【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第1分科会 「新しい公共」と自治体職員の働き方

 2011年2月『「豊後大野市自治基本条例(仮称)」に関する提言書』がまとめられたことを受け、豊後大野市における自治基本条例制定の取り組みを報告する。



豊後大野市まちづくり基本条例について


大分県本部/豊後大野市職員連合労働組合

1. 議会議決までの取り組み

 「地方分権」ということばがよく聞かれるようになった1990年代以降、わたしたちのまちは、急激に過疎化・少子高齢化が進行し、財政の悪化等厳しい状況にありますが、「自分たちの地域のことは、自分たちが主体的に決定する」という考えのもと、町村合併を経て、これまで以上に地域の実情に応じた施策が必要とされ、併せて将来のまちのあり方が問われるようになっています。そこには行政と住民が一体となった「協働のまちづくり」がテーマとしてありました。
 豊後大野市では町村合併後まもない2007年5月に「自治基本条例市民会議」 (※1) を設置し、市民から公募した委員に自治基本条例に関する提言についての議論をお願いし、自治基本条例の策定についての議論が始まりました。2011年2月に『「豊後大野市自治基本条例(仮称)」に関する提言書』がまとめられ、また2011年度自治基本条例策定方針が示され、その方針の中で自治基本条例の必要性として次のように謳われました。

「地方分権時代の到来により、地方自治体には「地域のことは地域で考え、地域で決める」という自己決定・自己責任に基づき、多様化・高度化する市民ニーズに対応し、地域の特色を活かした行政運営が求められています。このため、市民の権利や自治体運営に関する基本的事項を明確にし、市民参加のあり方や市民と行政によるまちづくりを推進し、多様な市民参加をシステムとして構築していく必要があります。そこで、市政運営の基本理念や市民と行政によるまちづくりの基本的なルールを定めた自治基本条例を制定することにより、市民と行政とが相互の情報を共有しながら、その責任と役割を分担し、協力・協調しあうパートナーとしての協働関係を築いていくことが重要であり、市民参加の機会拡充、協働体制の確立を図っていく必要があります。また最近では、「地方政府」という言葉がよく使われていますが、これは、地方を国家として見立てている考え方であり、逆に地方国家という考え方があるならば、そこには、基本法となる地方の憲法が必要であろうという考え方があります。」

『「豊後大野市自治基本条例(仮称)」に関する提言書』が市長へ提出された後、その提言書を基に、2011年4月から6月の間、庁内で組織する豊後大野市自治基本条例検討委員会 (※2) 及び作業部会で条文化し、6月から11月の間に市長の諮問機関である豊後大野市自治基本条例策定審議会 (※3) で計5回審議され、12月に市議会全員協議会 (※4) を開催し市議会へ素案の事前説明を行いました。その後、12月より1月にかけて素案に対するパブリックコメント (※5) を実施し、最終的な市民の意見聴取を実施した後、2012年2月に最終の審議会を開催し答申を経て、3月議会で条例(案)を議会へ提出 (※6) し議決されました。

【策定スケジュール】
月(2011年度)101112
検討委員会            
作業部会            
策定審議会            
議会全員協議会            
パブリックコメント            
議案提出            


2. 豊後大野市まちづくり基本条例条文

豊後大野市まちづくり基本条例
目次
前文
 第1章 総則(第1条―第5条)
 第2章 市民(第6条・第7条)
 第3章 市議会(第8条)
 第4章 執行機関(第9条―第11条)
 第5章 市政運営
  第1節 市政運営の基本原則(第12条―第14条)
  第2節 参加と協働(第15条―第18条)
  第3節 自治政策(第19条―第22条)
  第4節 公正と信頼の確保(第23条―第28条)
  第5節 危機管理等(第29条) 
 第6章 住民投票(第30条)
 第7章 国及び大分県その他の自治体等との連携、協力等(第31条―第33条)
第8章 実効性の確保(第34条・第35条)
附則

