【自主レポート】

第33回愛知自治研集会
第9分科会 都市(まち)のコミュニティを再生させる

 新たな自治研活動を展開するにあたり、自分の住む町について私たちも今一度振り返るとともに、町の子どもたちのために何ができるのか検討した結果、現在の活動が行われています。
  また、サケ稚魚の放流体験を通じた自然とのふれあいなど、子どもたちに対して、町の自然環境を活用した体験の場を提供することができた取り組みについてのレポートです。



自分たちの町の自然にふれてみよう
―― サケ稚魚の放流体験を通じた自治研活動 ――

北海道本部/木古内町職員労働組合 畑中 正実

1. はじめに

 木古内町は、北海道南西部に位置する人口約5,300人の町です。目の前には津軽海峡が広がり、総面積の9割を山林が占める、海と山に囲まれた自然豊かな町です。
 また、この豊富な自然を活用した一次産業が行われており、漁業ではホタテの養殖、農業では稲作が中心となっています。
 また、現在開業にむけて準備が進められている北海道新幹線においては、当町に北海道最初の駅が設置されるほか、高規格幹線道路の建設も進められるなど、今後、町は大きな変化を迎えようとしています。

2. 取り組みの経緯

 当町職労では、これまで住民とともに活動できるイベントを自治研活動の中心ととらえ、町内の各種イベントに積極的に協力してきたところです。
 しかし、2年前にさらなる自治研活動の推進について検討を行った結果、次代を担う子どもたちと体験できるもの、豊富な自然環境を活用できるものなどから、サケ稚魚の放流体験を実施することに決定しました。
 町内の河川はサケが遡上する環境にあるほか、サケのふ化施設がありますが、地元に住む私たちもなかなかサケの稚魚を見る機会がありません。
 そこで、町の子どもたちにサケの稚魚や自分たちの住む町の環境にふれあう機会を提供することにしました。
 実施にあたっては、関係機関の協力が必要となりますが、関係機関も協力について快諾していただき、秋には川に帰ってきたサケを見学する遡上見学会まで実施することができました。
 こうして、当町職労における自治研活動の新たな取り組みがスタートしました。

3. サケ稚魚放流体験

 今年も当町職労では、サケ稚魚の放流体験を実施しました。
 実施にあたっては、さけ・マス増殖事業協会の協力を得ながら、木古内地区連合会と連携して取り組み、町職労や木古内地区連合会の組合員に周知したほか、小学2年生がサケについて学習するとのことから、小学校の協力のもと、小学2年生の保護者にチラシを配布して、参加者を募りました。
 その結果、5月8日には幼児から保護者56人の参加で、サケ稚魚放流体験を実施することができました。
 当日は、サケ・マス増殖事業協会職員によるパネルを使用したサケの生態について説明を受けたほか、稚魚の水槽を用意していただき、間近でサケの稚魚を観察することもできました。
 ほとんどの子どもが、サケの稚魚を見るのは初めてで、水槽や施設内で泳ぐ、無数の稚魚に興味津々で見入っていました。
 また、稚魚のエサやりも体験することができ、元気にエサを食べる稚魚たちに子どもたちも大喜びでエサを与えていました。

水槽に入ったサケ稚魚
パネルを使った説明
サケ稚魚放流の様子
カップに入った稚魚を見つめる子ども

 最後に稚魚の放流を行いましたが、前日の雨による川の増水で、残念ながら川に流れる水路への放流となりました。
 それでも、カップに移された稚魚を親子でそれぞれ放流すると、子どもたちは水路を泳いでいく稚魚に「元気で帰ってきてね」と声をかけていました。

4. まとめ

 元気に泳ぐ無数のサケの稚魚に、目を輝かせ、生き生きとした表情でふれあう子どもたちの姿を見ると、今年も実施してよかったとあらためて感じました。
 このサケ稚魚放流体験を通じて、町の自然にふれあうとともに、親子で環境保全について考えるきっかけになればと思います。
 また、サケが遡上する自然環境、サケのふ化施設があるという様々な条件にも恵まれていることから、今後も継続して取り組み、町の子どもたちに貴重な体験の場を提供したいと思います。
 しかし、当町職労の住民を巻き込んだ自治研活動の取り組みは、まだまだ始まったばかりです。
 サケ稚魚放流体験も受け入れ体制の問題から、サケについて学習する機会のある小学2年生の親子のみを対象に実施していますが、他の子どもたちや多くの町民のみなさんと実施できる活動についても検討が必要と考えます。
 今後もサケ稚魚放流体験のより一層の充実を図るとともに、様々な自治研活動を推進していきたいと思います。