【自主レポート】

第33回愛知自治研集会
第13分科会 温暖化ガス25%削減 地域での可能性を模索する

 地球温暖化問題の関連として、無駄なエネルギー消費を抑えるべく、地方自治体として持続可能な対策を論議してきた。これまではリサイクルの方法について検証を行ってきたが、今回、廃プラのリサイクルについて、実態と今後の方向性を再検証し、有効な政策を提言したい。



県内のリサイクル事業の実態と検証(廃プラ)


大分県本部/大分県地方自治研究センター・環境自治体専門部会・リサイクルグループ

1. はじめに

 昨今の地球温暖化問題や二酸化炭素排出抑制の議論が高まるなか、環境自治体専門部会のリサイクルグループは、各単組の部会員による月一度の定期的な協議の中で各自治体のリサイクルの検証を行い、昨年は「リサイクル問題」として、県内のリサイクル事業の実態を検証し中間発表としてまとめた。そのなかで、資源ごみとして回収される空き缶や古紙のリサイクルは、費用の面でも効果の面でも問題はないがPETボトルについては、各自治体で様々な形態であることが判明した。今年は、前年度の研究を引継ぎ、家庭ごみのなかでも大きなウェイトを占めており、また多くの自治体では燃やせるごみとして処分されている「廃プラスチック」のリサイクルについて追加検証を行うことにした。

2. 活動の経過

 昨年の検証の結果、ごみの分別内容については各自治体ともほぼ優等生であったが、食品トレイ等の廃プラスチックは、近隣にリサイクル会社が無いため、分別されず燃えるごみとして処分している自治体が多数を占めていた。
 そこで、廃プラスチックについて再度アンケートをお願いして情報を集めることにした。
① 自治体での廃プラスチック分別の有無
② 分別を行っている自治体の場合、その相手方

 アンケート結果で、廃プラの分別を行っている自治体は、竹田市・臼杵市・津久見市の3市のみであった。竹田市は、有料で民間のリサイクル会社に、臼杵市は、入札によりリサイクル会社へ、津久見市は、一般廃棄物処理業者(サーマルリサイクル)に委託している。
 ここまでの調査で、どのように選別されてリサイクルされているか、直接民間リサイクル会社に行き現地視察の必要性を感じたところである

3. そもそも廃プラってなんだろう?

(1) 「プラスチックの正体」
 プラスチックは、石油や天然ガスなどから作られており、原油がプラスチック製品になるまでの流れは、このようになっている。

 それは軽くて、丈夫で、しなやか。しかも空気や水を通さず、中身をしっかり守る。「こんな優れ物、他にはないということで、今や食品をはじめとする多くのパッケージに使われ、なんと皆さんの家庭から出るごみの1/4が「プラ」という驚くべき状況になっている。
プラスチック製の容器や包装は多種あり、おおむね次のように分類される。
① ポリ袋・ラップ類   菓子やパンなどの袋・トレイのラップ・納豆のラップ等
② ボトル・チューブ類  洗剤などの容器・シャンプー等の容器・練りワサビ等の容器
③ トレイ・パック類   発砲トレイ・卵などのパック
④ カップ類       カップ麺の容器・プリンなどの容器

(2) 「プラ」「PET」のマークの意味はなんだろ?

識別マークが意味するもの 
 

 識別マークは材質がプラスチックであることを示す表示ではなく、容器リサイクル法の対象である容器包装を示す表示である。
 だから次のようなものには表示がなく、リサイクルの対象にもなっていません。
① プラスチック商品(容器包装ではなく、中身)
② サービスの提供に伴う容器包装(例えばクリーニングの袋)
③ 中身商品と分離して不要にならないもの(例えばCDケース)

(3) 「プラ一族」に先駆けてリサイクルが始まったPETボトル
 軽くしたい、中身を見せたい、密封したい……用途によって、プラスチックは自在に性質を変えることができる。
 プラスチックの一種、PETボトルは軽くて、持ち運びに便利なため一気に普及した。急に増えてしまったPETボトル。これはリサイクルしないと大変なことになる。そこで材質が均一で、まとめて集めてリサイクルしやすいことから、いち早く独自にリサイクルされるようになった、という背景がある。

