【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅳ-④分科会 自治体から発信する平和・共生・連帯のメッセージ

反核平和の火リレーの取り組み


北海道本部/青年部

1. はじめに

 昨年、北海道の反核平和の火リレーは20回目の節目をむかえ、非核自治体宣言の未決議自治体全てで要請行動をし、宣言を決議(採択)すること、道内180自治体全てに平和の火を通すことを獲得目標に取り組みをすすめました。
 自治労北海道本部青年部としても各単組・総支部が各地区・地域段階で主体的にリレー運動に関わるとともに参議院議員選挙闘争にも結合した取り組みを行ってきました。

2. 反核平和の火リレーとは?

 反核平和の火リレーとは「語り継ごう、走り続けよう」をスローガンに、広島市平和公園に燃え続ける「平和の灯」を掲げたトーチを手から手へ、自分の町から次の町へ青年女性が平和への思いとともに走りつなぐものです。
 1982年に被爆地ヒロシマの青年たちによって開始されました。当時はソ連への中距離核ミサイル配備が契機となりヨーロッパを中心に反核運動が盛り上がっていました。日本でも「平和のためのヒロシマ行動」に20万人が結集するなど反戦・反核・平和運動が高揚しており、この運動の継続と一層の発展のために反核平和の火リレーは開始されました。
 北海道における反核平和の火リレーの始まりは、多くの道民の反対にもかかわらず、建設・核燃料搬入・試運転が開始され、泊原発反対運動が巻き起こっていた1988年でした。また、政府・動燃の幌延町への核持ち込みにむけたボーリング調査の結果が発表された時期でもあります。このような情勢のなかで、青年だからできること、反対運動を大きく盛り上げるために反核平和の火リレー運動は開始されました。
 第1回は、幌延から泊まで430km全ての道を約1,000人のランナーで走りつなぐものでしたが、「どうやったら住民にアピールできるのか?」「どうやったら多くの仲間が参加できるか?」議論を重ね、昨年の第20回は集会参加もあわせ、1万人規模の大きな取り組みへと発展しました。

3. 反核平和の火リレー運動の意義

(1) 反戦・反核・平和闘争の強化
 核兵器の悲劇・悲惨さを語り継ぐこと、核兵器廃絶のために走り続けることです。
もちろん、運動的には「非核宣言と平和行政」の自治体要請や、地域への宣伝活動、事前学習会や反核平和の夕べなど様々に大切な課題があるのですが、これらはある意味では「リレー」という形態をとらなくても可能な取り組みです。
  "なぜ走るのか?"―この素朴な問いかけこそが、リレー運動の大切な出発点といえます。自分たちの町にヒロシマの平和の火を迎え入れ、町内を灯すのは反核平和をこの町で追求するという決意です。しかも、町内をくまなく灯し、できるだけ多くの人に訴えるためには、それだけ距離も延びます。

(2) 自治労北海道青年部の組織強化
 この反核平和の火リレーを通じて自治労北海道青年部の強化を図っていきます。地区・地域・産別を超えた仲間同士で、自分たちの職場にどのような平和を脅かす問題が現れているのか、そもそも自分たちの職場や労働組合の取り組みはどのようになっているのかを交流しあいながら運動を強めていくことを重要視しています。
 これまでも、単組・総支部内の関わりを持てていない青年と交流することはもちろん、リレー運動を通じて、青年部が休部状態の単組の青年とつながりを持ち、その後の合同学習会に繋げるなど、リレーを活用し組織強化を図ってきました。

