【自主レポート】

第33回愛知自治研集会
第11分科会 地域における教育コミュニティづくり

地域に根づく食育をめざして


佐賀県本部/小城市職員労働組合・小城市立三里保育園調理員 野中香代子

 私の在職している小城市は合併して6年になります。私の仲間は、学校給食調理員、保育園調理員です。月に一度を目標に学習会をしています。内容は、献立、アレルギー食、離乳食、仕事量の増加に伴う適正な人員配置、衛生面とさまざまです。私達の職場は、2009年の4月より小城市民病院給食現場が民間委託となりました。委託の話は2006年頃よりありましたが、進みだしたら早くあっという間に決定しました。病院勤務だった人は、保育園、学校給食に異動になりました。小城市の公立保育園は2011年4月より牛津保育園が民間委託に決まっています。その後、5ヶ園全てが民間委託の予定です。私は、市民病院が委託になる時に病院に勤務していました。残念だったのは、病院の、仲間と思っていた人たちから何の反対もなかったことです。確かに病院の経営状態が悪く、病院の存続のためと言われましたが、自分の仕事は、とても大事な仕事だと思っていましたし、食べることは1日に3回、人の楽しみでもあり、生きる上で一番必要なことだと。でも、当たり前だから、大事なのだと言う認識をしてもらえていない事を目の当たりにした気持ちでした。なぜ、私達の仕事の大事さ、食の大切さを分ってもらえないかと。病院に勤務していた時は、人の命が終わるときの最後の食事を作る事も多かったのですが、今は0歳からの子どもの離乳食、幼児食を作っています。食べる事、食の大切さを知って貰いたいとの思いから昨年から地域の方々の誘いをきっかけに色々な活動に参加し取り組んだ事を報告いたします。

1. 小城市食育祭りに参加して

 小城市健康増進課主催で行われた「食育まつり」が2009年11月29日(日)小城市牛津町保健福祉センター「アイル」で開催され、小城市立保育園五ヶ園の調理員9人で参加しました。参加する事を考えたのは、私が健康増進課主催の「食育推進計画ワークショップ」に参加したことです。メンバーは、一般の方、企業の方、小学校の栄養職員、母子推進委員、とさまざまな方々です。ワークショップの中で子どもの食に関する問題点が提起されました。話を聞いていると園ではもう問題の解決策が行われていると思い、食育活動の最先端を行っていると感じて、私の園で報告をし、調理員と話し合いをしました。食育まつりの開催を知り、担当の方に聞いたら展示の部を予定しているとの事。チャンスかも?と思い、学習会に持ち込みました。出展についての話をしたら、盛り上がる、盛り上がる。日曜日ということもあり準備もあるからと思っていましたが、みんなが提案に気持ち良く乗ってくれました。その後10月末に話し合いをし、各園で出せるもの、作るもの、を決めて11月の初旬に、作業をしました。広用紙10枚分の写真、紹介文が出来ました。蒲鉾板で作った絵合わせが2種類、カルタ、食育掲示板、紙芝居、持ち帰り用にレシピを6種類、当日の準備も整いました。

 11月29日(日)朝10時開催です。小さい子ども達に蒲鉾板で作った「絵合わせ」が大人気でした。大人に展示物を観て貰う事が難しく、声をかけ、説明をしてレシピを渡しました。興味のある方は熱心に観ていただき、「材料の豊富かねー」「良い事ばしよんさーねー」の言葉を頂き、私達の仕事に自信が持て、ますます頑張らねばという思いが強くなりました。初めてのPRでした。仲間の楽しそうな顔、一生懸命に来場者に説明する顔を見て、とても充実した気持ちになり嬉しかったです。展示物だけだと、人を引き付けることが難しかったので。次回は、試食のコーナーと、子どもに食について関心を持って貰えるようなコーナーを考えたいです。

2. 地域とのつながりを広げるために

① 「江里山食の伝承塾」が2010年1月17日に開催され、調理員6人で参加しました。江里山は小城の中山間地に位置し、棚田100選に選ばれている景観を有しています。9月は、彼岸花祭りも開催されます。棚田一面の彼岸花は「きれい」の一言です。一度足を運んでください。伝承塾の開催場所は江里山公民館です。主催されたのは、小城町農産物直売所ほたるの郷です。ほたるの郷は地産地消を推進されている農産物直売所で、小城の祇園川沿いにあり、地元小城市の農産物を販売されていて学校給食、保育園給食に野菜を納入されています。そのつながりで、今回の企画に誘いを受けました。江里山地区に住む婦人の方々から昔から伝わる郷土料理を教えて頂きました。調理をしながら料理の話、食材の話に花が咲きました。その中の銀手亡(ぎんてぼ)の甘煮を、保育園のおやつに作りました。保護者にもお便りで知らせ、写真を掲載しました。とても喜んで頂き、地元にこんな豆があると知らなかったと喜ばれ「どこで売られてますか?」と聞かれました。江里山の方からは、給食に使って貰い栽培する励みになると言葉を頂き、私が一番嬉しかったです。小城市報にも掲載されました。郷土の料理を教えて頂き、次に伝える役目を果たせるように勉強していきたいです。

