【自主レポート】自治研活動部門奨励賞

第32回北海道自治研集会
第W統合分科会 人権・平和・共生のまちづくり

ごみ収集日程変更に関わる多言語広報の取り組み


神奈川県本部/川崎市職員労働組合・清掃支部

1. 普通ごみ収集回数の変更に伴う多言語広報の取り組み

(1) 伝わらない住民に伝えなければ…
 2006年度まで川崎市の普通ごみ(一般家庭から排出される可燃性ごみ)は週4日収集で、資源物(空き缶、空き瓶、ペットボトル等)が週1日収集でした。ごみ減量をめざし、分別収集を拡大(紙類、プラスチック類)することが具体的な課題となり、同時に2007年4月1日からは普通ごみの収集が週3日へと変更されました。
 ごみ収集は生活に密接な行政分野であり、収集日が週に4日から3日になることは大きな制度の変更であり、生活にも相応の影響を生じます。行政は1年前からの広報を計画し、リーフレットの配布、ポスターの掲示、ホームページへの掲載、ラジオでの放送や、町内会役員、減量指導員(地域でのごみ減量、排出ルールの指導にあたる市民ボランティア)への説明会の開催などを通して事前の周知を行いました(行政のアンケートの結果では、高い比率で周知された結果が出ました)。
 こうした行政側の動きの一方、組合員の一人から「今回の収集回数の変更のお知らせは、全ての住民へ届いているのだろうか?」という疑問が寄せられました。廃棄物行政の当事者でもある清掃支部では、この疑問を受け止め、地域的な特徴や、外国籍住民への広報が形骸化していることもあり、市の広報がどの範囲までカバーできているかについて実情を調査してみました。その結果、オールドカマーの外国籍住民に加え、ニューカマーとしての滞日外国人が急増し、言語も多様化している現状から「広報の手法を工夫しないと伝わらない、わからない住民がいる、トラブルになりかねない。何らかの取り組みが必要である」という結論に達し、労働組合として何ができるのかについて議論がはじまりました。

(2) 広く周知だけでなく、緻密にフォローしないと
 行政による広報は様々な媒体を駆使し、広く周知することを念頭においています。しかし広く情報を提供することばかりが意識され、その網の隙間が大きくなり、緻密なフォローに欠けることがあります。また情報の取得が困難な住民に対するサービスの公平性という観点から、これまでとは違う対応が必要であるという認識に立ち、議論は広報のありかたを問うものとなりました。こうした経過を受け、組合として、@情報取得が困難なすべての住民を対象にすると焦点が定まらないため、当面、外国籍住民を対象に絞り込んで取り組む、A外国籍住民への広報といっても多くの言語が必要となるが、今回は基本的な7ヶ国語(日本語、英語、中国語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語、タガログ語)での広報活動に取り組む、B効果的に情報を伝える手段として、ごみ集積所、町内会掲示板等への多言語によるポスターの掲示などを追求してみることとし、行政との協働の取り組みとなるようにすすめようと確認しました。

(3) 在日外国人の集住地域で
 川崎市内には約16,000箇所のごみ集積所が点在していることから、全ての集積所へポスターを貼付すると、莫大な費用が必要となるため、対象地区を限定して、テストケースとして行うことを確認し、川崎市南部地域(在日韓国・朝鮮人、ニューカマーが集住している)を対象地域として決定した。




(4) 在日のふれあいの場で翻訳
 広報の効果を高め、ポスター紙面(B4)を有効利用するためにも、情報は必要最低限に絞り込み、日本語の内容も簡素化したうえで、翻訳を依頼しました。翻訳はテストケースの対象地区にある「川崎市ふれあい館」という施設に依頼しました。



作成したポスター

(5) 行政との協働への期待と課題
 環境局の庶務課、廃棄物政策担当と話し合い、具体的な取り組みについて説明しましたが、川崎市では多言語による広報物の情報について市民局外国人市民施策担当(現・市民こども局)に一元管理され、また、全局構成される庁内委員会、各局との調整、議論が必要であるとの認識から、@準備期間が少なく議論も尽くされていない、A一部地域を対象に限定した取り組みは公平性を欠き、対外的に説明できない、B一事業局の単独判断では、協力できないとの見解が示され、行政との協働は実現しませんでした。
 行政側の言うように、準備期間の少なさから、多言語ポスターの作成を急いだために、行政で取り扱うことができるというレベルで質、量が確保されなかったことは事実です。また、予算的な裏づけがない中での困難性は理解できます。しかし、これまでの施策でも、一部地域を対象にしたモデルケースとして試行をすすめた実績もあり、多言語情報の一元管理をする所管担当者も「各局での積極的な取り組みをお願いしたい」と表明していました。こうした経過から考えると、多言語による広報の必要性が理解されても、「対外的に言い訳のできるもの」として用意されなければ、事態が好転しないことが明らかになりました。
 一方で、ごみ集積所等へのポスター貼付については「組合として自主的に行うのであれば制限するものではない」という考えを引き出したことから、行政を批判するよりも前向きに何ができるかを重要視すべきという判断から、労働組合として自主的に取り組んでいくことを確認しました。

