【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第1分科会 「新しい公共」と自治体職員の働き方

 現業職場は、行政改革における職員削減や経費削減のための合理化による民間委託等の矛先が向けられている。そんな中、安易な職場の縮小と職員削減を問題視し、これからの行政サービスとしての現業職場のありかたと存続について研究を行った。



藤岡市における現業職場の実態と今後のあり方


群馬県本部/藤岡市役所職員労働組合・新・現業勇志の会 小屋原美江・鮎川寿美恵
栗原  靖・小屋原 学

1. 始めに

 2005年に行われた行政改革以降、現業職場は合理化攻撃の矢面に立たされ、職場の存続さえ困難な状況になっている。
 県内における各市町村の現業職場内での正規職員数も、正規職員が退職した後の正規不補充や業務の民間委託などにより、減少の一途をたどっている。
 藤岡市においても例外ではなく、また、前述以外にも様々な諸問題が山積みとなっている。
 このような状況の中で現業職場における問題を整理し、職員一人一人が職場の実態を把握し、何をしたらよいか・何ができるかを考え、行動を起こすことを目的とし研究を行った。

2. 藤岡市の現業職場

 現在、藤岡市における現業職場は 清掃センター・給食センター・学校業務 の三職種となっており、職員数においては清掃センター7人(男性)、給食センター第一調理場・第二調理場合わせて12人(男性)、学校業務(市内小学校11校・中学校5校)7人(男性1人・女性6人)の、合わせて26人の正規職員が配属されている。
 正規の現業職員数としては県内11市の中で最も少ない人数となっており、また、1994年以降正規職員の新規採用が無く、鬼石町との合併で一時的に職員数が増えたものの現在50歳を超える職員が半数以上を占め高齢化が進んでいる。
 そのため、直営で提供する自治体現業サービスの存続に重要な問題が生じてきている。


2005年から2012年までの職員数

※このまま新規採用者がなければ2022年には10人にまで減少


3. 各職場の現状

 清掃業務では古紙回収・有料回収・フォークリフト運転・事務処理業務を行っている。
上記以外の可燃ごみ・不燃ごみ・資源ごみ収集や、焼却施設の現場運転業務は民間委託されており、施設内での業務は嘱託職員等が配置されている。
 かつては資源ごみ等収集作業も行っていたが、民間委託化や退職者の抜けた後の職員が不補充のため職員数が減少し、回収業務が困難になった。
 月二回ある日曜直接搬入日には交代制で受け入れを行っている。

 給食業務では第一調理場正規職員6人・嘱託職員18人、第二調理場正規職員6人・嘱託職員15人の配置となっており、第一調理場では市内8小学校、第二調理場では市内5中学校と3小学校の給食調理を行い、配送業務については民間業者に委託されている。
 正規職員数については、かつては女性職員が多く、また嘱託職員に対する正規職員比率も高かった。しかし、正規職員が退職した後、嘱託職員の採用で対応してきたため正規職員減少となった。
 業務内容については午前中では朝交代制でボイラー作業をし、朝会後3班に分かれ持ち場の嘱託職員に指示をしながら、それぞれ大釜(汁物等)調理・揚げ物または焼き物調理・小釜(和え物等)調理を行い、午後の業務では嘱託職員を含め各持ち場ごとに回収された食器等の洗浄作業を行い、その後翌日の準備や材料確認・納入の検収補助・栄養士との打ち合わせを行う。
 学校における夏季・冬季休業中(給食を供給していない期間)には設備機器・器具の点検や修理、施設内の塗装・修繕、清掃・除草作業・研修を行っている。

