【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第7分科会 貧困社会における自治体の役割とは

 小泉構造改革は、保護者の失業等の経済的理由により中途退学を余儀なくされる高校生を生み出しました。阪神・淡路大震災以来の景気低迷で全国のどの地域よりも厳しい実態があった神戸の私学高校生をはげますため、神戸市職労は組合員にコーヒー1杯分を我慢してカンパしようと呼びかけ、神戸新聞厚生事業団、神戸市社会福祉協議会と協力しながら、毎年30〜60人の私学高校生に奨学金を贈っています。



ひまわり奨学金


兵庫県本部/神戸市職員労働組合 宮田英一郎

1. はじめに

 2001年、小泉政権による構造改革路線の下、失業率は史上最悪を更新し、その影響は医療・福祉・教育など国民生活のあらゆる分野にわたりました。当時の新聞報道やあしなが育英会の調査によって、高校奨学生の保護者の自死遺児採用数は年々増加し、また、保護者の失業等の経済的理由により、学費の滞納が増加し、場合によっては中途退学も余儀なくされている状況が明らかになっていました。さらに、就学より日々の生活が優先と、修学旅行を取りやめ、その旅行積立金を取り崩し、生活費に充当している事例も生まれてきていました。私学高校の初年度学費等諸費の平均が約80万円にのぼり、公立高校のそれと比較すると約7倍の格差が生じており、さらに神戸の場合は、阪神・淡路大震災以来の景気低迷もあり、全国のどの地域よりも厳しい実態がありました。
 こうしたなか神戸市職労は、高校生の「勉強したい」という当たり前の願いを支援することで、市民と共感できる労働組合運動をめざし、2001年12月12日に開催した第52回定期大会において、就学困難にある私学高校生への援助の実施を決議し、組合員のみなさんにコーヒー1杯分(約500円)を目標にカンパを訴えました。こうして始まった『ひまわり奨学金』は、2012年で11年を数えるまでになりました。


年度別の応募者数と受給者数の推移
年 度
応募者数
受給者数
カンパ額
(市職労預託分)
2002年
16校 73人
16校49人
300万円
2003年
18校118人
18校61人
300万円
2004年
18校121人
15校61人
300万円
2005年
20校120人
17校38人
200万円
2006年
20校105人
17校40人
200万円
2007年
18校 92人
15校30人
200万円
2008年
18校125人
18校32人
200万円
2009年
17校116人
17校43人
200万円
2010年
21校113人
13校46人
200万円
2011年
21校120人
17校50人
200万円
2012年
21校102人
21校50人
200万円
計 2,500万円

2. 神戸新聞厚生事業団へ運営を委託

 神戸市職労は、カンパと本部会計からの繰り入れを含めた300万円を神戸新聞厚生事業団に寄託し、就学困難な私学高校生への援助制度を創設していただくようお願いしました。すでに神戸新聞厚生事業団は、阪神・淡路大震災で保護者を失った高校生を対象にした「くすのき基金」という奨学金制度を運営していました。同事業団は、私学高校生への援助も検討していましたが、不況と低金利の中で財政的に厳しく、新たな支援は難しい状況でした。そうしたなか、「神戸の子どもが困難にあえいでいる時に、そのまま放置していいのか」と立ち上がった神戸市職労の姿に、快く協力してくれることになりました。同事業団へは、@この資金については3年間に渡り300万円を市職労が責任をもって提供すること、A受給者に見返りや義務を課すことなく、市職労はあくまでサポーターとしての役割に徹するつもりであること、B運営、決定については同事業団に一任すること、を伝え、これらを踏まえ2002年3月に「ひまわり奨学金」が創設され、2002年4月から募集を開始しました。

