【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第10分科会 「地域力」「現場力」アップにむけた学び合い

 越前市職自治研推進委員会等では、まちづくりや防災など様々なテーマに、講演会や学習会、イルミネーション設置活動等に取り組んでいます。取り組みを通じて、職員組合と市民活動団体が共に学んでいく場の必要性を感じるとともに、職員組合が地域から求められることの重要性を学びました。今後も、働きやすい・働きがいのある職場にする取り組みで、市民に「ありがとう」と言ってもらえる取り組み、そんな「自治研活動」を行っていきます。



「地域力」・「現場力」アップにむけた
越前市職自治研推進委員会、青年部の取り組み
自治研のテーマは無限
小さな一歩、踏み出すことが何より大事!!

福井県本部/越前市職員組合・自治研推進委員会 間所 祐丞

1. はじめに

(1) 越前市の概況
 越前市は、福井県のほぼ中央に位置し、2005年10月に旧武生市と旧今立町が合併して誕生しました。
 面積は230.75km2であり、福井県域の5.5%を占めています。
 人口は85,614人で、世帯数は27,601世帯です(2010国勢調査)。
 本市の歴史は、継体大王伝承に見られるように大変古く、越の国と呼ばれた頃から拓けた地域で、旧武生市には「大化の改新」の頃に国府が置かれ、政治・経済・文化の中心地として栄えました。「源氏物語」の作者・紫式部が、越前国司として赴任した父・藤原為時とともに1年余り暮らした地でもあります。
 また、モノづくりが盛んで、越前和紙や越前打刃物の伝統産業から電子部品等のハイテク産業まで幅広い産業が集積し、福井県内第一の工業製造品等出荷額(2010年県工業統計調査:4,254億円)を誇る産業都市として発展を続けています。

(2) 越前市職員組合
 越前市の職員数は632人(2012年4月1日現在)であり、その内組合員数は447人(2012年4月1日現在)です。執行部のほか、現業支部、公営企業支部、壮年部、女性部、青年部の各支部があります。
 2005年の合併当時から比べると109人減っており、さらに今後5年間で約150人の定年退職が予定されています。また、理事者は、新行財政構造改革プログラムに基づき、2017年度に職員数を600人することを掲げており、どこの職場も慢性的に人員が不足している状況です。
 春闘のアンケート結果に基づく具体的な数字を挙げれば、「人員不足を感じている」と答えている人は全体の約73%にのぼり、昨年度比で10%増加しました。このような中で、どのようにして業務をこなしているかという問いについて、「業務の持ち帰り」や「休憩を取らずに仕事をしている」という答えが多くありました。このことから、制度改正や市民ニーズの多様化に、人員配置が対応できていないのではないかと分析しています。
 このような状況のなか、市職自治研推進委員会や青年部自治研推進委員会では、職場や地域の活性化を図る取り組みを通じて、職員一人ひとりの意識啓発や能力向上に継続して取り組んでいます。このレポートでは、直近の取り組みについて、報告します。



2. 取り組み事例

(1) パネルディスカッション「東日本大震災に学ぶ」
① 日時:2011年9月2日(金)
② 場所:越前市生涯学習センター 4階第1講義室
③ 目的:被災地で支援活動を行った者から報告を聞き、災害時に職員がどうあるべきか、どのような組織づくりを行うべきかを学ぶ。
④ 内容:2011年3月11日に発生した東日本大震災。津波により役所や学校の倒壊、押し流された家屋や車、さまざまな衝撃映像が、テレビ・新聞等で報道され、災害の怖さを目の当たりにしました。しかし、災害時には職員は最前線に立って取り組まなければならず、東日本大震災で実際に被災地へ行き、復興支援活動を行った4人のパネリスト(市職員、組織内議員)から、報道では伝わらない現地の状況、復興支援活動の内容など写真を交えながら報告を受けました。その後、被災地職員の状況や避難されている住民との関わり方について、それぞれ違う立場で感じたことを話していただきました。「報道で見るよりも、実際に現地に行き自分の目で見てくるべき。」、「こちらが支援に行っているのに、逆に避難者に元気をもらった。」、「派遣が終わる頃には『このままでは終われない、何年後かにどうなったかもう一度見に行きたい。』と決意した。」と現地に行って感じた熱い思いを話されました。最後に、「被災地の現状を見ると、役所機能が残っている自治体ほど復興が早い。やはり、職員が復興の重要な役割を担っている、合理化だけで職員を減らすべきでない。また、県も市もボランティアは終わっているが、今後も何らかの形で継続をしなければならない。」とまとめ、今後の継続的な支援等の重要性を学びました。

