【自主レポート】

第33回愛知自治研集会
第13分科会 温暖化ガス25%削減 地域での可能性を模索する

 一部事務組合の城南衛生管理組合では、1986年3月に奥山リユースセンターを稼働させた。処理の仕組みは、搬入された不燃ごみと粗大ごみを破砕機にかけ、排出行程で破砕可燃物・不燃・鉄・アルミ・プラスチックの5分別をする。しかし現状は、分別したごみの約80%を焼却処理することとなり、住民のリサイクル意識とかけ離れた実態がある。そこで、住民の環境意識にもとづいたリサイクル実現のためには何が必要かを考えてみた。



城南衛生管理組合における
不燃ごみ(家庭プラスチックごみ)の課題

京都府本部/城南衛生管理組合労働組合・執行委員長
自治労京都府本部・書記長 谷口富士夫

1. 組合の概要

 城南衛生管理組合(以下、城南衛管)は、京都府南部地域の3市3町で構成する一部事務組合である。構成自治体は宇治市(人口19万3,169人)、城陽市(同8万138人)、八幡市(同7万4,229人)、久御山町(同1万6,843人)、宇治田原町(同1万人)、井手町(同8,333人)であり、管内人口は約38万人となっている。
 城南衛管は管内の一般家庭から排出される廃棄物処理(事業系廃棄物を含む)とリサイクル処理、を行う。ごみ焼却工場が2施設(折居清掃工場、クリーン21長谷山)、し尿処理場(クリーンピア沢)、不燃ごみ破砕施設(奥山リユースセンター)、埋め立て処分地(グリーンヒル三郷山)、リサイクルセンター(エコポート長谷山)、ごみ中継施設と本庁からなる。
 今回のレポートは、城南衛管管内での不燃ごみの処理についての課題を記述する。

2. ごみ分別の背景

 一般家庭ごみの処理は各、自治体が責任を持って処理を行う。その前提となるのが、家庭から出す際の分別(ぶんべつ=ごみを種類別に分けて出す)である。各自治体は収集日程と分別の種類を、市民や自治会などに啓発することになる。この「分けて出す」という意識は、環境問題の顕在化(リサイクル・発生抑制・エコロジーなど)、地球温暖化対策からの啓発などでほぼ日本全体に浸透したといえる。
 ごみ分別への啓発と意識の高まりは、法律の整備によって急速に進んだ。日本における廃棄物処理の制度は1990年(明治38年)の汚物掃除法制定から始まり、1954年清掃法の制定、1970年の廃棄物処理法の制定で一般廃棄物として規定され、収集・処理の基盤が固まった。さらに、1991年廃棄物処理法の改正では最終処分場(埋立地)の確保・不法投棄問題から、分別・リサイクルが目的として明記される。1995年に容器包装リサイクル法が制定され、自治体や企業は容器にかかわるリサイクル対策を余儀なくされる。1997年の改正時にはダイオキシン問題と適正処理が謳われ、1999年ダイオキシン対策特別措置法が制定される。2000年には循環型社会形成推進基本法が成立した。
 日本の家庭には、3Rと言われるリサイクル(再資源化)、リユース(再使用)、リデュース(発生抑制)の言葉と、省エネ、エコロジーなど環境配慮型生活に向けた言葉が飛び交うようになり、また焼却場の排ガスにはダイオキシンなどの有毒ガスが含まれているとの見解が出され、「プラスチックは焼却しないほうがよいもの」との意識が高まった。
 そして、ごみ分別は1995年に制定された容器リサイクル法によって指定されたものを、自治体のルートでリサイクルすることにより大きな変化を迎えた。さらに、家庭用廃家電製品のリサイクル法が制定され、そのリサイクルは事業者サイドのルートで処分されることとなった。これらの流れが、管内不燃ごみ処理(奥山破砕処理施設)に大きな課題をもたらすことになる。

