結婚と幸福観のミスマッチ(後編)

では、その「結婚の利点」の内実を見てみよう。

 

第15回調査では、男女ともに最も多かった回答は、「子どもや家族をもてる」が、男性35.8%、女性49.8%であった。

 

また増減が明確な項目として、女性に関しては「経済的に余裕がもてる」が年々高まっており、第9回調査では7%程度であったが、第15回調査では20.4%と2割を超えた。

一方男性は「社会的信用」を挙げる人が年々減少しており、第9回では22%であったが、第15回では12.2%まで減っている。

 

それでは、結婚意思のあると応えた未婚者に、1年以内に結婚するとしたら何が障害となるかと質問したところ、男女とも「結婚資金」と回答した人が最も多く、男性43.3%、女性41.1%となった。

一方、著しく減少しているのは「親の承諾」で、とりわけ女性は第9回調査で約24%がこの項目を挙げていたのに対し、第15回調査では14.3%まで減少している。

 

 

障壁は親よりお金、そして女性の場合、結婚に期待するのもお金……。

何だか、ひどく現実的な話だが、国税庁「民間給与実態統計調査」(2015年)によれば、女性は年間を通じて給与所得がある人でも7割が年収300万円以下、最も多い年収帯は100~200万円が3割弱である。

 

年齢別に見ると、30代前半に平均年収307万円がピークで、それ以降上がることはない。

これは、50代前半まで年収が年齢に応じて上がり続ける男性とは対照的である。全年齢層での平均年収で見ても、男性は平均年収521万円、女性276万円と、女性は男性の半分の水準である。

この現状が、女性の「結婚=経済的な安定」という志向性の背景にあることは、想像に難くない。

 

 

一方、「異性の交際相手はいない」と回答した人の割合は、2015年現在男性7割、女性6割。

交際相手のいな婚姻に占める「恋愛結婚」は9割となるため、少子化対策として若者の結婚相手マッチングを推進すべく、結婚支援事業を行う自治体は多い。

 

 

だが、現在では未婚若年層の結婚相手の理想像は年々高まる傾向があり、要は出会ったからといって恋愛に至るかは不透明であり、かつ結婚に至るかも未知数であり、さらに夫婦間出生力も2000年代に入って2を割り込んでいることから、結婚したからといって子どもを2人以上産むかどうかも分からない。

 

人は何をもって人生の重要な選択を決意するのかといえば、おおむね本人の幸福のためだろう。

 

この、個人としての幸福と、結婚した際に期待される社会的役割との間に齟齬があるのではないか。これが、「独身の利点」と「結婚の利点」の微妙なミスマッチに現れているように見える。

 

 

ところで、小学校3年生になった息子は、相変わらず素朴に「大人になったら結婚したい」と言い続けている。

どうして?と聞いたら、「今、すごく幸せだから!  大人になっても、家族をつくって、パパになれたら、すごく楽しそうだから」だ、そうである。

 

……これは、若年非婚派が増えた現状に反し、さらに年少の男子小学生世代の結婚観が変化したことの証左なのか。

それとも、わが息子が単に変わり者なだけなのか。

小学生を対象とした結婚観の量的統計調査結果を見たことがないので、判然としないのが残念である。

 

ただ親としては、この息子の結婚と親になることへの期待と希望がかなうよう、願うのみである。

詩人・社会学者 水無田 気流(みなした きりう)

早稲田大学大学院社会科学研究科博士後期課程単位取得満期退学。國學院大學経済学部教授。著書に『シングルマザーの貧困』(光文社新書)、『「居場所」のない男、「時間」がない女』(日本経済新聞出版社)ほか。最新刊で上野千鶴子との対談「非婚ですが、それが何か! ? 結婚リスク時代を生きる」がビジネス社から絶賛発売中。