【自主レポート】

第33回愛知自治研集会
第11分科会 地域における教育コミュニティづくり

 複雑で衛生管理の厳しい作業であっても機械的にならず知識と経験を活かした愛情いっぱいの調理作業で「明日の稲沢市を担う子ども達を守りたい」そんな熱い思いを胸に働く仲間が職場を守る為に頑張っている姿です。



現業学校支部初の「学校給食フェア」の開催に向けて


愛知県本部/稲沢市職員労働組合・現業学校支部・支部長 西正 加代

1. はじめに

 稲沢市は2005年の合併により人口約14万人になりました。
 2010年度児童生徒数12,198人の給食は、旧稲沢市の小中21校自校方式と旧祖父江町旧平和町の小中学校11校分は2ヶ所のセンター方式にて、市内学校給食全てを直営業務として正規職員54人と臨時職員50人が担っています。
 2001年、委託阻止の引き換えに臨時職員数が増やされました。各職場における臨時職員の数が正規職員の数を上回らないことを最低ラインとし、それまで加配とされていた代替え調理員も配置基準内とされ、退職者や欠員補充の為の新規採用者数が調整されはじめました。合併をくぐり抜け、旧平和町のセンター内にあった委託枠を市採用臨時職員枠に切り替えることは出来ましたが、委託化された市民病院調理職場からの調理師や他の現業職からの異動、近年では毎年要求書に掲げ続けて来た「退職者補充の為の正規職員の計画的な新規採用」が皆無となり、最低ラインとしていた正規職員と臨時職員の比率も事実上崩れ、再び「委託」という不安がよぎるようになりました。

(1) 本当にこれでいいのかしら?
 業務はどんどん複雑になり衛生管理は厳しく、手間も気も抜けない職場です。それでも私たちが直営給食にこだわるのは、食育が教育の基本であり現場から発信出来るものだと信じているからです。大昔の作るだけの調理員ではなく、活きた教材としての学校給食、多様なニーズに対応するための研修や情報交換が手前みそでなく、保護者や市民の理解を得なければならない時期なのだと感じています。
 今回、稲沢市学校給食初の『給食フェア』を企画したのは、直営給食がどれほど安全な食材を使い衛生管理が行き届いた作業であるか、児童生徒との関わりを重要視しているか、それを保護者や市民にアピールすることを最大目標とした上で、私たち自身が「知ってもらうこと」の大切さと同時に、「何が求められているかを知ること」の大切さを考える機会にしたいと思っています。

2. 発案段階から予算作りへ

 「何かやりたい」という思いが、組合員の中からフツフツと沸きはじめ3年ほど前から計画をたて、現業学校支部への交付金の中から通常の活動費や経費を節約し、給食フェア用特別予算枠として積み立て始めました。
 執行部の協力のもと30万円ほどの予算が確保できた一昨年度末「今年こそ私たちの手でフェアを実現し学校給食職場の実態を知って欲しい」という姿勢を公にし、私たち自身も自覚するためフェアの日時と場所を押さえました。
 『2010年8月18日(水)稲沢市学校給食フェア開催』と、花火を打ち上げたのが2009年7月の出来事です。

児童生徒と給食室とのお手紙交換
 

3. いよいよ走り出した給食フェア

テーマ
 【心とからだを育む直営学校給食】
サブテーマ
 《大切な子供たちに、安全・安心・おいしい学校給食を!! 私たちが守り続けます》
コンセプト
 1. 安全な食材を使った衛生的な作業をアピール
 2. 直営だからこそ出来る児童生徒との関わりをアピール
 3. 行事食、郷土食、アレルギー対応などを含む食育への参加をアピール
 学校支部組合員53人全員参加を念頭に、各自が自覚し活動出来るようにグループ分けをすることにしました。

1. パネルグループ 2. ビデオグループ 3. 防災グループ 
4. 試食グループ 5. チラシグループ 

 5つのグループのリーダーを各2人ないし3人とし立候補していただき役員は補佐という形で各グループに入る事にし、特に若手のパワーを発揮出来るメンバー構成としました。若手が中心になって活動することで、組合活動に興味を持ち身近に感じて、次期役員育成になれば一石二鳥と……うまくいくかはフェア終了後のオマケ報告とします。
 フェアに来ていただいた方々が五感で楽しんで貰えるように
 ・調理場内や調理作業の様子、毎日の給食や食育参加の内容等を撮影した写真パネルやビデオを作成
 ・140リットル釡の実物大模型の作成
 ・人気メニューの試食提供、レシピの提供
 ・その他、学校勤務の現業職ならではの付加価値を見つけるために、非常時の避難場所での豆知識として、空き缶とサラダ油とティッシュペーパーを使った簡単コンロの作り方、毛布やシーツで出来る担架、ストッキング包帯などのデモンストレーション
 ・興味を持っていただけるようなチラシとポスターの作成
等など、リーダー会議ではやりたいことが次々と出てきました。
 役員がやらなければならないことも山ほど有ります。教育委員会、役所、各学校、各センター等への挨拶とお願い。大人の世界は根回しが重要とこの歳になって痛感しています。各グループの活動予定に伴う申請や許可手続き。給食フェアが支部組合活動である事を自覚し、日常の業務に支障をきたさぬよう、休憩時間や就業時間終了後に打ち合わせを重ねています。この回数が増す毎にフェアでの発表内容が濃くなっていくのと同時に、組合員同士の情報交換が増えそれがフェア準備の為だけでなく、各職場の本音や見えない努力がクリアになっていくのは思わぬ副産物になっています。また、調理や食育行事の撮影などは時間休を取り活動したり、栄養士にご協力頂いたり、各学校の先生方にも応援して頂くことが出来ました。

4. 今後の予定

 毎年6月に実施していた支部学習会を7月3日に繰下げ、学習内容もフェアのリハーサルを兼ねた内容とします。それまでに各グループの活動を仕上げ、全員でチェックし本番までに手直しし万全を期して当日を迎える事が出来るよう予定しています。支部組合員53人の組合活動に対する温度差が有るのは覚悟の上で始めた企画でしたが、グループ活動を通して得た行動力と結束力を今後の支部活動活性化につなげていきたいと思います。

安全管理業務
アレルギー対応
 
ゴマアレルギー児童生徒の対応として
ゴマを除去したおひたしとして個別に
配缶して提供 
中心温度計による温度確認
85度以上1分以上3点計測
ほうれん草ともやしのゴマあえ

 
食育参加
   
パネル写真と配膳の見本写真を
ファイルにして1年間の給食内容を
展示 
調理員からのコメント入り
栄養パネル         
実物見本

 
行事食Ⅰ お弁当作り給食
   
 
 
児童が自宅から持参した
お弁当箱に自分でつめて
ピクニック給食      
 
行事食Ⅱ バイキング給食
   
 
バラエテイ豊かな献立で  
児童生徒にも人気の行事食 
各自で栄養バランスを考えながらの
楽しい給食タイム         

 
防災 かんたんコンロ
140リットル釜実物大模型作り
 
 
かんたんコンロの作成手順と  
内容を撮影しフェア当日会場にて
放映               
パネル展示の目玉として会場に
設置
              
 

5. 終わりに

 まだ始まったばかりで実績も何もない状態です。自治労への活動報告として相応しいかどうか悩むところですが。ただ、市主催のお仕着せではなく、私たち支部が組合活動として独自で計画し奔走し開催までにどれほど成長出来るか、市民からも当局からも必要とされる現業職としてのポジションを守れるように今後も活動を続けて行きたいと思います。