アベノミクスと地方創生のゆくえ(前編)

現在進行中の地方創生策は、国と地方の関係を根本から変容させようとしている。地方交付税制度が有する財政調整機能と財源保障機能は後退させられ、「選択と集中」を進める手段と化しつつあるからである。現在のところ、それは部分的な制度変更に留まるとはいえ、財政再建という重しがある以上、徐々に交付税本体を侵食していくことにもなりかねない。われわれにとって、どのような国と地方との関係がありえるべきか。国と地方をつなぐ地方交付税制度が危機に陥りつつあるいま、その問題を根源に立ち返って考えてみる必要がある。

 

「地方創生」の意図せざる誕生

 

第二次安倍政権が誕生してから、3年半が経過した。アベノミクスによって演出されたこの間の株高と円安の効果は、さしたるものではなかったというのが大方の見方であろう。このことは、物価、輸出、賃金、消費、経済成長率など、あらゆる統計やデータによって裏付けられている。今年に入って、「中央銀行史上、最強の枠組み」としてマイナス金利政策が鳴り物入りで導入されたが、直後に株価は大暴落し、その効果は早くも疑問視されつつある。仮に政府が「新三本の矢」を提唱した時点において、それまでのアベノミクスの成果を結論づけて良いのであれば、端的に次のようになろう。それは「幻想」であった、と。

ただし、「効果がない」というだけで単純に終わらないのが政治というものである。アベノミクスは、まったく意図せざる分野で実態をなし、日本の姿を大きく変える火種となりつつあるからである。

自民党は、先の衆院選をたたかうために、「ローカル・アベノミクス」を看板政策として持ち出した。これは、「地方ではまだアベノミクスの効果がまだ実感できていないという意見がある」(稲田朋美政調会長)【注1】とのことからである。衆院選の前には、日本創生会議のリポート(通称「増田リポート」)が「地方消滅」の危機を煽ったことで脚光を浴びており、地方を票田とする自民党として何らかの対応をせざるを得なかったわけである。その後、政府は「まち・ひと・しごと創生本部」を設置、現在の一連の地方創生策を形成する流れがつくられていく。後述するように、地方創生策は今、国と地方の関係を根本から変容させようとしている。「効果がない」ことによって、かえって意図せざるところで実態を帯びる政策、これこそがアベノミクスの現実であった。

 

【注1】『朝日新聞』2014年7月10日付朝刊。

 

(後半へ続く…10/3更新予定)


東北学院大学 准教授 佐藤 滋 (さとう しげる)東北学院大学 准教授 佐藤 滋 (さとう しげる)
東北学院大学経済学部共生社会経済学科(専門:財政学、地方財政論)。横浜国立大学大学院国際社会科学研究科博士課程後期卒業。経済学博士。著書に『租税抵抗の財政学』岩波書店、2014年(古市将人との共著)がある。