【自主レポート】

第33回愛知自治研集会
第2分科会 「新しい公共」を再構築する

 近年、協働のまちづくりとして町民と行政が一体となり活動する事業などが増えてきています。しかし行政としてではなく、役場職員組合として町民に交わり活動できているのか、またどのように関わっていったら良いのか改めて考える必要があります。本レポートでは羅臼町のこれまでの活動紹介と、現在の取り組みを通して今後への想いを提言します。



『イベント』を通した協働のまちづくり


北海道本部/羅臼町職員組合 浅野芽久美

1. はじめに

 近年、協働のまちづくりとして各自治体で多くの事業に町民参加が見受けられるようになりました。
 また、行政側も積極的に町民と関わり合い、事業参加に取り組むことが求められています。
 しかし、協働のまちづくりとして互いが同じ目線で同じ責任感を持ち、協力して働くということは簡単なことではありません。一方が主体となり一方が手伝いとなりがちな「協働」を、交流を深めながら同じ意識を持ち、同じ目線に立てるよう長く取り組んでいく必要があります。
 また、行政の枠をこえ役場職員組合としての活動はどうであったかを考えると、羅臼町職については町民に対しての認知度がそもそも低く、商工青年部や漁協女性部のような馴染み感が乏しいのが現状です。
 職員として協働のまちづくりに取り組みながらも、組合員として更に積極的に町民に関わっていくというのは非常に難しいことです。難しくはあるけれどもそれを「別」とは考えず、両方の立場を上手く利用して町民に自分たちのことを知ってもらう工夫をすれば、公務員バッシングや行政と町民の間にある溝を埋めていく手段になるはずです。
 まずはこれまでどんな活動をしているか、現在どんなことに取り組んでいるのかを紹介し、今後への期待を含めた想いを提言します。

2. これまでの取り組み

(1) 産業振興に係る活動
① 知床スミレ・エコプロジェクト
  知床スミレ・エコプロジェクトは、2007年に羅臼町女性団体連絡協議会、羅臼漁業協同組合女性部、羅臼町商工会女性部の3団体が環境問題に取り組むために立ち上げたプロジェクトで、マイバッグ運動や廃油を使用した石鹸作りなど、環境に関する事業を展開しています。昨年秋には事業の一環として町有施設で第1回秋祭りを開催しました。
  当初は羅臼漁業協同組合女性部が水産資源を活用した、『ごっこ市』を開催するため町が利用者数の減少している町有施設の有効活用のため敷地を提供する予定でしたが、どうせ実施するのであれば、知床スミレ・エコプロジェクトの主催でちょっとしたイベントがある小さなお祭りをとなり、羅臼町女性団体連絡協議会ではエコラップや水切りネットを販売、羅臼町商工会女性部では地元食材を活用した食事の提供などを担当し実施しました。
  また、地元の子ども達による手踊りやヨサコイ、町が有効活用のために実施する足湯の設置期間とも重なり盛会のうちに終了しました。

『ごっこ市』
『ヨサコイ』
『手踊り』
『足 湯』

(2) 地域医療を守る活動
① 地域医療フォーラムの開催
  昨年11月には、地域医療を守るために活動を行っている住民団体と行政により組織された実行委員会により、岩手県藤沢町民病院院長 佐藤元美先生を講師に迎え「地域医療フォーラム」を開催しました。この医療フォーラムのなかでは、佐藤先生の「地域で考えたこと、実践したこと」と題しての基調講演に引き続き、「地域医療を守り育てるために」をテーマにパネルディスカッションを行い、地域医療の現状や悩みなどを聞くことができました。そのことにより、当診療所と町民が何をやらなければならないかを認識することができ、大変実りのある事業となりました。
  また、この他にも町内会女性部や団体等の呼びかけによる当診療所所長の出前講座なども開催し、医師と町民の相互理解を深め、町民と行政が一体となり地域医療を守っていくために取り組んできているところです。

② 119通報マニュアルの作成
  羅臼町女性団体連絡協議会が、看護師、消防署救急隊職員の協力のもとで 救急車の適正利用を促すための119通報マニュアルを作成し、全戸配布をしました。このことにより、軽度の症状での救急車の利用抑制や、診療所のコンビニ受診等が減少傾向となっています。職員だけでこのようなマニュアルを作成して配布をしたとしても、住民に対して角が立ってしまいがちですが、今回の様に住民団体が主体となり働きかけることで、より一層住民に対する影響力が増していると思われます。