3. 予定の倍の給付を決定

 「ひまわり奨学金」に対する反響は予想以上に大きく、25人の募集に対し74人の申請がありました。厚生事業団の飯尾理事長(当時)は、次のように語っています。「書類選考では、一つ一つ読んで検討し、細部は問い合わせをしましたが、これではとても切れるもんじゃないと思いました。そこで事業団もがんばろうじゃないか、ということになり、予定の倍の49人に給付を決定したわけです」。不足の資金288万円は神戸新聞厚生事業団が独自に用意しました。また、私学の先生方の組合である「兵庫県私学教職員組合連合」の和田書記長(当時)は「育英会などの公的な援助が縮小傾向にある中で、親のリストラなどの事態の急変に対応した制度をつくってもらったことはありがたい。現場の先生も感謝している」と評価しています。

4. 神戸新聞への意見広告の給付を決定

 厳しい不況のもと、この奨学金のことが知られるようになり、2年目を迎えたひまわり奨学金には、父母や学校関係者からは大きな期待が寄せられました。神戸市職労は神戸経済が冷え込む中、親のリストラや倒産という経済的な理由から学校を辞めざるを得ない私学高校生の実態をより多くの人に知ってもらい、私学高校生の勉学を支える運動を広めようと、組合員のみなさんに一口1,000円のカンパをお願いしました。
 このカンパの目的は、@ひまわり奨学金の資金として活用する、A私学高校生の問題を知ってもらい、より多くの市民の方に協力を得るため神戸新聞に意見広告を出す、Bひまわり奨学金の啓発ポスターをつくり、カンパをしてくれた方のお名前を掲載する。という三点でした。各支部の積極的な取り組みもあり、職制を含め多くの方が協力してくださいました。最終的には2,000人を超える方々の協力で260万円が集約され、本部会計からの繰り入れも含め、初年度と同様に300万円を神戸新聞厚生事業団に預託しました。この年、ひまわり奨学金を申し込んだ私学高校生は昨年の73人から大幅に増え118人にもなりました。


神戸新聞に掲載した意見広告(2003年3月22日)

5. 申込書には高校生たちの切実な声が

 ひまわり奨学金の申込書には高校生本人が書いた切実な受給希望理由がびっしりと記載されています。

◇父親が突然のリストラで退職、仕事を探していますが見つからずに無職。中学生の弟もいるので、このままでは高校に通い続けることが難しい状況です。
◇父親が脳障害を患い、昨年、経営していた会社が倒産しました。両親とも収入がなく、私も手伝っていた仕事がなくなり、中学の妹もいるので私は高校をやめなければならないかもしれません。
◇両親が離婚し、母子家庭です。母親は乳がんを手術、働くことができず、このままでは高校生活を続けることができません。何とか卒業したいです。
◇父親が交通事故で死亡し、「ひまわり奨学金」と聞き、申し込みました。

 運営する神戸新聞厚生事業団は、年々厳しくなっている状況を次のように述べています。「深刻さは深まるばかりで、景気回復の動きは浸透していないと感じます。申請者の半数は母子家庭で、親戚や祖父母と同居している世帯も目立ちます。特に母子家庭からの申請が増加傾向にあり、外国籍の方からの申請も増えてきました。数年来、年収100万円を切る世帯からの申請が増加し、受給世帯の平均年収が60〜70万円といった水準にあります。また、これまでは申請の無かった有名私立高校からの申し込みが届くなど、低所得者層の広がりがうかがわれます。」

6. 神戸新聞厚生事業団から表彰

 2009年12月13日、神戸新聞厚生事業団より神戸市職労に対して、感謝状が授与されました。表彰式は、神戸新聞厚生事業団、神戸新聞社の主催で行われた歳末チャリティーバザー「なべの会」のステージプログラムの冒頭に行われました。この感謝状は、神戸新聞創刊110周年を記念して、特に神戸新聞厚生事業団の活動に功績のあった団体や個人に贈られたものです。神戸市職労の「ひまわり奨学金」をはじめとする社会貢献活動が大きく評価されました。
 2年目からは神戸市社会福祉協議会の支援も受け運営を続けてきました。神戸市職労はこれからの神戸を担う若者たちの「学びたい」「充実した高校生活を送りたい」という願いに応えるため引き続き支援を続けます。


今年度の募集記事
今年度の受給生決定記事



* 2011年からひまわり援助金はひまわり奨学金に名称変更している