【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第8分科会 都市(まち)と地方の再生とまちづくり

 日田市での交通体系の取り組みをレポートします。特に珍しい事例はありませんが、何かヒントとなるものがあれば幸いです。また、逆にいい事例がありましたらご教授お願いいたします。まだまだ日田市の交通網は発展途上です。



日田市の交通体系づくり


大分県本部/日田市職員労働組合 武原 峰子

1. はじめに

 私たちの街 日田市は九州の中心部にあり、福岡県と熊本県に接しています。江戸時代は地の利を得て、幕府の直轄地天領として九州を管轄していました。2005年3月には1市2町3村で市町村合併をし、新市の面積が269.21km2から666.19km2へと広大になりました。広い面積の約80%が山林または中山間地で、宅地は2.2%しかありません。また、日田市の人口は約71,000人で年々減少傾向にあり、特に高齢者の一人ぐらしが増える傾向にあります。

2. 日田市の交通体系の課題

 日田市の現在の公共交通機関は民間路線バスが14路線、自家用有償の福祉バスが6路線、市営バスが4路線あります。また、通学用のスクールバスの運行をしています。
 2005年の市町村合併前の公共交通網は各市町村において地域にあった独自の事業を行い、住民の交通手段を確保してきました。新日田市となって3年が経過した2008年に、地域ごとに異なる事業内容に対する住民や利用者の不満や不安の解消などを目的として、国の地域公共交通活性化・再生総合事業を活用した日田市地域公共交通総合連携協議会を設立しました。協議会では中長期的に持続可能な公共交通体系への転換などを目標とした、「日田市地域公共交通総合連携計画」を策定しました。
 日田市地域公共交通総合連携計画では、2009年度に「上津江・中津江地区デマンドバス運行」、2010年度に「市内中心部のコミュニティバス再編」、2011年度に「大鶴・夜明地区デマンドバス運行」の実証運行を行い、それぞれ翌年に検証を行いました。上津江・中津江地区デマンドバス運行と市内中心部のコミュニティバス再編は翌年に本格運行に移行し、現在に至っています。2011年度の「大鶴・夜明地区デマンドバス運行」の実証運行については、夜明地区の需要がなかったことから、2012年度は大鶴地区のみ本格運行に移行しました。
 3ヵ年の実証運行は終了しましたが、連携計画の中の見直すべき地域の問題点はまだ解決していません。自宅が山間地でバス停や駅までの距離が遠かったり、または急勾配であるなどいろいろな悪い条件の土地で高齢者や障がい者など自家用車を運転できない住民が生活していくために、地域住民ともに地域の実情に即した利便性と効率の良い交通体系を構築していかなくてはなりません。

3. 市内中心部のバス交通網

 2010年4月から日野自動車の低床バス、ポンチョ2台を国の臨時交付金で購入し、中心市街地の循環運行を開始しました。3月以前は、観光協会が事業主体となり観光地と住宅地を巡るバスを運行していましたが、車両の老朽化と生活交通への転換を目的とし、改編することになりました。新しいバスは2台で3,500万円と高価でしたが、ノンステップバスであることと乗車口が広く、手押し車などを簡単に乗せることができることから、利用者の方からの高評価を得ています。バスの外観もかわいらしく、公募で決定した「ひたはしり号」のネーミングともあいまって、とても街中では目立ちます。さらにバスは窓が大きく車高が低いため、車内の様子が良く見え、運行開始当初は「人が乗ってないね。」とよく言われていました。バス内とバスセンター内にはアンケートと回収ボックスを設置し、利用者の意見を聞きダイヤ改正の参考としています。運行開始から現在まで3回のダイヤ改正と運行経路の拡大を行いました。車両も2012年1月にさらに1台購入し、新たな循環バスとして活躍をしています。運行形態は日田市内の乗合バス事業者にバスの管理と運行を委託しています。経費から運賃収入を差引いた部分が委託料となります。最近では、乗客も増え苦情は少なく、逆にちょっと離れた地域の方から「こっちの方にもひたはしり号を走らせてくれ」という要望が増えてきました。しかしながら、路線を拡大することにより減便や既存のバス停の通過時間の間隔が広くならざるを得なくなり、最終的には利用者へのサービス低下に繋がるため、現時点では考えていません。