 学校業務では10年前では市内小・中学校16校すべてに正規職員が配置されていたが、現在では16校中、小学校5校・中学校2校に正規職員、残り9校は嘱託職員での対応となっている。
 また、2004年からは児童・生徒が被害を受けた凶悪事件や不審者侵入事件以来、子どもたちが安心して生活できる環境づくりと安全確保のため臨時職員を新たに雇用し、各校2人体制(男性・女性のペア)をとることになった。しかし、嘱託職員・臨時職員の組み合わせで対応している学校の方が多くなったことや、臨時職員の勤務時間の関係から、児童・生徒の登下校時間帯には正規・嘱託職員1人での対応となってしまい、結果的に、安全管理面において以前と比較しても大きく改善されたとはいえないのが実情である。
 正規職員の減少理由の一つとして、正規職員が退職後に嘱託職員として引き続き雇用されていることが挙げられる。
 現在正規職員数は減少してきているが、正規職員と嘱託職員の間で交流を持ち、業務内容等、各校の職員との情報交換を図っている。
 業務内容については校内の環境整備や給食搬入の受け入れ、教育庁舎への事務連絡が主な業務となっているが、学校行事での対応等様々な業務があり臨機応変な対応が求められる職種である。
 また、学校業務活性化と技術向上の取り組みとして、夏季・冬季休業中に2005年より共同作業を行っている。


4. 現業職場としての意識改革

 現業職場を知ってもらうため、連合群馬主催「ふれあいフェスティバル」(ららん藤岡会場)において現業展を行い、清掃・給食・学校各職場の様子をパネル展形式で紹介した。
 
 


 パネル展での職場解説の他、ごみの仕分けゲームや綿菓子など子ども向けの催しも行って現業職場を一般の人々に知ってもらった。また、パネル展を通して市民の方々がどんなサービスを欲しているかを考え、知ることができた。

~学校職場内での意識改革~

ごみ分別ゲーム

それぞれカゴの写真にペットボトルや缶、瓶等のカードを分別して貼っていくゲーム。


綿菓子を提供

 今までの学校業務員の仕事としてイメージされてきた“給食受け入れと、お茶出ししかしていない楽な仕事”を払拭するため、「このままではいけない」「自分たちで行動を起こさなければ」と考え、前橋市や桐生市で行っている共同作業に取り組むことにした。
 この共同作業は2005年の中学校のコンテナ室の壁のペンキ塗りと掲示板の取り付け作業からスタートし、小学校の屋外的当板の防腐処理・廊下のワックスがけ・花木の剪定・粗大ごみの清掃センター搬入など現在も継続しており、業務員としての仕事に対する意識向上や技術の習得・活性化に役立っている。また、2006年の自治研でも発表を行った。


 職員課が行う学校業務員研修会では正規職員だけではなく嘱託・臨時職員も参加し、AED講習を受けている。また、現業労組として行った防犯研修会でも多くの嘱託・臨時職員に参加してもらい、市内各小・中学校における危機管理意識の向上をはかった。


 

 元警察官の関口助役(当時)を講師として迎え、防犯研修会を行った。


5. 現業職場の今後を考える

 行政改革が推し進められた2005年以降、アウトソーシングや指定管理者制度の積極的な運用により、自治体現業職場は長い間危機的状況におかれている。
 現業職場の民間委託化は増加するばかりで、本来自治体が責任を持って市民に提供するべき「質の高い公共サービス」が失われてきている。もともと現業の仕事とは、自治体が地域住民に平等なサービスを提供する必要から高い公共性が存在し、安定した業務運営を行うためのものであった。
 しかし、民間企業が提供するサービスが多様化してきた昨今、公共サービスと民間企業のサービスとの大差がなくなり、むしろ経費や業務効率は民間企業の方が上であると思われているのも事実である。
 現在直営としている学校給食や学校業務でも非正規職員が増加し、このままでは質が高く平等なサービスの提供が立ち行かなくなってしまう恐れがある。実際、業務内容によっては非正規職員では対応が困難なことも数多く、職場内での一人当たりの仕事量が増加したり、しわ寄せが起きたりしている事例も見受けられる。
 民間でも自治体でも労働力が安く買いたたかれている昨今、正規職員でなくてはならないという労働力の特別性、職のスペシャリストという特性を出していかなければ「安ければ何でもよい」という流れは止めることができないであろう。
 このように大変厳しい状況の中、職場の生き残りや必要性を懸けて一人一人が問題意識を持ち、市場原理では実現できない質の高い公共サービスを提供できる能力を磨き、必要とされる現業職場をつくること等を積極的に行っていかなければならない。
 これからの専業職としてのプライドを持って職務にあたり、その成果を堂々と、且つ、広く世間に主張することが必要と考えられる。