災害対応は「男の仕事」ではありません。

熊本地震後の災害対応調査でわかったこと

 

男性と女性では、災害が起きた時の影響の受け方が違い、ニーズも異なる。

それらに合わせた対応をするためには、災害対応に女性の視点を活かすことが必要である。

そんな認識が、浸透しつつあるとはいえまだまだ不十分であることが、昨年4月の熊本地震後の対応に関する調査で明らかになった。

 

内閣府男女共同参画局が今年3月にまとめた「男女共同参画の視点による平成28年熊本地震対応状況調査報告書」。

 

熊本報告書表

熊本報告書表

 

被災自治体や、応援に入った全国の自治体、民間団体などにアンケートやヒアリングを行い、その結果を分析している。

http://www.gender.go.jp/research/kenkyu/kumamoto_h28_research.html

 

たとえば被災当時、防災担当課の職員に占める女性の割合は、熊本県と大分県で5%、被災市町村では11%だった。

被災2県の防災会議の委員に占める女性割合は10%、被災市町村では7%。

災害への備えをする部門に女性がずいぶん少ないことが、まずわかる。

 

 

間仕切り、更衣室、授乳室……

 

地震の直後、内閣府男女共同参画局は、現地の自治体あてにある通知を出した。

東日本大震災後に作成した「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針」や、「避難所チェックシート」を活用するよう求める内容だ。

避難所チェックシートとは、プライバシーを保つための間仕切りや更衣室、授乳室の設置、生理用品など女性用品の女性による配布、避難所運営組織への女性の参画、といった項目を、実施できているかどうか自己点検するツールである。

http://www.gender.go.jp/policy/saigai/pdf/2016_saigaitaiou.pdf

 

避難所チェックシート

避難所チェックシート

 

だが、上記の報告書によると、取組指針やチェックシートを活用したのは、市町村の男女共同参画担当課の30%、防災担当課では19%にすぎなかった。

長期的に避難所を開設した24市町村のうち、間仕切りや女性用更衣室、授乳室を設けなかった自治体がそれぞれ41.7%あった。

項目ごとに「取り組み無し」の回答が被災自治体全体に占める割合をみると、「避難所運営への女性の参画」が29.2%、「女性用品を女性担当者が配布」が54.2%、「炊事は女性といった性別役割分担意識に基づく運営にしないための取り組み」が70.8%だった。

 

 

民間団体の調査でも、次のような回答があった。

「各リーダー(例:地域の防災リーダーや行政職員など)が女性視点や意見を受け入れず、反映させなかった」「外部団体は結果として全員女性だった一方、地元の代表者はすべて男性だった」「避難所の運営を自治会がされている場合、男性の割合が極端に高く、女性の意見が通りにくい」……。

 

 

好事例も紹介されている。たとえば岐阜県。東日本大震災の被災地に職員を派遣したときの経験を踏まえ、熊本地震では女性職員を積極的に派遣。

多くの自治体が、様々な「配慮」から女性職員の派遣をためらうなかで、岐阜県は派遣職員36人のうち女性が21人(58.3%)を占めた。他の自治体からの派遣が男性中心だったこともあり、女性による支援が必要なところへ優先的に配置され、高齢女性の介助や更衣室、姿見の設置などきめ細かく対応することができたという。

ほかにも興味深い取り組みや提言があるので、関心のある方はぜひ報告書をお読みください。

 

 

男女にかかわらず必要な視点

 

8月上旬には都内で、男女共同参画と震災に関する公開研究会が開かれた。

「減災と男女共同参画 研修推進センター」共同代表の浅野幸子さんが、熊本地震の調査について報告。調査のために内閣府が設置した検討会の座長も務めた浅野さんは、「平時から男女共同参画の視点を持って取り組んでいるかどうかが重要」と強調し、「女性だからといって必ずしもそのような視点を持つわけではない。熊本地震の際も(避難所運営などの)改善に努めた男性職員がいた」と指摘した。

 

 

防災や災害対応といえば、「力仕事」「理系」のイメージがある。

だが、災害は自然現象であると同時に社会的な現象でもある。

生と死が問われる非日常の場面で、ふだんのジェンダーに関する意識も露呈する。だからこそ、ジェンダー平等に向けた平時からの取り組みが大切なのだ。

 

私は、自分が住むマンションの自治会の防災担当者に、内閣府のチェックシートを渡してある。防災訓練などで(もちろん実際の災害時にも)ちゃんと活用するよう、今度会ったら念押ししなければと思っている。

ジャーナリスト 林 美子(はやし よしこ)

2016年まで朝日新聞記者。労働やジェンダーの分野を中心に取材、執筆活動を続ける。早稲田大学ジャーナリズム研究所招聘研究員。