【要請レポート】

第33回愛知自治研集会
第6分科会 自治体から子育ち支援を発信する

宇城市の子育てを考える会の取り組み


熊本県本部/宇城市職員労働組合・幼保部会

1. 宇城市の子育てを考える会の立ち上げ

 宇城市の公立保育園(所)、児童館、公立幼稚園職場の組合員で宇城市職員労働組合幼保部会を構成し、地域の子育て支援の拠点として、多様なニーズに応え、次世代育成の中心的役割を果たすことで地域に必要とされることを目指し、保育の専門知識や行政知識などを定期的に学習しています。
 2006年、宇城市の公立保育園(所)、児童館、幼稚園の民営化の動きが増し、7月、8月に市議会議員(1人)、園長、基本組合の執行委員長、幼保部会役員で話し合いを行いました。その中で保護者との連携を深め、宇城市の子ども達の健全な育成のために、子育てに関する問題をともに考えていこう、また園がいざという時に保護者や地域の方に協力していただけるようにと、幼保部会と保護者で「宇城市の子育てを考える会」を立ち上げようということを決めました。
 2005年1月の合併で宇城市になったことに伴い、市立の11園の保育士と保護者が手つなぎをしよう、公立園が頑張っていることを保護者や地域にアピールできることをしようと、皆で大きなイベントをしてはどうか、ということでスタートしました。

2. 子育てを考える会の趣旨と活動

(1) 趣 旨
 宇城市の誕生に伴い、将来を担う宇城市の就学前の子どもたちの健全な育成の為、その他(子育て支援・育児の不安の解消など)様々な子育てに関する問題を皆で考え、活動する。

(2) 活 動
 2006年10月24日 実行委員会準備会議
    11月22日 第1回 実行委員会議
    12月18日 第2回 実行委員会議
 2007年1月14日 第1回子育て講演会
    1月20日 実行委員反省会
    2月27日 第3回 実行委員会議
    5月24日 実行委員会引継ぎ会
    6月26日 子育てを考える会会議
    6月   宇城市議会 傍聴
    8月9日 合同学習会
    8月21日 学習会 反省会
    9月6日 子育てを考える会会議
    9月   宇城市議会 傍聴
    10月2日 子育てを考える会会議
    10月23日 子育てを考える会会議
    11月6日 代表者会議
    11月27日 第1回事務局会議
    12月4日 子育てを考える会会議
 2008年1月23日 子育てを考える会会議
    2月25日 子育てを考える会会議
    3月2日 第2回子育て講演会
    4月22日 子育てを考える会引継ぎ会
    5月30日 合同学習会
    6月10日 宇城市議会 傍聴
    12月19日 クリスマスコンサート
 2009年2月1日 市長選挙
    4月27日 市長との懇談会

3. 子育てを考える会の活動と保護者の変化

 2006年度までは、3月いっぱいで後援会の役員が交代することに伴い、宇城市の子育てを考える会の園代表の保護者も交代になっていました。そこで「宇城市の子育てを考える会の今後の方向性」や「引継ぎの方法」などについて意見を出し合ってもらい、2007年からは保護者代表の中から会長を選出し、幼保部会が事務局という形でバックアップしていこうということになり話し合いが行われました。保護者代表の『子育てを考える会』の会長が誕生しました。年度始めは園も保護者も忙しく、5月に引き継ぎ会を行いました。続けて役員をされる方もいらっしゃいますが、新しく役員になられる保護者の方々に趣旨やこれまでの活動を説明し、協力をお願いしました。また、自己紹介や、前年度の反省及び意見を報告しました。
 宇城市の子育てを考える会には、市議会議員1人と基本組合の執行委員長、書記長にも実行委員として加わっていただいており、実行委員会議では毎回、市の動向や議会の報告などをしていただいています。
 市長の所信表明や、行政改革大網などで、公立園の民間委託推進案が出されるなど、計画が進められているという報告を受け、後援会保護者が民営化について不安や反対の意思を示され、後援会が中心になって各園、学習会やアンケート調査を実施するなど活動が活発になりました。

