【自主レポート】

第33回愛知自治研集会
第12分科会 地域からのワークライフバランス

宇佐市における男女共同参画の現状と課題について


大分県本部/宇佐市職員労働組合・自治研部

1. はじめに

 厚生労働省が発表している「2009年人口動態統計」によれば日本の人口は3年連続で減少し、その減少数は初めて7万人を超えると推計されています。また、他の調査によれば「人口減少幅は今後も拡大し、2050年には1億人強まで人口は減少する」との見解が示されていることから、日本の社会が本格的な人口減少のサイクルに入ったと判断できます。
 併せて少子高齢化も急激に進行しています。このような状況は、社会保障制度や地域コミュニティーの維持や労働力の確保のみならず教育水準にも大きな影響を及ぼすことが懸念されます。
 新たなサイクル(人口・税収等が増加するのではなく、減少していく社会)に対応するためには、これまでの男女の枠組みを見直すことにより、より効率的な社会を構築することが、有益であると考えられます。

2. これまでの男女共同参画に関する取り組みについて

(1) 国における対応について
 このような状況は、1980年代の初頭から危惧されていたことから、政府は雇用・労働ならびに育児・介護等の分野に関して、①女性の労働力市場への参入の拡大、②結婚・出産した女性の就労機会拡大、③男女を問わず育児・介護に携わることができる環境整備 等にむけた法制度の整備を進めました。
 その結果、1986年に男女雇用機会均等法、1995年に育児・介護休業法、1999年には男女共同参画基本法が制定されました。しかし、1970年代から2000年の女性労働力率の上昇幅がOECD加盟24カ国の中で最も低かったことや男性の育児休業取得率が1%にも到達していなかったことから、諸課題の解決には価値観等も含めた社会環境の整備が必要であるとの観点に基づいて、政府は地方自治体に対して男女共同参画への取り組みを強化することを求めました。

(2) 宇佐市における対応について
① 宇佐市では、2000年(平成12年)に企画課に女性行政に関する窓口を設置しました。また、2001年(平成13年)には市民1,500人を対象とした「男女共同参画社会づくりのための意識調査」や各種委員会・審議会の女性の登用率調査を実施しました。
② 併せて、男女共同社会参画基本法及び宇佐市総合計画を具現化するために、意識調査や策定懇話会等により市民の声を反映した上で、2002年度(平成14年度)から2011年度(平成23年度)までを計画年度とした「宇佐市男女共同参画プラン」を策定し、男女共同参画行政の推進を図ることとしました。

(3) 「宇佐市男女共同参画プラン」の骨子について
 宇佐市男女共同参画プランは、4つの基本目標を掲げ、各分野における施策を計画的に推進し、男女共同参画社会の実現をめざすとしています。
① 男女共同参画のための意識改革
② あらゆる分野への男女共同参画
③ 働く場における男女共同参画の環境づくり
④ 健康の増進と福祉の充実
 また、これらの基本目標の実現にむけて、下記の取り組みを宇佐市として実施するとされていました。

目  標
具体的な施策
男女共同参画のための意識改革 講演会等の開催、広報誌による啓発、人権啓発指導者の養成、企業内研修の充実、地域における学習機会の提供
あらゆる分野への男女共同参画 女性団体への活動支援、各種審議会への女性の参画推進、夫婦育児教室への参加促進、児童・生徒への教育促進
働く場における男女共同参画の環境づくり 男女雇用機会均等の啓発、育児・介護休業制度の普及・促進、子育て支援の充実、児童の放課後対策の充実
健康の増進と福祉の充実 乳幼児医療費給付事業、スポーツ等の環境整備、道路・建築物等の環境整備(バリアフリー化等)

