【自主レポート】

第33回愛知自治研集会
第13分科会 温暖化ガス25%削減 地域での可能性を模索する

 エコ、温暖化、省資源についての意識は社会的に広がりを見せており、自治体や公的機関での取り組みも多岐にわたっている。さまざまな取り組みに対し、効果や疑問点については指摘される部分はあるが、エコ活動を推進し、省資源や環境について考えようとするための啓発は、引き続き求められている。今後、各家庭、個人、身近なレベルでの取り組みを更に広げていくための方策や手法について考察する。



エコライフで地球と家計が救われる!?


北海道本部/石狩地方本部・2010自治研推進委員会・地球温暖化防止検討グループ

1. エコ・省資源・地球温暖化防止に係る考え方

 環境問題については、さまざまなメディアが報じており、学術的にも見解が多く出されているところである。地球温暖化の要因の一つであるとされる炭酸ガスの発生についても、二酸化炭素は海から自然発生する比率が最も高く、人為的な発生は僅かであるという説もある。
 また、エコという名称がついたような製品は、全てが環境に配慮しているように思えるが、エコ、省エネ家電など新たな製品が増えることによって、処分時に新たな廃棄物も増加する懸念も指摘されており、物を大切に扱うことよりも、エコ製品に買い替えることが環境に配慮している、といった誤解を与えかねないような事例もある。また、エコという言葉自体の使われ方が本来の意味とかけ離れていると感じる場面も多くある。
 エネルギー使用の形を大きく転換するためには、経済面での理由、自然エネルギーの利用、ライフスタイルの変化といったことが求められる。石炭から石油へ転換となったこととは背景が異なる部分があるが、将来的には、環境面での配慮から、例えば車ではガソリンから電池へとシフトしていくことも予想されている。
 また、科学技術の進歩によって実現される要因も大きい。徐々に一般家庭にも導入され始めてはいるが、ソーラーパネルの設置、ハイブリッドカーの購入などは、初期投資に何十万、何百万と費用がかかり、環境に対する配慮ということは大事であるが、個人で設置する場合には経済的な負担が影響してくる。そのため、どのくらいの期間使用すると、経済的に元を取ることができる、といった考え方が環境行動を後押しする要因となっていることは否めない。そのため、LED電球のように一般家庭でも負担が少なく取り組めるような製品も普及し始めている。また、交通については、徐々にエコカーなどの普及が進んできているが、二酸化炭素を全く発生しないような、燃料電池車の市販が実現されるようになるなど劇的な変化があると、一気に普及する可能性がある。
 後世にツケが回っていくことになることを防ぐために、地球環境を守っていく取り組みは、現代人が早急に対応しなければならない問題の一つで、多くのテーマが議論されている。
 このような現状を踏まえ、環境問題は地球規模でする話であり、国レベルでの取り組みが大切、ということを認識しつつ、高所大所での議論も重要であるが、縦横に広がりを見せている諸課題の解決のためには、今、地域でできること、個人でできること、そのいずれもが重要であるとの視点に立ち、今回、グループでの検討を行った。

