日本社会を揺さぶる「フェミニスト・アート」に注目を

ジェンダーギャップ指数、知ってる?

東京・秋葉原にほど近い、とある美術展の会場。ピンク色のマスクをかぶった女性たちが来場者を迎える。アーティストグループ「明日少女隊」が開く「女子力カフェ」だ。初めてマスクを見る人は、インパクトの強さにぎょっとするだろう。ウサギとカイコがモチーフだという。

 

壁には「世界ジェンダーギャップランキング2016」と書いた黒板がある。世界経済フォーラムが発表した男女格差指数のランキングを、来場者に上位から1カ国ずつ書いてもらうパフォーマンスだ。私が訪問した時は93位まで埋まっていて、私は94位に「スロバキア」と書き込んだ。日本のランキングは111位の「ゾロ目」で、前年より10位後退している。

明日少女隊メンバー 女子力カフェ

明日少女隊メンバー 女子力カフェ

明日少女隊のメンバーで、米国在住の尾崎翠さんは「このランキング、外国人は結構知っているのに知っている日本人がすごく少ない。差別の構図が全く共有されていない」と残念がる。

 

一番声が大きいのは、だれ?

展示は、中学校の旧校舎を利用した「アーツ千代田3331」で開かれている「Socially Engaged Art 社会を動かすアートの新潮流」展の一環だ(3月5日まで)。会場にはアイ・ウェイウェイなど世界的に著名なアーティストの作品が並ぶ。

女子力カフェで紹介しているフェミニストアート本

女子力カフェで紹介しているフェミニストアート本

明日少女隊の隊員は現在約30人で、男性もいる。「日本の女性問題を解決したいという情熱でつながったネット上のグループ」だと尾崎さんは説明する。

日本の芸術大学を卒業した尾崎さんは、米国に留学し、勃興している「フェミニスト・アート」の真っただ中に身を置いた。「男性も含め、周囲でフェミニストでないアーティストを私は思いつかない」という。ところが、現地の日本人社会は日本社会そのままで、駐在員の妻たちは「子育ては母親がするもの」と、一人での子育てに苦しんでいた。アートの力でこの壁を打ち破ろうと、2015年に少女隊を立ち上げた。

明日少女隊 T-シャツ

明日少女隊 T-シャツ

「女子力カフェ」で来場者は、少女隊が街頭パレードなどで使うプラカードの中から好きなものを選び、両手で持って写真を撮る。ある中年男性は「NOといえるワタシ」のプラカードを選んだ。「女性がNOと言えないことが問題なので」と隊員が言っても、「今どきの日本人は男の方がNOと言えないんだ」と言ってプラカードを放さなかったという。「日本で一番声が大きいのは中年男性なのに」と、尾崎さんは苦笑する。

 

「自分はフェミニストです」と言える?

「フェミニズム」や「ジェンダー」という言葉は、日本では一向に社会に定着しない。特にネット上では、しばしば揶揄や嘲笑の対象となる。だが海外を見ると、たとえばリベラルに人気のカナダのトルドー首相は「自分はフェミニストだ」と言明している。もちろん、「女性に優しい男性」の意味ではないので勘違いしないでください。

 

少女隊のような活動が、多くの女性が息苦しさを感じるこの社会に少しずつでも揺さぶりをかけている。そんな希望を持って、会場を後にした。

 


kimura-150x150ジャーナリスト 林 美子(はやし よしこ)
2016年まで朝日新聞記者。労働やジェンダーの分野を中心に取材、執筆活動を続ける。早稲田大学ジャーナリズム研究所招聘研究員。