【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第1分科会 ~生きる~「いのち」を育む・いかす、支えあう

 格差社会の拡がりとともに「官製ワーキングプア」が増えているといわれる昨今、私たちの身近なところで、官製ワーキングプアといわれる状態で苦しんで働く仲間がどれほどいるのでしょうか。本レポートでは官製ワーキングプアといわれる労働者、とりわけ非正規公務員(臨時・非常勤等の公務員)に焦点を当て、官製ワーキングプアを解消し、よりよい公共サービスを提供するための提起を行います。



格差社会と官製ワーキングプア


三重県本部/「格差社会と官製ワーキングプア」ワーキンググループ

1. はじめに

 地方自治研究としてこのテーマを取り組むことになった私たちは、あらためて、「格差社会」とは、「官製ワーキングプア」とは何であるか、という議論から始めた。私たちの身近なところで、官製ワーキングプアといわれる状態で苦しんでいる働く仲間がいるのだろうか。
 官製ワーキングプアと呼ばれる労働者は、大きく非正規公務員(臨時・非常勤公務員)と、事業の民間委託先の被雇用者とに分けられるが、今回は、前者の実態について調査し、議論を重ねたところである。


2. 格差社会とは

 近年、日本の中で「格差社会」及び「格差拡大」について議論となっているのは、主に「経済」、「教育」、「社会的地位」といった分野である。
 経済的な格差ということについては、税制や社会保障による再分配前の所得格差を指していることが多い。これまでの歴史の中で、経済的な格差がなかったかというとそうではない。社会の問題として大きく取り上げられることがなかっただけである。では、いつごろから「格差」について問題視され始めたのであろうか。
 1980年代後半に起こったバブル景気での、株式や不動産を中心にした資産価格の過度な高騰による好景気で、勤労という個人の努力とは無関係に格差が拡大した。その後のバブル崩壊による資産デフレの進行とともに、資産面での格差は縮小したとされている。
 1990年代後半から、企業における正社員削減、従業員の非正規雇用切り替えが進められ、安定した職に就けなかったり、真面目に働きながらも貧困に陥る「ワーキングプア」とよばれる若年層の存在が注目されるようになった。
 若年層の所得格差が拡大したのは、正社員とフリーターとの所得格差が大きかったからとも言われている。正社員同士の格差より、正社員とフリーターの格差の方が大きいため、正社員になれない若者の比率が高まれば、所得格差は拡大する。そうなった最も大きな理由は、1990年代は景気が悪かったからであるとの指摘もある。
 2001年から2006年の小泉内閣時代において、正規雇用が190万人減り、非正規雇用が330万人増えたとするデータがある。ゆえに、小泉内閣によって非正規雇用者の増加が進んだと言われることがある。しかし、統計ではそれ以前から増加しているという指摘もある。
 財務省「法人企業統計調査」によれば、1997年から2007年の間に、企業の経常利益は28兆円から53兆円に増加したが、従業員給与は147兆円から125兆円に減少している。厚生労働省の2010年版「労働経済白書」では、「大企業では利益を株式配当に振り向ける傾向が強まり、人件費抑制的な賃金・処遇制度改革が強められてきた側面もある。こうした中で、正規雇用者の絞り込みなどを伴う雇用形態の変化や業績・成果主義的な賃金・処遇制度が広がり、賃金・所得の格差拡大傾向が進んできた」と指摘している。
 マスコミなどの論調は、当初、単に格差社会を指摘するものであったが、次第に格差の拡大・世襲化という点を強調する傾向が強まっている。
 このように、賃金・所得の格差拡大は、今後の私たちにとって大きな問題であることはまちがいないが、一方では格差に関する人々の意識も地域や立場によってさまざまである。
 今回の研究では、まず、三重県内における格差、とりわけ、所得格差の拡大の実態を調査することとした。


