【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第13分科会 地域で再生可能な自然エネルギーを考える

 東日本大震災を契機に持続可能な社会への転換に向け「再生可能エネルギー」の利用拡大は不可欠となっています。法整備や国家プロジェクトから家庭用太陽光パネル設置に至るまで大小さまざまな取り組みが行われていますが、本レポートでは神戸市の下水道職場における取り組みを紹介します。



下水処理場における再生可能エネルギーの取り組み


兵庫県本部/神戸市従業員労働組合・下水道支部

1. 再生可能エネルギーとは

 太陽光や太陽熱、風力、水力、地熱、バイオマスなど、資源が枯渇せず繰り返し使えるエネルギーのことを「再生可能エネルギー」といいます。発電時や熱利用時に地球温暖化の原因となる二酸化炭素をほとんど排出せず、環境負荷の少ないクリーンなエネルギーといえますが、発電コストは割高で立地条件や天候などの自然状況により出力が左右され安定供給には課題もあります。


 
     
 

2. 再生可能エネルギーの意義

 国内のエネルギー資源は8割以上を化石燃料が占めていますが、そのほとんどを海外に依存しています。石油・石炭などの化石燃料は限りのある資源で、世界的なエネルギー需要の増大によって価格は高止まりし不安定なものとなっています。
 再生可能エネルギーの利用拡大は、化石燃料への依存度を減少させるとともに、エネルギーのクリーン化にも寄与し地球温暖化対策にも有効です。


 

省エネや低燃費の技術も進んでいるが、それ以上に世界的なエネルギー需要は高まっている

 

原発停止によって火力発電への依存を高める日本は天然ガスの調達でも価格交渉力を失っている


3. 下水と再生可能エネルギー

 下水処理場では水洗トイレや台所などの生活排水に含まれる有機物をバイオマスエネルギーとして活用しています。バイオマスとは動植物などから生まれた生物資源の総称で、下記のような種類があります。


バイオマスエネルギーの主な種類
・廃材を原料とした木質燃料
・廃油を原料としたバイオ燃料
・食品廃棄物や畜産廃棄物を原料とするバイオガス
・サトウキビやトウモロコシを原料としたバイオエタノール

 バイオマスを燃やせばCOが発生しますが、そのバイオマスが生育する過程で光合成により同じ量のCOを吸収しており、また燃やさなくても自然で腐食する過程でCOが発生するため、利用するしないにかかわらず大気中のCOが増えることはないとされています。バイオマス資源は循環型の社会構築に繋がり、地球環境の負荷軽減に貢献するとともに、地球温暖化対策にもなっています。


 下水処理場は家庭や工場から下水道に流された汚水を海や川へ放流する前に浄化する施設ですが、汚水の処理過程で大量の汚泥が発生します。そして、汚泥に含まれる有機物からバイオガスを発生させて、処理場内で燃料として活用しています。


 汚泥は減量化と安定化のために加温し、数日間かけて嫌気性細菌によって腐敗しにくい有機物や無機物の汚泥に分解(消化汚泥)されます。この時メタンを主成分としたバイオガス(消化ガス)が発生し、汚泥の加温設備や、ボイラー燃料として活用しています。
 消化汚泥は最終的には焼却/埋め立て処分されますが、焼却灰の一部は道路舗装に使用するアスファルトフィラーの原料として有効利用しています。

4. 神戸市の下水処理場での取り組み
こうべバイオガスステーション

 設備に使用する以外の消化ガスはガスタンクに貯留していますが、タンクが満杯になると余剰分は焼却処分せざるを得ないため、余剰ガスの有効活用策が検討されてきました。不純物が多く発熱量も低い消化ガスを天然ガスと同等のガスに精製できれば活用の用途が広がるため、地元企業の協力も得ながらガスを精製する技術の開発に着手し「こうべバイオガス」が生まれました。
 そして2008年からは東灘処理場に設置されたこうべバイオガスステーションで天然ガス自動車用燃料として市バスや公用車をはじめ運送業者のトラックなどに供給されています。
 その後「こうべバイオガス」を都市ガス用に精製し、大阪ガスのガス管網を通じて家庭へ供給する体制も整い、消化ガスの有効利用100%を達成しました。現在は神戸に洋菓子工場や食品工場が多いという地域特性を活かし、食品系バイオマスを受け入れてガス供給量を増やす取り組みを行っています。


その他の取り組み
・ごみ焼却施設からの電力融通
・高台にある下水処理場から高低差を利用した処理水送水による水力発電
・汚泥に含まれる「りん」を回収し肥料として再資源化する試み

5. 電力危機への取り組み

 最後に下水処理場で運転監視を行っている職員の取り組みを紹介します。
 今夏、電力危機に直面しており、下水処理場においても消費電力を抑えた運転が望まれますが、一方では本来の目的でもある放流水の良好な水質も確保しなければならず、運転監視を行っている職員の力量が問われようとしています。ごみ焼却施設から電力融通を受けている下水処理場においては電力確保の見通しが立っていますが、それでも職員の節電意識は高く、運転方法を工夫して電力需給の厳しい時間帯に消費電力を抑え、関西電力への送電量を増やす提案をしています。市民に貢献するためにも長年の経験やノウハウを活かして積極的に意見を出し合い、今夏を乗り切ろうとしています。