【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第8分科会 都市(まち)と地方の再生とまちづくり

 依然として吹き止まない公務員バッシング。組合員(役場職員)として地域に根ざし、地域の活性化に取り組んでいることがなかなか理解されない現状を少しでも改善するための一助になればと思い、地元商店街でのみ使用できるポイントカード事業への協力をした。



地元商店街の活性化にむけた取り組み


北海道本部/美幌町職員組合 遠國  求

1. はじめに

 1887年10月の開基以来、豊かな自然と観光資源を有し、積雪寒冷という厳しい自然条件の制約を受けながらも、平坦・広大で肥沃な耕地で畑作3品やタマネギなどの作付けを行い、農業を基幹産業として発展を続けてきました。また、林業では、町の面積の約62%を占める森林と肥沃な大地を活かし、カラマツを主体とした人工林の造成、育成を進め、有数のカラマツ生産地になるとともに、2005年には「FSC森林認証」を取得し、環境に配慮した森林管理や認証材の有効利用・付加価値向上に努めています。
 美幌町には、卸売・小売店合わせて約300店があり、特に中心市街地に多くの商店があり、多くの町民が交流し、買い物を楽しみ、にぎわいを見せておりましたが、近年の自家用自動車の普及や町外資本の郊外型大型店舗の進出、インターネットの普及等による通信販売など、消費者ニーズの多様性から購買力の町外流出が著しく、流出購買率は49.5%に達するなど、多くの店舗が閉鎖し、賑わっていた商店街がシャッター街と化してきてしまいました。
 このような危機的状況を打破すべく、美幌駅前通りの再開発を進めるとともに、行政、商工会議所などが中心になり「中心市街地活性化計画」を策定し、循環バスの運行やまちなか居住の推進、空店舗の活用など、コミュニティづくり、商店街の核づくりを進めるとともに、2008年10月には「ポイントカード」事業に取り組むことになり、再び中心市街地に多くの町民を呼び戻す努力がスタートしました。
 ポイントカードは「スマッピーカード」と名づけられ、事業開始当初は、関係者・町民の期待のもと盛り上がりを見せており、また、事業開始1年目と2年目は、年末商戦にあわせた期間に入会すると、プレミア(10,000円のチャージで12,000円)がつくサービスを行政の支援のもと実施するなど、一定程度の入会者の確保ができましたが、その後、カードはもっているが「使わない」「チャージをしない」という状況が見受けられるようになってきました。
 一方、公務員バッシングがされている中、各種手当の廃止や地域給の導入など総人件費の削減が行われ、組合員の可処分所得は年々減少する状況の中、町立病院の医事部門の民間委託や特別養護老人ホームの民間移譲などの合理化が進められるとともに、有識者による「特別職報酬等審議会」では、職員の給与の削減を求める意見なども出され、より一層の「組合員の団結」と「逆風をなんとかしなければ」との思いを強く持つようになりました。

2. 取り組みに向けて

 2009年3月に新聞報道で、足寄町職が組合費を原資に町内限定の商品券を組合員に還元したという記事(ふるさと購買運動)を参考に、我々美幌町職も同様の取り組みを進めようと四役による話し合いがスタートしました。
 まず、最初に頭を悩ませた問題は、賃金の独自削減こそされていないものの、賃金労働条件が厳しくなっている中、ポイントカードへのチャージのための原資をどのように確保するかということが浮上してきました。そのために新たな負担を求めることは困難な状況の中、しかし、組合として地域振興に貢献することが、これからの活動に大きく影響するとの思いから、2010年3月以降、四役会議や執行委員会を重ね、財源として財政調整基金を活用する方針となりました。
 しかし、財政調整基金の本来の目的に反することや、積立金の多くは退職した組合員や現管理職である職員が組合員の時に組合費として納めたもので、それを現在の組合員に配分することに対する反対意見等も寄せられましたが、管理職には地域振興につながるものであることの説明を行い、理解を得るとともに、2011定期大会で組合員に提案し、承認を受け、取り組みがスタートしました。

3. 実施にあたって

 実施にあたって必要となるものは「スマッピーカード」。しかし、事前に実施した組合員に対する「スマッピーカード」の所有状況の調査では、組合員総数200人のうち、約半数が所持していないことが判明しました。
 今回の取り組みでカードの普及率向上にも繋がることになりますが、あらためて、組合員も流出購買率の中に含まれていることも感じました。
 今回は、事務的な煩雑さを避けるため、また、年末商戦に間に合わせるために、既にスマッピーカードを持っている組合員にも10,000円分のポイントをチャージしたスマッピーカードを配布することとしました。スマッピーカードは、利用金額100円に1ポイントが付与され、1ポイント=1円として使用することができます。
 そのため、今回新規入会となった組合員は、そのままスマッピーカードを利用してもらい、既にスマッピーカードを持っていた組合員は、今回配布のスマッピーカードを使用後に返還してもらい、そのときに貯まっているポイントを統合することとしました。
 スマッピーカードは「基準日」を定め、「基準日現在、組合員である者」に配布することとしていたため、組合員200人に配布することとなりました。1人当たり10,000円分をチャージするので、200人×10,000円=2,000,000円のスマッピーカードによる利用と、ポイントを使い切るだけではなく、自己資金を加えての高価な買い物や、「カードを利用する」手軽さから、今まで足を運ぶことのなかったお店を知る良い機会にもつながることを期待しました。また、買い物で新たに溜まったポイントを他の店で使うなど、今回の取り組みによる経済効果を、200万円の5倍、1,000万円を目標としました。

4. まとめ

 商業者と行政が進めた振興策を労働組合がバックアップするという今までにはなかった取り組みに対し、地元新聞社から取材を受け、記事が掲載されました。商店街をはじめ、町民からも高い評価を受け、風当たりが強かった「役場職員」「労働組合」に追い風が吹きはじめたのではないかと感じますが、それ以上に大切なことは、地域が元気になることだと考えています。
 なかなか景気が回復しない(実感できない)なか、中心市街地の活性化が地域全体の活力アップにもつながるものと思います。美幌町には、まだまだ元気が必要である。
 まちづくりを仕事とする組合員(役場職員)の知恵と労力を活かし、今後も地域振興を積極的に行っていきたい。