3. 官製ワーキングプアとは

 日本でワーキングプアという言葉が頻繁に唱えられるようになったのは、先に述べた若年層の所得格差拡大が顕著になってきた1990年代からである。
 実は、ワーキングプアという用語の意味や定義については諸説があり、我が国でも定義されるには至っていない状況にある。
 歴史的に見ると、19世紀末頃に、アメリカの思想家らがその根底にあるものは何か議論している。「貧困・ワーキングプアの根底にあるのは社会的機会の不平等構造であるが、一方では貧困と労働者個人のモラルにも関連する」であるとか、「貧困層の人々が貧困から抜け出せないその理由は、ひとつは人種差別、もうひとつは彼らの怠惰・忍耐力欠如などのモラル欠如である」といったものである。彼らは、最も基本的な定義「貧困線を満たす収入を得られていない労働者」では見解を同じくしているが、用語の意味や定義については未だ論争がある。
 日本では貧困線が公式設定されておらず、国民貧困率の試算も存在しない。しかし、実務上は、生活保護基準などを元に運用されている。貧困線とは、統計上、生活に必要な物を購入できる最低限の収入を表す指標で、それ以下の収入では、一家の生活が支えられない、貧困線上にある世帯や個人は、娯楽や嗜好品に振り分けられる収入が存在しないとするものである。
 2007年当時の政府の見解としては、「いわゆるワーキングプアについては、その範囲、定義に関してさまざまな議論があり、現在のところ、我が国では確立した概念はない」、「いわゆるワーキングプアと指摘された方々は、フリーター等の非正規雇用、母子世帯、生活保護世帯等であって、このような方々の状況については、既存の統計等によってその把握に努めるとともに、働く人全体の所得や生活水準を引き上げつつ、格差の固定化を防ぐために成長力底上げ戦略に取り組むなど、対応を図っている」とし、同年の厚生労働省の中央最低賃金審議会では、勤労者生活課長が「目安に関する小委員会議事録」において、「ワーキングプアということ自体の確立した定義がないので、どこがワーキングプアとは統計的にはなかなか言えない」と述べている。
 マスコミなどでは「正社員並み、あるいは正社員としてフルタイムで働いてもギリギリの生活さえ維持が困難、もしくは生活保護の水準にも満たない収入しか得られない就労者の社会層」、「働けども働けども豊かになれない低賃金労働者」などと解釈される事が多い。
 ワーキングプアが大量に発生したひとつの要因として、経済の長期停滞にあえぐ企業の人件費削減の流れがあるが、安価な労働力確保を目的とした国外への進出や賃金の高い正社員の新規採用の削減、人件費が安価で売上等状況に応じて雇用調整を行いやすいアルバイトやパートタイム労働者、契約社員、派遣社員といった非正規社員を増やす手法は、定員管理計画を実施してきた地方自治体のそれとほぼ重なると言えるかもしれない。
 官製ワーキングプアの問題点は、ワーキングプアという課題を解決すべき立場にある行政がワーキングプアを生み出しているということである。一般に、官製ワーキングプアと呼ばれる労働者は、大きく非正規公務員と民間委託先の被雇用者に分けられる。
 非正規公務員とは正規職員以外の立場で働く公務労働者の総称であり、地方自治法では非常勤職員と臨時職員に分けられ、非常勤職員には特別職非常勤職員と一般職非常勤職員がある。また、地方公務員法では、「緊急の場合、臨時の職に関する場合又は任用候補者名簿がない場合においては、人事委員会の承認を得て、六月をこえない期間で臨時的任用を行うことができる。この場合において、その任用は、人事委員会の承認を得て、六月をこえない期間で更新することができるが、再度更新することはできない。」としている。これらの枠組みの中で、地方自治体は、不足する労働力を補おうとしてきた。
 対して、公務員が担当していた業務(出張所や図書館の窓口業務など)を民間に委託する場合、受託者である民間企業は非正規労働者を雇用することが多いため、行政が非正規労働者を生み出すことになる可能性は高い。非正規化は全ての業態で進行しているが、特に民間委託は非正規化しやすい。何故ならば、民間委託は数年契約など契約期間が定まっていることが通常であり、契約期間満了時には新たに入札して委託先を選定することになるからである。これは、民間委託が特定企業の利権化しないための措置で、これ自体は当然である。しかし、受託企業としては継続性が保証されないために非正規労働者に頼りがちとなってしまうのである。


