【自主レポート】

第33回愛知自治研集会
第13分科会 温暖化ガス25%削減 地域での可能性を模索する

 大阪市では、市民が花や緑に対し慣れ親しみ興味を持ってもらうことで、公園緑化事業に対する理解を深めていただき、協力を得るという目的で緑化普及啓発活動を行っています。私たちは、これからの緑化普及啓発活動と環境課題を「公共施設(教育関係)との連携による緑化推進活動」「食文化と環境問題について」をテーマに、天王寺動植物公園事務所と保育所との連携による「リサイクルの輪」の取り組みを進めています。



リサイクルの輪
「動物園と保育所の連携による緑化と食材と自然環境を考える」

大阪府本部/大阪市従業員労働組合・公園支部・天王寺動植物公園班

1. ゾウ糞のリサイクル

 天王寺動植物公園事務所は、動物園で毎日大量に出る草食動物の糞を、廃棄物として全量処理をしてきました。しかし、大阪市の財政危機のなかで廃棄処理費用は、多額の費用がかかるという課題と問題点に直面し、2002年にエコ対策を踏まえ動物園の新たな取り組みとして、「糞のリサイクルと環境教育」をテーマに、ゾウ糞を利用した有機堆肥の加工をはじめました。
 ゾウ糞を有機堆肥にするためには、有機性廃棄物堆肥化装置(バイオメイト)が必要であり、その購入には一時期に費用がかかるという問題がありましたが、毎日大量処分廃棄する費用やエコ利用を促進するとの観点から、予算化をはかり堆肥化に取り組みました。
 この有機堆肥は、製造当時から現在まで、一般市民の皆さんに無料で配布(現在は毎週土曜日の午後2時から約150袋前後)しています。また、公園内での樹木や草花の育成にも利用しています。
 この堆肥を使用した市民からは、「野菜づくりで素晴らしい結果がでる」「使用して非常に良かったので、またもらいにきました」などの報告も頂き、市民の積極的な植物栽培の気持ちを引き出すことにも成功した一事例であります。
 当時における今後の課題は、学校などの花壇や環境保全の教育普及への利用としていくことを挙げていました。今回の保育所(西成区12保育所)と天王寺動植物公園事務所(西成区を管轄区)との「リサイクルの輪」は、ゾウ糞堆肥の市民への一方的な配布から、保育所でゾウ糞を利用して野菜を育て、できた野菜をゾウにプレゼントする付加価値をつけること、すなわち「保育所で育てた野菜(ジャガイモやサツマイモとその茎や葉)をゾウなどの草食動物にプレゼントし、そして糞を肥料として有効に活用する」とした取り組みをセットとしてきたことです。

2. 保育所との連携

 大阪市では、事業所や施設などを利用して区民参加のイベントなどが開催されています。また、各区の主催で各区内の局・事業所の主任が集まり、事業所間の情報交換や現業職員によるイベントの開催に向けた企画・検討を行う場として「現業職員事業所等連絡会議」が開催されています。
 保育所との連携は、この会議への参加とともに、西成区の津守処理場で開催された「つつじ祭り」で、お互いに事業出展(天王寺動植物公園事務所は市民にゾウ糞の有機堆肥の配布及び緑化相談、保育所は食に関する情報提供)をしており、その際に保育所から「花や野菜苗の育て方」の指導・協力の相談を受けたことがきっかけではじまりました。
 行政においては、縦割り行政の克服が課題とされており、こうしたイベントや会議は、「①局間の横の連携による人的なネットワークが構築される。②お互いの業務を生かし、情報交換をすることで現業職員の責任と職場の変化が出てくる。」など政策形成への参画意識が生まれてきたことが評価であります。


3. リサイクルの輪の取り組み

 「リサイクルの輪」の取り組みの目的は、動物園と保育所との連携によって、「子どもたちに野菜づくりと、花・苗を育て、自然環境の仕組みや環境保全の観点、そして食文化と緑の大切さを理解する」ことを学んでもらうこととしました。
 保育所での「リサイクルの輪」の取り組みは、まず土壌づくりからはじめました。樹木や草花の育成、立派な野菜をつくるためには土壌改良が必要であります。そこで、今回のテーマであるリサイクルとして動物園で製造しているゾウ糞の肥を使用して土壌づくりをはじめました。
 土壌改良と畑の畝づくりは、保育所の先生や子どもたちとの協働で行うのは当然ではありますが、作業を始める前に「有機堆肥を製造する目的や利用方法」を説明することにしました。
 子どもたちは、ゾウ糞に非常に興味を示し、「ゾウ糞を手で触れ、臭いを嗅ぐ」など、興味津々でありました。
 保育所の野菜づくりは、野菜の苗植え・支柱立てと誘引・芽かき・施肥などの行程の指導を行い、日々の潅水は子どもたち自身の手で行いました。保育所によっては、若干生育が悪いところもありましたが、育苗のノウハウを指導することで、従前よりも野菜の育ちが格段にあがりました。
 「リサイクルの輪」は、マスコミにも提供し、2009年5月8日、北津守保育所(モデル箇所)での取り組みがテレビや新聞で報道されました。