3. 不燃ごみの分別

 城南衛管内の分別は、大まかに分類して可燃ごみ・不燃ごみ・資源ごみ・粗大ごみ・不適物となっている。可燃ごみは一般家庭から排出される、厨芥類(食物残渣等)や紙・布など。不燃ごみは同じく一般家庭のプラスチック類、鉄・アルミ・陶器製品・石材・ガラスなど金属や不燃性の材料からなるもの。資源ごみ(ごみという呼称に違和感もあるが)はペットボトル・アルミ缶・スチール缶・牛乳パック・飲料用の瓶・発砲トレーなど。その他、古紙や廃食油・伐採樹木もリサイクルルートが確立されている。
 粗大ごみは、長さ2メートル以上のものや布団類・絨毯・カーペットが含まれる。不適物とはタイヤ、スプレー缶、薬品や燃料など収集しないもの。
 城南衛管管内では、前述したように一般家庭からのプラスチック類を不燃ごみとして分別してきた。そして、不燃ごみは基本的には埋め立て処分をする方法をとってきたが、その量の増加と処分地の延命をめざし、不燃ごみを破砕しさらに細分化する奥山センターを建設した。しかし、センターの処理で極めて困難性が高いものがプラスチック類であった。当初は、破砕され選別されたプラスチック類は加熱圧縮し減容して埋め立てるとしていたが、減容器での火災、埋立地での火災が頻繁になり、減容器は使用されなくなる。また、当初から破砕可燃物への混入量の多さに疑問も出ていた。そして近年、破砕機の経年劣化と不燃ごみの質の変化により、プラスチックを含む破砕可燃物の排出量に看過できないほどの課題が発生しているのだ。
 もともとプラスチックは、開発と需要により市場に出る量が1990年代には極端に増えるようになった。そして、ごみ焼却場では搬入されてくるごみのカロリーが急速に上がり始め、焼却炉の設計燃焼カロリーを大幅に上回ることになり、処理に影響を与えるようになる。また、塩化ビニールを代表とする塩化化合物を燃焼する排ガスの問題で、プラスチックは燃やすと害が発生すると認識されるようになり、「燃やさないごみ=不燃ごみ」に分類されるように、またその分別の徹底について啓発や情報発信が盛んになった。一方で、埋立処分についても大きな課題を抱え、土砂瓦礫とちがい埋め立ても不安定で軟弱な土壌となってしまうのである。

4. 自治体のプラスチック燃焼に対する考え方

 プラスチックの処理については、日本の自治体でも様々な形態があるが、近隣では京都市や京田辺市、大阪府の枚方市も、一般家庭におけるプラスチックは燃焼処理を行っている。ただし、京都市は容器包装リサイクル法に指定されたプラスチックは分別収集してリサイクルルートにのり、最終的に固形燃料として利用されている。
 東京都は2008年から特別区23区でプラスチックの焼却処理という施策転換を行った。埋め立て処分地の延命、プラスチックのサーマルリサイクル、そしてごみ焼却場の処理技術向上がその主な理由とされている。しかし、検討過程には様々な意見が出され、反対する住民や議員が共同声明を出すなど行政の考え方を受け入れられない意見もあった。その意見は、『分別』にごみの発生抑制・減量努力への努力意識が大きな影響を与えていること、プラスックの焼却で有害物が発生する懸念などがあげられている。

5. 奥山リユースセンター

 1986年3月から稼働した、奥山リユースセンターは1時間20トン、1日100トンの処理能力を有している。処理の仕組みは、搬入された不燃ごみと粗大ごみを破砕機にかけ、細かく粉砕し、排出行程で破砕可燃物・不燃・鉄・アルミ・プラスチックの5分別する。
 破砕可燃物は焼却場で焼却処理される。不燃ごみとプラスチックは宇治市にある廃棄物処分公社で埋め立て処分され、鉄とアルミは再生金属として業者に有料で引き取られている。
 搬入・排出割合として2009年度の実績は次の通りとなっている。

運 転 状 況
 稼働時間  254日  1270時間  
 破砕処理対象搬入量  18,797.66 t    
 破砕処理量  18,542.02 t  一日平均破砕量  73.00 t

 

破砕選別量内訳 
種 別
重 量(t)
構成比(%)
 可燃物
13,717.54
73.98
 不燃物1
1,026.50
5.53
 不燃物2
1,718.98
9.27
 不純物
483.36
2.61
 プラスチック
592.90
3.20
 鉄
751.17
4.05
 アルミ
20.52
0.11
 処理困難物
231.05
1.25
合  計
18,542.02
100.00

 