4. 身の回りでの官製ワーキングプアの実態

 では、私たち公務職場で働く臨時・非常勤職員の中に、ワーキングプアとして当てはまる実態はあるのだろうか。2009年の自治労の調査(自治研作業委員会「臨時・非常勤等職員の実態調査報告完全版」)では、公務職場で働く臨時・非常勤職員は全国に約60万人いるとされている。任用期間や勤務時間等の違いの点で、三重県内の自治体に雇用されている非正規職員の人数が把握しづらいところであるが、およそ10,000人と推測される。
 今回は、各自治体の協力を得て、2,200人の調査回答をいただいた。調査した自治体は、いなべ市、亀山市、伊賀市、津市、多気町、明和町、伊勢市である。
 アンケートの内容について、まず私たちは、対象者をフルタイムで週5日、年間52週の勤務形態である職員とした。そして、貧困状態にある実態を把握するため、「主に生計を担っているかどうか」で振り分けることとした。これは、非正規職員の中には、配偶者の扶養の範囲内で収入を得たいと考えて希望するケースや、農業収入や年金収入、不動産収入などと合わせて生計を立てている人もあるからである。
 まず、「官製ワーキングプア」という言葉の認知度について聞いてみたところ、認知度は低かった。「ワーキングプア」なら聞いたことがあっても、「官製」と付くものは、おそらく、聞きなれないものであろう。正規職員でさえも、認知度は低い可能性もある。

あなたは「官製ワーキングプア」という言葉を知っていますか?
 はい   558人(25%)
 いいえ 1,605人(73%)
 無回答   37人

次に、今回、協力をいただいた回答者の内訳は次のとおりである。
① 職種   ア 一般事務              562人
       イ 保育士・幼稚園教諭         628人
       ウ 学校用務員             136人
       エ 学校給食関係職員(栄養士・調理員) 197人
       オ 看護師・保健師            51人
       カ ケースワーカー            8人
       キ その他               603人
       無回答                  15人

② 年齢   ア 10代       8人
       イ 20代      315人
       ウ 30代      345人
       エ 40代      506人
       オ 50代      605人
       カ 60代以上    416人
       無回答        5人

③ 性別   ア 男性     341人
       イ 女性    1,848人
       無回答       11人

④ 勤務年数 ア 1年未満        379人
       イ 1年以上3年未満    444人
       ウ 3年以上5年未満    302人
       エ 5年以上10年未満    577人
       オ 10年以上        474人

 法令で「六月をこえない期間で臨時的任用を行うことができる。」とされつつも同じ職場で引き続き働いている実態を見てみると、上記のとおりであった。自由記入欄の記述を見ると、10年以上、キャリアを積み戦力として必要とされているにもかかわらず、賃金に反映されていないことが読み取れる。勤続年数により上乗せがある自治体もあるが、格差を埋めるには至っていないようである。
 次に、賃金の実態についてであるが、月平均で13万円以上16万円未満の割合が最も多く、一般的に生活最低年収と言われる200万円のラインに達していない人は8割にものぼっている。但しこれらには、家族の生計を担う人、そうでない人が混在するため、ワーキングプアという定義に当てはまる実態について、のちほどもう少し詳しく検証していく。

⑤ 賃金(月平均)  10万円未満        102人
           10万円以上13万円未満   541人
           13万円以上16万円未満   804人
           16万円以上20万円未満   419人
           20万円以上         98人

月収166,666円未満(年収換算200万円)の割合

 ところで、これらの回答者のうち、現在の仕事に対する満足度はどうであろうか。

⑥ 今の仕事に満足していますか。   はい  1,033人
                   いいえ 1,167人

⑦ 今の仕事に満足していると答えた理由は?(複数回答可)
    収入面に満足している    112人
    業務内容に満足している   772人
    その他           178人

