職場の不公正を直視し、労働組合は具体的な取り組みに着手を(後編)

集団的労使関係からの排除

非正規労働者は、次回更新されるかどうかわからない条件下でモノを言えずに働いている。

彼らにも要求はある。それは調査でも明らかだ。しかもその内容は、個別的なものというよりは、本来、集団的な労使関係のもとで解決されるべきものだ。しかしながら、規約の整備を含め、彼らの受け入れを進めている労組は自治体職場でもまだ多数派ではなかろう。この集団的労使関係からの排除、結果として生じる労使間の圧倒的な不利が三つ目の問題である。

労働組合に対する彼らの期待や関心の度合いは低いから、という説明が取り組みの進まぬ理由としてあげられる。しかしながらそれは、今後も働き続けられるのか先が見えず、経験が評価されるわけでもない職場で、自己肯定感や何かを変えられるという自己効力感を容易に持ちうると考えることのほうが、無理があるのではないか。労働組合のロの字も知らなかったのが、学習や経験を積み重ねるなかでエンパワーメントされていった自らの過去を想起されたい。

ところで、労働組合が築いてきたさまざまな権利や権利行使に非正規労働者から厳しいまなざしがむけられることがある(調査でもそれは確認される)。理不尽なことではある。しかしながらそれこそは、労働者の権利と称されるものが彼らには無縁であって、特権的な装いさえ帯びてしまっていることの証左ではないか。普遍的な権利への昇華が求められる。

ともあれ、組合に対する非正規労働者の考えは可変的で、組合の働きかけいかんにかかっていることを確認したい。

 

自治体の「ソト」につくられるワーキングプア

▲なくそう!官製ワーキングプアをテーマに集会開催(2016年2月20日)

▲なくそう!官製ワーキングプアをテーマに集会開催(2016年2月20日)


ところで、ここまでは自治体の「ナカ」、つまり、直接雇用されている労働者を想定してきた。今回方針とされた10万人の組織化も、現場では、おそらく臨時・非常勤等職員が念頭におかれているのではないだろうか。

しかしながら自治体は「ソト」にも、つまり公共事業や委託事業あるいは指定管理者制度など、数多くの仕事を民間に発注し、公共サービス、ひいては住民福祉の増進を実現している。そこで働く者の存在は視野に入っているだろうか。なぜならこの領域でも、財政難や競争を軸にした入札制度下でワーキングプアがつくり出されているからだ。

彼らにとって自治体は、自らの命運をにぎる存在である。どんなに懸命に働き勤続を積み重ねても、発注価格の切り下げで雇用が切れ、賃金は、上がらないどころか下がってしまうことさえある。その状況に対する責任を、発注者側に立つ者は自覚しているだろうか。

条例の制定を中心とした公契約の適正化は、自治体労組が率先して取り組むべき課題であり、全国各地での同時多発的な公契約運動の展開が待たれている。

 

問題の可視化作業を重視し職場に民主主義を

▲公契約条例の制定を求める街頭宣伝(2013年8月1日)

▲公契約条例の制定を求める街頭宣伝(2013年8月1日)


正規労働者がなぜ非正規問題に取り組まなければならないのか。放っておけば自らの労働条件も引き下げられていくから、というのは有力な見解である。ただもっと単純に、看過してはならない不公正が職場に存在するからという考えも重視されるべきではないか。

もちろん、その気づきは当事者でなければ容易ではないかもしれない。だからこそ、組合に積極的に迎え入れ(包摂し)、彼らが「発言」できるよう環境を整備することが必要だ。それが正規と非正規の間の、あるいは、発注者側の労働者と受注者側の労働者の間の「壁」を少しずつ壊していく。

自治労は、この問題(臨時・非常勤等問題)に関して、4つの運動課題を提起している。すなわち、①臨時・非常勤等職員の組合加入を進める、②正規職員、臨時・非常勤等職員がともに要求、交渉を進める、③住民に、臨時・非常勤等職員の実態を訴えていく、④臨時・非常勤等職員制度の法改正に取り組む、である。

補足すれば、③非正規労働者の実態は、(住民だけではなく)正規労働者や組合にも積極的に示されるべきものであること。実態の可視化と共有(③)が非正規の組織化(①)を促進し、かつ、後者が前者を促すという、①と③は好循環の関係にあること。またそのことが②や④に労組が本腰を入れる状況をつくりだす、言い換えれば、職場における取り組みなくして制度政策闘争は力をもたないということを強調したい。

異なる労働者グループを組合に包摂しながら、意見や利害の調整を進めていくこと。それは、当事者抜きで物事を決めぬという、職場における民主主義の実現過程である。そう考えたとき、自治体のナカにもソトにも非正規労働者が大量に生み出される中で、労働組合はそれを黙認するのか、それとも、民主主義を体現する主体となるのか。いまそのことが問われている。

 

参考文献
上林陽治(2015)『非正規公務員の現在』
日本評論社、熊沢誠(2013)『労働組合運動とはなにか』岩波書店など参照


川村雅則(かわむら まさのり)北海学園大学 教授 川村 雅則 (かわむら まさのり)
北海学園大学教授。非正規雇用問題のほか、交通・建設・福祉など北海道の雇用の実証的な研究に従事。専門は労働経済。反貧困ネット北海道副代表。