4. 第21回反核平和の火リレーにむけて

(1) 情勢と重点課題
 有事法制や自衛隊のイラクへの「派兵」をはじめとして、自民党政権の下で次々と反動的な法律が成立し、私たちの平和と民主主義が奪われてきています。さらに、憲法改悪や自衛隊の海外派兵「恒久法」制定の動きが活発化しています。
 今年度の第21回の取り組みは、もっと大胆に多くの団体・道民に参加を呼びかけていきます。
① 特徴的な国際情勢
 ア 中東では、イラク・アフガン侵略戦争は泥沼化し、紛争は全域へと拡大し、イランの核開発への動きなどをめぐり軍事的緊張が高まっています。こうした事態のなかで、米国の「単独行動主義」を基本とする軍事的戦略の崩壊・支配力が低下し、国連を中心とする国際的平和秩序の再確立への動きが大きくなっています。
 イ 米国における民主党大統領選出を前提とした政権交代への動きは加速し、イギリスのブレアからブラウン首相への交替、オーストラリアにおける労働党政権の誕生など、ブッシュ・ネオコン路線とそれに追従する政権の終焉が始まり、新たな政権が拡大しています。
 ウ 市場万能主義路線のなかで、世界的な貧困の拡大が深刻化する事態に対応して、「人間の安全保障」に基づく取り組みが拡大しつつあり、東北アジアでは、米国の中国包囲網政策の見直しと、6カ国協議の前進にみられる米朝関係の前進など非核・平和体制確立への動きが加速しています。
 エ このような動きのなかで、米国の世界経済支配の崩壊と経済危機の進行とBRICS諸国の台頭にみられるように世界経済が混迷するとともに、「地球環境の深刻化」とそれへの対応が緊急に求められています。
② 特徴的な国内情勢
 ア 参議院での与野党の逆転、国会での与野党対決激化、厚労省、防衛省などの腐敗に代表される戦後の自民党政権とそれを支えた官僚体制が崩壊過程へ入り、新たな枠組みを求めて、野党、労働団体、平和団体、市民団体、市民の力が大きく結集し、政権交代への流れが加速しています。
 イ 福田自公政権は、ブッシュ政権追従による「イラク・アフガン侵略戦争」への加担、米軍再編成の強行実施、ミサイル防衛の強行、教育への介入、自衛隊海外派兵の恒常化の動きなど日米軍事一体化・解釈改憲・憲法改悪路線・戦争する国づくり路線を継続し、その路線へ対抗して、平和団体、市民団体、野党などの平和運動が強化されています。
 ウ 市場万能主義路線と公的規制・公的サービスの解体を継続し、貧困・格差社会をさらに進行させ、矛盾と国民生活の破壊がさらに拡大し、それに対抗して「生活重視・ストップ・ザ・格差社会」の運動が高揚しようとしています。
 エ 政府・電事連は、原発推進・プルトニウム利用路線を継続・強行するなかで、原発運営管理システムの揺らぎと事故の続出、地震による安全神話の崩壊などの事態が進行し、原発関連施設立地県の市民団体、脱原発団体、消費者団体などが、路線転換を求めて運動が高揚しようとしています。
③ 在日米軍再編問題
  日米両国政府は2007年に入り、在日米軍再編の具体的な動きを開始しました。沖縄県名護市のヘリ基地建設の前提となる環境調査のための機材設置強行、航空自衛隊はPAC3の3基地への配備、米戦闘機の訓練移転、さらには、民間港に入港した米軍艦船は実に28隻にのぼっています。
  政府は昨年5月、米軍再編特措法を成立させ、在沖海兵隊のグアム移転のための費用支出や米軍再編を受け入れた自治体への再編交付金の支出を決定し、今年1月には新テロ特措法を、衆議院本会議での再可決によって強行成立させました。
  また、在日米軍司令官は、退役する通常型空母キティーホークの後継艦として原子力空母ジョージ・ワシントンを、2008年8月19日に横須賀を母港として配備すると表明し、横須賀市長は追認しています。
  さらに、沖縄県では2008年2月10日、米海兵隊兵士による女子中学生への性暴力事件が発生、2月18日にも、米陸軍兵士が、フィリピン人女性への性暴力事件を起こしています。米兵の凶悪犯罪は、沖縄だけではありません。2007年10月には広島市で、2006年1月には横須賀市で海軍兵士が、強盗目的で女性を殺害しています。
  米軍兵士による事件・事故が起こるたびに、在日米軍兵士の特権的地位を認めた「日米地位協定」の改定が求められますが、日本政府は「改正」には消極的で、「運用改善」で対処しようとしています。
  道内では米軍艦の相次ぐ民間港への入港や千歳基地への戦闘機訓練移転も強行されました。また、一昨年来、浜大樹での訓練は、往路での海から陸への揚陸とは反対に、復路における「楊塔訓練」(搭載訓練)として実施されています。首都圏でテロや大規模災害を想定した北部方面隊の「共同転地訓練」が実施され、この中で浜大樹での訓練が位置づけられることとなりました。
④ 核兵器廃絶問題