② JA佐城地区食の絆つくりフォーラム「食の文化祭」が、2010年3月7日(日)佐賀市大和町「道の駅やまと」で開催され、調理員14人で参加しました。この催しの誘いを受けたのも、ほたるの郷の店長さんからです。日曜の開催と準備もあるので、仲間の同意が得られるか心配でしたが、みんなが理解してくれとても喜んでくれました。内容の会議に参加したところ、郷土料理の出展との話でした。「どうしようか」と悩んでいたら、帰路の私を「道の駅やまと」の店長さんが追いかけてこられ、「今の食の現状を出してください」「文化祭だからなんでも良いですから」「自由に思う存分PRしてください」と声をかけて貰い、日々の給食を展示、試食を出品することにしました。学校給食では1年に何回か、小城市全部の幼小中学校に、同じ給食の提供をしています。その中から小城市の食材を主に使った献立を展示、試食をして貰いました。保育園給食は子どもに人気の献立から、3時のおやつを数種類。展示のスペースに各園の食育活動、学校給食の作業の写真を展示しました。私の園の保護者にチラシを配ったところ、家族で来てくださった方もあり、保護者から「頑張ってくださいと」言葉も頂きました。準備は3月6日午後からでした。食の文化祭の、昼食用に牛丼を販売するとの事で牛丼の玉葱、葱の仕込みを手伝ったり展示物の掲示をしたり、出展の方々と話をしながら、配置を決めたりと交流を深め楽しい時間でした。当日は、早朝から料理の準備、受付、食券の販売、試食会での配膳、献立の説明、展示物の説明と大忙しでした。かなり疲れました。でも、とても、充実した一日でした。自分たちの日々の仕事を見てもらい損得無しの評価を得た気持ちです。おやつを食べた方から「どこで、販売されてますか?」と聞かれ、「販売はありません、作り方を教えます」とレシピを渡した時、良い仕事をしているんだと実感しました。後日、私の園の民生委員の方から「よか仕事ばしよんさーねー」と声をかけて頂きました。

③ 国指定有形文化財「深川家おひなさま」が旧小城城下小城町上町で開催されました。2010年2月27日~3月22日の日程でした。3月21日に調理員4人で参加しました。会場で、来場者へお茶と「小城羊羹のヨーグルト和え」を食べて頂きました。この、活動のきっかけは先に紹介しました「江里山食の伝承塾」で同席した、「深川家おひなさま」の実行委員会の方からの依頼でした。「何か来場者におもてなしをしたいのですが」と相談され、小城の食材を使ったものをと思い決めました。とても、好評で羊羹の使い方に驚かれたり、羊羹をもっとPRしなくてはいけないとか、おひなさまを前に羊羹の話で盛り上がりました。実行委員の方に次も声をかけてくださいとお願いをしました。開催の期間が長いので提供の機会を増やして頂けたらと思います。小城の食材を使った、お菓子を考えて来場の方との会話を楽しみたいです。

3. まとめ

  これらの活動で私達の活動を表に出し、縁の下の力持ちだったのが日の目を見た気分でした。仲間もそう感じたようです。食育基本法が施行され私達の仕事の大切さを知ってもらうこと、理解してもうことが、これからの職場を守ることにつながるのではないだろうかと思いました。又、併せて子ども食を守るには利益を追求しないから出来る食育活動、安心安全な食の提供をする。そのためには、手をかけ心を込めて仕事をする事を私達が今以上に意識しなくてはと思いました。交流を深めた農産物直売所の方々や食材を作ってくださる方の、食と食材の大事さ、伝統の料理の貴重さを知った私達は、これらの事を保護者に伝え、私達の仕事の大切さを更にアピールしていくことが、小城市の食育を充実、拡大させ引いては職場を守る手段になるのでは? と思います。小城市でも小城市食育推進計画が策定されました。私達が「小城のこどもの命の源を作っています」と胸を張って言えるように職場の保育士や、地域の方と連携を取りながら食育活動を続けて行きたいと思います。結果を出すのには時間がかかりますが、少しずつですが前進していると信じています。私の園の保護者から「作り方を教えてください」と声をかけられることが増えたのはその証拠だと思います。継続は力なりを信じて、自分の仕事に誇りと自信を持ち地域の方に認めて貰い、必要とされる仕事をしていきたいと思います。又、これから更に地域に根ざした食育活動を深め広げていきたいと思っています。