(6) 地域住民の助言に勇気づけられて
 ごみ集積所は、「住民管理」される場所であり、行政への問い合わせ(苦情)も想定されることから、勝手にポスターを貼付することは避けなければなりません。ごみ集積所の管理者である住民に対して説明を行う必要もありますが、個別訪問は現実的には不可能であることから、町内会に事前に説明し了解を得ることにしました。
 町内会に説明するにしても、いきなり押しかけるわけにもいきません。対象エリアを良く知る地元市議会議員に相談し、@個人情報保護に関わるので、町内会役員への個別の接触は避け、A区役所職員(組合員)の協力を得て、各町内会の役員が集まる席への同席アポイントを取り、B取り組みの趣旨を説明し、実物のポスター10枚を事前に配布、C対象の全町内会から了承を得る、ことで、実際の貼付作業がスタートしました。
 町内会への説明では、@情報の多言語化に対するニーズが高い、A「銭湯に貼ると良いと思う」などの助言があった、B「もっとポスターが欲しいときはもらえるか」という要望も出されるなど、貼付場所の拡大ができた、C外国籍住民が多いアパート、マンションなどを熟知していることで効果的な場所への貼付が可能となったことなど想定外の反応を得ることができました。

(7) 貼付作業
 貼付作業は人手が必要となるため、組合での動員も考えましたが、より多くの人に協力してもらうことに意義があることから、対象範囲を管轄する南部生活環境事業所の組合員の協力で、減量指導員(ごみ減量や、排出ルール指導を行う市民ボランティア)との協働による貼付を実施しました。
 風雨による貼付物の散乱を防ぐため、ポスターの裏に板を設置し、針金で留めることができるように加工して貼付および配布を行いました。


(8) スローガンを生活の中で実践する
 地域による取り組みの温度差があり、実際にポスターが活用されている地区と、そうでない地区が明確に分かれてしまいました。とはいえ、対象地域からの肯定的な評価があったことも事実であり、「はじめの一歩」を踏み出すことができたことは大きな意義があったと考えられます。
 組合の機関紙に経過を掲載しただけでなく、全国紙から受けた取材では、ポスターを貼付した地域に居住する外国籍住民の方と合同でインタビューを受け、夕刊に掲載されました。これを契機にFM局の取材と放送、自治労本部の機関紙への記事掲載、連合からの問い合わせ、メールでの意見投稿など予想を超える反響があり、川崎市議会でも論議されました。けっして派手な人目をひくような取り組みではありませんが、「多文化共生」というこの時代のテーマを、単にスローガンとしてとどめてしまわない取り組みとして必要性を再認識しました。

2. 年末年始の普通ごみ収集日の変更での多言語広報

(1) 年末年始の変更に対応する
 週3日の普通ごみ収集へと変更になり、同時に、職員の勤務体制も土日週休日から日曜日固定週休+月〜土曜日の中での変動週休=週6日稼動になったことから、年末年始の収集体制について、昨年までのスケジュールを変更せざるを得ない状況が発生しました。制度変更当初の多言語広報の実績もあることから、年末年始のスケジュールの変更もごみ集積所に多言語ポスターを貼付して広報する取り組みを行うこととなりました。

(2) 行政の理解と広報の充実
 今回も行政との協働を試み、折衝しました。環境局からは前述の判断と同様の見解が示されたことから、協働での取り組みは断念しましたが、折衝では「必要性は認識している」との見解が示され、南部生活環境事業所の協力を得ることは了承されました。また、ホームページや地元FM局での多言語ラジオ放送など、これまで以上の多言語広報を環境局が行うという前向きな姿勢も示されました。

