【自主レポート】

第33回愛知自治研集会
第13分科会 温暖化ガス25%削減 地域での可能性を模索する

 松江市では、「リサイクル都市日本一」を環境政策のスローガンに掲げ、市民の環境意識が日本一高いまちの実現に向けた取り組みを進めている。松江市の最終処分場は残余容量約7年分を確保しているが、延命するためには、ごみの減量化を図るとともにリサイクルの推進施策が必要不可欠な状況である。松江市の重要課題であるごみ排出量減少にむけた取り組みについてまとめ、今後ごみ排出量が一層減少するよう提言する。



松江市におけるごみ減量化・再資源化について


島根県本部/松江市職員ユニオン・本庁支部

1. はじめに

 松江市は、水と緑をはじめとした豊かな自然に恵まれている。一方で、地球温暖化、廃棄物の増加、身近な自然環境の悪化など、私たちの地域にも様々な環境問題の影響が現れ、その解決が大きな課題となっている。松江市では、2000年に改訂された環境基本法に基づき「松江市環境基本計画」を作成し、「リサイクル都市日本一」を環境政策のスローガンに掲げ、市民の環境意識が日本一高いまちの実現に向けた取り組みを進めている。
 また、松江市の最終処分場は残余容量約7年分を確保しているが、延命するためには、ごみの減量化を図るとともにリサイクルの推進施策が必要不可欠な状況である。今回のレポートでは、松江市の重要課題であるごみ排出量減少にむけた取り組みについてまとめ、今後ごみ排出量が一層減少するよう提言を行っていく。

2. 取り組み状況

(1) 松江市の廃棄物処理経過とごみ排出量
① 松江市の廃棄物処理経過

1988年
団体回収(再資源化等推進事業)の開始
1992年
資源ごみの5分別(新聞、雑誌類、段ボール、古着、紙パック)の月1回回収開始
1994年
資源ごみに「空き缶」を加え6種分別収集開始
1997年
容器包装リサイクル法の施行に伴う分別収集(ペットボトル、缶、びん)をモデル地区で開始
1998年
10月より分別収集(ペットボトル、缶、びん)を全市で実施(リサイクルステーション)
2000年
4月から、「もやせる(可燃)ごみ」「もやせない(不燃)ごみ」について、指定袋(処理手数料含まない)での収集開始
2001年
10月より分別収集(紙製容器包装、プラスチック容器包装)をモデル地区で開始
2002年
10月より分別収集(紙製容器包装、プラスチック容器包装)を全市で開始
2005年
市町村合併により、ごみ袋を処理手数料を含んだ新たな指定袋へ
2006年
ごみ減量とリサイクル協力のため、事業所への訪問開始

  松江市では、1992年から資源ごみ5分別(新聞・雑誌類・段ボール・紙パック・古着)の回収、2002年からは市内全域に常設式のリサイクルステーションを設置した缶・びん・ペットボトルの収集、2002年10月からは紙製容器包装・プラスチック製容器包装の収集、2006年からはごみ減量とリサイクル協力を依頼するため、事業所への訪問を開始し、更なる資源化を図っている。
② 松江市のごみ搬出量
  家庭系は、もやせる(可燃)ごみ・もやせない(不燃)ごみとも横ばい状態であるが、事業系は、減少している。特にもやせる(可燃)ごみは、2005年度から2008年度の間で4,026t減少している。この3年間で生ごみの再資源化処理量が1,659t増加しており、生ごみの再資源化は減量効果が大きい。もやせない(不燃)ごみの減少理由としては、もやせない(不燃)ごみとして出されていたプラスチックが民間の処理業者へ搬入されRPF(Refuse Paper & Plastic Fuel、プラスチック・古紙・木くず等を原料とした固形燃料)として資源化されるようになったことなどが考えられる。