(4) プラスチックの長所と短所
 プラスチックにはたくさんの長所がある一方、もちろん短所もあり、万能ではない。成形しやすいという長所は、一方では熱に弱いという短所になりえる。同様に電気絶縁性が高いと、表面に静電気が起きてホコリが付着してしまう。
 プラスチック業界では、長所を活かし、短所をカバーしながら、原料の特徴をうまく組み合わせて色々な分野の製品を作っている。例えば容器包装プラスチックは消費者の手元に届くまでの長い時間に多くのメリットがあるのだが、消費者の手元に届くとすぐに「要らないもの」になってしまい、廃棄物になってからのほうが注目されがちである。そうなると、腐食しないという利点も、自然に還らないという欠点になるし、軽いため、ごみがかさばってしまうという難点でもある。多種多様なプラスチックが開発されることで、ごみの種類も多様になり、そのことが廃プラスチックの処理やリサイクルを複雑化しているといえる。また、プラスチックは木製品や金属に比べ、使い方や環境次第で寿命が短くなってしまうことがある。これは高分子化合物であるプラスチックの本質的欠点ともいえることだが、紫外線や酸素、熱などさまざまな原因によって高分子鎖が切断されてしまうと、もとのプラスチックの特性を発揮することができないため、廃棄せざるを得なくなる。だからこそ、どのようにリサイクルするかが大切になってくるのである。
 プラスチックにとって、利便性とごみ問題は表裏一体。プラスチック業界では、リサイクルの手法や、よりリサイクルしやすい製品の開発など、さまざまな技術的努力が日々続けられている。

(5) 「廃プラ」ってどうやって出したらいいの?
 軽く汚れを落としてください。きれいな「プラ」がベトベト「プラ」と一緒に出すと、きれいな「プラ」までが、「ダメプラ」になってしまうので。

(6) 「廃プラ」ってどんなモノに生れかわるの?
 毎年十数万トンが、意外なモノ(プラスチック製品)に生れ変わって、再び私たちの暮らしに役立てられている。例えば、道端のポール・プランター・フェンスやベンチ・工業製品を運ぶパレット・マンホールのふたなど。

(7) 「製品プラ」の現状と課題
 容器包装プラスチックは特定事業者にリサイクル義務が課せられているのに対し、それ以外のプラスチック製品(製品プラ)の処理については法律も定められておらず、リサイクルシステムも確立されていません。「同じプラスチックなのに、なぜ?」と思う方もいるでしょう。製品プラもリサイクル出来なくはないのである。単一素材で、ある程度まとまった量が排出されるのであれば、マテリアルリサイクルも可能。しかし、ほとんどの自治体で、容器包装以外の製品プラが集まる量は非常に少ないのではなかろうか。
 もともと製品プラは廃棄されることを前提として作られていない。バケツや弁当箱をしょっちゅう買い換える人はいないだろうし、プラスチック製品は破損や変形が無ければ10年でも使える。いつ廃棄されるかわからないものに対してメーカーにリサイクル費用を負担させるのは現実的ではない。もしリサイクルをするとしたら、熱回収や発電など、ある程度経済の効率性もあって環境負荷の少ないやり方を選択するのがベターである。
 近年、多くの自治体において、製品プラが「不燃」から「燃やすごみ」になった。製品プラを焼却して量を減らすこと、これは埋立処分場の延命に大きく貢献する。また廃プラを燃焼させることで焼却炉の助燃剤が節約できるというメリットもある。カロリーの安定しているRPF化も有効な利用法。
 今はまだ自治体で回収している製品プラの量も把握できてないが、今後データが集まってくれば、製品プラに関する課題と活用の仕方も整理されていくであろう。

4. 民間施設の視察状況

(1) 現地視察について
 2010年6月17日、わたしたち環境自治体部会員は廃棄物リサイクル(特に廃プラスチック)の実態を探るため、大分市片島にあるゆうび株式会社に視察研修に行った。
 ゆうび株式会社は1981年に設立され、県内に5つの事業拠点を構え4社のグループ企業を有する、大分県下の廃棄物処理では代表的企業となっている。また、100人の社員を有し、本社工場の1日の処理能力は、破砕・選別・圧縮梱包施設合計で440tにもなる。

