「骨太二〇一六」の概要と留意点(後編)

 経済財政一体改革と来年度予算

歳出改革については、第3章冒頭部分に「先進・優良事例の展開促進」「国と地方の連携強化」「『見える化』の徹底・拡大を通じて、国・地方を通じたボトムアップの改革」などが述べられ、社会保障等については、「追加的な歳出増加要因(子ども子育て・家族支援等)については、必要不可欠なものとするとともに、適切な安定財源を確保する」「一定期間内の追加的な歳出増加要因については、資産売却等を含めた財源を確保し、財政規律を堅持する」とされている。

重要なのは、「必要不可欠」という言葉は、必要不可欠であるから、「追加的」歳出増加要因といっても、すべて実施するという意味か、「追加的」であるので、必要不可欠なもの以外は削減するという意味かである。

第3章では、前章に展開されているような子ども子育て支援、子どもの貧困対策等に関する具体的な言及は見受けられない一方で、歳出改革に関しては、国庫支出金および地方交付税制度に対して次のような言及が見受けられる。

まず、国庫支出金に関しては、「パフォーマンス指標」の設定を求め、国庫支出金の配分には、「地方自治体ごとの取組状況や達成度合い等に応じてメリハリをつける」等、「見える化」が求められている。

次に、地方交付税について、いわゆる「トップランナー方式」の導入(拡大)にむけ、「その趣旨、経費の算定基準、今後のスケジュールをホームページで公表し、周知を図る」とされている。

ここで強調されているのは、「先進・優良事例の展開促進」「国と地方の連携強化」「『見える化』の徹底・拡大」であるが、ここでいう「先進・優良」とは、「コストがかからない」とほぼ同義なのではないか。

地元の食材で各校において作りたての給食を提供する取り組みと、給食を栄養補助食品に置き換えて必要なカロリーを確保しつつ、給食費の納入済の児童・生徒にのみ提供する取り組みとでは、前者が「見える化が困難で高コスト」、後者が「見える化可能でコスト削

減可能」であるが、いずれが「先進・優良事例」であろうか。

第4章は、第1章から第3章までの方針を来年度予算にどう反映するかが端的に述べられている。「集中改革期間の2年目」とあるが、前年の「骨太」には、集中改革期間について述べた部分に「地方の歳出水準については、国の一般歳出の取組と基調を合わせつつ、交付団体をはじめ地方の安定的な財政運営に必要となる一般財源の総額について、2018年度(平成30年度)までにおいて、2015年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保する」という注記があったが、骨太二〇一六では一般財源総額確保に触れていない。

今年度は、3年の期間の2年目なので当然、引き継がれるべきであるが、前提条件の変化に注意が必要であろう。消費税増税延期と法人税収の減収見通しによって、国の財源の規模が変調を来すようなことになれば、地方の財源にも「新たな判断」が打ち出される可能性は高い。これまで見てきたように、「コストカットの横展開」が期待されていることにも色濃く現れている。

 

 

むすびに代えて

骨太二〇一六を含め「骨太」を取りまとめているのは、経済財政諮問会議である。同会議は、安倍晋三首相が政権復帰にあたり再起動したもので、日本経済再生本部とともに、三本の矢で経済再生を推し進めるものである。国会議事録等により首相の発言を確認する

と「経済財政諮問会議で検討する」旨の答弁も少なからず見受けられる。

同会議は、議長(=首相)を除く議員11人のうち、5人は閣僚、1人は日銀総裁、残る4人が民間人(経済界2人、大学・研究所各1人)からなる。世界で一番企業が活躍しやすい国をめざす首相が自ら議長を務める会議に諮問する内容が、経済界の利害に反するとは考えにくい。この構成から見ても分配よりも成長に傾斜していることがうかがえよう。

したがって、地方創生や女性活躍、さらには一億総活躍も、地域を活性化させたり、個々人の人生における選択を保障したりすることが目的なのではなく、企業収益のさらなる改善や国際競争力の強化のための手段なのではないだろうか。とりわけ、働き方改革で規制緩和が導入されるとすれば、それと分配とを筆者の頭の中で結びつけるのは困難なのである。

 

 


自治総研 研究員 其田 茂樹(そのだ しげき)自治総研 研究員 其田 茂樹(そのだ しげき)
1973年愛媛県生まれ。横浜国立大学大学院国際社会科学研究科単位取得退学。藤沢市政策研究員などを経て2012年8月より公益財団法人地方自治総合研究所研究員。専攻は、地方財政論、経済政策論。著作・論文に、『再考 自治体社会資本』(公人社、共編)、「『地方創生』は政策目的か」(『自治総研』通巻439号)など。