【自主レポート】

第33回愛知自治研集会
第3分科会 わがまちの財政から、地方財政改革を展望する

宇佐市における集中改革プランの内容と財政収支試算


大分県本部/宇佐市職員労働組合・自治研推進委員会

1. はじめに

 行財政改革プランの4年目にあたる、2008年度(H20年度)について検証を行いました。財政環境としては道路特定財源の一般財源化の影響により、地方譲与税等が縮減され厳しい財政状況下でありました。改革プランに対しての成果がどうあらわれているか注目して見ていきたいと思います。

2. 歳入歳出の収支状況

 2008年度決算額は
     歳入:26,606,518千円………(A)
     歳出:25,483,785千円………(B)
 (A)―(B)の差額いわゆる形式収支は1,122,733千円で、実質収支は1,029,068千円、単年度収支は106,855千円といずれも黒字となっています。

※形式収支 ……… 歳入総額-歳出総額
          26,606,518-25,483,785=1,122,733千円
※実質収支 ……… 形式収支-翌年度へ繰り越すべき財源
          1,122,733 -   93,665=1,029,068千円
※単年度収支 …… 当該年度実質収支-前年度実質収支
          1,029,068 - 922,213 = 106,855千円

3. 財政収支試算と決算との比較(2008年度)

 プラン策定時に行革を行った場合の財政収支試算と決算の比較がどのように表れているかを比較してみます。 ※08 :2008年度
※+△ :対前年度比
(単位:千円)
歳 入
08 改 革 試 算
(前年度金額)
地方税
5,852,313
(5,711,556)

地方交付税

7,945,844
(8,208,517)
国庫支出金
2,901,023
(2,913,821)
県支出金
1,579,351
(1,593,698)
地方債
1,563,100
(1,588,000)
その他
3,571,769
(3,571,769)
合 計
23,413,400
(23,587,361)
08 決 算 額
(前年度金額)
決 算 内 容
6,115,222
(5,949,234)
市民税+4.1%、固定資産税+2.5% 全体では+2.8%
9,135,540
(8,998,699)
普通交付税に特別枠として地方再生対策費等が創設、特別交付税も燃油・飼料高騰対策等で増額されたことにより、対前年度比+1.5%
2,716,607
(2,604,718)
地域活性化・生活対策臨時交付金の増などにより対前年度比+4.3%
3,560,977
(2,016,437)
地域バイオマス利活用事業費補助金などの増により対前年度比+76.6%
1,937,052
(2,362,630)
退職手当債や学校給食センター建設事業債の減などで、対前年度比△0.9%
3,141,120
(4,048,136)
財産収入が△72%、土地開発基金繰入金など繰入金が△91.7%と大幅に減少したことにより、全体では△22.4%
26,606,518
(25,979,854)
+2.4%

 歳入全体では、普通建設事業の増加や追加経済対策による臨時交付金、国体開催補助金などの要因により国庫支出金、県支出金が増加したことに加えて、地方税・地方交付税が増加したことにより、対前年度比+2.4%、626,664千円増となっている。

歳 出
08 改 革 試 算
(前年度金額)
義務的経費
14,552,254
(14,901,224)
 
 
 
人件費
6,355,517
(6,670,260)
扶助費
4,530,634
(4,442,888)
公債費
3,666,103
(3,788,076)
投資的経費
1,730,528
(1,929,201)
その他経費
7,921,649
(7,903,122)
 
 
 
 
物件費
3,317,880
(3,280,633)
補助費等
1,143,634
(1,179,724)
繰出金
3,246,583
(3,229,213)
その他
213,552
(213,522)
歳出合計
24,204,431
(24,733,547)
形式収支
(歳入-歳出)
△791,031
(△1,146,186)
08 決 算 額
(前年度金額)
決 算 内 容
14,636,949
(14,943,203)
△2.0%
6,419,479
(6,801,554)
特別職、職員給与の削減により△5.6%
4,498,662
(4,344,207)
障害者自立支援法の改正による支援費、保育所委託料の増などで+3.6%
3,718,808
(3,797,442)
元金償還金、利子償還金ともに減で全体では△2.0%
3,729,952
(2,251,288)
普通建設事業費+94.8%、災害復旧費△86.4%、全体では+65.7%
7,116,884
(7,848,566)
△9.3%
2,282,613
(2,411,248)
特定検診制度改正による健康検査委託等の減により、対前年度比△5.3%
1,184,851
(1,752,603)
土地開発公社損失補填や市税前納報奨金の減により、対前年度比△32.4%
2,902,132
(2,769,755)
後期高齢者医療広域連合等繰出金の増により、対前年度比+4.8%
747,288
(914,960)
貸付金の減、積立金等の増により全体では△18.3%
25,483,785
(25,042,957)
+1.8%
1,122,733
(936,897)
 
 歳出全体では、教育環境施設設備、国体関連事業等の普通建設事業や扶助費が増加したことにより、対前年度比+1.8%、440,828千円増となっている。

(歳入-歳出)は
      2008年度改革試算では      △791,031千円
      2008年度再調整額では       △57,543千円
 以上のように、2008年度改革試算と2008年度再調整額を比べて733,488千円の改革・改善効果があったことになります。要因としては、市税・交付税が改革試算を上回ったこととなっています。