 6月と9月に行われた市議会における一般質問(保育行政について)の傍聴などにも広がりを見せ、多数の保護者の方々が傍聴されました。傍聴席に入らないほどの人がこられました。議会はじまって以来の傍聴者の多さに、印刷物も足りずに職員の方があわててコピーをされたり、市長をはじめ、議員のみなさんもその数にびっくりされたようです。
【保護者の感想】
*傍聴で私たちが選んだ議員さんたちの話を直接聴けてよかったです。ここで、私たちの生活や環境整備など決定されるのだと思いました。
*市長もこんな深刻な問題とは、思ってはいなかったでしょうね。民営化については反対でも賛成でもありませんが、じっくり、民営化について話し合い、よい結果になるようにしてもらいたい。
*高田議員が積極的に市長に質疑されていて共感しました。市長に「傍聴席にいる保護者に一言」と言われたときは、こみ上げるものがあり拍手しました。
*傍聴席(60~80席)がいっぱいでした。各園の保護者の方が“民営化”について心配で聴きにこられたようでした。

 『地域の方にも参加してもらいたい』という活発な意見があり、2008年3月2日(日)に、第2回宇城市の子育てを考える会講演会として、童謡コンサートが行われました。コンサート前は各園の後援会の会長さん(代表者)がステージで園の紹介をしました。またロビーには展示パネルなどが展示されました。
 考える会の会長さんの要望でフードコーナーをしてはどうかと提案され、話し合いが何回もされました。
 カレーとうどんをつくることになり、保護者の方と給食の先生、幼保部会の役員、実行委員の方と協力して前日から切り込みや会場作りなどしました。
 当日も朝早くからご飯の仕込みや煮込みに大忙しでした。駐車場係は後援会や執行部の役員さんにお手伝いしていただきました。
 童謡コンサートはたくさんの方に聴いていただきました。 

~アンケートより~抜粋
・素敵な歌声で、懐かしい歌を聴くことができました。子ども達も喜んでいました。
・童謡だけでなく、大人も楽しめることができた。
・よかった。家族のことを思い涙が流れました。
・先生や子ども達も舞台に上がる等の構成もよかったです。親子で和やかに楽しめるものを“子育てを考える会”でみんなが一つになっていければいいですね。
・コンサートが終わってすぐ帰るのではなく、食事をしながら会話してゆっくりと楽しめた。
・カレー・うどんも少し薄味ではあったが、幼児が食べることを考えるとよかった。おいしかった。
・手作りで手軽な値段で嬉しかった。
・役員の皆さんの負担が大きくなったのでは?
・パネルはどの園も工夫を凝らしてあり、子ども達への愛情が伝わりました。

~イベントを終えて~
 みんなで力を合わせて頑張ったという手応えを感ずることができたようです。

 5月30日合同学習会 午後7:00より
 子育てを考える会の役員・保護者・職員・市議会議員(1人)・基本組合の執行委員長・非常勤職員・幼保部会が集まり話し合いが行われました。アンケートで、市長をまじえて考えを聞きたい。市政の全体的な動きを知りたい。民営化になった時のデメリットを具体的に知りたい。市議の人の話を聞きたい。保護者向けに、委譲・委託・公設民営などの専門用語を具体的に理解しやすい資料があったらよかった。高田議員から貴重な情報、これまでの動きなどを聞くことができよかった。検討委員会が立ち上がる前に行動し、手立てをすべきではなどのたくさんの意見がありました。

4. まとめ

(1) 2006年~2007年
 立ち上げまで井戸を掘る思いで幼保部会は連日連夜で幹事会が行われました。はじめてのイベントも手探り状態でしたが宇城市の公立園11園が結集することができました。2007年5月に保護者から『子育てを考える会』の会長を選出していただき、幼保部会の四役が事務局、各園の主任が実行委員として活動することになりました。会長さんのリーダーシップのもとで議会傍聴などにも参加されました。また、各地区、園の学習会も行われました。