  小泉・安倍と続いたアジア軽視内閣で、とりわけ中国・韓国・朝鮮などとの関係は悪化していました。福田内閣への交代によって対中関係は、若干改善されたものの、基本的な状況は変化していません。なかでも朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との関係正常化が重要です。韓国で南北融和よりも核問題解決強調の李明博が大統領に当選したことや、3核施設を2007年内に無能力化は実現していないものの、半世紀以上つづいた朝鮮半島の民族の分断と戦争状態の解消という方向に大きな変化はなく、米国もテロ支援国家指定の解除からさらに米朝国交正常化へと進展しようとしています。福田首相は当初、対話姿勢を示すかに見えましたが、北朝鮮に対する経済制裁を延長し、朝鮮総聯関係団体、関係者への抑圧を続けています。私たちは、対話と協調、東アジアの平和環境醸成の点でも、世紀を超える朝鮮半島との不正常な状態を変える可能性をもつ「日朝ピョンヤン宣言」を基本に、国交正常化に向けた糸口を切り開いていく必要があります。
  また、人類に筆舌に尽くしがたい恐怖と被害を与えたヒロシマ・ナガサキの原爆投下からすでに63年が経ちました。これまで被爆体験を原点に核廃絶と世界の恒久平和を訴え続けてきましたが、3万発とも言われる核兵器の存在のなかで、核と戦争の脅威から、いまだ人類は解き放たれていません。
  日本政府は、核廃絶を訴えながらも、米国の「核の傘」にあるという矛盾した政策を取り続けています。被爆国の責務として積極的に世界に先駆け平和と核軍縮政策のリーダーシップを取ることこそが重要です。しかし現在の福田政権でも、テロ特措法の延長強行を行い、積極的にアメリカの世界戦略のシステムのなかに加わろうとしています。なかでもミサイル防衛(MD)の積極的な開発と導入は、アメリカの核の傘とあいまって東北アジアに新たな軍拡に道を開き、不安定要因を作り出すものとなっています。そのうえアメリカとの共同運用によって、憲法で禁止されている集団的自衛権の行使にまで踏み込もうとしています。
⑤ 人権確立問題
  ここ数年、微罪逮捕など、警察・監視社会化による人権侵害事件が多発しています。国会に上程されている「共謀罪」は、犯罪の実行の有無にかかわらず、法律違反について話し合うだけで罪とする悪法で、市民生活のすみずみまで関わるものです。与党は制定を断念していません。
  また、法務省は人権擁護法案の国会再提出への動きを強めていますが、これまでの政府与党案は、人権委員会を法務省外局とするなど独立性やメディア規制などの問題があるのに加え、自民党には人権擁護委員に国籍条項を設定するなど外国人住民排除の動きもあります。
⑥ 原子力政策問題
  原子力推進派は、プルトニウム利用路線の破綻にもかかわらず六ヶ所再処理工場の建設やプルサーマル計画をいまだ放棄しようとはしていません。特に六ヶ所再処理工場は、2008年7月以降の操業開始に向けて、実質的な稼働に近いアクティブ試験の最終段階に移り、大量の放射能をまき散らし、プルトニウムを大量に作り出しています。
  また、昨年7月に発生した中越沖地震は、原発災害の可能性を私たちに示しました。現在柏崎刈羽原発の7基の原発すべてが停止し、運転再開については見通しが立っていませんが、今年中には何らかの形で運転再開にこぎ着けようとの動きがでています。柏崎刈羽原発の再稼働に反対するとともに、「地震大国=日本」での原発の危険性を全国的に訴えることが重要です。
  さらに、高レベル放射性廃棄物問題が浮上しています。「文献調査」にかかわる交付金が、2億1,000万円から10億円に増額されるなか、自治体財政が危機に瀕している地域を候補地として金で釣りあげようとする動きが活発化することは必至です。幌延をはじめ、道内市町村でも十分警戒しなければなりません。道北で先行実施する「核受け入れ拒否」の自治体決議・首長表明の取り組みを全道に拡大する運動を追求しなければなりません。
  一方、幌延では、建設地の土壌からカドミウムなど有害物質が検出されていたにもかかわらず、この情報を公開していないなど、原子力機構の隠蔽体質は依然続いています。また、ウラン残土で造られたレンガが幌延町にも運び込まれる恐れがあります。粘り強い「核の持ち込みを許さない」運動の強化が求められます。

(2) 具体的に
 反核平和の火リレーを通じて、あらためて反戦・反核・平和闘争の意義や課題を学習するとともに、青年の主体的な取り組みから青年部の組織強化へつなげていきます。
 獲得課題としてきた「非核・平和自治体宣言」については、全道で約100の自治体で宣言されているものの、拡大については市町村合併を理由とした廃止・削減によりなかなか進んでいない状況にあります。平和行政推進についても、自治体の財政悪化により縮小・廃止されているのが実態です。改めて、単組・総支部青年部が自分の町の「非核・平和自治体宣言」がどうなっているのか? 点検活動かつどうから反核平和の火リレーと結合させた取り組みを行います。
 安心して生活できる職場・社会をつくるためにも、生活・職場実態討論から反戦・反核・平和闘争やあらゆる闘争を結合させ、たたかいを進めていきます。