ジェンダー視点の「働き方改革」は、こっち!

女性団体が提言をまとめた

 

いま、安倍政権が進めている「働き方改革」は本当に働く人のためになるのだろうか。

 

違うだろう。という集会が4月28日、東京都内で開かれた。

女性の視点から政府の改革案を批判し、「同一価値労働同一賃金」の法制化など、働き方を本当に改善するために必要な政策提言を発表した。

 

集会の様子

集会の様子

 

「働き方」について議論するなら目を通しておきたい内容だ。

 

集会は「『働き方改革ならこっち!』~女性も男性も人間らしく働ける社会を~」と題し、女性の研究者や社会活動家ら38人で作る「真のポジティブアクション法の実現をめざすネットワーク(ポジネット)」が主催した。

「ジェンダー視点の働き方改革」と副題のついたブックレットも出版した。

 

ポジネットの提言のパンフレットと集会の資料

ポジネットの提言のパンフレットと集会の資料

 

提言は次の9項目からなる。

Ⅰ.「包括的別禁止法」の立法化

Ⅱ.「同一価値労働同一賃金法」の立法化

Ⅲ.女性が働きながら「妊娠・出産する権利」の保障

Ⅳ.生活時間の確保と働く時間を選択できる権利の保障

Ⅴ.男女雇用均等法の改正

Ⅵ.女性活躍推進法の改正

Ⅶ.雇用平等を実現する行政による救済

Ⅷ.働く環境の整備

Ⅸ.国際基準の遵守

 

幅広い分野を網羅しているが、基本にあるのは「包括的差別禁止法」の制定だ。

 

人種や性・性的指向・性自認、妊娠・出産、雇用形態など、あらゆる差別を対象に、間接差別やハラスメントも含めて禁止する内容である。

 

 

差別禁止法、日本にはないんです

 

「あれっ、日本って差別は禁止じゃなかったっけ?」と思うかもしれない。

 

憲法14条には確かに「人種、信条、性別、社会的身分又は門地により差別されない」と書いてある。

だがそれを具体化した法律が日本にはない。

 

国連の人権に関する様々な委員会が、これまで何度も日本政府に対して立法化を勧告しているのだが、政府は消極的な態度を取り続けている。

 

その結果、差別された側が裁判で被害回復を求めても、多くの場合は立証に非常に苦労し、勝つのも難しいのが現状だ。

 

ほかにも重要な論点はたくさんあるが、紹介しきれないので、詳しくはポジネットからブックレット(1部200円)を取り寄せるなどして確認していただきたい。

https://www.facebook.com/positiveactionlaw/

 

提言の底流にあるのは、政府が「働き方改革」の力点を「日本経済再生」や「付加価値生産性の向上」に置いていることへの批判だ。

 

改革の結果としての経済の活性化を強調するのは理解できるが、まずは、労働者一人ひとりの働き方、生き方の改善をダイレクトに目的とした改革であるべきだろう。

 

いま国会などで続けている議論は、電通の新入社員の過労死事件に枕詞のようにふれて、労働者向けにはそれで事足れりとしてはいないだろうか。

 

 

政治の優先課題は何なのか

 

提言の発表集会には厚生労働省の担当者も集会に出席し、「賃金決定は労使自治だという強固な意見がある中で、今回は使用者側をテーブルにのせたのがポイントだ」と説明した。

 

日本の政策決定における使用者側の強さ(労働側の弱さ)を思えば担当者の苦労はよくわかるが、残業の上限を月100時間「以下」とするか「未満」とするかというレベルで議論が展開するような状況では、実際に働き方が良くなるとはとても思えない。

 

集会では、父親に一定の育休取得を割り当てる「パパクオータ制」の導入や、政策決定過程で派遣労働者ら働く当事者の声を聴くことを求める発言もあった。

 

国会では、性犯罪の被害者たちが求めてきた刑法改正案の審議を後回しにして、共謀罪法案を審議入りさせている。

 

優先課題は何なのか、政治のエネルギーをどこに振り向けるべきなのか。

 

そのために今自分ができること、すべきことは何なのかを、常に考えて行動しなければと自分にも言い聞かせている。
 


kimura-150x150ジャーナリスト 林 美子(はやし よしこ)
2016年まで朝日新聞記者。労働やジェンダーの分野を中心に取材、執筆活動を続ける。早稲田大学ジャーナリズム研究所招聘研究員。