意思決定における男女の対等な参画-地域から変える-(後編)

政治分野における男女共同参画推進法

 

政治の分野では女性がとりわけ少なく、衆議院で比較すれば日本は193ヵ国中164位(2017年3月現在)である。

この惨状から脱するにはやはり逆転の発想が不可欠だ。

 

国会では「政治分野における男女共同参画推進法」が内閣委員会委員長によって提出される予定である(2017年4月13日現在)。

これは「政治分野における女性の参画と活躍を推進する議員連盟」(中川正春会長、野田聖子幹事長、行田邦子事務局長)が準備をしてきたもので、筆者も議連ワーキングチームの有識者アドヴァイザーとして策定に関わってきた。

法案が成立すれば、各政党は候補者を擁立する際に男女の数の均等をめざさなくてはいけなくなる。

努力義務の理念法とはいえ、「数の均等」が明文化されることの意義は大きい。

 

さらに、国および自治体の責務として、政治分野における男女共同参画の推進に関して必要な施策を策定、実施するよう努めることも盛り込まれた。

同法を根拠法として、自治体レベルで女性議員の育成や女性の政治参画促進の取り組みが活発化していくことになろう。

具体的には地域の男女共同参画センターが政治参画の講座を開設したり、18歳選挙権を契機に広がっている政治教育の一環として、議会の男女均等の重要性や現状を啓発したりすることが考えられる。

さらに踏み込んで、都道府県および市町村議会の選挙制度を変えることも視野に収める必要があるだろう。

 

 

地域における女性と政治

 

地域政治における男女共同参画政策として重要な視点は、地域活動に女性はすでに十分参画しているという事実だ。

 

地域活動の延長線上に地方自治体の行政がある以上、女性たちが議会や役所に少ないのは、やはりおかしい。

「個人的なことは政治的なこと」と考えれば、政治を忌避してきた女性たちも、実は自分たちの活動が政治そのものであったと捉えられるようになるだろう。

 

政治というのは何も党派的で対立的であるとは限らない。

とりわけ地域の課題は丁寧な合意形成が不可欠である。多様な声に耳を傾け、協調的に物事を決めていくのは女性むきとさえ言えるかもしれない。

 

女性が意思決定の半数を占めるようになれば、何を取り上げるのかという議題が変わるだけでなく、決め方のスタイルも変わっていく。

 

夜の酒席で実質的な意思決定が行われることは珍しくないが、議会が男女半々となると、女性を排した酒席で決定することはできなくなる。

インフォーマルな場で決めたとしても、フォーマルな場でひっくり返るかもしれないからだ。

女性の政治参画は政治の浄化と透明性の確保をもたらすものでもある。

 

最後に、地域政治に女性が参画することは、持続的な経済社会の構築のためにも急務である。急激な人口減少と東京一極集中が同時進行している。

東京は待機児童問題が深刻だが、地方では人口減少や地域医療・介護の問題が切迫している。

 

私たちが生きて行くために、そして社会が持続性を持つために不可欠なケアをどうやって国、自治体、企業、家族、男女で配分していくのかに関して、私たちは早急に答えを出さなくてはならない。

女性にケアを押し付けていけば少子化問題は解決せず、労働人口も不足し経済成長もより困難になる。

 

結局のところ、ケア問題を解決していくためには、ケアの現場で経験を積んできた女性たちが地域政治に入り込むことが不可欠なのだ。

そして、女性の政治参画は「女性の問題」なのではなく、社会全体の問題であると男性が認識することが必要なのだ。

 

上智大学法学部教授 三浦 まり(みうら まり)

上智大学法学部教授。カリフォルニア大学バークレー校で博士号(Ph.D.)取得。主編著に『日本の女性議員 どうすれば増えるのか』(朝日新聞出版)、『ジェンダー・クオータ:世界の女性議員はなぜ増えたか』(明石書店)、『私たちの声を議会に――代表制民主主義の再生』(岩波書店)。