【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第12分科会 被災地における女性への支援と保護~伝えられなかった真実~

 県本部執行委員となり3年。「女性ワク」で(いきなりに)さまざまな場面を経験させてもらいました。その“場面”の情報、経験に向き合うことが、問題の解決を図り、次の行動に移ることへの大きなステップを踏ませてくれました。社会を担う一員として、責任と自覚を持ち、臆することなく、女も男もさまざまな人を巻き込んで、ともに次のステップへ臨む社会づくり、組合活動への視点を模索しました。



本来の「男女平等、共同参画社会」思考
~今を乗り越えてはいけない、“解決”を図ろう

愛知県本部/自治労名古屋市連合労働組合・総務財政支部 吉川 庸子

1. 女性労働施策の波からワーク・ライフ・バランスのビッグウェーブへ

「国民生活に関する世論調査」(内閣府)

現在の生活に「満足」?
20代…70.5%■今より幸せなところにいるとは限らないから
50代…55.3%■先に希望を持っていた世代

 男女平等の運動は、もちろん多くの女性の先人たちの積み上げてきた今日があります。今日につながる運動を、何度も何度も振り返り、振り返り、今の活動に結び付け、繰り返し、繰り返し行動としています。1985年「男女雇用機会均等法」を一つの起点に今日では2007年「ワーク・ライフ・バランス憲章」、「仕事と生活の調和推進のための行動指針」策定へと大きなうねりとして、男も女も、あらゆる人すべてをのみこむ運動へと展開しています。
 1975年「国際婦人(女性)年第1回世界女性会議」(メキシコ)開催。この年から国際婦人の十年と位置づけられましたが、私はちょうど就職。名古屋市婦人対策室を隣(隣の執務室)に見ながら、仕事と組合の両面から、慣習、職場風土に風穴をあける取り組み、少しずつ、少しずつでも確実に前進し、変わっていきました。1999年「男女共同参画社会基本法」「育児・介護休業法」施行。2000年「男女共同参画基本計画」策定、2003年「次世代育成支援対策推進法」と法制度、計画が整っていくだけに、実効を伴わないこの数年の遅々とした、いや停滞した動きに憤り、自分自身も活動への反省もします。
 しかし今、多方面で「法的措置を取っているかではなく、改善したかどうか」「束縛力のない条約」「単なる宣言」などいらだちの怒涛や、さらに少子高齢化、世界的不況、災害を受けて、本来の人間の生き方としての男女平等だの女性を活かすなどの思考で、のらりくらりとはやっていられない、のんきなことを言っていられない厳しい状況が、この波に拍車をかけています。遅ればせながら、自治労愛知県本部がこの波を乗りきるため、活動の活発化をはかりたいと思います。

2. 災害対策を実際何もしていなかった

 3・11東日本大震災の前を振り返って、私たちは実際、災害対策として一体何をしてきていたか。54基の原子力発電所、エネルギー対策にどう取り組んでいたか。男女平等、共同参画推進にどう向き合っていたか。実際のところ……。

3. こういう社会をめざしてきたのか

 2008年9月15日リーマン・ショックから一気に“派遣切り”や“翌日には住むところを失う”日本社会の情け容赦のない様をさらけ出した時、失われた倫理観、理念のなさ、あまりのその露骨さ、日本の貧しさに唖然としました。こんな日本の“社会”を作ってきたのではないと心の底から叫んでいました。
 日本は豊かな国と言えるでしょうか。国家全体として豊かでも、個人の生活は貧しい。貧しいのは住宅事情、道路事情、労働環境事情……政治です。「年越し派遣村」に多くの人が心を痛めたのはなぜでしょう。他人事ではない、他人事ではすまされない、そのようなことが起きる“社会”であってはならないと考えたから……。


4. 一国ではなく、世界が一つに

より良い暮らし指標(CECD)
2012年5月22日/経済協力開発機構

各国の生活の豊かさを示す「より良い暮らし指標」、日本は36か国中21位(昨年は19位)。トップは昨年に続いてオーストラリア。指標は住居や仕事、教育など11項目の豊かさを点数化したもの。日本は「安全」が10点満点中9.9点で1位、「教育」が8.8点で2位と高い。「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)」が3.0点で34位。週に50時間以上働く長時間労働者が全体の約3割に上り、トルコの4割に次いで多いことなどが低評価の理由。

