【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第8分科会 都市(まち)と地方の再生とまちづくり

 町名の由来にもなっている”猪名川”はその源を本町の大野山に発し、大阪湾に至っています。猪名川の源流にあるまちとして、また先人から受け継いだ豊かな自然を守り、自然との共生の心を取り戻し、親しめる河川の環境を創造し、これを次世代に引き継ぐことを目標として町民運動を展開しています。



清流猪名川を取り戻そう町民運動
~そして里山再生へ~

兵庫県本部/清流猪名川を取り戻そう町民運動実行委員会 大西  崇

1. 町民運動がめざすもの

 猪名川は“一級河川淀川水系”に属しており、その源を本町の大野山に発し、東西を急峻な渓谷や大阪・兵庫の府県境を形成する形で南下しながら、やがて神崎川に合流して、大阪湾に注ぎだしています。阪神地域を流れる武庫川とともにまちの中心を北から南に流れる猪名川は、豊かな生活を満足させ、またさまざまな産業の発展に貢献してきました。
 20世紀は河川からの恩恵を受けながらも、やがて川から遠ざかることになり、さまざまな活動によって河川の本来の機能が損なわれた時代でした。21世紀を迎え、地球規模での環境問題が深刻になる中、環境の世紀ともいわれるようにモノから心の豊かさを求める度合いが高まり、身近な自然や生活環境を向上させることが重要となりました。
 猪名川の源流にあるまちとして、また先人から受け継いだ豊かな自然を守り、自然との共生の心を取り戻し、親しめる河川の環境を創造し、これを次世代に引き継ぐことが是非とも必要です。
 とりわけ、やがて河川に流れ出る水の源である森林の環境は、一度失えば回復に長い期間を要するため、今行動をおこさなければ本来の姿に回復することも不可能な状況にあります。
 町民運動がめざすものは、将来を見すえて祖先から引き継いだ猪名川を身近な親しめる河川として回復、新しい川の姿を創造し、次の世代に引き継ぐことを目標としています。
 このため、森林や生活における水の利活用についても見直すことにより、河川そのものの浄化・流下環境を回復することにより“清流が流れるふるさとのまち”づくりをめざした取り組みを展開しています。


2. 推進体制

 具体的運動については、住民・各種団体・事業者などと行政が連携を図る “清流猪名川を取り戻そう町民運動実行員会”を立ち上げ、運動の目的別に部会として①「川と親しむ部会」②「川と水と人の部会」③「川づくり部会」④「川ネット部会」を設置しました。これらの部会において、各主体が意見交換を図りながら、具体的な内容の検討または評価を行い、運動の推進を図りました。また、運動を実施するなかで総合的な調整や部会を越えた運動が必要な場合は随時実行委員会で協議・検討しました。
 この取り組みは、家庭はもとより、だれもが主体的に参画できる自治会などの地縁団体や各種団体等で活動を進めることを基本とし、事業者、行政も一体となって“町民運動”を進め、参画と協働による町民運動を進めるシステムづくりを行いました。主体別の町民運動は次のとおりです。
  ○主体別役割
   住民:一人ひとりが、また近隣と共同で取り組みます。
   地縁・各種周体等:参画を呼びかけ、町民運動のネットワークを広げます。
   事業者:住民や行政と協調するとともに可能な限りの協力を行います。
 個々の住民の取り組みはもとより、組織体として「清流猪名川を取り戻そう町民運動実行委員会」により、取り組み内容・対象地域を拡充していきました。


3. 清流猪名川絵画展の実施

 次世代を担う子ども達に河川に関心を持ってもらうことを目的に“清流”をテーマとした絵画展を毎年開催し、今年で5回目を数えました。今年は、町内の小学校・幼稚園・保育園及び町内在住の児童から約400点の作品応募がありました。2012年10月23日(日)に絵画展表彰式を開催し、町のマスコットキャラクターである「いなぼう」もかけつけ、表彰式終了後には「いなぼう」との記念撮影を行う児童の姿が多数見られました。
 今年度は400点の中から34点の作品が優秀作品として選ばれ、その中から、5賞及び2努力賞(町長賞・教育長賞・商工会会長賞・イオン賞・サピエ賞・町長努力賞・教育長努力賞)がさらに選考されました。
《優秀作品》  