(2) 庁舎イルミネーションの設置(青年部自治研推進委員会)
① 日時:2011年11月23日(水)
② 場所:越前市役所本庁舎前ポケットパーク
③ 目的:冬の中心市街地の活性化を図るため、地域住民や事業者、行政など様々な主体が連携して行う「冬 のまちなかイルミネーション事業」に参加し、冬の中心市街地の賑わいの創出に取り組む。
④ 内容:青年部の自治研推進委員会では、昨年に引き続き庁舎前のポケットパークにイルミネーションを設置しました。3月に発生した東日本大震災により、冬のイルミネーションを含めた賑わいを創出する取り組みが全国的に自粛される中で、当初は設置を自粛しようかという話もありました。しかし、地域の住民の方や商店街の方、企業の方が取り組むということで、是非青年部としてもやろうということを決断しました。ポケットパークにある大きな池には水の流れを模したイルミネーションを、近くの通路にはイルミネーションのアーチを設置しました。点灯式では多くの歓声が上がり、また点灯期間を通じて、子ども連れの親子や学生など、多くの方に写真を撮っていただき、ある程度の好評を得たのではないかと考えています。何より私が嬉しかったのは、地域の方に「今年もイルミネーションやってね、期待しているよ」と声をかけられたことです。自分たちの取り組みはきちんと見られているのだなと感じました。



(3) 講演会「市民との協働を改めて考える」
① 日時:2012年2月23日(木)
② 場所:越前市福祉健康センター 多目的ホール
③ 目的:昨今、市民と行政との「協働」が重要視されています。「協働」と名がつけば、すばらしい、先進的だという評価がある一方で、「協働」を言い訳に、行政の責任を市民に押しつけるような場合もあるのではないかと思います。果たして市民と「協働」して地域を活性化させるというのはどういうことか、また職員がどのように地域に関わるべきか。過疎・限界集落といわれた集落において、若者の定住促進や農産物の高付加価値化に取り組み、3年間で高齢化率を7~8%減少させた、石川県羽咋市職員の高野誠鮮さんから学びました。
④ 内容:講演会では、ローマ法王へのお米の献上の話や若者との交流事業、農家だけで作った株式会社の運営の話等を通じて、集落・町は会議や印刷物では決して変化しない、本質を見抜き対応することや行動してみて「失敗」して、どうすればうまくいくのか考えることが重要であると学びました。


(4) 学習会「自治体財政分析」
【基礎編】
① 日時:2012年5月31日(木)
② 場所:越前市生涯学習センター 4階第1講義室
③ 目的:越前市の財政状況について学ぶ
④ 内容:普段、気にすることのない市の財政。国の借金が1,000兆円を超える勢いであり、また夕張市のように財政破綻した自治体もある今日、市の財政を把握し、分析することが必要なのではないか、これが学習会を開催するきっかけです。そして、分析する前に少なくとも基礎的な財政用語や数字の見方等について学ぶ必要があると考えました。そこで、県内自治体の財政分析の比較を行った経験がある伊藤藤夫さんを講師にお招きし、決算カードの見方や財政用語について、わかりやすく、また丁寧に解説していただきました。
【応用編】
① 日時:2012年6月27日(水)
② 場所:越前市市民ホール 2階 第3会議室
③ 目的:前回の基礎講座を受けて、越前市の財政状況を他市との比較の中で学ぶ。
④ 内容:前回に引き続き伊藤藤夫さんを講師にお招きし、学習会を開催しました。
決算カードの数字を見ているだけでは、何もわからないけれども、グラフにすると一目瞭然になること。また、それぞれの自治体によって、財政の面で特徴づけられる点がいくつもあることを学びました。県内全ての自治体の財政状況を把握することはなかなか困難でも、越前市や類似団体だけでも、毎年継続して調査・分析することが重要であると感じました。

