【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第3分科会 自然災害に強いまちづくり~災害から見えた自治体の役割~

東日本大震災から学ぶ自然災害に強い街づくり


宮城県本部/仙台市交通労働組合・執行委員長 鈴木 利春

1. 東日本大震災の概況

発生日時:2011年3月11日(金)14時46分
地 震 名:平成(2011年)東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)
震央地名:三陸沖(北緯38度06.2分、東経142度51.6分)
規  模:マグニチュード9.0(20世紀以降の地震としては世界第4位)震源の深さ約24km
震  度:震度7(最大震度)栗原市〔2,933ガル、阪神大震災818ガル〕(ガル=揺れの強さを示す加速度)
     震度6強 宮城野区
     震度6弱 青葉区、若林区、泉区
     震度5強 太白区
津  波:3月11日(金)14:49 太平洋沿岸に大津波警報発表(気象庁)
     3月12日(土)20:20 大津波から津波へ警報の種類切り替え(気象庁)
     3月13日(日)7:30 津波警報から津波注意報へ切り替え
     3月13日(日)17:58 津波注意報を解除
*到達時刻:宮城県南三陸町で15:16
*痕跡等から推定した津波の高さ:仙台港で14.4m以上
(参考2011.3.29朝日新聞朝刊:宮城県女川町17.6m以上、南三陸町15m以上、福島第一原発14.0m)

2. 複合的な被害と課題

(1) 未曾有の被害
 東日本大震災は、これまで取り組んできた防災対策や都市づくりの想定をはるかに超えた規模の大災害でした。特に、東部地域を襲った巨大な津波により多くの尊い命が失われ、住まいや農地などが壊滅的な被害をうけました。
 1978年の宮城県沖地震を教訓とした建設の耐震化など、これまで進めてきた対策に一定の効果は見られたものの、これらの津波被害や市内各地で発生した住宅被害などにより、多くの人が避難を余儀なくされ、避難所の運営や被災された方々への支援、情報提供などの面で多くの課題が生じました。また、市内全域にわたるライフラインの停止、ガソリン等の燃料供給の途絶などが、被災地での支援・復旧活動、市民生活や企業活動に大きな影響を与え、エネルギー途絶時における大都市の脆弱性も明らかになりました。更に東京電力福島第一原子力発電所の被災に伴う問題も相まって被害がますます多様化・複雑化し、強い余震に伴う被害も発生するなど、進行中の課題も存在します。
 このように、今回の震災は、想定を超える地震規模や津波により、東北を中心とする東日本各地に対して、類を見ないほど複合的・広域的に、被害をもたらしました。

(2) ライフライン・インフラの被害
 電気や水道、都市ガス、通信などのライフラインは、市内全域にわたってサービスを停止し、市民の日常生活や企業活動にさまざまな影響を与えました。
 バスをはじめとする公共交通機関が大きな被害を受け、さらにガソリン等の燃料不足により自家用車等が使用できなくなり、一時的に市民の移動手段が著しく制限されました。また、港湾などの物流インフラが大きな被害を受け、燃料、物資などの供給が途絶えたことから、市民生活や地域経済にさまざまな影響を及ぼしました。

(3) 災害時要介護者や帰宅困難者等
 宮城県沖地震時と比べて高齢化が著しく進む中で発生したことにより、新たな課題も生じました。
 マンションに住む高齢者などから、断水とエレベーターの停止により、水の入手や運搬が困難であったという声が多く聞かれました。今後の都市防災を考える上では、高齢者や障害者、妊婦、外国人等、いわゆる「防災時要援護者」への対応や女性の視点からの対策などが一層重要になっています。
 また、平日の午後に発生した震災により、多数の帰宅困難者が発生し、駅などの交通結節点近くの避難所等から人があふれるといった状況が発生しました。
 通勤や通学に加えて、観光やビジネス、買い物、通院などに伴い訪れる人も多く、帰宅困難者の発生時における対策など一時避難場所の確保についても検討を進める必要があります。

3. 災害に強い都市基盤の形成

(1) 公共交通・道路ネットワークの強化
① 新たな公共基幹交通となる2015年度開業予定の地下鉄東西線の整備を着実に進め、地下鉄南北線と一体となった地震に強い東西・南北の交通軸を形成するとともに、鉄道と連携したバス路線の再編を行い、公共交通ネットワークの強化を図ることが望ましい。
② 災害発生後の市民の移動の足を確保するため、幹線道路を運行する緊急基幹バス路線の設定や、災害時の運行に必要な燃料備蓄体制の整備などについて、交通事業者と連携しながら検討を進める必要がある。
③ 緊急輸送道路等の基幹道路について、災害時の道路ネットワークを確保するため、老朽化した道路設備の計画的な修繕等により機能維持をはかるとともに、橋りょうの耐震補強や道路法面等の防火対策をこうじる必要がある。

(2) エネルギー・燃料等の確保
① 広域的な燃料供給ルートの整備や複数の輸送手段による多重化、地域バランスを考慮した燃料の備蓄、また、停電を回避するための電力の融合機能の強化等について、国や関係事業者と連携して取り組むことが大切になる。
② 燃料確保の取り組みとして、燃料供給事業者やガソリンスタンド、関連団体との連携などについて検討していく必要がある。

(3) 広域交通ネットワークの整備
① 非常時にも、広域の人的・物的支援ルートが確保されるよう、広域交通基盤の災害対策の強化や、ひとつのルートが分断された場合に他のルートが確保されるような広域交通ネットワークの整備について、国への要望などの取り組みが大切である。
② 鉄道に代わって都市間バスを担った高速バスや路線バスの機能を高めるため、バスターミナルの整備や、非常時における事業者や関係機関等との協力体制の構築、利用者への案内情報の強化が必要とされる。
③ 広域交通の拠点である仙台駅について、交通結節機能の向上のため、駅前広場の再整備などを進めるとともに、防災機能の強化を求めていく必要がある。