 3・11東日本大震災、原発事故後に至っても政治、行政、経済はどこを向いているのでしょうか。なぜ変えられないのか、そのブレーキを誰が、何がかけるのか。
 グローバリゼーションの流れは今でも不可逆的に進み、自由なグローバル市場と制御された国内市場で、日本の産業の空洞化は進むばかりです。日本が供給力不足の発展途上段階だった頃の行動様式から、戦後の高度成長、その経済の流れから今だに脱却できず、日本の産業構造は製造業中心の「新興国型」のままではないでしょうか。
 “経済”のピラミッド的構造の一握りに翻弄され、「勝つまでは……云々」の戦時中とあまり違わない。個人まですっかりその津波に飲み込まれています。(これについてはレポート後半の“社会”で説明)
 私は3・11東日本大震災、原発事故で、戦後の呪縛に気付かされました。2001年9月11日のアメリカ同時多発テロは衝撃でしたが、私は世界をいつしかアメリカを通してしか見ていなかったことに気付かされました。
 (心の声:沖縄には一度も戦後はないことも改めて認識した。)



 結局のところ世の中(日本)はそう簡単には変わらないのでしょうか。でも世界は勢いをつけて変わっています。米国も変わり、日本を取り巻く環境は激変。この世界観にたった日本の進路は変わらなくていいのでしょうか。
 1989年ベルリンの壁、1991年ソ連・東欧圏の社会主義体制の崩壊(心の声:ある日突然、あれほど重く、暗いは消え去った)、資本主義と社会主義という異なる体制の並存から資本主義あるいは市場主義のグローバル化に一元化していくかにみえました。しかし異なる、対立的な二つの資本主義が存在していきます。米と欧(EU)の政策的対立、例えば温室効果ガスの排出規制で欧の提案はマイナス20%、米0%。国際的な金融市場規制に関しての根本的違い(オバマ政権が強い金融規制に踏み切りますが……途上)など。二つの異なる資本主義、ネオ・アメリカ型の「自己責任」とヨーロッパの「ライン型」(さまざまな公的規制や保護のもと)です。
 今、グローバリゼーションは、国民、国家はそのままあるが、その国の国民経済の枠を超えて拡張し、政府はそのようなグローバル市場をコントロールする力を持ち得ず、その制御に国際的機構を用い、世界的な規模で所得再分配と環境規制を行うことが必要として世界が一つの社会になろうと進められています。こうした状況に再び世界は大きく変わり、変化はすでにさまざまな形で進んでいます。
 現在のグローバル化において、市場制御のシステムを形成し、今までのように自由市場ではないことへの新たな競争力強化が必要となり、また国内向けにも受け手とならなければなりません。

5. どのような“社会”が必要か

(1) どういう社会にしたいか
 私たちの“社会”は経済だけではなく、人間関係や楽しみや生活やさまざまな要求から成り立っています。
 ここで改めて自分たちはどういう社会を望むかを問うてみます。
 究極、「個人の自由」、それは金儲けの自由とか競争の自由とかいうものではない、特別に金持ちになりたいとも思っていない、安心して生活を送ることができれば十分、とします。
 そうであるのであれば、私たちの生活する社会はさまざまな仕事によって成り立っています。分業社会でどの仕事にも意味があり、労働者は社会の支え手です。私たちの生活の“市場”を私たちに必要なものの循環で成り立たせ、そしてその市場のリスクをフォローするための社会的保障を築くことが私たちの社会に大切なことではないでしょうか。
 生活保障システムの必要性…それが社会、政治、行政の役割ではないでしょうか。人間らしい生活を営むことができる社会であること、それを築くことが国であり行政で、今を変えていかなければならないと思います。
 正社員並みに働いてきた人を突然クビにするようなことがない、そして失業の憂き目にあった人が路頭に迷わないよう、住居や収入、再就職先の確保をする社会でなければならないのです。
① 労働について
  現代の社会を“人間的”なものにするもっとも根底的な基盤:働くことの尊厳。ILO(国際労働機関)の「すべての人にディーセント・ワークを(Decent Work for All)」という考え方は、社会的に生産的な(意味の有る)、公正な労働条件のもとにおける完全雇用、そして社会的な保障。
 メモ:政権交代でこの思考などや日本企業のガバナンス(メンバーが主体的に合意形成するなど)を強化する法制審議会で会社法の経営陣に労働者の代表を加えるとする改正論議があること自体がこれまでには考えられないこと。
② 教育について
  社会の構成員としてどういう人間を育てたいか。子どもの貧困をこのままにしておいていいのでしょうか。教育は社会的問題。
 メモ:(子ども手当?!)、社会的に深刻化している育児や子育ての負担、高校授業料無償化なども教育を社会的問題として考える政策の大きな転換がなされている。

 誰も完全ではない、すべての人がハンディキャッパー、人である限り、死、病、老い、失業を背負います。その人間を支える政治、行政、経済ではないか。安心、安全、平等、機会均等、自由、平和…どれも福祉、膨大なお金のかかることです。自分たちが社会をつくり、政府も自分たちが自身のためにつくるものです。どういう社会にしたいかです。