2. 自治体・公的機関での取り組み

 現在、環境行動を社会的に認識させるために、自治体や公共機関、企業での取り組みが重要な役割を果たしている。数年前から始まった、夏季には冷房温度設定を上げるクールビズ、冬に暖房温度設定を下げるウォームビズの取り組みは、一般的に浸透してきている。
 自治体によっては暖房の温度設定を低くして、数千万円の予算節減を図っている例もある。ただ、施設によっては温度が低いことで高齢者から苦情がある事例もあり、画一的な取り組みではなく、柔軟な対応が求めらている。
 また、役所の庁舎にソーラーパネルを設置するといった試みもあるが、これは、電気料節減という経済効果を狙ったものであると同時に、公的機関が人目につくところで実施することにより、住民に対しての環境意識についての啓発という、二次的な効果も期待できる。
 道内では約9割の自治体で家庭ごみ有料化が実施されているが、札幌市で、2009年7月から家庭ごみ収集の有料化が始まったこともあり、グループ内の議論の中では、ごみ処理に関する話題について多くの意見が出た。
 行政としての課題、住民としての感じ方について、札幌圏の各自治体が発行している、ごみ分別のパンフレットやマニュアルの内容を比較検討してみた。自治体が、ごみとして回収して処理するのは、大きく分けて、燃やせるごみ・燃やせないごみ・危険ごみの区分であることは概ね統一されていた。
 その一方、資源物の回収やリサイクルについては、自治体によって行う、行わないなど、地域間での差異が見られた。
 自治体作成の分別マニュアルによると、紙類、缶、ビン、ペットボトルについては、収集するのは市町村、自治会、学校、企業と異なるものの、民間でも自治体でも共通して、リサイクル物として対応している。ただし、紙類といっても、その中では、幅広く種類が分かれるため、リサイクルの内容について自治体間で差異があった。
 特殊な事例としては、食品の発泡トレーや繊維類をリサイクル物として取り扱う自治体もあった。一方、紙類は燃やせるごみとして扱うため、自治会などの資源物回収を利用するようアナウンスをする例、携帯電話、家庭用食用油の廃油といったものを回収する民間企業を紹介しているところもあり、地域ごとの特色が現れていた。
 処分の方法については、廃棄、焼却、埋め立てといった、統一的な取り扱いがなされているが、リサイクルの取り組みについては、各地域でのごみ有料化の取り組みと並行して進められているためか、地域ごとで異なっている印象を受けた。
 分別やリサイクルについての意識をより高めていくためには、受け皿を広げていくために、行政として直接回収などの業務を行わないまでも、他の自治体や民間企業の動きなど、より多くの情報を共有化して地域住民に対して発信を行っていく必要性があると感じた。
 情報の偏在によって、ある地域では「資源物」として回収されている物が、別な地域においては「ごみ」として処理をされてしまうことも想定される。
 自治体におけるごみ処理能力や、地域の民間事業者の回収ルートの範囲など、地域の実情に応じて対応が異なることは止むを得ないが、距離的にも隣接した札幌圏エリア内では、通勤や通学などの移動も圏域内であることから、職場や学校、家庭でごみ処理、リサイクルの方法を統一するような、一定程度共通した認識での取り組みが求められる。
 また、民間事業者が行っているリサイクルに係る業務についても、地域的に無理なくカバーできる範囲であることから、一自治体に留まらない、広域的な情報の共有が必要となってくると推測できる。
 国際的な動きでは、税制の取り扱いについても先進的な取り組みを進めている国もある。環境税などはいろいろな手法があるが、炭素税、廃棄物税などがあり、地球温暖化防止、CO削減に効果があるのは海外で多く導入されている炭素税方式になってくると考えられる。ただし、炭素税方式の中でも様々な手法があるので、導入に向けてはより効果的な手法を検討すべきである。
 また、政治的な意図や経済対策の側面もあると思われるが、国内でも実施された、エコカー減税、エコポイントという制度自体についても、環境に配慮した施策を進めていくという視点で、幅広い層へ啓発を行ったという意味では、一定程度の効果は認めることができる。ただし、暫定的な実施であったため、広がりを持たせるという点では疑問が残る。国策として進める上では、恒久的に続くもので、社会に浸透する取り組みを実施すべきである。