(5) 今後の課題と方向性
 自治研推進委員会では、約1年間の期間に上記のような取り組みを行ってきました。活動のテーマを深く考えずに、時の社会情勢に関連した企画や、委員がやりたい企画を実施した結果、企画に参加する人が固定化するというようなことはありませんでした。行きたくないけど参加する人より、前向きに参加する人が多かったからではないかと分析しています。今後も、組合員が積極的に参加できるような企画を設定し、委員会全体で推進していきます。
 課題は、取り組んだことを次にどう活かしていくかです。例えば東日本大震災で言えば、まだまだ復興は途半ばであり、自分たちに何か支援できることはないかということ。また、地域の活性化の例で言えば、地域住民に喜ばれ、地域経済が潤うような取り組みができないかということです。
 なかなか一朝一夕には解決できない課題でありますが、そのような中でNPO丹南市民自治研センターをはじめとする様々な市民活動団体と連携を深めることが解決の近道であると考えています。具体的には、自治研推進委員会と市民活動団体が、いっしょになって企画し、取り組むことはもちろんのこと、活動内容等の情報交換を通じて、共に学んでいくことが必要であり、そのための場を設ける取り組みを今後推進していきます。

3. おわりに

 「自治研」とは何か。私の答えは、職場と地域の両方が元気に、また幸せになる取り組みです。言い換えれば、働きやすい・働きがいのある職場にする取り組みでありながら、かつ市民に「ありがとう」と言ってもらえる取り組みのことです。つまり、活動のテーマや熟度は問題ではない。そのことを、これまでの市職の取り組み、またここに記述できなかった丹南自治研センターとの協働の取り組みの中で学びました。
 地域に出ることで、①地域を知る、②「顔」をみせる、③バランス感覚を磨くことができます。①について、国家公務員、有識者よりも自治体職員が間違いなく有利なのは、地域の実情を把握していることです。地域の現状・課題を把握し、課題解決に結びつけることが何より重要です。②について、「顔」がみえない一般的な公務員だから批判やバッシングを受けるのであって、○○さんであれば(○○さんと知っていれば)、面と向かって批判も言えないし、こちらの思いもわかってくれます。③について、社会人は3つの顔を持っているといわれます。一つ目は「労働者」として、二つ目は「職業人(公務員であれば公共サービス提供者)」として、三つ目は「住民」としての「顔」です。サラリーマンも自営業者もこの3つの「顔」を持って、バランスをとりながら生活を送っているのに、公務員はバランスをとらなくてもよいという話にはなりません。何より誰のために仕事をしているかということを考えれば、サラリーマンや自営業者以上に3つの「顔」のバランス感覚を磨かなければならないと考えます。
 さて、今まで述べてきた「自治研」や「地域に出ること」について、もちろん一職員でも始めることができます。ただ、より働きやすい・働きがいのある職場にし、またより多くの市民を幸せにするには一人では足りません。一人ひとりのすばらしい取り組みをみんなが集まって、大きな取り組みにつなげていく、それができるのが「職員組合」で、そのような「職員組合」をつくっていかなければなりません。地域のために地域活動がしたい職員、働きやすい職場づくりをしたい職員、自分のスキルアップのために努力したい職員、様々な「思い」を持って「行動している」職員全てを認めて、みんなで色々な取り組みを推進していく仕組み、それが「職員組合」であってほしいと思います。
 さて、ギリシャの財政問題に起因した世界経済の悪化やタイの大洪水をはじめとした世界各地で発生している異常気象。国内に目を向ければ、東京電力福島第一原子力発電所の事故後初めてとなる、関西電力大飯原子力発電所3号機、4号機の再稼動を巡り、政府や県等の対応に全国民が注視をしているなか、再稼動が決定されました。また、消費税を含む社会保障と税の一体改革について、衆議院で可決はされたものの、参議院での議論は不透明な状態のままであります。さらに、TPPの交渉参加を巡る議論や東日本大震災の復興の問題。身近な職場においても、毎年のように人員が減り、日々の仕事に追われている現状です。課題・問題だらけで、閉塞感の漂う社会情勢です。
 その中で、自分を含めて、全ての職員に共通していえるのが、自分の生活を守り、家族を養っていかなければならないということです。どうすれば生活を守れるか、それは職場を守るということです。私は、地域住民が安心して健やかに暮らしていれば職場は守られるし、むしろ私たちの職場が必要とされるのではないかと考えます。
 最後に、ダイナミックな社会情勢の中で、私たちにできることに限界はありますが、「自分たちの職場を守り、よりよい環境にしていくために、地域の人に『ありがとう』と言ってもらえるような活動は必要不可欠なのではないか。地域から求められる職員組合にならないといけないのでないか。」と問題提起して、今回のレポートとします。