 豊後大野市は、「豊かな自然と文化を未来につなぐ、やすらぎ交流都市」を目指し、三重町、清川村、緒方町、朝地町、大野町、千歳村、犬飼町の旧大野郡5町2村が合併してできたまちです。
 私たちのまちは、秀麗な山々に囲まれ、清流「大野川」や緑豊かな田園など美しい自然に恵まれた地域で、数多くの有形無形の郷土の文化が残る「自然美豊かな歴史と文化の薫るまち」です。
 私たちは、この豊かな自然と肥沃な大地、そして、先人たちの英知とたゆまぬ努力により脈々と受け継がれてきた歴史、文化、伝統といった財産を維持、発展させ、次の世代に引き継いでいかなければなりません。
 時代は、本格的な地方分権型社会へと移り、自己決定・自己責任に基づく自立した自治体運営が求められる中で、私たちの財産を次代に継承していくためには、私たちが望む、目指す、理想とするまちに向かって、自ら考え、責任を持って行動していくことが必要です。
 そこで私たちは、未来へ向けて活力ある豊後大野市を創っていくため、市民が自治の主体であることを自覚し、地方自治の本旨に則り、市民、市議会、行政のそれぞれの役割や関係、まちづくりの仕組みやルールを明らかにした豊後大野市の最高規範となる「豊後大野市まちづくり基本条例」をここに制定します。 
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、地方自治の本旨である住民自治と団体自治の考え方に基づき、豊後大野市における自治の基本理念を明らかにするとともに、市民、市議会及び行政の役割、責務等の基本的事項を定めることにより、市民が主体の地方自治の実現と協働のまちづくりの推進を図ることを目的とします。
(最高の規範)
第2条 この条例は、市政の運営における最高の規範とします。
2 市は、他の条例、規則その他の規程等(以下「他の条例等」といいます。)の制定、改廃及びその解釈や運用に当たっては、この条例の趣旨を最大限に尊重し、この条例との整合性を図るものとします。
(定義)
第3条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによります。
(1) 市民 市内に居住し、通勤し、又は通学する個人及び市内において事業を営み、又は活動を行う個人又は法人その他の団体をいいます。
(2) 市 基礎自治体としての豊後大野市をいいます。
(3) 行政 市の執行機関である市長、教育委員会、選挙管理委員会、監査委員、公平委員会、農業委員会及び固定資産評価審査委員会をいいます。
(4) 参加 市民が、市政及びまちづくりに主体的に関与することをいいます。 
(5) 協働 地域の課題に取り組むため、市民、市議会及び行政が、それぞれが果たすべき役割と責務を自覚し、補完し合い、共通の目的に向かって連携し協力し合うことをいいます。
(6) 市政 市議会又は行政が行う活動をいいます。
(7) 自治 自分たちの地域を自分たちの意思で責任を持ち治めることをいいます。
(8) まちづくり 市民の福祉を増進し、元気の出る活力に満ちた特色のあるまちを創造するためのあらゆる取組をいいます。
(基本理念)
第4条 まちづくりの主体は、市民であり、市民、市議会及び行政は、地域の個性及び自立性を尊重したまちづくりを推進します。
2 市議会及び行政は、市民の信託に基づき、公正かつ誠実な市政の推進に努めます。
(基本原則)
第5条 市民、市議会及び行政は、次に掲げる基本原則により自治運営を行います。
(1) 情報共有の原則 市政・まちづくりに関する情報を共有します。
(2) 参加の原則 参加により市政・まちづくりを行います。
(3) 協働の原則 協働により市政・まちづくりを行います。  
第2章 市民
(市民の権利)
第6条 市民は、まちづくりの主体として、まちづくりに参加する権利を有します。
2 市民は、まちづくりの主体として、市政に参加する権利及び市政に関する情報を知る権利を有します。
3 市民は、市の政策の立案、実施及び評価のそれぞれの過程において参加する権利を有します。
4 市民は、市が提供する行政サービスを受ける権利を有します。
(市民の責務)
第7条 市民は、まちづくりの主体であることを自覚し、市政に関する認識を深めるとともに、市民相互の連携を図り、協働のまちづくりに努めるものとします。
2 市民は、まちづくりに参加する際には、自らの発言と行動に責任を持たなければなりません。ただし、その参加を強制されるものではないものとします。
第3章 市議会
(市議会の役割や責務等)
第8条 市議会は、直接選挙により選ばれた代表者である市議会議員で構成される市の意思決定機関です。
2 市議会は、法令に定められた権限を最大限に活用し、市の発展と市民の福祉向上の為に更なる役割を果たします。
3 市議会は、法令、条例等に特別の定めがあるものを除き、原則として全ての活動を広く市民に公開し、市民に対する市議会の説明責任を果たします。
4 市議会議員は、市民の信託に応え市民の利害や意思が公正かつ効果的に市政の運営に反映されるよう職務を遂行します。