3. 家庭でのエネルギー使用状況と課題

 2008年度にグループ討議を行った結果、「エコ生活実践 やってみよういしかり2008」という待機電力の節電についての実践を行い、2008年全道自治研集会で発表を行った。
 この際に、「世間で騒がれながら、まだまだ意識が実践へと向かっていないことも浮き彫りになったのではないだろうか。この温暖化の問題は、地球全体のことであることもさることながら、一人ひとりの意識の問題でもあり、ローインパクトな、エコ生活を実践していくことが大切だ」とグループ報告を行っていたが、現在でもなお基本的な考え方は変わっていない印象を受ける。
 環境についての意識は高いものの、単純に節電や省資源というだけの取り組みでは効果が薄い。エコ活動の推進については、政策的な理由などの要因で従前の常識が覆ることや、科学技術の進歩により新たな製品が開発されることなど、社会的な変化などによって、大きく前進する可能性を秘めている。
 石狩地方本部自治研推進委員会・地球温暖化防止検討グループでは、家庭での現状を把握するために、グループメンバーを中心に、家庭での燃料消費状況の調査を実施し、2009年11月から3月までの、灯油・ガス・電気・ガソリンの消費について調査を行った。


家庭での燃料消費状況調査で見られた消費パターン(冬季・月間・消費金額比)
Aタイプ
Bタイプ
Cタイプ
Dタイプ
 
 灯油0%  灯油19%  灯油31%  灯油0%  
 ガス64%  ガス46%  ガス54%  ガス0%  
 電気36%  電気35%  電気14%  電気100%  


 調査では、オール電化住宅、ガスボイラーなど、燃料の消費性向も多岐に渡っていることが認識できた。また、北海道内では、冬季間の暖房費についても各家庭でエネルギー消費に占める割合が高く、住宅の構造や家族構成の違いにより、大きく燃料消費スタイルが異なることが伺えた。つまり、一種類のエネルギーだけをターゲットにしての省エネは効果については疑問で、幅広い範囲での種々の取り組みが重要となってくる。
 また、各家庭においては、経済的な側面は大きいが、既に省エネに関する意識を高く持って生活している世帯がほとんどで、現状でも浪費している状況にはなく、すでに各家庭で工夫して取り組みを行っており、新たな取り組みによって、効果を飛躍的に上げることは困難と感じた。また、単年度前月との対照なので、厳密な比較解析は困難であったものの、冬季間、室温を下げる、各種使用料節減の取り組みを行った。

4. 身近に取り組めるエコとは

 身近に取り組めるエコ活動について検討する中で、家庭で簡単にできる省エネの取り組みにより、経済効果、CO削減効果を表す「環境家計簿」に着目した。
 環境家計簿は自治体や企業が、紙媒体やホームページなどにより、多く作成している。エコの意識は大事なものであるが、併せて金銭的にもプラスになるとより効果的な取り組みとなることから、環境行動の推進のために、環境家計簿の製作をしている事例が多く見受けられると推察される。
 しかし、企業・自治体が取り組むエコ活動は、ホームページやPR媒体を作成することで、目標を達成してしまったような印象を受ける。これらの取り組みを一歩進めて、より多く実践されるように踏み込むことも重要である。
 グループでは、エコ活動についての意識や手法についての検討材料とするために、グループメンバーを中心に、環境行動の取り組みを2010年3月に実施し、その内容について検証を行った。
 この取り組みは、暖房の温度設定を1℃下げる、冷蔵庫の開閉回数を減らす、分別・リサイクルを徹底する、といった身近な取り組みを実践してもらい、CO削減、経費の節減の形について考えるものであった。
 実際に行われたものは、節電や給湯時温度、車の燃料の節減などで、体験者の実践を通じて、環境行動についての意見を収集した。
 その中では、簡単なことでも継続して取り組むことが出来るもの、習慣づけて行うことができるものが、自然とエコ活動につながるといった意見が多く出された。


▼環境行動取り組み実施例
・セントラルヒーティングを早く止める ・給湯温度設定を下げる ・シャワーの使用時間を短くする
・電気ポットの保温時間を短くする ・暖房便座の設定温度を下げる ・冷蔵庫開閉回数を少なくする
・電化製品買い替えのときに省エネタイプにする ・電球をLEDタイプに変える
・炊飯ジャーの保温を行わない など節電に関する取り組み 48事例
 1カ月の電気料金節減試算額 (最低)1,044円~(最高)3,020円

