【自主レポート】

第33回愛知自治研集会
第3分科会 わがまちの財政から、地方財政改革を展望する

大分市の財政分析


大分県本部/大分市職員労働組合

1. はじめに

 大分市は、2005年1月1日に旧佐賀関町及び旧野津原町と合併し、5年が経過しています。財政面において合併における大きな影響は特にありませんが、全国的な情勢に目をむけると現在の景気・雇用情勢は依然として厳しく、先行き不透明な社会経済状況の中で、今後本市においても市税、地方交付税ともに推計どおりの確保が出来るかどうか懸念され、財政収支の見通しについては、依然として楽観視できない状況にあるといえます。
 また、夕張市の財政破綻を機に議論が進み、2007年6月に財政健全化法が公布され、今後は、より一層の財政面での透明性、説明責任が求められています。
 今回、本市における2008年度決算における財政状況について、財政健全化法の4つの指標をはじめ様々な面から検証していきます。

2. 財政健全化法に基づく4指標

(1) 財政健全化法
 財政健全化法につきましては、夕張市の財政破綻を機に議論が進み、2007年6月に国会で可決成立し、6月22日に公布されました。これにより2007年度決算より一部施行となり、4つの指標を公表しております。
 4つの指標のうち1つでも早期健全化基準以上(イエローカード)になった場合、財政健全化計画を策定する必要があります。その計画は議決と、県知事への報告が必要であり、また取り組み状況を市民に公表しなければなりません。
 また、財政状況がさらに悪化して、3つの指標のうち1つでも財政再生基準以上(レッドカード)となった場合は、財政再生計画を健全化計画と同様に策定・議決・公表し、総務大臣に報告する必要があります。

(2) 財政健全化4指標
① 実質赤字比率
  実質赤字比率とは、標準財政規模に対する、一般会計等の歳入総額から歳出総額を差し引いた赤字額の比率。
 (検証)
  実質赤字額がないため当該比率はなく、国の示す基準では財政の健全段階の範囲にあるといえます。
② 連結実質赤字比率
  連結実質赤字比率とは、水道会計等を含めた全会計を対象とした実質赤字額の標準財政規模に対する比率。
 (検証)
  実質赤字額がないため当該比率はなく、国の示す基準では財政の健全段階の範囲にあるといえます。
③ 実質公債費比率
  2006年度より、地方債許可制度が協議制度に移行したことに伴ない導入された財政指標であり、従来の起債制限比率に反映していなかった公営企業等の公債費への繰出金や債務負担行為に基づく支出のうち公債費に準ずるもの等、公債費類似経費を算入しています。
 (検証)
  当該比率は12.0%で、前年度と同率となっており、早期健全化基準(25%)を下回り、国の示す基準では財政の健全段階の範囲にあるといえます。
  また、人口規模が40万人台の中核市12市のうちでは7番目、中核市39市では20番目の位置となっています。
④ 将来負担比率
  将来負担比率とは、一般会計等が将来負担すべき実質的な負債(将来負担額)の標準財政規模に対する比率
 (検証)
  当該比率は133.9%で、前年度(145.1%)より11.2ポイント向上しており、早期健全化基準(350%)を下回り、国の示す基準では財政の健全段階の範囲にあるといえます。
  また、中核市39市では28番目の位置となっています。

3. その他の指数

(1) 財政力指数
 財政力指数とは、地方公共団体の財政基盤の強弱を示す指数で、標準的な行政活動に必要な財源をどれくらい自力で調達できるかを表します。基準財政収入額を基準財政需要額で除した数値で、通常過去3ヵ年の平均値を指し、この数値が1に近くあるいは1を超えるほど財源に余裕があるものとされています。この単年度数値が1以上の団体には普通交付税が交付されません。
 (検証)
  財政力指数の推移をみると、2004年度以降は上昇傾向にあり、2008年度においては、0.940となっております。これは、福祉関係をはじめとする行政サービスに係る経費は増加しているものの、三位一体改革に伴なう税源移譲等により基準財政収入額が増加していることによるものです。
 また、中核市のうち人口規模が大分市と同程度の40万人台の12市で比較すると3番目、中核市39市では第10番目の位置となっています。

(2) 義務的経費の状況
 経常的に支出される経費で、人件費、扶助費、公債費がこれにあたります。
 (検証)
  義務的経費については、年々増加傾向にあります。
 (内訳)
① 人件費
  人件費は、2000年度以降、各種手当の見直しや人員の削減など行政改革への取り組みにより減少していましたが、2005年度は合併による職員増により21億円の増、2006年度は定年退職者及び早期勧奨退職者の増により約23億円増加しています。2008年度は約4億円減少しています。
② 扶助費
  扶助費は、生活保護費や児童手当、障がい者自立支援費等社会保障制度の一環として支出される経費で、2002年度以降年々増加傾向にあります。
③ 公債費
  公債費は、市が借り入れをした借金(市債)の償還金で、近年の経済対策等により多額の市債の借り入れを行ってきたため増加傾向にあり、市の財政運営上の負担が大きくなってきています。
  なお、2004年度は減税補てん債の借換債が約74億円あったことなどから大きく伸びています。2008年度は公的資金補償金免除繰上償還等により約3億円増加しています。

(3) 経常収支比率
 経常収支比率は、自主的・主体的に使える市税や普通交付税などの財源を、人件費や扶助費、公債費など経常的に支出する義務的経費にどれくらい充てているかを示す指標です。財政の健全性を表し、都市にあっては70%から80%にあるのが望ましく、80%を超えると投資的経費に充てる財源が少なくなり財政構造の弾力性が失われつつあるといわれています。
 (検証)
  1996年度以降、80%を超えて推移していたが、2006年度以降は90%を超え、2008年度においては94.1%。また、人口規模が40万人台の中核市12市のうちでは8番目、中核市39市では28番目の位置となっています。

4. まとめ

 本市の財政状況につきまして、財政健全化法における4指標についても軒並み基準内の数値にて推移しており、健全な自治体といえます。しかし、基準値とはあくまで財政破綻を未然に防ぐための数値であり、基準内であっても将来負担比率において昨年数値より向上はあるものの今後に不安を残すものもあります。また、財政構造の弾力性を示す経常収支比率が94.1%に上昇するなど財政の硬直化が一層進んでいるといえます。
 私たち自治体職員としては、自治体の財政状況は避けて通れない問題だと考えられます。今後、当局からの賃金抑制や人員削減による「総人件費抑制」が提案されることも予想されますし、私たちから当局に対し、勤務労働条件の向上を訴えていくこともあります。日常から財政状況について学習・分析を行い、理論武装したうえで、そういった各種交渉を行っていく必要があると考えます。