⑧ 今の仕事に満足していない理由は?(複数回答可)
    収入面に不満がある     952人
    業務内容に不満がある    293人
    雇用条件が不安定である   438人
    勤務時間に不満がある     99人
    その他            93人

 さらに、今の仕事に満足していないと答えた1,167人に質問を行った。

⑨ あなたは主に生計を担っていますか。
    はい     366人
    いいえ    702人
    無回答     99人

 また、今の仕事に満足していない、かつ生計を担っていると答えた366人に質問した。
⑩ 現在の働き方で生計を担っていけるか?
   生計を立てるにあたり不自由はない           10人
   生計を立てるにあたり不自由ではないが将来的に不安   160人
   生計を立てるにあたり困難な状況である         136人
   その他                        13人
   無回答                        37人
 それでは、今回のワーキンググループで仮定した「官製ワーキングプア」の条件に当てはまる人が何人いるかを検証する。先にも述べたように、働き方については、現在の雇用条件を希望して働いている人と、本当はもっと良い条件で働きたいと思いつつ働いている人がいるため、後者に絞り込みをかける目的で「今の仕事に満足しているか」という問いに「いいえ」と回答した人に、それ以降の問いへの回答をお願いしているところである。
 雇用条件について満足していない1,167人のうち、生計を担っていると答えた人は366人おり、この中で、「現在生計を立てるのが困難」と答えた人は136人存在した。
 今回のレポートで「官製ワーキングプア」と位置づけられる136人の内訳は、次のとおりであった。また、将来的な官製ワーキングプア予備軍として、生計を担っている366人のうち、「生計を立てるのに将来的に不安」と答えた人が160人いることも注視する必要がある。
性 別
男 性27人
女 性106人
無回答3人

年 齢
10代0人
20代6人
30代23人
40代34人
50代47人
60代以上26人

職 種
一般事務 28人
保育士・幼稚園教諭42人
学校用務員9人
学校給食関係職員(栄養士・調理員)11人
看護師・保健師1人
ケースワーカー0人
その他45人


5. 臨時・非常勤職員の皆さんの声

 今回のアンケートの自由記入欄には、想像以上に多くの記述をいただいた。アンケートの回答内容如何にかかわらず、圧倒的に多かった意見は「正規職員と仕事内容が同じであるのに賃金格差がある」というものであった。同様に「少しでもいいからボーナスがほしい」という意見もあったが、一時金が支給されれば問題が解決するものではなく、通常の給与に満足出来ていない表れであると考える。
 アンケート結果にもあるように、不満を持ちつつも、ほとんどの人が、仕事内容にやりがいを感じ、向上心を持って地域社会のために働いている現状を、一人でも多くの人に理解していただきたい。

○自由記述欄の一部抜粋
 ・時間に融通がきくので、この仕事で満足している。
 ・年金+現在の給与で不自由はない。
 ・仕事があれば何でも良い。
 ・業務内容では満足しているが、収入面で将来のことを考えると不安に思うこともある。
 ・1年目と10年目の人が同じ給料なのはむなしい。
 ・この仕事が好きで続けていきたい。けれど、病気をしても保障はないし、安定したお給料もない。
 ・日給ではなく月額(固定給)にしてほしい。
 ・仕事として満足しているが、正規職員とほとんど同じ仕事(担任を持つなど)をしても待遇がこんなにも違うと、これから先、続けて働くことをやめようかどうか考える。
 ・大切なお子さんの命を預かる保育士としての責任は正職員と同様だと思う。保育士の資質向上のためにも格差をなくしていかなければならないと思う。
 ・職務内容について、年々責任や負担が増え、正規職員と同等の知識を求められるようになったが、給与に関しては昇給は一度もなくボーナスもないのが非常に苦しい。退職金もなく、年金も少ないので将来が非常に不安。
 ・賞与が欲しい。
 ・夏休み、冬休みなどの長期休暇に収入が減るため安定していない。