4. ゾウへのプレゼント

 さて、保育所で育てて収穫した野菜を動物にプレゼントする取り組みです。
 保育所には、園外保育(遠足)などを利用して、動物園に持参していただくことにしました。
 小さな子どもたちの遠足のお供には、お弁当やおやつを入れたデイバッグが定番であります。
 今回の遠足では、その中に自分たちで育て収穫したジャガイモが入っています。
 一方、動物園では、保育所や学校などの教育施設におけるサポート事業「ディスカバー」として、動物講話や園内のミニガイドを行っています。
 今回のプレゼント企画は、この事業でアフリカサバンナゾーンのミニガイドを実施した後、アフリカサバンナゾーンビューポイントで、子どもたちから飼育担当職員に野菜のプレゼント(贈呈式)を行い、その場で飼育員からゾウに食べさせるシーンまでの一括イベントとして実施してきました。



5. 動物園と小学校の生徒たちとのリサイクルの輪

 動物園内では、保育所との連携に加え、天王寺小学校の生徒たちと「花苗づくりと花壇展示」「ライフガーデンづくり」と名付けた取り組みを進めました。
 第1の花苗づくりと花壇展示は、花苗を種から育て、育てた花苗を自分たちがデザインした花壇に植えつけるという、花を育てて観賞するまでの完結型をめざしました。(ただし、日常的な潅水作業は職員で行いました。)
 第2のライフガーデンづくりは、花壇に、キュウリ・トマト・カボチャなどの野菜の植え付け、さらにゴーヤ・ヘチマ・ヒョウタンを緑のカーテン・カーペットづくりとして園内の一角を利用して育ててきました。
 この企画の目的は、①大阪市が提唱する緑のカーテンづくりによる避暑的な効果実験を行うこと、②実際に実がなるところを観察する環境教育の場とすること、③一般の入園者の方々に野菜づくりの楽しさ知っていただくこととし、天王寺小学校生徒との協働作業による「リサイクルの輪」として取り組みました。


6. 緑のカーテン・カーペットづくり

 大阪市は、緑の基本計画アクションプランにおいて、「これからの緑化普及啓発活動と環境問題」をテーマに、温室効果ガス排出量削減やヒートアイランド現象の緩和に向け、「公共施設での植物の栽培によるヒートアイランド対策の推進」としてサツマイモやゴーヤなどを、公共施設の「屋上緑化・壁面緑化」の施策を発表してきました。

 また、平松大阪市長が記者会見で「緑のカーテン・カーペット」を公共施設で取り組むと発言したことを受け、私たち現業職員は、市民への啓発活動や技術指導にも携わっていることから、この事業を公共施設としての保育所においてもゴーヤ・アサガオなどの蔓性植物を使用した緑のカーテン、サツマイモやスイカなどの緑のカーペットづくりを、「リサイクルの輪」の一環として取り組みました。
 この取り組みで保育所の園舎は、夏の日差しから遮られ、園舎内の温度の上昇を遮ったとの報告や子どもを迎えに来る父兄からも感心・興味ある取り組みであるとの意見も寄せられるなど、一定の成果がありました。


7. 今後の展開に向けて

 保育所で取り組んだ「リサイクルの輪」と「緑のカーテン・カーペット」づくり、当然、成功と失敗例がありました。失敗については、その原因を探り次回へと繋げることが重要であることから、12保育所の所長会議や技能職員の主任会議で反省会を行ってきました。
 また、この取り組みを大阪市の全区に進めたいとの思いで、「ゆとりとみどり振興局」と「こども局」の両局で会議を持ち、この間の取り組みの報告と今後の24行政区保育所との連携のあり方、職員の技術指導の携わり方について整理を行い、2009年度から各区の1保育所で試行的に「リサイクルの輪」を進めることになりました。
 天王寺動植物公園事務所では、草食動物を対象に有機堆肥を製造してきましたが、他の肉食動物の糞についても有機堆肥化することとなり、現在、成分調査も終わり局内で試行的に使用し、樹木の育成に関わる調査と分析を行っています。今後、その調査結果に基づいて、良好との判断が出れば市民配布していく予定です。


8. 玉子パックを利用した花苗づくり

 保育所との連携による、第2のリサイクルの取り組みとして「玉子パックを利用した花苗作りにチャレンジ(資料)」を企画・立案し実施しました。
 この企画の目的は、①玉子パックを利用することでリサイクル意識を高めること、②花を育て接することでみどりへの関心を深めること、③家庭や家族の協力を得て実施すること、④リサイクルの輪と同様に環境問題も包含していることから取り組みを行いました。
 大阪市では、「種から育てる地域の花づくり」事業として、各区役所を拠点にした地域のグリーンコーディネーター・緑化リーダーも含めた「市民ボランティア」によって、種から花を育て、その花を地域の公園や道路などの公共施設に植えています。市民が自主的に、きれいな暮らしや住み良いまちづくりに貢献し、愛着を深めながら、潤いのある美しいまちづくりを推進する運動として定着しています。
 こうした理念を保育所を媒介にして、小さい子どもの頃から花を育てる楽しさを味わい、地域の花飾りに貢献する取り組みとして進めていくこともめざしていきたいと考えています。保育所で育てた花苗は、保育所内での花飾りとして利用するとともに、年長児の卒業記念品として自宅に持ち帰りました。


資料