破砕処理後の処理内訳 
区 分
重量(t)
構成比(%)
 焼 却
1,195.93
79.09
 埋め立て
261.40
17.29
 再資源化
54.69
3.62
合  計
1,512.02
100.00

 

6. 不燃ごみ処理の課題

 設計当初は、破砕可燃物の割合として重量換算で搬入量の30%程度として見込まれていた。その数値は、設計値であるから実際の搬入されるごみの内容によって大きく変化することはあり得る。しかし、破砕可燃物の排出率はここ数年上昇する一方で、2009年度では約74%に達した。2010年度に入り、日によっては80%を超えることもあり、処理の限界と分別の課題が明らかになってきた。
 つまり、現状は管内住民が不燃ごみとして丁寧に分別しても、破砕処理することによってその80%近くを可燃ごみとしてごみ焼却場で焼却処分することになるのである。城南衛管の焼却場は高カロリー対策や排ガス対策が施されているため、破砕可燃物を焼却処理しても問題はないのだが、さすがに大型ダンプカーで一度に投入された破砕可燃物をそのまま焼却するにはカロリーが高すぎるため、ピット内で分散させ、ごみカロリーの均一化を図る作業が必要である。粉々になったプラスチックや紙類、繊維類は、一般の可燃ごみに比べると遥かにカロリーが高く、短時間で燃え尽きてしまうのである。ちなみに破砕可燃物の組成分析は平均(2001年~2008年)して、プラスチック52.25%、雑物14.01%、繊維類12.9%、金属類6.38%、紙類6.33%、その他(木・竹・草類、ゴム類、ガラス類、厨芥類など)8.02%となっている。
 いまの処理の在り方を悪いように言い換えれば、環境を守るため、地球温暖化防止のためにごみの分別を徹底して、運搬経費と処理経費をかけ、その分けた後のごみの約80%を焼却処理することになる。サーマルリサイクルとして政策的転換で焼却処理をするのではなく、処理の現状として焼却処理になってしまう。しかも、破砕可燃となることで、分けた物をもう一度混合させる労力まで発生している。
 住民のリサイクル意識とかけ離れた処理実態があり、一方で処理をすることによる必要な経費(税金)が発生してしまう奥山センターは、処理とその効果に大きな課題を持っているのである。

可燃物構成比経年比較 
年 度
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010/4
比 率
53.46
56.72
60.38
64.50
68.10
68.31
73.98
77.99

7. 住民自治と環境対策

 ごみの処理は、生活に密着しているだけに収集方法・収集日程を変更するとなると、管内住民の理解を得なければならない。そして、収集体系の変更、委託業者の対応を含めて大変大きなエネルギーと努力が必要となる。行政当局も簡単に収集方法の変更には踏み切れない。また、管内3市3町がそれぞれ責任を持った収集体制を構築しているだけに、突然「来月からプラスチックを燃やすごみとします」とはならないのである。
 一方で、奥山リユースセンターは老朽化によって2014年には更新される計画となっている。この期を見据えながら、ごみ処理全般を検討しながら現在の不燃ごみの処理矛盾とごみ減量リサイクルに向けての環境政策、焼却場でのサーマルリサイクルなどの課題を解決するために、城南衛管は構成市町と十分な協議を積み重ねなければならない。
 方向性としては、①ごみの減量化を目的にこれまで培われてきた分別の意識を重視し発展させて、容器包装をはじめとしてリサイクルできるものはリサイクルを行う。②その上で、焼却処理の在り方を見直し、リサイクルルートに乗らないプラスチックは焼却処理を行う。③不燃ごみの処理については、分別方法と相まった、より精度の高い処理を行い、埋め立て処分地への負担を軽減させる。の3点を基本に新たな処理方針を立てる必要があるのではないか。
 当局も2010年度を各自治体での処理や分別の調査、2011年度に基本方針や基本計画の策定、2012年度は施設設計、業者選定とし、2014年度からの稼働をめざしている。
 いずれにしても、管内住民の理解と協力がなければ環境政策は成り立たない。また、住民の理解についても相当の時間が必要となる。城南衛管は環境の司令塔を目指すとしていることからも、早期にこの問題について議論を始めなければならない。労働組合としても組合員の論議でよりよい環境政策を構築していきたい。