【インタビュー】消防士に聞いてみた。

今回は、消防士の立場からケイタさんにインタビュー。

消防士になった経緯や仕事内容などについて伺いました。

 

Q1:【志望動機、きっかけ】

仕事にいつも前向きな先輩の姿に惹かれて、消防士をめざすことに

 

A1:プロフィールにも書いてあるとおり、私が消防士になりたいと思ったきっかけは、高校時代の先輩でした。

ラグビー部で仲良くしていた先輩は高校を卒業し、消防士として就職。学校を卒業してからも、よく高校のグラウンドに遊びに来てくれていました。自分の車に彼女を乗せて、颯爽とグラウンドに降り立ち、彼女と仲良くボールをパスし合いながらこちらにやってくる姿を見て、「カッコいいなぁ!」と(笑)。憧れの存在でした。仕事と趣味のラグビーを両立している先輩が羨ましく、はじめは消防士の仕事内容より、平日に趣味の時間を持つことができるという点に興味を持ちました。

その後、将来進む道を決める時期になって、先輩から消防士の話を聞いたり、消防士の仕事を調べるように。過酷な現場活動があること、休みも関係なく、市民が寝ている間も働く仕事であること…。思った以上に大変な仕事だと知りましたが、いつも仕事に対して前向きな先輩の姿に、「いつか私もあんな消防士になりたい」と憧れを持つようになったんです。これが消防士をめざした一番の理由です。

 

 

Q2:【仕事内容】

「安心して暮らせる毎日」を、守っていく仕事

A2:私が勤務する消防署は、勤務日の8時30分から翌日の8時30分までの24時間を消防署で過ごします。その中で勤務時間は15時間30分で、残りは休憩・仮眠時間となります。基本的には24時間ずっと消防署内で過ごすので、入浴したり仮眠を交代で取ることになります。勤務日の一日の流れですが、まず前日に勤務していた職員との交替式を行なうところから一日がスタートします。

その後、消防車や救急車などの車両点検や現場活動で使用する資機材の点検、ミーティングなどを行ないます。出動があれば都度出動しますが、出動がなければ、年間の訓練計画に基づき火災・救急・救助の各種訓練を行ないます。

私は一時期レスキュー隊に所属していたこともあるのですが、このときは川やダム湖などの水の中に潜ることもありましたし、山に登って救助を行なったり、救助車のクレーン操作などを行なうこともありました。また事務所では事務仕事などもあります。ときには、消火訓練や救命講習会などに出向し、市民の方に対して火災予防や応急手当の啓発・指導を行なうことも。

私が仕事で心掛けているのは、体調管理ですね。いつ出動があるか分かりませんし、仮眠や食事もその日によってまちまちなので、生活が不規則になりがち。いつ出動があってもいいように、気を引き締めて生活しています。市民の方の中には、「救急車を呼ぶとご近所迷惑になるかもしれない…」と思ったり、「わざわざ救急車を呼ぶなんて迷惑かな」と思って、119番するのをためらわれる方も多いので、「そういうことは一切考えずに、辛いときはいつでも呼んでください」と言うようにしています。不安を取り除くのが、私たちの仕事なんだから、と。

 

 

Q3:【良かったこと・嫌だったこと】

人の命を守る喜び。そして、人の不幸に直面しなければならない辛さ

 

A3:一番のやり甲斐は、市民の方に感謝されること。救急出動して病院に搬送した患者さんや、火災で救出した方が元気になって戻ってきて、消防署に遊びに来てくださったり、心のこもったお手紙をくださったりすることもあります。こういうとき、「人のためになっているんだなぁ」と胸がじーんとしますね。救急車や消防車を呼んだ経験のある方は、とても少ないと思います。だからこそ、思いもよらないときに呼ばなくてはいけない場面に直面したとき、誰もが不安になるはず。そのときに不安を取り除くのが私たちの役目。救急車や消防車を呼んだことのない方でも、「家の側に消防署があると安心できる」、「いつしんどくなってもすぐに駆けつけてくれるから安心」と言ってくださる方もたくさんいます。私たちの存在が安心感につながっている。そう思ったときに、この仕事を選んで良かった、と強く感じました。

