【自主レポート】

第33回愛知自治研集会
第11分科会 地域における教育コミュニティづくり

 飽食な時代をとりまく環境において安易な食事・食生活が浸透しています。日本人が大切にしてきた食生活が、食事バランスの偏った食事となり、子どもたちにも身体的影響を与えています。国においても制度は作られていますが、まず大人が食環境手法について考えるべきです。そうしたなかで、食に携わる福祉施設事業で働く職員として出来ることはなにか「地域に根ざしたより良い食支援のあり方」を考え取り組みを進めています。



地域に根ざしたより良い食支援のあり方をもとめて


大阪府本部/大阪市従業員労働組合・市民生活支部

1. はじめに

 飽食な時代をとりまく食環境において、ファストフード・ジャンクフード・外食産業・インスタント食品などによる安易な食事・食生活が浸透しています。農耕民族である日本人が大切にしてきた「身土不二」の精神に基づく、古来からのスローフードや安心・安全であるべき「食生活」が利便性や手軽に、という愚論に摩り替えられ、食事のバランスはもとより油分の多い偏った食事が大人のみならず、次世代を担う子どもにも与える身体的影響が様々な場面にて問題となっています。
 社会全体で日常生活からの食環境を見直し、変えていこうとする「食基本法制定」も記憶に新しいことではありますが、従来から「食生活指針」「健康づくり日本21」「次世代育成推進法における食推進計画」など「食すること」については様々に示されてきました。しかし、国から法律として示される「食環境」であってはならず、大人自ら手本となる食環境手法を考えることが大切です。その一方で再度、私たちに課せられた職務の深さを認識しつつ、自治体職員として市民(子どもを含む)に的確につなげていかなければならないと考えます。保育所をはじめ福祉施設事業現場における「食卓づくり」のノウハウを確かなものにするため、従来から取り組んでいる職員自らの質の向上・レベルアップのための調理師勉強会・専門調理師試験事前実技研修会・食育自主研究などの実践は、今後の食支援のあり方、情報発信の仕方などでは重要な意味づけがあります。

2. 現場では

(1) 保育所においての実践
① 発達段階に応じた月齢別対応離乳食レシピ
② 食物アレルギーや体調不良による個別対応食
③ 試食会による食支援アピール
④ 日々の食情報提供による食相談
⑤ 創意工夫した各保育所からの情報提供
⑥ 乳幼児期からの食育活動の実践
⑦ 菜園活動などによる循環型食支援の実践
⑧ 食事業年間計画に基づくライン食支援
⑨ データ集約・企画立案 

(2) 支援センターにおいて
① 食講座(離乳食期・料理・手づくりおやつ・アレルギー)における食相談
② 関係機関連携食講座
 ・ 各区子育てプラザ   → 親子・幼児・小学生・中学生など対象の食講座
 ・ 各区保健福祉センター → 栄養士・食生活推進協議会など共催講座
 ・ 幼稚園        → 保護者・園児対象食育講座
 ・ 各区イベントにおける食育講座
 ・ 市民向け食情報発信(食レシピ・食情報紙面・衛生面)など
 ・ 研修企画
 ・ 食文化継承(地産地消・なにわの伝統野菜)

(3) 福祉施設職場において
① 食文化継承のための食提供
② 食生活上における食材選び学習
③ 嚥下困難食提供開発や、高齢者向けの出前食講座
④ 働きざかりにおけるメタボ対策食講座
⑤ 適時適温食事提供
⑥ 食育企画

3. 自己研鑽

 保育所調理員採用時においては、調理師免許資格を有する履歴義務が無かったことから、過去ではほとんどの調理員が取得していませんでした。免許取得を呼びかけることで、職務意識の向上を図るねらいと、調理上においても情報交換するねらいがありました。

(1) 調理師免許取得推進(都道府県発行免許) ※現調理員中約98%が取得
 「国民の食生活の質の向上に寄与する」としてのねらいと、調理実績を踏まえたうえで、各項目別の科目を職務終了後時間外に、掘り下げて再度勉強することは、自身の職務上の自信につながり、必要とされる自分、活かされる自分への職域を見出す効果がありました。
 また、学習会を終えたあとの時間は職務上での相談や情報交換を共有してきました。
 (以前は組合役員が主導となり、試験を受ける組合員への後方支援学習会として実施、のちには企画主任職務として引き継ぎ、現在では毎年受験人数に応じて学習会実施を検討中)

(2) 専門調理師取得推進(国家免許) ※現調理員中約35%が取得
 調理師免許取得後、さらに調理実践を掘り下げて専門的な国家免許取得を推進しています。
 先に専門調理師に受かった者が、後に受験する者にノウハウを伝え、調理実践試験における、受かるためのポイント(時間配分、下処理の段取り、盛り付け手法の工夫)をもとに、再度勉強していくことも重要で、伝える側は受けた時の苦労や専門調理師としての注意すべきポイントを、受ける側の人に解り易く伝える手法を毎年模索し、現場から現場につなげていきます。
 日々の調理では、細分化して固体計量することがあまりないことから、食材一つひとつのグラムを計量しなくてはならない実践と、試験を受けるときに実感する緊張感や、試験時間配分は、市民向けのレシピづくりや講座開催時には必要不可欠なものになります。
 そうすることで、食材があわせ持つ成分や調理理論が的確に認識できます。

4. 今後の方向性

 食に関わることは自治体職員である調理員自らが、自己研鑽を日々行い、市民や次世代を担う子どもたちへ安心・安全であるべき食環境へ「つなぐ」役割をしなくてはならないと考えています。そのためには、施策や行政がめざすところ、地域や市民協働として取り組まなければならないこと、現場において準備はどこから、と精査できる感覚やアンテナを張り巡らせ意識を保てる力、ニーズを見出す力など様々に取り組まなければなりません。
 現業活性化研修や、自主研究、他事業情報交換などを通して、市民・自分自身・家族が健康で過ごすための、幅広く奥が深い食環境を整えていきたいと考えます。
 具体には、組合支部のスケールメリットを活かし「食環境」においての横断的な職域拡大(市場における就学前児童対象の食育教室・講座をはじめ、高齢者・介護者への食支援、従来からの福祉職場における市民を巻き込んでの食環境づくり、ITを活用した「食情報ホームページの開設」)など、縦割り行政の狭間で、市民にとって安心・安全であるべき食情報伝達手法を実施していきます。