(2) ごみ減量化に向けた取り組み
 現在、松江市では、資源ごみを「新聞紙」「雑誌類」「段ボール」「紙パック」「シュレッダー古紙」「古着」「缶」「びん」「ペットボトル」「紙製容器包装」「プラスチック製容器包装」「割り箸」「廃食油」「乾電池」の14種類に分別して、回収し再資源化を図り、ごみ減量に向けた取り組みを進めている。
 以下にごみ減量化に向けた具体的な取り組み事例を挙げる。 
① 生ごみ処理容器購入費補助金
  もやせる(可燃)ごみのうち約半分を占めるのが生ごみである。この補助金制度は、市内に生ごみ処理容器を普及させることで、生ごみ減量とリサイクル意識の向上を図ることを目的としている。一般家庭用は、1998年度から実施し、2006年度から補助率1/2にアップ 上限3万円に増額したため、基数が増えたが、2007年度、2008年度と減少傾向にある。事業所用は、1基の単価が、600万円を超えるものもあり、事業者側の負担が大きいと思われる。購入の場合は、補助率:1/3 上限:100万円である。リースにも対応している。
② 廃食油リサイクル
  家庭や事業所の廃食油を回収することによりごみの減量化、水質汚濁の防止、またバイオマス資源の有効利用として、バイオディーゼル燃料化(軽油の代替燃料)し、車両燃料への再利用を行い環境保全全般に対する啓発を行う。環境活動を行うNPO法人斐伊川くらぶより水質保護や環境に関する啓発を行いたいとの要望があり、松江市では2001年度に環境を考える市民の会の水質部会の中で廃食油リサイクル活動の進め方、手法を検討し、NPO法人斐伊川くらぶ・市民の会・行政が連携を取りながら研究・実践した。
 現在、合計34箇所に回収BOX設置。事業所から排出される廃食油については、民間での受入先がない場合に限り、自己搬入で受け入れている。また、松江市の施設である学校給食センター、保育所から定期的に廃食油を回収している。
③ 古紙としてシュレッダー古紙の追加
  従来もやせる(可燃)ごみとして出されていたものを資源ごみとして回収することによって、再資源化を図りごみの減量化を推進するため2008年から実施。
④ 家庭資源古紙の自己搬入
  月2回の定期収集で回収を行っているが、自己搬入も可能とし、ごみの減量を図ることを目的とし、2006年度11月から開始した。ごみが大量に発生する引っ越し時や大掃除時には、資源古紙も大量に発生する。その際、もやせる(可燃)ごみ・もやせない(不燃)ごみ自己搬入する場合に併せて資源古紙も搬入可能となった。
⑤ レジ袋削減
  2008年10月にレジ袋削減推進協議会が設立され、レジ袋削減の必要性、レジ袋無料配布中止の合意形成や実施手法・時期について議論を重ねた。そして、5月から7月まで毎月10日をノーレジ袋デーとすることが決定した。この協議会は環境を創る企業の会の呼びかけにより市内スーパーなど10事業者と市民団体、行政で構成されている。2010年4月からは、市内スーパーなど(2010年7月10日現在 10事業者42店舗)でレジ袋有料化がスタートし、マイバック持参率が約40%から約85%となり、レジ袋削減が順調に推移されている。
⑥ 事業所資源 「古紙の自己搬入」 「缶・びん・ペットボトルの自己搬入」
  家庭ではきちんと分別し、資源化を行っている一方で、事業所にはもやせる(可燃)ごみ、もやせない(不燃)ごみの分別区分しかないために、資源化されにくい状況にあった「古紙(新聞紙・雑誌類・段ボール・紙パック ・オフィスミックス古紙)」は2006年11月から、「缶」「びん」「ペットボトル」を家庭並みに分別し自己搬入することで資源化を進めることを目的として開始した。
⑦ ごみ減量貯金箱
  2008年度から、ごみ減量の新たな取り組みとして、『ごみ減量貯金箱』制度を始めた。家庭や事業所で減らしたごみの量を1トンあたり1,000円としてお金に換算し、貯金をしていき貯まった貯金は、松江市のより良い環境作りのために市民や事業所に上限10万円還元する制度である。2009年度から、還元開始。2008年度の総貯金額は、5,330,000円であった。2009年度からこの貯金を還元し、還元件数は77件、額は462万8千円であった。
<還元方法>
 3人以上で構成された団体または事業者からの申請
 対象事業:美化・環境保全の活動、ごみの減量、資源化の活動
 対象経費:環境活動に使用する消耗品、研修会の講師への謝礼などの経費、ごみ減量、資源化等のための設備費等

2008年度 毎月の減量貯金額(千円)

