【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第8分科会 都市(まち)と地方の再生とまちづくり

 市町村で開催する「祭」には大きく分けて神事的要素をもつ「祭」とイベント的要素をもつ「祭」があり、近年多種多様な「祭」が開催されております。「祭」は、官民一体となり運営し、そこに住民はもちろん遠くからのお客さまを一度に招きいれ、町の魅力を知ってもらう観光資源の一つでもあります。本レポートでは「祭」の今後向かうべき方向について提言します。



地域が開催する「祭」の方向性について


北海道本部/鹿部町職員組合・鹿部町総務・防災課 竹内  稔

1. 鹿部町の「祭」について

 鹿部町では年間を通じ各種の「祭」が開催され、町内はもちろん、町外や道外からのお客さまが来場され、盛大に賑わっています。特に鹿部町の特産品であるほたてなどの海産物を主力とした「祭」では、開催前から行列を作り、特価の商品が飛ぶように売れます。鹿部町においても「祭」は重要な観光資源の一つとしており、官民一体となり取り組んでおります。
 鹿部町職員組合でも「祭」の運営をサポートしており、多くのお客さま並びに関係者に喜んでいただけるよう取り組んでいます。

(1) 「鹿部美味ほたて三昧と温泉満喫DAY」
 鹿部美味ほたて三昧と温泉満喫DAY実行委員会主催による「鹿部美味ほたて三昧と温泉満喫DAY」が毎年3月に鹿部ロイヤルホテル前特設会場において開催され、町内外から毎年5千人以上の方が来場される鹿部町を代表するイベント的要素をもつ「祭」の一つです。
 当日は、その日水揚げされた活ほたての直売、水産加工品の特売、ほたて入り味噌汁の販売のほかに、毎年長蛇の列となる焼きほたての無料食べ放題が行われます。この「祭」には組合員も総出で運営をサポートしており、主な作業内容としては、販売用ほたての袋詰め作業、ほたての焼き作業や排出されるごみの分別作業を行っています。

 
多くのお客さまで賑わう祭会場
 
   
 

活ほたてを買い求める長蛇の列

 
活ほたて直売袋づめ作業
焼きほたて作業
     
 
ごみ分別作業
 
焼きほたてを頬張る子どもさん

 来場者の大半は町外のお客さまで、近隣の市町はもちろん、札幌市などの遠方から旅行会社が企画するツアーバス(1泊2日で町内をめぐるツアーが主)により来場される方もおり、特価の活ほたてを一人で大量に買い求めるお客さまがいました。

 
まとめ買いをするお客さま
 
   
 

クーラーボックスを持ち込み
まとめ買いするお客さま


(2) 「鹿部稲荷神社例大祭」
 毎年7月に開催する「鹿部稲荷神社例大祭」は神輿・奴・松前神楽などの行例と、境内での露店が出店する町民に昔からなじみのある神事的要素をもつ「祭」です。
 この行列に鹿部町職員組合員が参加しています。


 
行列に参加する組合員
奴行列

2. 「祭」の方向性について

 鹿部美味ほたて三昧と温泉満喫DAYの看板イベントである「活ほたての直売」並び「焼きほたての無料食べ放題」について、町外の友人や知人に話をしたところ、「知らなかった」、「知っていれば行きたかった」という声をよく聞きます。
 来場されるお客さまにとって、お得な情報であるにも関わらず知られていなかったということは、町にとってもお客さまを逃す結果となります。しかし、こういったお得な情報を全国的に広報したところで、当日ほたてが不漁となり販売が困難な場合や、集客が想定数を超え、駐車場確保が困難となり、隣接する国道や道道が渋滞するといった場合、お客さまから不満が続出し、次回以降、来場しない結果となりお客さまを逃すことになります。
 このことから当日の運営はもちろん、事前の広報とのバランスを考えることが重要と考えます。

●運営と広報のバランス(イベント的要素をもつ「祭」)


 鹿部稲荷神社例大祭のような神事的要素をもつ「祭」の場合は先ほど上述しましたバランス図のとおりにはならないと考えます。なぜなら神事的要素をもつ「祭」は主旨として観光目的ではなく豊穣への感謝や祈りといった信仰的要素が強いことや、代々長年にわたり引き継がれた神事を行うことを目的としているためです。
 もちろん京都の祇園祭等といった大規模な「祭」となる場合は、運営対応量も広報量に応じ、検討しなければなりませんが、町規模の場合、「祭」に係る運営対応量が固定されており、それに係る広報量も観光や集客目的ではないことから、縮小することになります。
 また、集客について考えると、神事的要素をもつ「祭」は日程がほぼ固定されており、町内の参加者を除き、長年リピーターとして参加されるお客さまがおります。


●運営と広報のバランス(神事的要素をもつ「祭」)

3. 今後の展開について

 町にとっての「祭」は住民にとっては大切な行事で、いかにこの行事を衰退させず、利活用していくかを考えなければなりません。すべての行事においても方向性が重要であるように、「祭」についても、例年通りといった慣例的にならず、イベント的要素もしくは神事的要素をもつ「祭」にせよ、一つ一つの「祭」に対し方向性を定め、運営・広報していくことが、今後求められます。