【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第1分科会 「新しい公共」と自治体職員の働き方

 悲惨・悪質な交通事故が多発する中、交通安全・事故防止対策に対する住民の関心が高まっている。住民と行政や地域の連携のとれた一体化した交通安全運動が求められている。現在、さまざまな交通安全活動が行われているが、現在抱えている問題と、交通安全活動の課題・今後のありかたについて提言する。



地域住民と共に歩む交通安全活動について


北海道本部/紋別市役所職員労働組合 叶  順之

1. 交通と地域の安全と安心について

 だれもが安心して暮らせる住みよい社会を形成するため交通事故のない、安全で安心な社会を実現することは、重要であると共に交通事故がもたらす社会的、経済的損失は甚大であることから、究極的には交通事故のない社会をめざす必要がある。
 交通事故のない安全で安心な社会実現をはかるには、弱い立場にある歩行者等の交通弱者の安全を確保することが必要であり、特に高齢者や子どもにとっての道路の安全性を高めること、「人優先の考え」を大前提として通学路や生活道路・幹線道路の歩道の整備が必要であるのと同時に、住民自らの交通安全意識の醸成も重要である。
 このため、すべての住民が交通事故の危険性を十分認識した上で、交通事故のない社会をめざし、事故を起こさない、事故に遭わないという意識を再認識し自分たちの住んでいる地域から悲惨な交通事故を撲滅するという住民一人ひとりの意識が必要である。
 また、交通安全教育や交通安全広報活動・交通安全運動を通じて地域住民自らが参加し安全で安心な地域交通社会を構築しようとする前向きな取り組みと、自発的な交通安全活動への参加・協力が求められている。

2. 交通安全に対する行政と住民の取り組み

(1) 紋別市の交通安全運動の取り組み
 紋別市においては、年間7回の交通安全運動を展開している。
春の全国交通安全運動(4月)・春の行楽期の交通安全運動(5月)・夏の交通安全運動(7月)・秋の全国交通安全運動(9月)・秋の輸送繁忙期の交通安全運動(10月)・冬の交通安全運動(11月)・オホーツク紋別交通安全運動(2月・紋別市独自の冬季運動)
 夏の交通安全運動では、南ヶ丘町内会の協力を得てセーフティロード作戦を実施しているほか、秋の全国交通安全運動では、少林寺拳法協会の協力でセーフティロード作戦を実施、その他、秋の輸送繁忙期の交通安全運動では、漁協女性部や女性ドライバーの会によるセーフティロード作戦を実施している。
 また、自動車学校の協力を得て市内車両パレードを実施し、スピードダウンの呼び掛けを行うと共に、町内会・老人クラブの協力を得ながら地域の高齢者世帯を一軒一軒回る高齢者世帯訪問を各運動期間に数回実施し事故防止呼び掛けを行うと共に、防犯活動も兼ねた連携した取り組みも行っている。
 また、各運動期間に1回実施している大規模セーフティロード作戦においては、ライオンズクラブを始め、地元漁協、自動車学校などの参加を得て100人規模の活動となっている。
 また、春の全国交通安全運動・秋の全国交通安全運動における、早朝街頭指導においては、市内町内会より1日300人程が街頭指導を行っており、10日間の運動期間中、のべ3,000人規模の大きな市民運動となっており地元警察署からも感謝されている。
 さらに、毎月1日の「市民交通安全の日」・15日の「道民交通安全の日」の啓発として、早朝街頭指導を実施し、学校沿線の多くの町内会の皆さんが児童・生徒の通学時の安全確保に協力している。

セーフティロード作戦の模様 国道238号沿
(夏の交通安全運動 7月)
少林寺拳法協会によるセーフティロード作戦
(秋の全国交通安全運動 9月)

(2) 紋別市独自の交通安全イベントの取り組み
 紋別市の独自の交通安全企画イベントとして、交通安全サマーフェスタを開催している。
 この内容は、自動車学校を会場に、交通ルールや危険回避を子どもからお年寄りまで体験しながら学べる体験型の交通安全イベントで、住民の交通安全に対する関心を高めると共に交通安全意識向上をはかるイベントである。
 交通安全ゲーム・交通安全標識ビンゴ大会・警察の協力を得ての白バイ、パトカーの展示・自転車安全運転シミュレーター体験・シートベルトコンビンサー体験・エアバッグ作動デモンストレーション・消防署の実演による交通事故負傷者救出デモンストレーション・心肺蘇生法AED体験などを実施し、見て・学んで・体験できる交通安全イベントに参加してもらい、交通安全に対する知識のレベルアップと交通安全意識の高揚がはかられている。


交通安全サマーフェスタの様子(紋別市独自の体験型交通安全イベント)
警察による白バイの展示 交通標識ビンゴゲーム大会
自転車シミュレータ 体験 消防署による交通事故負傷者救出デモンストレーション

(3) その他住民協力を得ての取り組み
 交通災害共済制度の取り組み……紋別市が行っている交通災害共済制度は、交通事故によって死傷した市民の生活相互扶助として重要な役割を果たしてきた。人口の減少により年々加入率が減少しているが、2011年度の加入率は30%(市民の3人に1人が加入)と採算は維持されている。
 今後、加入促進に向けての対策をはからなければならないが、町内会担当者会議を開催して各町内会ごとに加入の取りまとめを行って頂いており、制度維持に町内会が大きく貢献している。
 これらのさまざまな活動は地域住民・各種団体の献身的な協力のもとに成り立ち実施されている。