⑧ 事業所へのごみ減量とリサイクルの協力
  これまで、家庭から排出されるごみについて、分別をし、再資源化してきたが、事業所から排出されるごみについては、廃棄物処理法で、事業者の責任で処理することとなっていることもあり、松江市としての取り組みが進んでいない状況であった。松江市としての事業系ごみの取り組みとしては、2006年度から、「ごみの減量とリサイクルの協力」のため市内事業者への訪問を開始した。2008年度末までに約350箇所の事業所を訪問し、協力を要請してきている。

3. ごみ排出量削減にむけた提言

(1) 家庭系ごみの減量について ~徹底した減量対策キャンペーンを~
① 現状と課題 ~ごみ排出量が減っていない
  家庭系ごみの排出量については、1992年から分別収集の徹底を図っており、分別収集による再資源化が市民に定着してきているが、家庭系ゴミ量はここ数年横ばい状態が続いている。特に家庭から排出されるごみのうち可燃ごみについては、その排出量は増加している。可燃ごみのうちその半分以上が生ごみであり、この間生ごみ処理容器の使用を促進しているものの十分な効果が表れていないことがうかがえる。このことより、排出量を削減するためには、現在の取り組みに加え、更なる対策が必要となっている。特に可燃ごみの削減は重要なポイントと言える。
② 対応 ~徹底した生ごみ減量対策キャンペーンの実施~
  家庭系ごみを削減していくためには生ごみの減量対策に力を入れることが重要かつ効果的である。そこで生ごみ削減の具体策として、「生ごみ減量対策キャンペーン」を提案する。今まで行ってきた各種生ごみ減量対策は、市役所担当課が分かれており個別に実施してきた現状がある。これを関係職場一体となって大々的なキャンペーンとして対策を講じ、市民の生ごみに対する減量化の意識を広め減量につなげていく。キャンペーンは、【生ごみ排出抑制】【生ごみの出し方の徹底】【生ごみ処理機の普及】の大きな3つの対策を柱とし、総合的に実施する。
【キャンペーンの内容】
 5年間程度の期間を設け、その期間で削減目標を設定し、実現に向け取り組む。
 <生ごみ排出抑制関連> ~生ごみを出さない方法を周知~
 ・ 生ごみを出さない調理方法の紹介。
 ・ 食材を使い切り、生ごみを出さないことを目的とした料理教室の実施
 <生ごみの出し方の徹底> ~生ごみの水切り効果を広く市民に浸透させる~
  生ごみの重量の半分は、水分である。生ごみの水切りを十分に行わないでごみとして出すケースが多いので、十分に水切りを行って出すことで、減量対策の効果が大きくなる。また、水分が減ることによる焼却時の燃料削減にもつながる。周知方法については市報だけでなく、各公民館と協力し、公民館で料理教室が行われる際には水切りの効果をうんちくとして伝え実践してもらうなど、地域住民と一緒になって取り組んでいく。
 <生ごみ処理機の普及> ~ニーズにあった処理機の普及を~
 ・ 生ごみ処理機の普及
  1992年から実施しているが、補助件数実績は、2008年度末で全世帯の8.6%である。まずは、その原因を探るためにアンケートを実施し市民ニーズを把握することが必要である。それを踏まえ、利用者に補助金を交付するだけでなくニーズにあった処理機の開発もしていくことが必要である。その際には開発・販売業者にも補助金を交付していくなどして、意欲の向上を図っていく。
 <その他>
  それぞれの取り組みを一括して広報することで、多くの対策でごみ削減に取り組んでいることを市民にアピールでき、生ごみ減量に対する意識を浸透させることができる。また、現在取り組んでいる対策についても更に周知していく必要があるため、削減成果は、ごみ減量貯金として還元されることをアピールするなど、既存事業と連携した取り組みを進めていく。