逆に辛いことは、ときに目を覆いたくなるような凄惨な現場を目の当たりにしたとき。普通に生活していたら経験しないような、火災現場や救急現場に駆けつけることも多くあります。中にはPTSDになってしまう隊員もいるほどです。人が不幸になる瞬間…助けられなかった命…。助けたくても、自分たちの力ではどうしようもできないケースもあり、自責の念に駆られることも多い仕事です。

地域に密着した活動をしていることもあって、知り合いのおじさんの最期を看取る…という胸が苦しくなるような出来事に遭遇することもあります。この仕事に就く前は、「消防士=ヒーロー」というイメージを持っていました。テレビの戦隊モノでは、ヒーローがピンチのときに現れてハッピーエンドで終わるものですよね。だけど、この仕事はハッピーエンドで終わることはほとんどない。現実はそんなに甘くないということを身をもって知りました。

 

 

Q4:【イメージとのギャップ】

仕事で身に付いた“生活力”が、家庭でも活かせました

 

A4:この仕事を始めてから、なんと“生活力”が付きました。この仕事は24時間、消防署の中で過ごすこともあって、掃除や洗濯、裁縫、料理など、さまざまな家事をこなす必要があります。

うちの職場では食事は夕飯のみ自炊しており、ほとんどの職員が料理を作ることができるので、食事のレパートリーはかなり豊富。消防署に配属になって、まず先輩から教わったのは、野菜の切り方(笑)。キャベツを千切りに、と言われたのですが、私が作ったのはおよそ千切りと呼べないほどの代物…。先輩からは「ウサギのエサか!」なんて言われる始末でした。今だから話せる笑い話ですね。でもこうやって仕事をしながら、生きていく上で大切な生活力が磨けたのはとても良かったです。私は結婚をして子どももいるのですが、奥さんとの共働きでも仕事と家事の両立ができています。仕事で培った生活力を、家庭でも活かすことができていますね。

マイナスのギャップとしては、職員の心のケアがまだまだ手薄いところ。凄惨な現場を目の当たりにして気持ちが落ち込んだり、立ち直れなくなってしまうことは日常茶飯事です。PTSDを罹ってしまう職員もいます。そんな中、「こんなことで心が折れているようじゃだめだ」という風潮があり、弱い消防士というレッテルを張られてしまうことも多いんです。そういうときに、みんなで手を取り合って、自分の素直な気持ちや考えを声に出せる雰囲気を作っていくことが大事。私の職場では現場から帰ってきたらみんなでディスカッションをして、自分の気持ちを吐き出せるよう心掛けています。辛いことを一人で抱え込まないように、声がけすることが大事だと思っているんです。徐々に改善されつつありますが、まだまだ組織立ってのメンタルフォロー、職員の変化に気づけるような体制作り、署ごとの情報交換が足りていません。これが消防署の課題であり、私が取り組んでいきたいミッションでもありますね。

 

 

Q5:【一緒に働きたい人】

「この人に命を預けてもいい」と思えるような、信頼関係が築ける人

 

A5:何においても前向きな人。社会人として当事者意識を持てる人。自分の考えで行動できる人、ですね。

消防署では毎日訓練があります。そのときに、「こんな現場なんて実際はないよね」というようにやらされ感を持って取り組むと、頭にも入ってきませんし、周りのモチベーションも下げてしまいます。それよりも、「こういう訓練をしたいです」「こんな訓練を教えてくれませんか」というように、苦手なことでも前向きに取り組んでくれる人だと嬉しいですよね。こちらも、一緒に頑張ろうという気持ちが芽生えます。実際に、私の職場にもそういう先輩や後輩がたくさんいたので、仕事が楽しかった。仕事を辞めたいと思ったこともありません。この人たちとならどんな現場でも一緒に活動できる、と思っていました。この仕事はチームワークが命。現場では仲間に命を預けることも多いので、仲間との信頼関係が何より大切なんです。あらゆる現場を想定して、想像力を持って取り組める人と一緒に働きたいですね。

私は仕事を通じて、「消防士はどうあるべきか」、「市民の方からどう見られているか」を常に考え続けてきました。はじめは不純な動機から消防士に興味を持った私でしたが(笑)、今では一人の社会人、一人の人間として成長できたと思っています