5 市議会議員は、市議会における言論が主たる活動であることを認識し、議員間の自由な討論を推進します。
第4章 執行機関
(市長の責務等)
第9条 市長は、その地位が市民の信託によるものであることを認識し、市政の代表者としてその信託に応え、公正にして誠実に市政の運営に当たります。
2 市長は、毎年度、市政運営方針を明確に定め、その達成状況等を市民や市議会に報告します。
3 市長は、市の職員(以下「職員」といいます。)について、広く人材を求め、適材適所の人事配置、効果的な人材育成、適正な人事評価と処遇を行い、職員と組織の力が最大限に発揮されるようにします。
4 市長は、市の組織を市民に解りやすく、効率的で機能的なものとし、社会情勢の変化や市民の要請等に対して、的確に対応できるよう編成します。
(執行機関の連携と協力) 
第10条 市のそれぞれの執行機関は、所掌事務について自らの判断と責任においてこれを公正かつ誠実に処理するものとし、市長の総合的な調整により、執行機関相互の連携と協力とにより、一体として動ける行政機能を発揮します。
(職員)
第11条 職員は、その職責が市民の信託に由来することを深く自覚するとともに、法令等を遵守し、誠実で公平かつ能率的に職務を遂行し、創意をもって自治の推進に当たります。
2 職員は、市政において不適正な事案等が生じた場合は、これを放置したり隠したりせず、組織の自浄作用を発揮して市政の透明性を高め、常に適法かつ公正な職務の遂行に努めます。
第5章 市政運営
第1節 市政運営の基本原則
(市の率先対応の行動原則)
第12条 市は、国が批准した国際規約で確認されている平和、人権の尊重、自由、平等等についてその持続、発展を実現するために、役割と責任とを明確にして、率先して対応し行動します。
(行政サービス提供の原則)
第13条 行政は、行政サービスに関する情報を解りやすく市民に公表し、公平で効率的な質の高い行政サービスの提供を図り、市民の満足度の向上に努めます。  
(基本構想や基本計画の位置付け等)
第14条 市は、総合的、計画的な市政運営を行うために、市の最上位計画として基本構想を定め、この実現のために基本計画を策定します。
2 基本構想や基本計画に基づいて策定される個別の計画は基本構想や基本計画との整合性や連動が図られるものとします。
第2節 参加と協働
(計画の策定に係る参加等)
第15条 行政は、基本構想、基本計画その他の重要な個別計画(以下「計画等」といいます。)の策定に当たっては、市民の参加を保障するとともに、市民の検討に必要な情報や資料等を提供します。
2 行政は、計画等の進捗状況の管理や達成状況の把握を的確に行い、これを公表し、社会情勢等の変化に対応した計画等の見直しを行います。
(市民会議等の設置及び運営)
第16条 行政は、市民や学識経験者等の意見を市政に反映させるため、必要に応じ、市民会議、審議会等(以下「市民会議等」といいます。)を設置します。
2 行政は、前項の規定により市民会議等を設置するときは、設置目的に応じて委員の公募を行うよう努めるとともに、委員の男女の比率、年齢構成、選出区分等の均衡に配慮するものとします。
3 行政は、法令、条例等に特別の定めがあるものを除き、原則として市民会議等の会議は公開とします。
(地域における活動の推進等)
第17条 行政は、市民の自発的な地域における自治活動、コミュニティ活動その他の活動が推進されるよう、その自主性、自立性を尊重の上、必要な支援等を行い、市民と連携したまちづくりを進めます。
(協働のまちづくり)
第18条 行政は、市、市民の各主体が相互に連携、協力し合い、もって協働のまちづくりの推進が図られるよう、必要な支援等を行います。
2 行政は、協働のまちづくりの推進において、各主体が情報を共有し、意見交換をし、積極的な参加と意思形成が図られるよう、多様で開かれた場と機会の創設に努めます。
第3節 自治政策
(自治体経営)
第19条 行政は、事業の実施に当たり、最小の経費で最大の成果を上げるように努め、地域における資源を最大限に活用した事業の戦略的な展開をすることにより、市民の満足度の向上を図り、成果重視の観点からの自治体運営を進めます。
2 市長は、健全な財政運営に努めることはもとより、市の財政、財務等に関する資料を作成し、市の経営状況を的確に解りやすく市民に公表します。
3 市長は、他の執行機関と連携し、各種行政サービスを受ける市民間の負担の適正化と社会資本整備等における世代間の負担の公平化を確保するよう、適切な財政政策を進めます。
(政策法務)
第20条 市は、市民の要請や市の行政課題に対応して主体的な政策の展開を図るため、自治立法権と自治解釈権を活用して積極的な政策法務を推進します。
(意見公募手続等)
第21条 行政は、市政における重要な条例や計画の策定等に際しては、市民の意見を反映させるため、当該条例、計画等の原案について事前に行政の考え方や方針等を公表し、広く市民の意見を聴取する意見公募手続を行うものとします。ただし、緊急を要する場合においては、この限りでないものとします。
