【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第13分科会 地域で再生可能な自然エネルギーを考える

 日出町の上水道施設では地球温暖化防止の目的で低炭素化社会構築事業の一環として、2010年度に太陽光発電装置の導入と省エネルギーポンプへの転換をはたした。
 この上水道施設を利用した昼間のピークカットと節電の実証実験についての検証報告。



水道施設の省エネ化


大分県本部/大分県地方自治研究センター・環境自治体専門部会 松本 義明

1. はじめに

 このたびの東北地方太平洋沖地震で被災された皆様には、謹んでお見舞い申し上げると共に、被災地の一刻も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。そして地震の被害のみならず、福島第一原発の事故により多方面に深刻な影響を及ぼしていることを憂慮いたしております。放射能の影響評価だけでなく、昨今の地球温暖化対策におけるエネルギー需給の見通しも当然見直しが必要になるでしょうし、より一層の節電と新エネルギーの開発も急務になりそうです。
 さて、日出町の上水道施設では地球温暖化防止の目的で低炭素化社会構築事業の一環として、昨年度に太陽光発電装置の導入と省エネルギーポンプへの転換をはたしました。

   主な内容
・高効率モーター仕様送水ポンプ
 (22kW)3基
・太陽光発電装置(20kW・3相200V仕様)
・長寿命LED場内照明(250W相当)4基

 導入の結果、確かにポンプの省エネ化と太陽光発電の効果で月々の使用電力は節約できました。当然、節約できた分だけ二酸化炭素の排出抑制に効果をはたしておりますが、実際に運用してみて気がついた点を報告します。
① 発電した直流電気を交流に変換するパワーコンデショナーが、電力を消費するので出力ロスが生じます。
② 同じくコンデショナーの運転のために、九州電力の電気供給が止まれば発電した電気を利用できません。
③ コンデショナーは24時間運転なので、夜間は無駄な電力を消費します。
④ 九電への売電には別の専用メーターを設置する必要がありますが、その費用は管理も含めて設置者の負担となります。
⑤ 発電効率は、日射量だけでなく温度も関係するので、夏場の電力需要ピーク時より春先のほうが発電量も多いと予想されます。

太陽光発電装置実績(2011年1月~5月)

2011
日射量
〔kWh/m
気温
〔℃〕
太陽電池
出力電力量
〔kWh〕
交 流
出力電力量
〔kWh〕

1月

110.98

 3.3

 2122.4

 1930.8

2月

 98.60

 7.1

 1898.9

 1722.6

3月

148.26

 7.9

 2834.4

 2595.0

4月

163.45

13.6

 3074.5

 2818.3

5月

123.65

19.0

 2324.4

 2103.0

合計

357.84

12254.6

11169.7

温室効果ガス削減量(2011年1月~5月)
11,169.7(kWh) × 0.369(kg-CO/kWh) = 4121.6(kg-CO


2. さらなる省エネ化への工夫

 施設の設置だけでは、節電の理念が予算の獲得とその工事だけで終わってしまいます。そこで、組合活動の一環として現場の技術者の工夫で、さらなる節電と電気代の節約に知恵を絞ってみました。まず、一番に思いついたのがポンプの稼働時間をいかに短くできるか?という点と、料金の安い深夜電力料金での稼働時間をより長く設定できないか?です。
 水道の需要は生活時間帯の影響で、朝と夕方の2回ピークを迎え、お昼すぎと深夜は極端に落ち込みます。またポンプの稼働目的は、標高の高い地域に水道水を配るために設置された配水池に送水するためですので、その配水池の容量にゆとりがあれば水需要の少ない時間帯(深夜)に一気に送水して、昼間は稼働停止とすれば全体の運転時間も抑えられ、さらに深夜電力で料金も安くなります。そして、昼間は太陽光発電で作った電気を自家消費するのではなく、せっせと売れば買電と売電の利ザヤでさらに電気代が安くなる計算です。
 ただし、そのためにはポンプの運転現状を把握して水需要の予測を綿密に確認して、配水池が空になって受益者に迷惑をかけないように配慮しなければいけません。これまでの水位制御にタイマー制御を組み込む方法に検討を要し、タイマーの部品代自体は数千円程度なのに、事前検討やタイマーの設定方法にかなりの施行錯誤が必要となりました。

