意思決定における男女の対等な参画-地域から変える-(前編)

意思決定の場において女性の参画はまだまだ少ない。政府は2020年までに指導的立場にある女性の割合を30%に引き上げる目標を掲げているが、ほとんどの領域で目標は実現しそうにない。審議会や公務員など、行政の裁量で女性比率を引き上げられる領域は比較的順調であるものの、防災会議のように女性参画が不可欠である領域でも未達成の自治体が多い。改めて、なぜ意思決定の場に男女が対等に参画する必要があるのかを確認し、地域からどのように変えていくことができるのか論じたい。

 

「個人的なことは政治的なこと」

 

意思決定において男性に著しい偏りがある現状には、どのような問題が潜んでいるのだろうか。

 

まず、男女では関心事項に大きな相違があるため、女性が重視する問題が取り上げられにくくなることがある。

性別役割分業の意識と実態が根強い日本では、家庭内の事柄や子育て・介護などのケアはもっぱら女性が担うことが多く、公的な支援が不十分な現実がある。

例えば待機児童の問題は長期化しているが、意思決定の場に女性が半分いたならば、もっと迅速に解決にむかっていただろう。

あるいはセクハラをはじめとする性暴力の問題も女性の方が一般的に関心が高い。

「女性の問題」とされてしまうと、男性中心の機関では「公的な問題」として認識されにくくなり、結果的に政策に歪みが生じてしまうのだ。

 

「女性の問題」が「公的な問題」から締め出されると、今度は女性にとっては政治や行政が遠いものと感じられ、参加する必要性を感じなくなってしまうという負のサイクルが生まれる。

自分にとって大切な事柄が「公的な問題」でないならば、自己責任で対処せざるを得ず、ただでさえ忙しい日々を乗り切ることで精一杯な女性たちが政治参加や行政参加をする意欲は減退していく。

 

「公的な問題」として取り上げられなければ、政策的な対応はなされない。

したがって、「個人的なことは政治的なこと」というフェミニズムのスローガンは今日においても決して色褪せるものではない。

自分が抱える問題は個人的な問題などではなく、社会にとっての問題だと認識することで、初めて政治や社会は変わっていく。

このことは「女性の問題」にとどまらず、若者や障がい者、性的マイノリティ、移住者など、あらゆる人々に当てはまるものだ。

こうして意思決定における男女の不均等を問題化していくと、性別以外の多様性も欠落していることにも気づかされることになる。

多数派を占める男性の間でも十分に多様性が確保されているかについて、敏感になっていく必要があるのだ。

 

 

数が重要だからこそ逆転の発想を

 

意思決定が男性に独占されることをよしとする人はさすがにいないにせよ(ちなみに町村議会の3割は女性ゼロである)、女性をお飾りのように1人や2人入れればそれで済む話ではない。

30%という数値目標がなぜあるかといえば、ある程度の数がなければマイノリティは力を発揮できないからである。

これは「クリティカル・マス」理論と呼ばれるが、おおむね3割程度を占めることによって初めてマイノリティは対立させられる状況から脱し、それぞれが活躍できるようになるというものである。

 

3割はそれでもまだマイノリティであることには変わらず、近年ではパリテ(男女同数、均等)に近づけるべきであるという考え方も生まれている。

女性はマイノリティの状況にあると発言しにくいという研究は相当の蓄積がある。

男性も女性に囲まれて居心地が悪かった経験のある人は多いと思うが、グループにおける男女比に違いによって、異なるダイナミズムが生まれる。

女性が実質的に意思決定に参画するためには少なくとも3割が必要であり、4~6割に達して初めて男女は対等になっていく。

このように数が重要であるならば、最初から男女比をルール化することは理にかなう。

クオータ(割り当て制)とはそのようなものであり、役員や議席、候補者の一定割合を最初から男女に割り当てるものだ。

 

意思決定の場の男女均等が重要であることは理解されても、女性のなり手がいないという声に阻まれ、なかなかクオータの導入までは踏み切れないという声もある。

しかし、クオータは逆転の発想である。なり手がいないからクオータを導入できないのではなく、クオータを実施することで女性たちが手をあげるようになるのだ。

あるいは、なり手を増やすための措置を総動員せざるを得なくなることも重要だ。

女性のなり手が増えるのを待つのではなく、先に枠を設けることによって、変化のスピードを上げるのがクオータの意義である。

 

※後編は6月26日(月)に更新予定

上智大学法学部教授 三浦 まり(みうら まり)

上智大学法学部教授。カリフォルニア大学バークレー校で博士号(Ph.D.)取得。主編著に『日本の女性議員 どうすれば増えるのか』(朝日新聞出版)、『ジェンダー・クオータ:世界の女性議員はなぜ増えたか』(明石書店)、『私たちの声を議会に――代表制民主主義の再生』(岩波書店)。