3. 交通安全運動の現状と課題について

 これらの交通安全活動は住民意識が低いと効果も薄く、形式的なものとなってしまうおそれがある。交通社会の一員としての自覚を持ち、自他の生命の尊重という意識と道路は人が優先であるという、「人優先の思想」の定着を住民一人ひとりが当然のこととして持つことが必要になってくる。
 また、人優先の交通安全思想の下、高齢者、障害者の交通弱者に関する知識の教授をもっと大きく進めるべきである。
 障害者・高齢者の特性を理解し、事故の形態認識レベルのアップ、さらには交通弱者に対する思いやりの心を育む教育・交通事故被害者への痛みを思いやる教育の実施をはかることで交通事故を起こさない意識を育てる必要がある。
 そのことが、若者による悪質・危険・無謀な運転による事故の抑止に繋がる。
 成人に至るまでは、心身の発達段階や、ライフステージに応じた段階的な交通安全教育が必要となってくる。
 さらに他の世代に対しても子どもは高齢者の特性を知り配慮する、高齢者は子どもの特性など、それぞれの世代の特性を認識し、その上で、他の世代への配慮を促すことが重要である。
 市でも学校・保育所・幼稚園での交通安全教室を実施しているが、各学校でも交通安全に関する道徳授業を開催し、社会に出てから容易に理解できるようにすることも必要である。
 子どものころからの交通安全教育を実施し、交通安全に対する意識付けが大きなポイントとなる。
 交通安全普及教育、啓発活動を行うにあたっては、近年、参加、体験・実践型教育を積極的に取り入れることが叫ばれており、市民が納得して交通安全活動を行えるよう、あるいは、実践することができるよう配慮しなければならない。
 また、今後の交通安全活動の課題として、活動に参加して頂いている人たちの高齢化の問題がある。次世代に交通安全運動を繋ぐため、若い人の参加も検討していかなければならない。しかし、これには、交通安全活動が日中になるため、仕事をしている若い人の参加については難しく、どうしても退職された人など高齢者中心のメンバーとなってしまっているのが現状である。
 この運動に携わる者の高齢化、交通指導員の高齢化、参加団体構成員の高齢化は、現在の日本社会が抱える問題でもあるが、今後、若者の交通安全に対する意識向上と必要性について地域ぐるみで取り組んでいかなければならない。
 また、活動して頂ける団体を増やしていくことも重要であり、より交通安全運動を大きく発展していくためには、参加団体の「すそのの拡大」をはかっていく必要がある。
 地元企業あるいは、労働組合などの、各種団体の参加・協力も促さなければならない。

4. 交通安全活動の今後のありかたについて

 交通事故防止をはかるためには、安全な道路環境を整備してくことも、もちろん重要であり、危険箇所を洗い出し、信号機をはじめ、カーブミラー、道路標識など安全施設等を整備し、安全で安心な道路交通環境の確保に努めると共に、街頭啓発、街頭キャンペーン等を実施し市民意識・市民感情への働き掛けを同時に行う必要がある。
 また、地域ぐるみの交通安全教育・普及啓発活動を効果的に推進するため、高齢者、子ども、親の三世代が交通安全をテーマにそれぞれの危険要素を認識できるような交通安全啓発やイベントの開催をはかる。
 さらに、町内会や、既存の交通安全団体に限らず、職場団体などの交通安全活動への参加や各企業、労働組合による街頭啓発を実施してもらえるよう働きかけを行い、多くの住民・企業・団体の若者を交えた住民総ぐるみの「すそのの広い」交通安全運動を展開していかなければならない。
 また、交通安全運動の効果について、評価をその都度行い、計画・実施・検証を行うことで、意義・重要性について関係者の総合認識をもって見直すべきところは見直し、次に繋がる活動にしていかなければならない。
 そして、持続可能な質の高い運動を実施にするためには、効果的啓発内容を日々模索していかなければならない。
 さらに、交通指導を行う者の指導レベルのアップをはかることも重要であり、交通指導員の育成や警察による指導実地講習を行い、早朝街頭指導等において各町内会から参加して頂いている方々にもその手法を教えることも地域のレベルアップに繋がると考えられる。
 また、重大事故発生時においては、原因を特定し地域や警察と協力しながら重点的に対策を講じていく必要があるほか、必要な箇所には標識、信号の設置を公安委員会に積極的に働き掛け、地域ぐるみで要望しその地域の安全と安心を確保しなければならない。

5. まとめ

 このように、交通安全活動は、警察だけでもできないし、行政だけでもできない、多くの住民や企業・団体の協力があってはじめて、効果を上げられるものである。
 住民の協力なしには運動を展開・発展させることはできないため、町内会、各関係協力団体と良好な関係を保ち、理解と協力を得ながら、地域住民の声に耳を傾け、どのような手法による交通安全活動がより効果的か意見を聞きながら検討していくことで、マンネリ化を打開した真の住民参加型の効果的な交通安全活動を展開することができると考える。