(2) 現地視察の感想
① 私達が視察したのは、廃棄物の中間処理施設である。その施設での廃棄物は一般的に
  収集・運搬→処理施設への搬入→選別→(洗浄)→梱包→次の工場への搬出
 という手順をたどる。
  上記の工程の中で、いちばん労力がかかるのが選別工程。選別を徹底して不純物を取除いていけば次の段階で原料として高く売却できるという原則があり、それだけに多くの労力がこの選別工程にあてられていた。また、この選別工程にはペットボトルの選別ラインなどで身障者も雇用されていた。廃棄物リサイクルについては、CO削減効果の大小について議論があることは承知しているが、このような工場が「産業」として成立しつつあり、多数の雇用も生み出していることは、これからの廃棄物処理行政を考えるときその育成・強化に対しても考慮すべきものと考えた。
② 2010年6月17日 ゆうび株式会社において、廃プラスチックの処理状況等の視察を行った。廃プラの処理施設には、分別されたPPバンド・エアクッション、透明袋などを圧縮機かけている作業が行われていたが当日は、家庭から排出される廃プラスチックの選別など観ることができなかったので残念だった。
  廃プラスチックを分別収集していない自治体にしてみれば、リサイクルできるものを燃やせるごみで排出している現状に今後どうしていくべきか考えさせられた。しかし、廃プラスチックを分別収集するには、汚れをきちんと落とすことや、正確な分別の徹底、焼却施設においても燃焼効率の問題など課題は山積している。いずれにせよ、ごみを排出する人がマナーを守り正しい分別をし、少しでもごみを減らしていく意識を持てば、地球温暖化防止や二酸化炭素排出抑制にも貢献できると感じた。
③ 古着がどの業者でも厄介者になっている現状で、新たなルートを開拓していく姿勢がすばらしいと感じた。また、自分たちの考えているより多くのものがリサイクル出来ない(包装紙等)と分かり、今後の分別の課題にしていこうと思った。
④ 民間のリサイクル会社ゆうび株式会社の施設見学をさせてもらい、リサイクル会社を見学するのは初めてで、こんなに整頓されているとは思いませんでした、また、古着のリサイクルまで扱っているとは知りませんでした。廃プラスチック選別ラインを見させてもらいましたが、こんなに選別が大変だとは思いませんでした。
  まず、古紙の中に交ざっている廃プラスチックや、廃プラスチックで分別された物を、白い物・色付き・ハンガー・紐等に分け、きれいで汚れていない物は破砕し水洗いをして加工業者へ卸します、後は、圧縮し包装して業者に卸します。リサイクル行うのにごみを集め選別し、再生する業者に卸すまでに、こんなに経費が掛かるとは思いませんでした。
 自分達がもっと分別を良くすれば業者の手間がはぶけるが、雇用を考えると、ある程度の分別でたくさんごみをただ出せばよいのか? と、単純な考えではごみは減らないと分かりました。

5. 廃プラのリサイクルの方法

(1) ケミカルリサイクル
 プラスチック製品を化学的方法により分子レベルまで分解して、再度精製するリサイクル。分子レベルまで分解するので、品質の劣化がほとんど無い。問題点としては、同じように見えるプラスチックを種類ごと(PP、PE、PS、PVC等)で分別しなければいけないため、リサイクルに出す方としては困難である。

(2) サーマルリサイクル
 廃棄物であるゴム製品やプラスチック製品を燃料とし、焼却することで得られる熱エネルギーを発電等に利用するリサイクル。以前は焼却することで高熱になり、焼却炉が耐えられない等の理由により出来なかったが、近年では技術の向上のため可能になってきている。
 問題点としては、「燃やすことでリサイクルできる」と誤解されてしまい、ごみの排出が抑制できなくなることである。

6. まとめ

 今回は廃プラの検証であるがリサイクルの現場を知ることにより、現実に分別の苦労を誰が負担すべきかがよく見えてきた。「混ぜればごみ、分ければ資源」まさしく、中間処理業者は我々にできない分別を細かくすることによって、資源の無駄使いの抑制に貢献している。さらに、産業として地域での雇用を生み出し、国際貢献にも寄与している部分もあるようだ。
 我々の活動は、資源の無駄を省くことと、その過程で自治体間で分別のあり方を共通化できないか? というサブテーマをあわせて研究スタートをした。ごみ袋の有料化によって、ごみの発生量が抑制された事実もかんがみ、リサイクルにもある程度のコスト負担を理解していただいて、それを、新たな産業・社会の仕組みに還元することが重要ではなかろうか? 分別方法を啓蒙していくことで、資源節約や環境行政に理解を深めてもらうことも大切だが、せめて、県という単位では分別方法は統一して住民に無駄な混乱と偏った不利益を押し付けないことも大事である。真面目にごみ分別に取り組んでいる地域と、そうでない地域の格差をどう埋めるかと、分別収集事業者の産業育成をいかにバランスさせるかが、我々に課せられた新たな課題である。
 持続可能な地球温暖化対策は、身近なところからもスタートできるものである。地域住民と膝をつきあわせて日々の仕事を営んでいる、我々地方自治体職員こそ、啓蒙活動の最先端に位置すべきであると確信する。