【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第6分科会 地域での子育ち支援

 公共サービスのあり方についての議論の中で、今回は地域で子どもを産みやすい・育てやすい環境づくりを進めるため、行政の役割や支援のあり方について研究しました。北上市の現状と課題を自治研推進委員会でワークショップを開いて洗い出し、その改善策を検討して第56回自治研集会で発表しました。現在の北上市の子育て支援に足りないものを遠野市の先進事例からも学び、今後の公共サービスの質の向上をめざしました。



住民の立場で考えよう、公共サービスのあり方
―― 子育て支援の観点から公共サービスを考える ――

岩手県本部/北上市職員労働組合・自治研推進部

1. はじめに

 北上市職員労働組合では自治研推進部が中心となり、1957年から自治研究集会を毎年開催して、組合員だけでなく地域住民も積極的に参加できる場を提供し、地方自治の問題を研究してきました。最近では自治研推進委員会でのワークショップの手法を取り入れ、参加者の活発な議論を引き出すことで、その成果を市政に反映させることができるように活動を続けています。
 ここ数年の活動テーマとして、公共サービスのあり方について議論を重ねてきました。2009年度の活動では、緊縮財政の中で公共サービスのコスト削減を追求すればするほど外部委託や民営化が広がり、サービスの質の低下や安全性の確保などが課題となる中で、活動テーマを「公共サービスってなんだろう? ~公共の担い手とアウトソーシング実施における行政の責務を考える」としました。多様な担い手によるこれからの公共サービスのあり方について問題提起し、課題の解決策を検討して第55回自治研集会で発表しました。また、行政の責務として公共サービスの質を確保する必要性を認識し、全国で初めて「公契約条例」を制定した千葉県野田市の根本崇市長を講師に招き、参加者とともにその意義を考えました。

2. 子どもを産み、育てる市民への支援を考える

 前年度に研究した公共サービスの質を確保した委託のあり方を受けて、2010年度は私たちの生活により身近な公共サービスをめぐる問題について考えていくため、子育て支援に関わる公共サービスに焦点を絞りました。活動テーマを「子どもを産み・育てる市民への支援を考える」として、地域で子どもを産みやすい・育てやすい環境づくりを進めるための、行政の役割や支援のあり方について考えることにしました。
 自治研推進委員会ではワークショップを2回開催し、子育てをしやすい・子育てをしたくなる地域を作るための第一歩として、北上市の子育てに関わる行政サービスの現状と、今後のあるべき姿や実施してほしいサービスを考え、そのギャップを埋めるためのプランを議論しました。子育て支援に関わる身近な問題であるため、参加者は困ったことやこうあればよいというそれぞれの体験を語り合い、サービスの提供主体ごとに改善策を検討しました。


自治研推進委員会のワークショップの様子
ワークショップの成果品の一例 

3. ワークショップの議論の結果から見えてきたこと

 自治研推進委員会のワークショップでは、北上市の子育て支援の現状について以下のような意見が出されました。

 これらをふまえ、現状を理想に近づけるためのプランについて、主体ごとにどのような改善プランがあるか活発に議論し、提供主体ごとに以下のようにまとめました。


4. 第56回自治研集会での報告と遠野市の先進事例の紹介

(1) ワークショップの成果品の発表
  第56回自治研集会では、今回のワークショップでの活動成果を報告し、多くの参加者とともに議論しました。具体的な改善プランは11の項目について案を発表しました。ここでは代表として2つを紹介します。


 まとめとして、各班から出された改善プランから共通点を抽出し、提言として発表しました。



(2) 「遠野市わらすっこ条例」 制定の意義に学ぶ
 さらに、近隣自治体の先進的な取り組みとして、子どもを地域の宝と位置付けて、市として少子化対策と子育て支援の総合計画である「遠野市わらすっこ条例」を制定した岩手県遠野市に学びました。遠野市では、子どもの権利を保障するための理念や仕組みを制定し、子どもを生み育てることに夢が持てるまちづくりを推進しています。第56回自治研集会では条例の制定に中心的な役割を担われた、遠野市子育て総合支援センターの担当者にお越しいただき、条例制定に至った経緯やその意義などについて学び、北上市の子育て支援に足りないものは何かを再認識することができました。「子育てをするなら遠野市で」と胸を張って言えることは、うらやましく思えます。



5. 活動のまとめ

 私たちが仕事として携わる公共サービスのあり方について考える中で、2010年度は子育て支援に関わる公共サービスに焦点を当て、地域で子どもを産みやすい・育てやすい環境づくりを進めるための、行政の役割や支援のあり方について考えてきました。私たち自身が働きやすい・子育てしやすい環境を作ることは、住民サービスの向上につながり、公共サービスの質の向上=住民満足度の向上を推進させることになります。今後も具体的な活動テーマを挙げて深く掘り下げ、現状の分析と課題を見つけ出し、改善策を探る活動を継続していくことをめざします。
 翌年の2011年度の活動では、私たちの働き方が公共サービスの質を問い直すことにつながると考え、ワーク・ライフ・バランスの充実に焦点を当て、課題の解決に向けた方法を探りました。なかなか目標とする活動ができず、政策提言などのレベルには届きませんが、活動を継続していくことによって少しでも、公共サービスのあり方を変え、質の向上につなげていくことができればと思います。