(2) 2007年~2008年
 3月2日(日)のイベント
 童謡コンサート・フードコーナーでは子育てを考える会の保護者の方々が準備から段取りまで積極的に参加していただきました。給食・職員・幼保部会・実行委員・親組合・保護者・地域・市議会議員を巻き込んだ活動ができました。市長も顔を出されたようです。
・2008年4月引き継ぎ会
 次期会長を選出する。
 5月30日の学習会では、新会長は「民営化、反対」という意思を表明され活動を進められています。
 6月の議会にも各園より傍聴へいかれました。
・クリスマスコンサート 12月19日
 約500人の参加があり、身近な曲を演奏していただき好評でした。保護者会会長が、それぞれサンタクロースに扮して子どもたちも喜んでいました。

(3) 2009年~
・市長選挙 2月1日
 現市長を大差で破った篠﨑新市長が誕生しました。
・市長との懇談会 4月27日
 新市長と初めて保護者との懇談会を開催しました。
 お互いに率直な意見交換ができ有意義な会議でした。
・「子育てを考える会」の会則決定
・クリスマスコンサート 12月24日

 現在は、民営化の流れは止まってはいますが、行政改革そのものがストップしたわけではないので、お互いの情報交換や話し合いを継続的に行うことが大切です。

 宇城市行政は、市の財政難からコストダウンを理由に旧5町時代から約50年もの歴史のある各公立の保育園(所)・児童館・幼稚園の民営化推進計画を打ち出しました。
 公立保育園運営費の一般財源化という国の方針から、国全体の流れの中で(公立の保育園を民営化する=自治体の財政のコストダウン)という考えが広まっているようです。ですが、それは違います。一般財源化されても保育園の運営費はこれまで通り自治会毎に自由に予算を組みやすいよう地方交付税として組み込まれていると厚生労働省、総務省も説明しています。
 逆に民営化するとこれまでの一般財源化された分の公立保育園(所)保育運営分の予算は削られ、市の利益には全くなりません。ましては、市民の福祉(とりわけ子育て支援)を考えていく中で公立施設を民営化していくという考えは大変危険であると考えます。
 私たちは、これからの未来を担う子どもたちのことを第一に考えていきたいと思っています。
 市の独自の制度としてでも、子ども一人ひとりに目をかけ、保護者が子育てしやすい優しい子育て支援を目指していきたいのです。市の財政難というコスト論だけで子どもの今ある環境を壊して欲しくない、これまで子育ての中心を担ってきた歴史ある園を簡単に失くさないで欲しい、というのが私たちの願いなのです。
 宇城市にもたくさんの素晴らしい私立保育園や幼稚園があります。ですが、保育行政は自治体が責任を持って総括をし、公立園は各私立園の基準やモデルとして、さらには地域の子育ての中心としての役割を担う公的責務があると考えます。
 良質の保育サービスとは、病後時保育や休日保育などの特別保育も必要があれば大事だと思いますが、「毎日通っている子どもたちが、園生活の中で経験する日々の出来事の質を保育士が養護と教育の側面から計画を立て行っていく日常の保育サービスのこと」ではないでしょうか。公立園民間委託推進計画は、少子化対策、次世代育成、福祉サービスの充実などの面から考えても反する考えだと思います。
 今、必要なのはこの宇城市の全ての人々が、当たり前に幸せに安心して生活できる環境作りだと思います。
行政直轄である公立園をなくすことでそれが果たせるのでしょうか。
 宇城市の子育てを考える会は、保護者と保育士で運営していますが、活動を広げていき、ゆくゆくは私立園の保護者や保育士、地域の人たちにも参加していただきたいと考えています。ですから、公立と私立のメリット、デメリットの比較をしていくのではなく、お互いが共存しながら宇城市の子どもたちの福祉と、よりよい保育環境を共に築き上げていければと思うのです。