(2) 事業系ごみの減量対策について ~生ごみ・プラごみの再資源化の取り組み~
① 現状と課題
  事業系ごみは、ここ数年に渡り、年々減少しており、排出事業者の「ごみ減量とリサイクル」の意識は、浸透し始めたところであると考えられる。しかしながら、生ごみについては、まだ再資源化を推進していくべき事業所も残っており、燃やせないごみに含まれるプラスチック系ごみや缶・びん・ペットボトル等については一層再資源化を図っていく必要がある。よって、今後ごみ減量等を図っていくためには現在の取り組みを一層推進していくこと、そして新たな取り組みを行っていくことが求められる。
② 対 応
 <生ごみの排出量削減> ~事業所が利用しやすい生ごみ処理機を使えるように~
  スーパー、旅館、ホテル、飲食店等の生ごみ多量排出事業所を対象とした「業務用生ごみ処理機設置補助金」の普及を推進していくことは勿論のこと、それに加えて生ごみを多量に排出しない事業所についても対応していく必要がある。そのためにも、規模の大小に関わらず処理機が利用促進されるよう、処理機購入費用の補助対象を拡大していくことが必要である。これにより、事業者がニーズにあった処理機を利用することができ、生ごみ排出量の削減につながる。
 <缶・びん・ペットボトルの自己搬入促進> ~自己搬入に価値をつける~
  缶・びん・ペットボトルの自己搬入が進まない大きな要因として、「めんどう」ということが想定される。さらなる啓発活動が最重要となるが、「めんどう」から「自分たちのため」という意識に変えていくためには、自己搬入に価値をつけていくことが必要である。
  自己搬入に価値をつけるために、「エコ協力ポイント」制度を設けてはどうだろうか。自己搬入する毎にポイントを加算していき、20回搬入してくれたら、「エコ協力事業所」として「協力ステッカー」や賞状を渡す。さらに40回に到達すると「優良ステッカー」を渡すなどエコ協力のランクをつけていく。そして事業所を訪れる市民がステッカーを見ることによりその事業所が好印象となり、事業所にメリットが発生する。これにより「もっとリサイクルに協力していこう」という意識が向上し、結果資源の再利用化が促進される。
 <プラスチックの再資源化促進>  ~事業者の理解・協力を求めていく~
  家庭では、紙製容器・プラスチック製容器は分別して回収しているが、事業系では、それぞれ分別せずにもやせる(可燃)ごみ・もやせない(不燃)ごみとして出されている実態がある。特に搬入されているもやせない(不燃)ごみのうち、その6割が再資源化可能なプラスチックであり、これをリサイクルにすればごみ量は大きく削減できる。ごみ量削減のためには、プラスチックをRPF(固形燃料)として資源化していくことが効果的である。よって、排出事業者に対してもやせない(不燃)ごみのうちプラスチックを分別し、それを民間のRPF処理業者へ搬出し減量化に協力してもらうよう要請することが必要である。そのためにも、RPFの存在を事業者に知ってもらえるよう啓発をすすめ、一層の協力を依頼していくことが最重要である。

 どの提言においても、排出事業所、行政が一体となり取り組みを進めていく必要があるため、両者の連携・合意形成が必要となるが、話し合いを通じてごみ減量・リサイクルへの理解が深まるため効果的な方法であるといえる。

4. おわりに

 松江市は「リサイクル都市日本一」を掲げ、環境施策を進めている。我々労働組合としてもリサイクル社会の構築に向け、職員自ら意識の高揚を図り、市民や企業に対して指導・啓発を行い、そして一体となって「環境自治体づくり」を推進し、できることから一つ一つ取り組んでいく必要がある。
 現在、松江市では、新ごみ処理施設(ガス化溶融炉)が建設途中で、2011年度稼動に向けて、ごみの分別・回収方法について検討中であるが、新ごみ処理施設は、現在のもやせない(不燃)ごみとして、収集しているもののほとんどがもやせる(可燃)ごみの扱いとなり焼却する予定となっている。このことにより、今まで「資源ごみ」として分別回収できていたものをもやせる(可燃)ごみとして出されることが懸念されている。今まで行ってきた取り組みによって市民に定着してきているごみの減量化意識が低下しないよう取り組んでいかなければならない。今後、約900箇所で行う予定の分別方法の説明会や既存の施設であるエコステーション松江(不燃物処理場)等を利用・活用して「分別方法の徹底」に併せて「減量化・再資源化の啓発」を行うことで、より一層の減量化が進むよう活動を進めていく必要がある。
 また、事業系ごみについては、家庭系と同様の分別・回収方法が確立できれば、一層の減量化が進むと予想される。そのためには、民間処理業者、排出事業所、行政の連携が必須であり、実現をめざして、行政が先頭にたって行動していかなければならない。
 ごみの減量化の取り組みをはじめ、様々な取り組みは、行政だけで行っているもではなく、市民(事業所を含む)の協力により成り立っている。今後も組合として市民からの意見を取り入れ、市民との協働による取り組みを推進していくべく提言、そして実践を行っていく。