共謀罪は監視社会をもたらす

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はじめに

「共謀罪」が「テロ等準備罪」に名前を変えて登場してきた。安倍総理は「テロ等準備罪は、テロ等の準備行為があって初めて処罰されるもので、これを共謀罪と呼ぶのは全くの間違い」と臆面もなく断言したが、全くのごまかしだ。
「テロ等準備罪」も、「共謀」(合意)を処罰するもので「準備行為」を処罰するものではない。また、安倍総理は「国際組織犯罪防止条約(共謀罪創設の根拠条約)を締結できなければ、東京オリンピック等を開けないと言っても過言ではない」と大見得を切った。安倍総理のごまかしや虚言に騙されてはいけない。

 
 
(共謀罪とは何か)
共謀罪法案は、2003年に初登場して以来3回国会提出されていずれも廃案となった。
 
そして、06年6月に実質的に葬り去られるまでの間、「共謀罪」は、初めは「国際組織犯罪防止条約に加盟するために必要な犯罪として国内立法化を図るもの」と説明されていたが、その後、「組織犯罪の防止に有効」が加わり、今や、「テロ対策として必要」と説明が変わり、いや、意図的に説明を変えてきたのである。
 

しかし、共謀罪創設の本質を見失わないでほしい。共謀罪の創設は、「合意」だけで成立する犯罪を大量に作り出すもので、近代日本の刑事法体系を大きく崩すものだ。
 
このことは、我が国刑事法の基本原則を通じて確保されてきた我々の基本的人権を危うくするとともに、盗聴、密告、自白偏重の捜査手法、司法取引等を通じて日本社会を息苦しい監視社会へと変えていくことになる。
 
 
(一般市民の日常生活にどう影響するのか)
安倍総理は衆議院本会議で「一般市民が対象となることはあり得ない」と述べたが、法務省は、「団体の目的が、『重大な犯罪』の実行に一変したと認められる場合には、組織的犯罪集団に当たる」とした。つまり、一般市民も共謀罪の対象になり得ることを示したのだ。
 

このことは、単に、一般市民が「共謀罪」という罪に問われる可能性を示しただけに止まらない。
犯罪を起こす可能性があるのなら、しかも、その犯罪が被害や犯罪行為がない犯罪であるのなら、一般市民の生活は捜査当局によって日常的に監視されることになるし、共謀罪の創設は、まさにそのような監視の根拠を与えてしまうのだ。
 
 
(労働組合活動にどう影響するのか)
労働組合を例にとってみよう。
普通の労働組合が、団体交渉に向けて「今日は、使用者から満足のいく回答が出るまでは、皆の力で絶対に使用者を帰さないぞ」と合意したり、平和運動の一環で基地建設に抵抗して「工事阻止のために皆で道路に座り込むぞ」と計画したら、それぞれ組織的監禁又は強要罪、組織的威力業務妨害罪の共謀罪に問われる可能性がある。
 

「労働組合の活動だから共謀罪とは関係ない」とは言えない。
 
労働組合など一般の市民の団体であっても、「重大な犯罪」の実行を合意したら、その時点で、その団体が「組織的犯罪集団」と認定される可能性は否定できないのだ。そして、その認定は、一次的には捜査当局が行うのであるから、捜査の歯止めをかけることも難しい。
 

何としても、共謀罪(テロ等準備罪)の創設を阻止しなければならない。
 


kimura-150x150平岡秀夫(ひらおか ひでお)
弁護士、第88代法務大臣、日本弁護士連合会共謀罪法案対策本部委員