水色
緑色
オレンジ色


4. 市内中心部へのバス交通網

 日田市にはJRが2路線、高速道路のインターチェンジが2つあります。ほかに在来線の路線バスが旧町村から市内中心部に向かって繋がっています。しかしながら、全国の地方バスと同じように在来のバス路線は赤字が多く、日田市からの補助なしでは運行ができない状況となっています。バスの運行回数を減らしたり運行時間を変えるなど、経営努力をしていますが、人口の減少や自家用車の利用などで状況は良くなりません。このような状況の中でも、運転できない方や運転免許の返納等で運転しない住民にとっては、わずかな便数の路線バスでも生活するためには必要不可欠なライフラインです。

5. バス停や駅までの交通網

 日田市では自宅から最寄りのバス停や駅までが遠い住民が数多くいます。これらの住民のためにデマンドタクシーを運行しています。週1日から週5日、1日1〜2往復の割合で、地域の住民を最寄りの公共交通の時間に合わせ予約で運行しています。利用者は1回の利用につき200円から300円をタクシー業者に支払い、差額を日田市が支払います。予約制ですので、空車で走ることなく効率的に住民を移動させることができます。また、中心市街地に循環バスを走らせることで需要が減ってしまったタクシー業者にとっても有益な事業となります。さらに、路線バスやJRの利用客の増加が見込まれます。


交通体系のフロー図

6. 上津江町・中津江村のデマンドバス

 日田市の最南部に位置する上津江町は阿蘇山系に続く山間地で、日田市との合併(2005年)より前の1999年からデマンド方式の村営バスを運行させていました。隣接する中津江村では村職員の運転による村営路線バスのみであったため、デマンド方式のバス運行への要望が多くありました。日田市との合併後の2008年度には日田市で「日田市地域公共交通総合計画」が策定され、2009年度に中津江地区でデマンドバスの実証運行を行いました。デマンドバスの運行は在来の一般乗合路線バスが一部運行していたため、中津江村全域の運行にはならず、デマンドバスが運行できない地域の住民からの要望が強くなりました。2010年4月からは上津江町と中津江村全域、大山町の一部を加え、完全デマンドバスの運行が開始しました。デマンドバスには日田市所有の10人乗りのハイエースを使用するため、利用者の自宅付近から目的地付近まで運行できます。運行開始後には地元の医療機関や温泉施設等の利用者増が顕著に見られ、閉じこもりになりやすい高齢者の外出に一役を買っています。2011年度の実績として上・中津江地区の人口約2,000人に対し、利用者は48,000人(小中学生の登下校を含む)にものぼり、デマンドバスのほかに交通機関のない地域での重要なものとして地元住民に浸透しています。


@2010年開設路線
A中津江地区運行路線
BC上津江地区 運行路線

7. これからの交通体系

 公共交通機関は地域に住んでいる住民のライフラインとして、住みたい場所で生活をしていくためには不可欠なものとなっています。しかしながら日田市でも人口の自然減少や流出によりバスの利用者も減少していき、日田市が支出する赤字補填などのバス関連の予算額は年々増加しています。特に効率の良くない周辺部の交通機関の現状に対しては、バス事業者やタクシー業者、国、県の関係機関だけでなく、ボランティアを含む一般市民とともに協議を行い、住民に不利益にならない より有効な交通手段を構築しなくてはなりません。採算の取れないバス路線を、タクシーを使ったデマンド方式の運行に変更するなど、あらゆる方法で検討していきます。また、一方では利用者の理解と協力も欠かせません。日田市としても利用者と話し合いながら、公共交通に少し合わせた生活をしていただけるよう理解を求めることが必要です。