で、そういう子が育つ教育になっているからこういった現象が起きてくるんですよ。仕方がないの。だから、新入職 員を批判するんじゃなくて、その子たちの気持ちを受け止め、現象を受け止める。認めるっていう意味じゃなくて、まず受け止めて状況を的確につかんで、声を 聞いてみるの。すると「話を聞いてくれた」と感じます。まず、そこからです。

ありのままに今を輝く

――自治体の現場でも、今、公務員批判や人員不足で職員が疲弊して、職場の笑顔が減って、コミュニケーションも不足しています。

そ れはダメね。自治体職員は元気をなくしているでしょう。こういう時代は、逆に言えば鍛えられるし、理論的にも運動論的にも新しい理論を生み出す時なの。今 のこの状況で「何を打ち立てるべきなのか」という目標を持つ方がいいと思う。この厳しい状況の中に新しい人たちが入って、新しいパワーをもらう。「君たち も主役なんだ」って、先輩の持っているものはどんどん受け継いでもらって、新しいパワーも受け止めながら、一緒に力にしていく。そのためにはお互いに「受 け入れる」ことがすごく大事。

このとき「自己肯定感」が大事になってくるの。自己肯定感が高いことを「わがままで自分中心の人」と言われる ことがあるけど、そうじゃなくて、自己肯定感が高い人はいろんな困難に挑戦するパワーがあるの。そして人を愛する力とか許せる力も広がってくるのね。自己 肯定感が低いまま育っていると人にも厳しくなるし、自分もすぐ折れちゃう。ボクがいつも色紙に書くのは「ありのままに今を輝く」という言葉。よく挨拶で 「じゃ、頑張ってね」って何げなく言うでしょう。頑張り続けたらおかしくなっちゃいますよね。それから「大丈夫か?」っていう聞き方。大丈夫じゃなくても 「大丈夫」と言うに決まっているわよね。この2つは止めた方がいいですね。

――「自己肯定感」を高めるには、具体的にどうしたらいいのでしょう?

自 己肯定感を高めるには、些細な仕事でも一つひとつを認めることが大事。先輩にとってはできて当たり前のことでも、新人ができたことを認めるの。褒めるので はなく、できていることを認める。「いい子ね、で__きる子ね」っていう人物評価ではなくてね。人物評価をすると、褒められるために上司好みになってし まって、「らしさ」が育たないし、上司が変わるとダメになってしまう。そうではなくて、「きちんと仕上げた」という事実について認めることが極めて重要な の。仕事そのものを認めるの。それから、失敗した時こそ大事です。「だから言ったでしょう!」っていうのは指導じゃなくて嫌味。それで「先輩のおっしゃる 通りでした」って反省する子はいなくて、ムッとするだけ。「分かっているけど、できなかったんだ」「気持ちを分かってもらえない」っていう不満は、早期退 職や突然来なくなるという現象につながります。

ただ、失敗を褒めるわけにも認めるわけにもいかないから、失敗した気持ちの辛さに共感しま しょう。「共感」というのがキーワード。「それはつらかったね」と言ってもらったら嬉しいし、心が安らぐの。そして失敗の原因に気づいたら「よく分かって るね。偉いね」って褒めればいい。そしたら二度とそういうことをしないし、ぐんぐん育っていくと思います。「何回言えば分かるのか」とか「何回言わせるん だ」っていうのは、そう言っている方が、人を受け入れられてないんですよ。思い返してみてね。共感するとか認めるということがあまりないと、働きにくい の。これは新人だけではなくて、みんなに当てはまると思いますよ。自己肯定感、それから共感。この2つを大事にしてくださいね。

――「大丈夫?」と言わないとすると、どう声をかけたら良いのでしょう?

つ い「大丈夫か?」と聞いてしまいがちだけれど、それってとても漠然とした聞き方だと思うの。だから、たとえば「明日の資料は全部できた?」というふうに聞 いたほうがいい。すると具体的に答えられるんです。でも「明日大丈夫?」と言われたら、条件反射で「大丈夫です」と返してしまうの。だから具体的に事実を 聞くほうがいい。「どこまで進んでいる?」という進行状況を聞くとか。実は「大丈夫?」って、無責任な聞き方なんですよ。だって、結果的に予想外に時間が かかって間に合わなかったら、「昨日聞いた時は大丈夫だって言っていたじゃないか!」ってなるでしょう。心配なことを具体的に聞いて、援助体制や仕事の仕 方をアドバイスしたほうが、ずっと良いのよ。

こだわらないで「ま、いっか」

――人間関係の悩みは誰もがもっていると思いますが、尾木先生はいつもニコニコされて自然体です。心の切り替えをなさっているのでしょうか?

こ れが素のままだからよ。切り替えようと思ったら結構パワーがいるし、ストレスにもなります。ボクは全然切り替えない。力んで「〜しなければならない」って 思わないで、「ま、いっか」って。だって、自分はそんな大したものじゃないし、お互い尊重し合い助け合って生きていくわけだから。「ま、いっか。地球がな くなるわけじゃない」って思っているの。凹まない働き方のコツを自治労のみなさんにもご紹介しますね。

スクリーンショット 2013-09-25 22.17.39
ひとつめは結論を急がない、落ち着いて、ということね。慌てなければ、仕事の良さとか、おもしろさも分かってきます。2つ目は「ま、いっか」とつぶやいて みる。無理しないで声に出すことが大事。「ま、いっか」って。でもそれを相手の前で言っちゃダメよ。怒られちゃいますよ(笑)。最後に3つめは、誰かに愚 痴をこぼしてみる。たとえば、同期って気を許せますよね、しゃべっているうちにスッとしてきて、元気が出てきます。

――新入職員が仕事の面白さを知って、楽しく仕事をしていくためのアドバイスをいただけますか。

自 治体のお仕事って、とても魅力的。安定した職種・職場っていう魅力もあるでしょうけど、いろいろな仕事があって、非常にやりがいがあると思いますよ。その 中で自分に一番フィットする仕事を見つけたり、異動している間にすごく勉強になったり、視野も広がる素敵な職場だと思います。しかも、市民サービスや行政 づくり、まちづくりに関われる。それを満喫してほしいです。ボクの住んでいるまちは、非常に魅力的な行政をやってくれています。公務の職場だけでなく、み んなが主役になって、いろいろなアイディアで楽しく仕事をしていってほしいです。若い声をどんどん出して。そこには「おっ」と思うものがいっぱいあるの。 だから遠慮なく発言して、自分の表現をしていってくださいね。

(2013年3月11日、インタビュアー: 西田一美(自治労本部総合企画総務局長)

スクリーンショット 2013-09-25 22.17.55