3. 宇佐市における現状と課題について

① 2002年度(平成14年度)の「宇佐市男女共同参画プラン」を策定以降、宇佐市では諸施策に取り組み、2009年度の事業実施概要は、以下のとおりとなっています。
 ア 男女共同参画のための意識改革に関する施策
   広報・ホームページ等による広報活動、チラシの配布、人権学習会(認可保育園園長・保育関係者等が対象)、公民館等での家庭教育学級、男女共同参画講座
 イ あらゆる分野への男女共同参画
   各種委員会・審議会における男女共同参画及び公募の拡大と女性団体からの登用、女性リーダー育成、
   女性団体の活動支援、男性料理教室、パパママ学級 
 ウ 働く場における男女共同参画の環境づくり
   延長保育事業の実施(認可保育園6園・公立保育園1園)放課後児童クラブ(8ヵ所)、育児サークル支援、ウォーキング教室、日曜検診、家族介護教室、認定農業者の育成・支援、家族経営協定の締結推進(研修会等の啓発活動)
 エ 健康の増進と福祉の充実
   妊婦教室、乳幼児健診、乳がん・子宮がん検診、検診後の保健指導、基本検診、ウォーキング教室
② 個々の事業において、男女共同参画に対する啓発や活動支援が図られており、一定の成果は挙げていると考えられます。しかし、当市の男女共同参画に関する取り組みは、担当者の言葉を借りるならば「県内市町村の中でも立ち遅れていると言わざるをえない」とのことです。
③ その理由は、様々な要因が考えられます。宇佐市の行政内部から要因を探った場合、(ア)担当部局が一定しなかったこと、(イ)男女共同参画に関する専任の部局が設けられなかったこと、(ウ)男女共同参画の専任職員が配置されていなかったこと等の要因が挙げられます。
④ (ア)については、行財政改革プランに起因した大幅な人員減により、課・係の統廃合が行われてきたことから、一定やむを得ない事情もあったと思われます。しかし、(イ)・(ウ)については、自治体としての姿勢や熱意が問われることとなります。一方で、専任部署や職員が存在しなくても、対応を強化することは、一定のレベルでは可能と思われます。しかし、兼任であったことから、業務の関係上どうしても男女共同参画以外の業務を優先せざるを得ないという状況が、随所に存在しました。
⑤ さらに他の角度から要因を探っていくと、当市の男女共同参画推進は、2009年度まで企画部門が主管となっていました。しかし、他の自治体でも同様の事情があると考えられますが、企画部門は基本的に「計画・立案」が主な分担であり、プランに示されている内容を具体化(事業実施)をするための人員や予算面の裏打ちがなされなかったことから、計画に基づく市独自事業等が実施されることなく、主管課が調整は図るものの結果的には、国・県が主管となる事業を各担当部局が実施することとなり、「県内自治体の中でも立ち遅れている状況が生じたのではないか」との意見も担当者から寄せられています。
⑥ ここで県内市町村の男女共同参画推進体制のデータを示すこととします。

【第32回北海道自治研集会(2009年4月開催)】大分県本部提出資料より一部抜粋 

男女共同参画に関する担当者アンケート分析結果(※姫島村はデータ無)

① 担当課について
 ア.男女共同参画課・室があるのは……大分市、別府市
 イ.人権担当課が担当とされている……豊後大野市、臼杵市、玖珠町、中津市、豊後高田市、国東市
 ウ.企画部門が担当とされている………佐伯市、津久見市、日田市、宇佐市、杵築市
 エ.生涯学習課が担当とされている……九重町
② どのような課が事業をすすめやすいと思いますか。(回答有は8市町、残りの8市町は無回答)
 ア.男女共同参画課……大分市、別府市、豊後大野市、津久見市
 イ.人権担当課…………竹田市、日出町
 ウ.企画・総務…………豊後大野市、国東市、玖珠町
③ 担当者について
 ア.担当者が専任である……豊後大野市(1人)、臼杵市(1人)、大分市(2人)、別府市(2人)、
              中津市(1人)、国東市(1人)
 イ.担当者が兼任である……由布市(5人)、竹田市(1人)、津久見市(1人)、佐伯市(1人)、
              日田市(2人)、玖珠町(3人)、九重町(1人)、宇佐市(1人)、
              豊後高田市(1人)、杵築市(1人)、日出町(1人)
 ウ.担当者人数について……増員(1人~2人)を希望しているのは7市町村。
              今の人数が良いは、9市町村。 

⑦ 人員を配置すれば、従来滞っていた取り組みが、急激に進捗するかは確実ではありません。しかし、前述の当市担当者の報告や他市町の人員配置の状況からも当市の推進体制は十分とは言えない状況が推測できます。
  よって、推進体制の充実を図るためにも、最低限「専任職員の配置」は、今後も人員確保交渉や男女平等社会実現闘争時に要求を行った上で実現を図る必要があります。

4. おわりに

① 「宇佐市男女共同参画プラン」策定時の計画最終年度を2011年度(平成23年度)に控え、その総括の上に立ち、速やかに新計画を策定する必要があります。策定にあたっては、計画策定時に実施した項目を参考に意識調査を実施し、約10年間で市民の意識がどのように変化したのかを把握し、総括の内容と併せて、今後の宇佐市の男女共同参画行政への活用を図ることも有益と考えられます。
② 前述のとおり、当市の男女共同参画に関する諸施策は、現在のところ他市と比較して進捗しているとは言いがたい状況にあります。さらに当市においても、特に周辺部では人口の減少や高齢化により、農林業の担い手不足や地域コミュニティーの維持等が大きな課題となってきています。
③ このような課題の解消にむけては、今後策定する「新宇佐市男女共同参画プラン」が大きな柱となります。加えて、新計画に基づきながら、短期間で結果を求めるのではなく、様々な分野で多様な息の長い取り組みが必要です。また、宇佐市職労としても、男女平等社会実現・当初予算交渉時に積極的に意見反映を行った上で、課題の解消に取り組むこととします。