・車間距離を取る ・急発進、急ブレーキをしない など自動車に関する取り組み 5事例

・マイバッグを持参する ・マイ箸を利用する ・省包装にする など省資源、ごみ減量の取り組み 7事例


 個人レベルでできるものとして、長時間使用しない家電製品のコンセントを一回ごとに抜くという行動は、やや億劫に感じられるが、スイッチ付きのコンセントを使い、使用していない家電製品の待機電力を減らすようにするなど工夫すれば、手軽にでき、環境教育として子どもたちにも習慣づけることが可能な取り組みなので、今後も継続していきたいという体験者の報告もあった。
 また、社会的な動きによって、家庭にまで浸透していく流れも重要である。スーパーのレジ袋削減は、消費者よりも企業側が先に取り組み、家庭でのエコバッグの普及につながった。レジ袋の有料化は、タイミング的には各地域での家庭ごみ処理の有料化の動きと並行して広がっていったが、現在は大型スーパーなどではレジ袋の有料化を進めている所が増加している。企業の取り組みが生活のスタイルを変える事例で、社会へ浸透するスピードも速かったのではないだろうか。
 そのほか、科学技術の発展による変化として、LED電球が挙げられた。LED電球は、従来型と比較し単価が高いため、一度に多数を取り替えることは困難だが、電球が切れた際に序々に交換していくといった手法は、簡単に取り組めて、負担も少なく、CO削減、温暖化防止も大切なことだが、同時に家計も助かるという経済的な側面が、環境行動の推進には欠かせない要因であるという意見があった。

5. まとめ

 人間のライフスタイルを変えるのは難しく、地球環境を守るという大義名分があっても、ほんの少しでも今の生活が不便になる、大変になるといった場合には、抵抗感を持つ人が少なくない。
 また、世界規模で考えると、地域によりエネルギー消費については著しい差がある。ススキノのネオンに見られるように、個人の生活には直接的に影響のないような形でエネルギーを消費している事例は多くある一方、個人が全くCOを排出しないような生活が営まれている地域もある。
 世界を変えるためには、国を上げての取り組みが求められる。それでも、個人レベルの取り組みが、地域を、社会を変えていくことも数多くある。
 エコ活動の推進については誰もが賛成であるが、そのために何かをしなければならないといった時には立ち止まる。ましてや強制されて取り組むという性質のものではなく、取り組みを進めるための一押しが必要である。
① 経済的にプラスになる
② 簡単に取り組める
③ 家庭、社会全体に広がりを持たせる
 簡単なことであるが、これらの要素が、エコ活動の浸透には重要となっている。国や企業が進める取り組みも非常に重要であるが、最終的には家庭、個人レベルでの取り組みになる。様々なアイデアや工夫を凝らし、家庭から発信していく取り組みが今後、より一層求められて行くのではないだろうか。
 2008年度からグループ会議をスタートし、さまざまな視点で地球温暖化防止について討議を行ってきた中で、学んだことも多かったが、問題点となる部分も改めて認識することができた。今や待った無しの問題である地球温暖化は、誰かに解決してもらうことをただ待つだけでは無く、自ら問題意識を持ち続けることこそ重要である。


石狩地方本部 2010自治研推進委員会 地球温暖化防止検討グループ
山崎 敏晴(江別市職労) 長谷川 睦(札幌総支部) 伊藤 忠雄(札幌総支部) 黒坂 秀勝(札幌総支部)
磯野 宏之(札幌市職連) 中野渡 智(札幌市労) 鈴木 恵子(札幌市労) 相馬 章文(北学労)
平野 正志(北学労) 村上 真仁(江別市職労) 大橋 克則(江別市職労) 巴  嘉之(石狩市職労)
菅原  学(石狩市職労) 阿部 崇宏(恵庭市職労) 山田 孝博(北広島市職労) 高橋 辰徳(新篠津村職)
宮下照太郎(北広島市職労) 石川 公隆(石狩地本)