「フェミニスト」って格好いい!?

(トップ写真)ディオールの2017春夏コレクション。ディオールの公式Youtubeより

 

高級ブランドもファストファッションも

 

あなたは「フェミニスト」という言葉にどんな印象を持ちますか?

「なんか怖い」「過激な感じ」「男性に対抗して女性の立場ばかり主張する人」というイメージを持つ人が少なくないのではないだろうか。

 

ところがどうやら最近、風向きが変わっているようだ。

高級ブランドのクリスチャン・ディオールが、今年の春夏アイテムとして「WE SHOULD ALL BE FEMINISTS」というロゴを胸にプリントしたTシャツを発表した。

 

ファストファッションのGUも、2017-18年の秋冬アイテムとして「YUP, I’M A FEMINIST」というロゴのTシャツを売り出した。

ちなみにディオールのTシャツは1枚7万9000円、GUは790円です。

 

ディオールのTシャツのロゴは、元ネタがある。

ナイジェリア出身の作家チママンダ・ンゴズィ・アディーチェの「男も女もみんなフェミニストでなきゃ」(河出書房新社)である。原題は「WE SHOULD ALL BE FEMINISTS」。

アディーチェ自身の体験を踏まえ、「フェミニスト」とは何かを考えることを通じて様々な人間関係を良くしていこうと呼びかけている。

小さな本なので、ぜひ一度お手に取ってみてください。

 

「男も女もフェミニストでなきゃ」

 

 

ビヨンセの歌詞にも登場

 

この本は、アディーチェが2012年に「TEDxEuston」というイベントで行ったトークを元にしている。

 

チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ。TEDの公式Youtubeより

 

トークの模様は動画で見ることができる。歌手のビヨンセは、2014年に発表した曲「Flawless」の歌詞に、アディーチェの言葉を取り入れている。

https://www.ted.com/talks/chimamanda_ngozi_adichie_we_should_all_be_feminists

https://www.youtube.com/watch?time_continue=2&v=IyuUWOnS9BY

 

7月には東京都内で、この本について語り合う読書会があり、訳者のくぼたのぞみさんも参加した。

くぼたさんによると、タイトルの英語をそのまま訳すと「私たちはみんなフェミニストでなきゃ」となるが、あえて、「男も女も」と「男」という言葉を入れたという。

「私たち」とすると、男性は自分が「私たち」に入らないと考えるだろうと思ったのが理由だ。

 

この読書会では、参加者が互いに本の感想を語り合った。

「フェミニストについての読書会に参加すると夫に言ったら、ドン引きされた」という人もいた。

だが、「フェミニスト」は女性、あるいは「怖い女性」を指す言葉ではない。もちろん、「女性に優しい男性」の意味でもない。

 

たとえばカナダのトルドー首相は、昨年3月の国連女性の地位委員会で、「自分はフェミニストだと言い続ける」と宣言した。カナダの内閣は閣僚の半数が女性である。

日本の首相がトルドーみたいな人だったらどんなにすてきだろうと思う。

ほかにも女優のエマ・ワトソンら、自分がフェミニストであることを公言する有名人は欧米に少なくない。

http://www.bbc.com/japanese/video-35839696

 

ではそもそも、「フェミニスト」という言葉は何を指しているのだろうか。

アディーチェは自分自身の定義として、男性であれ女性であれ、「そう、ジェンダーについては今日だって問題があるよね、だから改善しなきゃね、もっと良くしなきゃ」という人だと述べている。なるほど。

 

 

広辞苑に定義の変更を求める署名活動も

 

ところで、日本ではどうだろう。

岩波書店が発行する定番の辞書、広辞苑には次のように書いてある。

 

フェミニスト:女性解放論者。女権拡張論者。俗に、女に甘い男。

 

ふうん。「女権」だの「女に甘い男」だの、なんか古くない?ちょっと上から目線も感じない?というわけで、ネット上の署名活動サイト「change.org」で、「拝啓 広辞苑様」と題したキャンペーンが始まった。

広辞苑の「フェミニズム」「フェミニスト」という言葉の説明を変えるよう求めている。

 

キャンペーンを主宰しているのは、以前にもこのコラムで紹介した「明日少女隊」というアートグループ。

言葉の日常的な使い方から変えていくことが、世の中全体の変化につながる。重要な視点だと思う。

http://ashitashoujo.com/post/160494293122/kojien

 

というわけで、「わたしはフェミニストです」と、胸を張って言おうと思います。

だれも「あなたはフェミニストですか?」と、尋ねてはくれないんですけれど。

 

ジャーナリスト 林 美子(はやし よしこ)

2016年まで朝日新聞記者。労働やジェンダーの分野を中心に取材、執筆活動を続ける。早稲田大学ジャーナリズム研究所招聘研究員。