(出資団体等)
第22条 行政は、市が出資又は補助を行う団体等や公の施設の指定管理者等に対し、その目的が達成されるよう必要に応じて意見や助言など、適切な指導を行います。
2 行政は、本市が出資している団体等について、出資の必要性、経営状況等を検証し、これを市民に公表します。
3 行政は、補助金等を交付した団体等による公共的なサービスの提供に関する市民の苦情を受けたときは、その苦情の内容を調査し、必要と認めたときは、当該団体等に対して意見や助言等を述べます。
第4節 公正と信頼の確保
(情報公開等)
第23条 市は、市政に関する情報について市民との共有を図るため、市民の知る権利を保障し、別に定める条例に基づき、開かれた自治体として情報公開を推進します。
(個人情報の保護)
第24条 市は、個人の権利利益を保護し、信頼される市政を推進するため、別に定める条例に基づき、個人情報の保護に関し必要な措置を講じます。
(説明責任)
第25条 行政は、政策決定の理由等を市民に説明する責任を負うとともに、計画の策定や事業の実施に当たって掲げた目標等については、達成の有無や達成状況等の結果を市民に解りやすく説明します。
(要望や苦情等への対処)
第26条 行政は、市政に関する市民からの要望や苦情等については、誠実に迅速かつ的確に対処し、その結果について2週間以内に市民に回答します。
2 行政は、市民から苦情として寄せられた事案について、その原因を究明し、再発防止等について適正に対処します。
3 行政は、毎年度、市民の要望や苦情等への対応状況について、年次報告として公表します。
4 市長は、必要に応じて市民の市政に関する苦情等を公正かつ中立な立場で速やかに処理するための機関を設置します。
(行政評価)
第27条 行政は、効果的で効率的な市政運営を進めるため、適切な目標設定に基づく行政評価を実施し、評価結果を施策等に反映させるとともに、行政評価に関する情報を解りやすく市民に公表します。
(監査)
第28条 監査委員は、市の財務に関する事務の執行及び経営に係る事業の管理の監査や市の事務執行の監査を行うに当たり、事務事業の適応性及び妥当性のほか、経済性、効率性、有効性の評価等を踏まえて行います。
第5節 危機管理等
第29条 市は、市民の生命、財産及び暮らしの安全を確保するとともに、緊急時に総合的かつ機能的な活動が図られるよう危機管理体制の充実を図ります。
2 市は、災害等の発生に備えて、避難勧告や避難指示を出す基準や災害等発生時における具体策について別に定め、見直しを行います。
3 市民は、日頃から災害等に対する備えに努めるものとします。
4 市民は、災害等の発生時において、自らの安全確保を図るとともに、果たすべき役割を認識し、相互に協力しながら対応するよう努めるものとします。
第6章 住民投票
第30条 市長は、市政に関する重要事項について、直接、住民の意思を確認するため、住民投票を実施することができます。
2 住民投票は、その事案ごとに市議会の議決を経て制定された条例の定めるところにより実施します。
3 前項に規定する条例は、投票に付すべき事項、投票の手続、投票資格要件、成立要件その他住民投票の実施に関し必要な事項を定めるものとします。
4 前3項の規定により住民投票を実施した場合は、市議会及び市長は、その結果を尊重します。
第7章 国及び大分県その他の自治体等との連携、協力等
(国及び大分県との関係)
第31条 市は、基礎自治体である市町村優先の原則により、国及び大分県(以下「国等」といいます。)との適切な関係を確立するため、国等に対して制度、政策等の改善に向けた取組を積極的に行い、自治基盤の強化に努めます。
(他の自治体等との連携)
第32条 市は、他の自治体等と連携して、行政サービス、施設の相互利用、共通する課題への広域的対応等を行い、市民サービスの向上と効率的な市政運営を行います。
(海外の自治体等との連携及び国際交流の推進)
第33条 市は、海外の自治体、研究機関、市民活動団体等との連携、交流及び協力を推進するとともに市民による公共的な国際活動への支援を行うことにより、相互理解の推進、共通都市問題への取組、平和、人権、環境等の地球規模の諸問題への取組を行います。
第8章 実効性の確保
(進捗状況等の公表)
第34条 市長は、この条例の趣旨を尊重し、別に定めるものを除くほか、他の条例等、計画等において、実施した事業の進捗状況等について、毎年1回、適切な方法により公表します。
2 市長は、この条例の発展と充実を図るため、その実効性を確保する仕組みを講じます。
(この条例の見直し)
第35条 市長は、この条例の施行の日から4年を超えない期間ごとに、社会経済情勢の変化、まちづくりの進捗状況等を勘案の上、この条例の規定について検証するものとし、必要に応じて条例の改正その他の措置を講ずるものとします。
2 市長は、前項の規定により条例の改正その他の措置を講ずる場合にあっては、広く市民の意見を聴くものとします。
   附 則
 この条例は、平成24年10月1日から施行する。