 日出町では、小田城浄水場で浄化した水を標高の高い長野配水池へ送水し、さらにそこから尾久保配水池へ送っています。この長野配水池のポンプにタイマーを設置して、それまでの水需要に合わせた運転から夜間のみの運転に変更しました。それにひきずられるように、今回設置した小田城浄水場の省エネ化ポンプの稼働が午後のいわゆる電力ピーク時間に停止し、需要電力の昼間のピークカットに貢献できるようになりました。そして、今回太陽光施設を設置した小田城浄水場だけでなく長野配水池のポンプの運転を工夫した分で、2か所トータルでさらなる節電効果をあげています。

小田城浄水場・長野配水池 使用電力及び使用料比較表

 

2010年

施設名

1月

2月

3月

4月

5月

使用電力(kW)

使用料(円)

使用電力(kW)

使用料(円)

使用電力(kW)

使用料(円)

使用電力(kW)

使用料(円)

使用電力(kW)

使用料(円)

小田城浄水場

22,884

275,866

22,968

279,759

20,208

259,999

21,930

272,805

20,808

260,208

長野配水池

 6,131

 92,414

 5,026

 79,382

 5,135

 80,891

 6,274

 92,614

 5,515

 83,962


 

2011年

施設名

1月

2月

3月

4月

5月

使用電力(kW)

使用料(円)

使用電力(kW)

使用料(円)

使用電力(kW)

使用料(円)

使用電力(kW)

使用料(円)

使用電力(kW)

使用料(円)

小田城浄水場

20,274

253,903

20,922

259,209

19,800

252,239

22,962

281,374

17,994

239,144

長野配水池

 5,566

 85,562

 4,637

 74,266

 4,484

 72,496

 4,806

 76,943

 4,916

 78,853


 

節約量(2010年と2011年の比較)

施設名

1月

2月

3月

4月

5月

使用電力(kW)

使用料(円)

使用電力(kW)

使用料(円)

使用電力(kW)

使用料(円)

使用電力(kW)

使用料(円)

使用電力(kW)

使用料(円)

小田城浄水場

-2,610

-21,963

-2,046

-20,550

-408

-7,760

 1,032

 8,569

-2,814

-21,064

長野配水池

  -565

 -6,852

  -389

 -5,116

-651

-8,395

-1,468

-15,671

  -599

 -5,109


3. まとめ

 福島第一原発の事故は、私たちに新たな難問をつきつけてきました。それは、地球温暖化防止の大きな柱とみなしていた原子力の利用が、いかに危険な道であったのかをもう一度認識させたのです。さらには、福島第二や女川では重大な事故の手前で防げたのが、どうして、福島第一ではできなかったのかという疑問さえも。老朽化で廃炉寸前だった原発を延命させ、さらに、非常用電源回路の老朽化・陳腐化を改善してこなかった東京電力の姿勢にも疑問を感じます。なぜなら中部電力の浜岡原発では、福島第一と同世代の1号機・2号機についてすでに廃炉前提の運転停止を2009年に行っていましたから。
 さらに、東日本で実施された輪番停電とこの夏の需要抑制策は、これまで「地球温暖化防止」の掛け声のもとに節電を呼び掛けてきた努力をあざ笑うかのように、いきなり10~15%の節電を実行できました。理念や理想だけでは、多くの人々の協力を得ることは難しく、しかし、実際に窮地に追い詰められれば人は意外に実行できるもののようです。今回、日出町の上水道施設を利用して昼間のピークカットと節電の実証実験を行ってきましたが、それぞれの職場や家庭では、工夫と努力しだいでさらなるエネルギーの効率的利用ができると思います。東日本の50ヘルツと西日本の60ヘルツでは、電気の融通が難しいのですが東日本の人々だけに節電の努力を押しつけるのではなく、西日本在住の我々にも原発の再稼働が困難な状況の今、みんなで知恵と汗を流さなくてはいけないと思います。尊い犠牲となられて、私たちに身をもって教えを授けられた被災地の方々に報いるためにも。