(3) 対象地域
 前回の取り組みと同様の地域、同様の手法で行うことを確認しましたが、事前の電話連絡で町内会は、「わざわざ出向かなくても良い」と好意的な対応を示してくれたこともあり、町内会への説明は行いませんでした。
 今回は、行政も前回の実績を評価したこともあり南部生活環境事業所の協力を得ることが可能となりました。しかし、組合員への事前説明が不足したため、住民から直接生活環境事業所に問い合わせがあった際に、取り組みの説明を受けていない職員が対応したことから、混乱を招いてしまったことが反省材料となりました。

(4) 新しい気づきや課題
 行政の協力を得られる条件の一つとして、翻訳を依頼する事業所が指定されました。私たちの取り組みの対象地域にある「ふれあい館」に翻訳を依頼する取り組みも継続したい思いもありましたが、「川崎市国際交流センター」への依頼を条件とされました。交流センターでの担当者との打ち合わせでは、前回の取り組みの経過や報告を行い、センター側からアドバイスを受けましたが、新たな気づきや課題もみつかり、収穫となりました。
 翻訳担当者とポスター内容について相談する中で、12月の末が「年末年始」という考え方は、日本の文化としては理解できる(中国、韓国では通用する)が、多文化という観点で見た場合、他の国では存在しない考え方、文化であるということに改めて気づかされました。



作成した年末・年始用の多言語ポスター(地域ごとに日程が違うため2種類を作成)

(5) 貼付作業
 今回は南部生活環境事業所の協力を得ながら、行政側で作成したポスター(日本語のみ)と同時に集積所への貼り出しが可能となったため、協力をお願いしました。しかし「年末・年始のごみ量が増加する中での貼付作業は困難」という現実もあり、推進担当(町内会への連絡調整、広報・指導業務、不法投棄、ふれあい収集などを担当する組合員)のみで対応するという方法がとられ、実質的には3人での貼付作業となったことから、全ての集積所へ貼付することができませんでした。
 推進担当は市内5ヶ所の生活環境事業所にそれぞれ配置されていることから、推進担当の横のつながりをいかし、他の事業所管轄エリアの数箇所で活用されました。

(6) より有効な貼付をめざして
 組合内部での情報伝達や、詳細までの調整が不十分だったこともあり、満足のいく結果にはなりませんでしたが、今回の反省から今後の取り組みでは、@対象地区を全市域とし、貼付箇所について各地区での集住状況を把握する団体と連携しながら絞り込みを行う、A貼付作業は短期間で人員を動員して行い、やったところ、やらないところの差をなくす、B町内会、貼付作業者への連絡、説明、調整ができる担当者を養成する、C事前にスケジュール、貼付方法をマニュアル化する、などを検討することにしました。

(7) 年末年始の総括から、行政としても姿勢明確に
 年末年始はごみの排出量が増大することから、環境局では、作業計画、安全衛生、広報、連絡調整等について、12月初旬から対策会議を設置し、翌年の1月中旬までを対策期間としながら2月には作業総括を出しています。
 その中で広報についても計画・総括しており、総括に対する申し入れへの回答では、多言語広報の必要性は共通認識し、取り組みの実績もあることから、「年末年始につきましては、より効果的な広報を行うために、外国人向けポスターを作成し、町内会等の掲示板への掲出やごみ集積所に貼付するなど対応を図ってまいりたいと考えております」という内容が明記されました。

(8) 今後の取り組み
 環境局からは前向きに取り組む考え方が示されましたが、予算の確保がされていないことから、内容、手法、規模、対象等について事前に情報の提示と協議を求め、@取り組みを形骸化させない、A継続的な取り組みとさせる、ことに向け、労働組合が関わりを持ちながら継続した取り組みとし、新たな情報周知の手法を模索し、すすめていきます。