3. 現在の状況及び今後の取り組み

 豊後大野市まちづくり基本条例は、2012年10月1日より施行されます。この基本条例の目的は、「市民が主体の地方自治の実現と市民、市議会と行政による協働のまちづくりの推進」です。そのための豊後大野市における自治の考え方(基本理念)とその進め方(基本原則)を明らかにし、自治を担う市民、市議会、行政の役割や責務、情報の共有や市民参加、協働などを定めています。また、最高規範として位置づけることで、この基本条例の趣旨を最大限に尊重してまちづくりを進めていくことになります。市の条例や計画等は、原則としてこの基本条例の規定に適合するように制定(策定)又は運用されることになります。2012年度、市役所内では、「豊後大野市まちづくり基本条例検証職員プロジェクトチーム」 (※7) を設置し、まちづくり基本条例とその他条例等の整合性やまちづくり基本条例と事務事業の整合性、「協働のまちづくり」について検証し、2012年度末までに一定の方向性を出します。また、この基本条例が遵守され、その実効性を確保する仕組みとして、識見を有する方や公募市民等で構成される「豊後大野市自治推進委員会」 (※8) を設置し、市長の諮問により条例の運用状況や自治の推進等を審議し、その結果を市長に答申します。一方、市民に対しては、条例の目的や内容について理解をしていただくため、解説書の全戸配布や市報の連続掲載、ホームページ掲載、ケーブルテレビの放送、市民座談会を定期的に開催します。


4. 条例制定後の課題

 豊後大野市まちづくり基本条例に対する市民の理解度や関心度は高くありません。今後は、この基本条例や市政に対する市民の関心を高めていくことが第一の課題となります。市民がまちづくりについて主体的な取り組みを進めていくためには、市民と行政が情報を共有していくことが大切です。行政は、市民のまちづくりについて理解を深め、市政の各分野において、その現状や課題、今後の展望も含めた情報を市民に開示し、施策について説明責任を果たしていくことが求められます。
 また、条例の理念を施策や事業に反映させ、具現化していく必要がありますが、その意味では職員意識の向上が大きな課題となります。行政は、行政の担い手としての職員のあるべき姿を示し、職員が規律を持って職務にのぞみ、積極的にその能力を発揮できる環境を整備していくとともに、これからの協働のまちづくりを担う職員の育成に努める必要があります。




※1  自治基本条例市民会議……公募等による市民で構成(20人以内)され、3年間で47回開催し、グループ討議や全体討議を重ね、今年2月14日にその結果を市長に提言しました。
※2  豊後大野市自治基本条例検討委員会……次長級以上で構成(市長が会長、副市長が副会長)され、作業部会への指示や作業部会から提出された資料の協議、検討を行いました。また、選出された職員で構成される作業部会では、検討委員会からの指示事項や事務局から提案された事項について、詳しく検討協議しました。
※3  豊後大野市自治基本条例策定審議会……大学教授などの識見を有する方、自治基本条例市民会議の代表者、各種団体の代表者等で構成(10人以内)され、市長からの諮問により自治基本条例の内容を審議し、その結果を市長に答申しました。
※4  市議会全員協議会……自治基本条例の素案が出来上がった段階で、事前に市議会全員協議会で説明を行いました。
※5  パブリックコメント……市議会全員協議会で報告の後に、ホームページにおいてパブリックコメントを求めました。まちづくり基本条例素案に対して、23件の意見をいただきました。
※6  市議会へ議案提出……策定審議会から答申を受けた後に、市議会に「豊後大野市まちづくり基本条例(案)」を提出し、議決されました。
※7  豊後大野市まちづくり基本条例検証職員プロジェクトチーム……各課、支所より選出された職員で構成(31人以内)し、まちづくり基本条例とその他条例等の整合性やまちづくり基本条例と事務事業の整合性、「協働のまちづくり」について検証します。
※8  豊後大野市自治推進委員会……識見を有する方や公募市民等で構成(10人以内)し、市長からの諮問により豊後大野市まちづくり基本条例の運用状況や自治の推進等を審議し、その結果を市長に答申します。(任期2年間)