【自主レポート】

第33回愛知自治研集会
第11分科会 地域における教育コミュニティづくり

 大規模災害時、名古屋市立の小学校は市民の避難所になっています。名古屋市は全校に用務員が配置されているにもかかわらず、災害時の研修等は実施されていないのが状況です。学校職場を熟知している用務員が、自主的に企画・立案し実際に役立つ研修をしました。研修の内容は避難所である学校のシステムを活用した「飲み水の確保」と「避難所のトイレの設営」の2点を行いました。



学校用務員として、防災に取り組む


愛知県本部/自治労名古屋市連合労働組合・学校支部・用務部会長 伊藤 達生

1. 学校用務員がどうして防災に取り組んだか?

 名古屋市は、全小学校262校が大規模災害時に市民の避難所になっています。学校には、災害時用の乾パン・毛布など必要な緊急用避難物資が防災倉庫に保管してあります。
 東海大震災が近いといわれるここ数年、教育委員会に「防災・災害時避難拠点として学校の機能を充実させると共に、学校業務士の位置付けを明確にし、教育委員会の責任で、定期的な研修を行うこと」と強く要求してきました。しかし、全校に正規の用務員が配置されているにもかかわらず、研修等への回答はありませんでした。阪神大震災などの大規模災害の直後困ったことは、飲み水の確保と避難所のトイレでした。避難所の重要なシステムは、「地下式給水栓」と「仮設トイレ」だと考えました。私たち用務員が実際に役立つ研修として、2009年度自主研修で防災の取り組みを、名古屋市全区の16区で行いました。

 *自主研修とは
    組合要求で勝ち取った研修権でグループ研修といい、業務の充実のために、用務員が企画・立案し実施する研修。夏期期間に各区ごとに2日間実施できる。

2. 飲み水の確保(地下式給水栓)について

 名古屋市では262校全ての市立小学校に、災害時の飲み水になる地下式給水栓が設置されています。
 学校に下のような看板が設置され、右下のマンホールから飲み水が確保できるようになっています。
 研修にあたり全校に調査をしましたが、管理職をはじめ学校の職員が一人も「この看板がどこにあるかわからない」「器具等が保管してある場所もわからない」という学校が多くありました。この現状では、いざ大規模災害があった場合に、全く対応できないと痛切に感じました。


【飲み水の確保の研修】

① 給水栓のマンホールを専用の器具を使い開けます。
 女性も開けてみましたが、思ったよりマンホールの
 ふたは簡単に開きました。
② 保管してある専用のホースをつなぎます。
③ 最初は赤錆の混じった濁った水が出てきますが、
 しばらくすると水は透明になります。
④ 試薬を使い、飲めるかどうかを調べます。
⑤ 実際に飲んでみました。普段飲んでいる水道水と
 変わらず、とてもおいしい水でした。 


3. 仮設トイレについて

 小学校内の防災倉庫に、仮設トイレが保管されています。
 「震災用」と書かれたマンホールが仮設トイレ用です。
 このマンホールは、小学校付近の道路にあります。ふたを開けると、直接仮設トイレから下水につながる構造になっています。

【仮設トイレ設置の研修】

① まずは仮設トイレを設営します。
この仮設トイレをマンホールの上に直接乗せます
② つぎにトイレを覆うテントを設営します。
   取り扱い説明書どおりに作業をしてみましたが、不備があり組み立てることができませんでした。業者に取扱説明書の誤りを指摘し、訂正させました。
  
スムーズに組み立てるには、慣れることが大切だと感じました。  

③ この仮設トイレは繰り返し使うことを想定していないので、テントを片付けるのは苦労しました。 
 

4. 今回の研修を終えて

 2009年夏の研修では、名古屋市全16区で、延べ300人を超える用務員が参加しました。参加した用務員の研修意欲は大変高く、このような研修の継続が必要だとの意見が多くでました。

【今回の研修を実施して実感したこと】
① 仮説トイレの設置に当たって、上下水道局の責任は「マンホールのふたを開けるだけ」、環境局の責任は「仮説トイレの組み立てのみ」と、防災対策にも縦割り行政の弊害があり、実際の災害時にはうまく対応できないと感じました。災害時には行政に頼らず、私たち用務員が中心となり、地域住民と協力し対応していく事が重要だと実感しました。
② 私たち用務員も実際の研修は初めてでしたが、地域防災に位置付けられている区政協力委員も、防災用トイレや地下式給水栓を一度も扱ったことがない人が大半でした。

5. 今後の課題

 必ず起こるといわれている東海大震災・10年前の東海豪雨などの大災害の時、本当に全部の小学校が市民の避難拠点としての役割りを果たすためには、以下のことが必要だと確信しました。
① 繰り返し実際の防災研修を実施し、熟練していくこと
② 教育委員会にこの課題の重要性を認めさせ、自主参加型の研修ではなく、全員参加型の研修を確立すること
③ 地域住民を巻き込み、防災拠点としての機能を果たせるようにすること