3. 自治研としての成果と課題

(1) 川崎市環境局の今回の収集日程の変更総括は、「当初は混乱があったものの、適切な排出がされている」となっています。事前の広報について、時間・予算をかけて行ったことから、約83%の市民が制度変更について理解をしていましたが、理解していなかった17%・約24万人の市民について、その内訳を分析することで効果的な広報が見えるはずですが、行政としての分析はされていません。目標値を設定した取り組みを行っている場合、達成度を重視した結果に満足することなく、達成されなかった原因、対象を詳細に分析することが重要であり、次の施策へとつながるものにすることが不可欠です。
(2) 外国籍住民との共生や、住民自治における外国籍住民の参加など、自治体における施策では常にマイノリティを意識しての政策形成と、決定した施策の周知徹底を意識すべきですが、サービスを提供する側が、サービスの受け手、対象者を絞り込んでしまうことも多々あり、マイノリティに対する施策は後回しとなる現状があります。
(3) 神奈川県における外国人登録者の国籍は166ヶ国・地域にもなっていること、また国籍別登録者数の構成が変化してきていることからも、多言語広報=7ヶ国語ということを再考する必要があります。単純に「英語標記すればほとんどの人が理解できる」という発想ではなく「母国語での情報取得が可能である」という、いかに多くの文化を取り入れて実施することができるかという観点が重要です。
(4) そのためにも、予算措置の段階から、多言語化を意識した施策に向け、予算要求がされるべきです。予算規模の縮小に逆行すると感じるのか、ばらまき広報を見直した効果と感じるのかは、政策、施策の優先度が重要な判断基準です。現状で大々的に取り上げられる可能性は低いといわざるを得ない状況であるがゆえに、組合の自治研活動としての地道な取り組みが必要です。
(5) 特に、今回の取り組みで感じられたことは、情報に対する意識として「発信していること」=「理解されていること」という認識が固定化されていないか、という危惧です。ホームページでの情報発信が主流となっている中で、「パソコンは一家に一台あり、情報の取得が可能」「多言語化した情報を掲載しているから、情報取得は可能」という判断は、パソコンがない家庭や、ホームページのアクセシビリティの問題、情報過多によるまぎらわしさなどに目が向かない結果、情報に触れる機会を狭めている状況を生み出しています。
(6) 情報は「発信する」ものとしての性格が強いものですが、そこに「どのような方法で、より多くの対象に届けるか」という視点が不可欠であり、その中にマイノリティが含まれていることを意識することが重要です。
(7) 町内会や翻訳を依頼した団体との連絡、調整、実行を通し、協働することの可能性、楽しさ、難しさと自治研活動における連携の重要性を実感しました。わたしたち自身がそうでしたが、住民、特に町内会は否定的な意見もあるのではないかという先入観が存在したことは事実です。今回の取り組みでは、幸いなことに快く賛同してくれましたが、日頃からの関係性が希薄であることから、悲観的な先入観が先行してしまうことに気づかされました。
(8) 期待以上に住民自治の意識は高まっているように感じました。地域性や年齢層によって偏りがあることは当然ですが、生活していくうえでの問題点の認識、解決策、機動力は住民自身が持っていることを認識させられました。「住民自治」と「行政の施策」が「協働」という形態をとりながら、どのように展開されるのか、将来への可能性に期待が広がりました。
(9) 逆に、新興住宅地や再開発地域における広報には、当初は住民自治が機能しないことも想定され、町内会だけにとらわれない、様々なコミュニティーとの協働が効果をあげるものとして期待されますし、行政がいかにコーディネートするかが重要であることも強く感じるものとなりました。
(10) 広報という側面から取り組みを行いましたが、「だれが」「どこに」「どのように」を考えることは、「まちづくり」「協働」というキーワードと密接に関係することを実感しました。
(11) さらに、対象を「障がい者」「子ども」「高齢者」などへ拡大した時、それぞれにあった手法が検討される必要があります。より多岐にわたる取り組みが可能となる反面、一元的な広報による効果を高める必要性もあり、折衷できる視点や手法についても調査・研究の必要性があると感じました。

4. おわりに

 今回、「対象」を絞りこんだ取り組みとならざるをえなかったのは、企画段階での時間の短さが原因であることは明らかですが、「思い立ったら行動してみよう」という「思い切り」も必要と感じました。行政との協働が不調に終わった段階から、長期的・継続的な取り組みを構想し、実績を積み上げ、誤解を恐れずにいえば「既成事実化する」ことで、影響力を発揮することができました。地道で、今後の確約のない中での取り組みは継続するにも体力が必要です。目的意識を明らかにし、どのように結果を出すかのコーディネートも必要です。もちろん自分たちが描いた絵に近づかないこともありますが、軌道修正しながら、実感できる形を残すことによって、組合員への影響、反響も得られ、結果として自分たちの業務内容やスキルアップにつながることが実感できれば、自治研活動の幅も、より広がりを持つことができるはずです。今後は、その「可能性」を継続的に、かつどのように実行していくかが問われています。より広い視点と実践に結びつくアイデア、行動力が必要であることからも、若い世代の組合員が自治研活動に魅力を感じることができるよう、取り組んでいきたいと思います。