4. 河川清掃活動の取り組み

 猪名川に清流を取り戻そうを合言葉に今年で9回目を数える“猪名川クリーン作戦”が猪名川流域の25箇所で実施され、町内では、民田、林田の2箇所で2012年2月4日(土)河川清掃が実施されました。
 林田地区では、周辺の自治会や地元のまちづくり協議会を始め、清流猪名川を取り戻そう町民運動実行委員会、町職員ボランティアなど総勢66人が参加しました。
 当日は、天候にも恵まれ暖かい日の光がこぼれる中、2時間ほどかけて河川周辺約200メートルの草刈りやごみ拾い、不要木の伐採 などを行いました。 民田地区においても、猪名川漁業協同組合が主体となり猪名川漁協「川の案内所」周辺で、マス・アマゴ釣りと河川清掃が実施されました。
 女性や子どもの参加者も見られ幅広い年代の方が参加されたことで、この日の清掃活動だけで多くの可燃ごみ、不燃ごみ、ビン・缶、大型ごみなどが回収されました。
日本中で、生物が棲みやすい環境が近年失われつつある中で、河川清掃により猪名川に棲む多くの生物を守ることは我々が生活する上でも、大変重要なことです。


5. 里山再生に向けて~ペレットストーブ火入れ式~

 清流をめざすにあたり、山の保水・浄化機能の高まりが不可欠との観点から、町では里山再生にも取り組んでいます。その一環として、2011年12月1日(木)“道の駅いながわ”に設置された薪ストーブの火入れ式が行われました。これは、町の財産である里山の機能回復に向け、近年人気の「薪ストーブ」を公共施設にモデル設置することにより、伐採木や木材の利用方法の一例として提示・PRすることにより、社会、生活環境の変革により放置されてきた里山と人の関係を見直し、現代社会における里山と人との関わりを築いていこうとするものです。
 赤い炎を燃えあがらせる薪ストーブに、同駅を訪れた来場者からは、「薪ストーブから見える炎を見ているだけで暖まった感じがします。心が落ち着き、ゆっくりできます。」といった声が寄せられました。
 猪名川町は、町域の8割を山林が占めるなど、豊かな自然環境が残るまち並みは、四季の移ろいを感じることのできる「住む人」にとっても「訪れる人」にとってもふるさとのまちを感じることができ、こうした恵まれた自然環境は、本町が誇れる町の財産の一つとなっています。
 中でも人々の暮らしに密接に関わっていた里山林は、生活に欠かせない資源として薪炭の採取、肥料としての柴や落葉、木材の採取など暮らしの一部として活用され、日々人の手が入ることで、生物多様性にも富んだ、優れた景観を維持してきました。しかし、近年では、ライフスタイルの変化によって人々が山から遠ざかり、人々の手が入ることのなくなった山林の荒廃が課題となっています。
 本町では、こうした現状に鑑み、豊かな自然環境を「共有の財産」としてとらえ、放置された山林から、管理が行き届いた景観にも優れた山林、いわゆる里山として維持し、後世に残していこうと「活用」・「整備」・「管理(保全)」をキーワードとして個々の取り組みを連携し、一過性のものではなく、里山としての再生を進めることにより景観向上の取り組みを推進していきます。


6. まとめ

 本町は、阪神地域の最北部に位置し、都市近郊にありながら四季を通じて豊かな自然が感じられます。町域の8割を占める兵庫県立自然公園などを背景に、町南部丘陵地は昭和40年代から大規模な住宅地として開発が進み、現在では人口3万2,000人を超え、緑とともに暮らす快適な大都市圏のベットタウンとして発展してきました。
 本町を南北に縦断する猪名川は、下流では“一級河川猪名川”となり、汚染度が高い河川として毎年ランキングされています。“ 清流” といえば多くの場合、水のきれいさを連想しがちですが、川は流水のみから成り立っているわけではありません。堤や護岸の様相、流域の動植物相、周辺の環境との調和、さらには住民との関わりの深さなど多くの要素によって時間をかけて総合的に醸し出される、あるべき姿を示すものです。
 水質が良好であるだけではなく、自然度の高い護岸に囲まれ、魚や水草など水生生物が豊富に生息・生育し、みどり豊かな周辺と調和した美しい景観が形成されており、上流部の山あい、中流部の田園地帯、下流部の都市域や用水などにもそれぞれの地域の特性を反映した清流があります。
 私たちの生活にかけがえのない川「猪名川」に町名を求めたまちとして、住民の参画と協働のもと、自然との共生の心を取り戻し、親しめる河川の環境を創造しながら、河川の機能、引いては“山の保水機能”に着目することにより、里山の再生運動として次世代に引き継いでいくことこそがこの運動の根幹です。