4. 財政指数

 次に、財政構造の根幹をなす主な指標について、2008年度と2007年度決算で比較してみます。

(1) 経常収支比率………経常経費充当一般財源/経常一般財源
     (一般的に70~80%が健全財政状況)
 2008年度  94.0%  2007年度 94.8%  
 0.8%改善したものの、依然高い水準にあり財政の硬直化は否めない状況下にあります。

(2) 健全化判断比率………(08年度決算より算定)
① 実質赤字比率………(実質赤字額/標準財政規模)一般会計と飲雑水道事業会計の収支が赤字の場合、その赤字額を標準財政規模で除した比率で、会計が黒字か赤字かを判断する指標。
 (早期健全化基準12.71%、財政再生基準20.00%)
  2008年度 実質収支が黒字のため該当なし。
  2007年度 実質収支が黒字のため該当なし。
② 連結実質赤字比率………(連結実質赤字額/標準財政規模)一般会計等だけでなく公営企業会計やその他の特別会計も含めた収支に赤字や資金不足が生じた場合、その赤字額・資金不足額を標準財政規模で除した比率で、会計を合算して黒字か赤字かを判断する指標。
 (早期健全化基準17.71%、財政再生基準40.00%)
  2008年度 全会計対象の実質収支が黒字のため該当なし。
  2007年度 全会計対象の実質収支が黒字のため該当なし。
③ 実質公債費比率………(元利償還金及び準元利償還金/標準財政規模)一般会計等で負担する元利償還金と準元利償還金の額を標準財政規模で除した比率です。収支のうち、どのくらいを地方債の借金に充てているかを示す指標で、一般事務組合等も含めて判断します。実質公債費比率は2005年度決算から算定しており、3ヶ月の平均数値を使用します。
 (早期健全化基準25.0%、財政再生基準35.0%)
  2008年度 10.8%  2007年度 11.4%
  0.6%改善し、早期健全化基準の25%を下回っているものの、引き続き注意が必要です。
④ 将来負担比率………(将来負担すべき実質的な負債額/標準財政規模)町債や債務負担、公営企業に充当される繰入金、一般会計雇用職員の退職金等、将来負担しなければならない債務を標準財政規模で除した比率。
 (早期健全化基準350.0%)
  2008年度 61.6%  2007年度 93.2%
  2007年度と比較して、31.6%改善しています。これは、地方債の現在高が繰上げ償還等の影響で減少したことや職員数減少の影響で退職手当負担見込額が減少していること等によるものです。

 以上、経常収支比率は県下市平均並みであり、健全化判断比率は全4指標とも早期健全化基準以下である。ただし、この4指標の基準は財政状況がかなり逼迫しないと上回らない基準となっており、今後も注視していく事が必要です。

5. 基 金

 次に「積立金の現在高」ですが、特に重要なのは、財政調整基金と減債基金であるので、これらについて見てみます。
財政調整基金………年度間の財源の不均衡を調整するために設けられる基金。
減債基金………地方債の償還(返済)を年度をこえて計画的に行うために設けられる基金。

(単位:千円)
 
06年度中の増減
06年度末残高
積 立 額
取 崩 額
財政調整基金
541,389
78,029
1,546,335
減債基金
5,664
39,716
542,425
その他の基金
868,224
12,095
4,305,977
合 計
1,415,287
129,840
6,394,737
07年度中の増減
07年度末残高
積 立 額
取 崩 額
402,843
 
1,949,178
1,151
64,984
478,592
450,660
27,095
4,729,542
854,654
92,079
7,157,312
 
08年度中の増減
08年度末残高
積 立 額
取 崩 額
財政調整基金
206,275
 
2,155,453
減債基金
301,628
 
780,220
その他の基金
480,788
26,243
5,184,087
合 計
988,714
26,243
8,119,760
 
財政調整基金・減債基金ともに取崩額の減により残高は増加しています。

6. 職員退職基金残高と退職予定者数

 職員退職基金と退職予定者数の推移は次の通りです
(単位:千円)
年 度
06年度積立額
06年度末残高
07年度積立額
07年度末残高
08年度積立額
08年度末残高
職員退職基金
200,788
1,323,087
269,550
1,592,637
5,203
1,597,840
(今後10年間の定年退職予定者数)
年 度
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
2019
予定者
42
20
20
27
18
12
16
13
25
18
 職員退職手当基金については毎年積み立てているものの、今後10年間に200人以上の退職予定者があるため、積み立てを積極的に行い、財源の年度間調整を行っていかなければなりません。   

7. おわりに

 「集中改革プラン」による行政改革は、国の財政政策に大きな問題があることは言うまでもありません。宇佐市においても、今後歳入面では、政権交代の影響により動向が不透明な中、税収の大幅な減少や滞納の増加など、財源確保が厳しくなることが予想されます。歳出面では東九州道関連事業や公共施設耐震補強・改修工事等の費用を考慮すると、財源不足分を基金の繰入や地方債の発行により調整を図っていくような厳しい財政状況が予想されます。
 「集中改革プラン」の5ヶ年間で、改革・改善効果の展望は、不確定なところが多いため見通しがつかず、新たな行革(合理化)を強いられることが予想されます。わたしたちは今後の動向に注視し、更なる検証を行い、真に住民の幸せに結びつく行財政の姿を求めなければいけません。