「#保育園に入りたい」 深刻な課題と希望と

「赤ちゃん率」高い院内集会

東京・永田町の国会議員会館は、取材などで何度も足を運んできた場所だ。だが、3月7日の会議室にはこれまで見たことのない光景が広がっていた。色とりどりのベビーひもで子どもを抱いたり、おぶったりした女性たちがぎっしり詰めかけている。男性の姿も少なくない。会議室の後方にはカラフルなシートが敷いてあり、母親やスタッフが赤ちゃんと遊んだり、離乳食を食べさせたり。参加者の間の通路を楽しそうに行ったり来たりする小さな女の子もいる。

会場後方の子どもスペース

会場後方の子どもスペース

 

「『#保育園に入りたい』を本気で語ろう~みんなが保育園に入れる社会のために~」と題した、有志による院内集会だ。ツイッターやフェイスブックで集まった参加者は約150人。スタッフの多くも赤ちゃんを抱えた親たち自身だ。

 

昨年、「保育園落ちた日本死ね!!!」という匿名ブログが話題になった。保育園不足に注目が集まったが、事態はいっこうに改善していない。入園希望者が膨らむ4月を前に、親たちは「保活」の真っ最中だ。会場には「つい最近、不承認通知がきた」「一方で女性活躍といいながら、仕事を辞めろというのか」と悲鳴があふれた。

 

「いたちごっこ論」批判

主催者を代表して発言した東京都武蔵野市の天野妙さんの話。「親同士の『不毛な椅子取りゲーム』はもうやめたいと、武蔵野市では昨年、親たちが市に陳情。保育園が新設されそうになったが、地元の反対で撤退した。財源のない自治体に働きかけても虚しさが残るだけ。『保育』を国の政策の真ん中に置くべきだ」

 

NPO法人フローレンスの駒崎弘樹代表理事は、「保育園を作れば作るほど需要を掘り起こしてしまう」という、自治体からよく出る「いたちごっこ論」を批判した。「いたちごっこ論はうそ。生まれる子どもの数がわかっていて、働きたい親の割合もわかっているのだから、その分の保育園を用意するべきだ」。海外の保育政策に詳しい日本総研の池本美香主任研究員も「ニュージーランドでは、親の意向にかかわらず保育園をどんどん作っている。保育は子どもにとっていいことだという考え方。貧困対策としても重要だ」と強調する。子どもを保育園に預けて職業訓練に通ったり、就職活動したりできるからだ。

 

一方、日本では、保育園に入れないイコール失業を意味する場合が少なくない。保育園不足は、親の働く権利、子どもの保育を受ける権利の問題であるだけではなく、経済全体にとっての損失でもあるのだ。

 

「ママランチ」で人事制度を変えた

会場では、7か月の息子を抱えた知人にばったり出会った。彼女は育休中で、区の保育園に申し込んだが不承認通知が来てしまい、4月の復職が難しくなっているという。「区の保育枠は申し込みの半分強しかない。最後の手段はインターナショナルスクールだが、1か月20万円以上かかる。いったい何のために働くのか」と、深刻な表情だった。

 

集会後半のグループ討議で、「会社と働き方」がテーマのグループの話を聞いた。「首都圏での職場復帰はあきらめた」といった厳しい現状の一方で、「職場でママランチをして話し合い、組合と人事に掛け合っておかしいと思う人事制度を変えさせた」「パート社員だが、上司にかけあって育休を取った」などの好事例の発言もあった。

熱のこもったグループ討議

熱のこもったグループ討議

 

集会には、国会議員や報道陣も多数姿を見せた。このような集会を、特定の組織に頼らずに当事者だけで開く力を、いま子どもを抱える世代は確実に蓄えている。課題は深刻だが、大きな希望も感じる集会だった。

 

 


kimura-150x150ジャーナリスト 林 美子(はやし よしこ)
2016年まで朝日新聞記者。労働やジェンダーの分野を中心に取材、執筆活動を続ける。早稲田大学ジャーナリズム研究所招聘研究員。