(2) フランスの少子化の歯止めがなぜかかったか
 フランスでも他の先進国同様、合計特殊出生率は1970年代以降下がり、一時1.65に。国策として環境づくりに力を入れ、現在1.90前後(2010年)。更にまだ不十分と考え、人口維持に必要とされる2.07を目標としている。こうした手厚い政策のもとでもまだ希望通りに出産できないとしている。日本の現状、認識とは随分とかけ離れている。
フランスの高い出生率を支えるものは、
・3歳になるまで父母どちらかが取る育児休業の充実
・育児手当は国から約7万円
・完全休業ではなく時間短縮の選択も
・家族手当は収入に関係なく子どもが2人いる家庭は子どもが20歳になるまで約1万6千円。3人以上は増額、学費がかさむ11歳以上の子どもはさらに加算・税金面の優遇(N分N乗方式の所得税制)
・施設利用などの特典 
・ベビーシッターの利用に関する補助金
・保育園整備や多様な保育サービス    etc。
 ドイツはなぜ出生率が低いかは、児童手当等の現金給付は手厚いが、合計特殊出生率は低迷(1.34)。保育サービスが不足、学校は半日制、給食はなく、子どもは昼前に下校するため、母親のフルタイム就業は事実上困難。フランスよりも性別役割分業意識が強いこともあいまって、女性は就業か子育てかの二者択一を迫られる状況です。


6. 男女平等、男女共同参画の視点で社会づくり

 人びとが、市場における競争と対立に翻弄されることなく、人間らしい生活を営みうる社会をつくる必要があります。男性か女性か、社会的責任を有するか否か、正規か非正規かを問わず、誰もがやりがいのある仕事と充実した生活の両立が選択可能となるような社会を築くため、労働の尊厳を取り戻すために、それを支える政策やシステムの構築をはかることが必要ではないでしょうか。
 その理念は男女平等、男女共同参画の活動の視点です、やれば成果の出る運動として、さらに取り組んでいこうではありませんか。また来るであろう災害に備えるように、私たちが生きる社会づくりに、今、真剣に取り組みたいと思います。
 私たちがともに進めてきた取り組み、自治労「男女がともに担う自治労第4次計画」(2012年1月)、自治労愛知県本部「第3次推進計画」(2012年2月)、連合「Action Plan3」と愛知県「あいち男女共同参画プラン」(~2015年)、また名古屋市、県下市町村の推進計画、国、地方、経済界も組合も計画を策定しながら、実効あるものとなっていないのはなぜか。
 また来るであろう災害に備えるように、私たちが生きる“社会”づくりに今、真剣に取り組みたいと思います。
 自分たちで決定し、計画し、宣言していることです。その実行に努めなければならないし、問題への対策をとっていかなければならないのです。

経済成長率GDP    2012/5/17公表(1次速報値)    内閣府SNAサイト資料

2011年度0.0%。10年度の経済成長率は3.2%(2.4%、3.1%から改訂)。08年度-3.7%(戦後最大のマイナス、07年度1.8%から一転)。08年度は、世界金融危機の影響で下半期に大きく経済が落ち込んだ影響。09年度は景気回復の途上にあるがなお戦後2番目に大きなマイナス。10年度は戦後はじめての2年次続く大きなマイナスからの回復となった(2010年度の成長率は2011年12月改定では3.1%と1991年度以降最も高かったことが判明)。なお、東日本大震災は10年度末近くの3月11日に発生しており、10年度データには余り影響がなく11年度に影響があったと考えられる。



7. 終わりに~今を乗り越えてはいけない、解決を

 過去と未来をつなぐ間の場所に、微妙な危うさの中に立っていると思います。「これからどうすべきなのか」私たちは世界に目を向け、生活基盤の“社会”を作り上げていかなければなりません。社会は不条理に満ちています、問題意識が、戦慄するが如く胸にこみ上げてくるその不条理に対する怒りに目を向け、自らも波、風をおこしながら、このビックウェーブに乗っていきたいと思います。
 今を乗り越えるのではなく、解決をするべく、真剣に覚悟を持って、やることをやっていこうと思います。




<参考資料等>
鹿嶋 敬(実践女子大人間社会学部教授/内閣府男女共同参画審議会座長)講演、資料/月尾嘉男(東大名誉教授、「縮小文明時代」)/林良 嗣(名大環境学研究科、「コンパクトシティ」)/「福祉国家と地方自治」岡沢憲芙/「幸せになる資本主義」田端博邦/「世界を知る力」寺島実郎/「グローバル恐慌-金融暴走時代の果てに」浜矩子/「女性を活用する国、しない国」竹信三恵子/「絶望の国の幸福な若者たち」古市憲寿 etc.