3. これからの取り組み

(1) 『イベント』復活への道
① 自治研レポートの作成に向けて
  冒頭に記載したとおり職員が地元へ溶け込むとか協働のまちづくりなど、数年前より叫ばれていますが、町内会や各サークル活動などで自治体職員である個人としては、一定程度の関わりを持つ事はできていました。
  しかし、自治研活動を進める上で、職員労働組合としてどのように関わりがあったのか、またどのようなものが挙げられるのか、誰も即答できる人はいませんでした。
  今回の自治研レポートを作成する上で、来年こそは自信を持って提出できるものを作り上げようと執行委員会で確認し、今回の提出は自治研的な活動を取り上げようとなりました。
② 職員として
  時を同じくして、利用者が減少している町有施設である農林漁業体験実習館の有効活用のため、どのような手立てがあるのか等を関係課職員間で検討しており、先にも紹介した知床スミレ・エコプロジェクト主催の秋祭り会場の場の提供など、少しずつ利活用の推進に向け動き出していました。
  しかし、施設裏に広がる緑地広場の利用については、まだ手がついていない状態でした。緑地広場は毎年数回の草刈りが行われていますが遊具も無く、農林漁業体験実習館に集客の魅力が無いため一切利用されていない区域となっています。
  施設を管理する担当課では、どのような方法があるのかを考えていたところ、一昔前に町内有志が行っていた『ワイルドだべinらうす』を思い出したのでした。
③ 10年前のイベント
  『ワイルドだべinらうす』は、毎年8月19日(バイクの日)に羅臼を訪れ、農林漁業体験実習館周辺の野営場に泊まる観光客を対象に、地元の若い有志達が資金も人力も自賄いで行っていた1日間限りのイベントです。
  大勢の観光客が訪れるその時期には羅臼での大きなイベントも無いため、羅臼で楽しんでもらいたい、地元にお金を落として欲しい、行政の力を頼らず自分たちの力で盛り上げたい、との思いから1999年から5年間実施されました。
  イベント内容も通常のお祭り内容では無く、バイク100台による交通安全パレードやおらがバイク自慢や世界一長い鉄板でのチャンチャン焼き、バンド演奏、大人の大運動会、一発だけの花火大会など一味違ったイベントが開催されていました。
  しかし、一人当たりに占める資金と労力が負担となり、2003年を最後に開催が途絶えることとなりました。

④ 『イベント』を目指した組織づくり
  当時の事業に携わっていた人物に話を聞いてみたところ、前述のとおり一人当たりの労力や運営費等の金銭面での問題があり、継続できなくなったという話を聞きましたが、現在、地元青年層にも同じような事業を開催したいと強く思っている人物が現れてきたとの情報も得ることができました。その人物が所属する団体では力不足であるためできない状態で悶々としているとのことでした。
 そこで青年団体に関わる教育委員会職員に相談したところ、核となる組織をつくり、その後、広報により有志を募って実施してはどうかというアドバイスを受けました。
 そのアドバイスを受け、まずは青年達の中で『何かをやりたい!!』と声を上げている若者を含め、我々職員組合の組合員とで会合を開くこととなり、その中で今後の『イベント』活動を行う実行委員の立ち上げまでの行程を話し合いました。
 その会合の中においても、数々の不安や問題点が挙げられ、目指すところは厳しいものであることを認識した上で、目標実現に向けての意思を改めて固めることができました。

4. まとめ

 冒頭でも述べたように、これまで行われてきた活動は、行政若しくは町民のうち片方が主体となり、もう片方がバックアップをするという形が多く、行政と町民が同じレベルで主体となり活動しているとは言い難いものでした。
 そこで、今回取り組んだのが上記の活動です。同じ『イベント』というものを通して、行政職員と町民との交流を図り、『役場職員』と『町民』との関係ではなく、同じ仲間という意識のもとそれぞれの思いや、これまで話すことのできなかったことなどについても、気兼ねなく話し合える場となりえることを望んでいます。
 そうなることにより、行政と町民の相互理解の促進となり、公務員批判の抑制や公務員に対する誤解の解消につなげていけるのではないでしょうか?
 今年はその第一歩として、今後の活動につなげていくための組織作りに重点を置き、来年にはその組織による活動を開始し、それを2年後、3年後へと継続していくことができればと考えています。