6. 「正規公務員定数削減」と「不足する労働力の確保」の両立

 自治体職員の人員削減や業務内容・職員配置の見直しについて、議会や労働組合との折衝を行ってきた各自治体の人事担当部署の苦悩は並々ならぬものがあったに違いない。
 市町村合併後の定員管理計画を遂行し、既に目標値に達成している自治体もあると聞く。しかしながら、職員の年齢バランスが偏り、技術の継承が途絶えかけ、人材育成に行き詰まり、人は減っても仕事は減らない。おそらく多くの自治体で定員管理計画の総括を終え、新たな職員採用計画に向けた局面に立っていることであろう。
 職員を採用する立場としては、安定した行政サービスを提供するために、安定して仕事を担ってくれる人材を求めたいところである。人を育てるには多かれ少なかれ時間がかかる。このご時世、即戦力を期待したいのは官民問わず同じであるが、それを正規職員でなく非正規職員で急場を凌ごうとする時、さまざまな葛藤があることだろう。人員不足を訴える各職場からの要求に対し、なぜ足りないのか、現有職員で業務遂行が困難な原因は何なのかと心を鬼にして説明を求めるのはつらい。しかし、人事担当部署の思い描く非正規職員の業務のありかたが、各職場の係長なり課長にまで十分落とし込めていなくて、組織が機能できていない状況に陥るケースも存在すると聞く。まして、業務遂行に対して主体性に欠け、意識の低い職員の尻拭いをさせるために非正規職員を雇い入れる状況に陥るなど、不本意の何物でもない。
 正しく人員不足であると言える職場には、正しく人員補強をしたい。このことは、充実した公共サービスを提供するために、正しく理解されるべきである。そのために、人事担当部署が、議会と労働組合の板挟みになることはあってはならない。住民に対する充実した公共サービスの提供は、議会、当局、労働組合いずれの立場であっても共通の目的なのである。


7. 官製ワーキングプアを生み出さないために

 新たな官製ワーキングプアを創り出さないためには、何をどう取り組んでいくべきなのであろうか。
 公共事業の民間委託先の被雇用者を守るための取り組みとしては、各自治体における公契約条例制定の推進が挙げられる。また、公務職場で働く非正規職員に関する取り組みとしては、「これ以上、正規職員と同内容の業務を任される非正規職員を生み出さない」という方向性を早急に打ち出すことが必要となろう。ただ、これは同時に、既に各自治体職場で正規職員の数に迫る人数まで存在する非正規職員の処遇についても考えざるを得ないということになる。
 処遇改善と言っても、いきなり賃金の底上げを行えばよいというものでもない。大切なのは、まず、各職場の皆が納得できる業務の分担と、必要に応じて見直しが行える風土の醸成かもしれない。業務の見直しが進まないのは、個人の意識もさることながら、管理職がそれぞれの立場でどうリーダーシップをとっていいのかわからない現状もあると聞く。自分の担当係の職員の業務の進捗状況を把握し、全体として業務を進めていこうとする意識の欠落を立て直すべく、新たな職員研修をすすめる自治体もある。
 地域の雇用問題という視点で捉えれば、「同じ労働条件で賃金や福利厚生の格差が存在する」という問題がある職場に応募したい住民はいるのだろうかということや、厳しい衛生管理基準のもと限られた時間の中で大量調理を行う給食調理員のような「技術職」に対し、年収200万円ギリギリでその職に就きたいという住民がいるのだろうか、ということについて、住民目線ではどのような解決方法を見出せるのか、それぞれの立場に委ねたい。いずれのケースも、すでに応募者が思うように集まらず、欠員状態のまま不安定なサービスの提供をせざるを得ない状況に陥っている実態があることを申し添えておく。


8. おわりに

 格差是正と一口に言うのは簡単であるが、事実、格差のない社会は存在し得ない。問題は格差を埋める方法、不公平をどれだけ公平にできるかである。
 「非正規雇用職員の処遇改善」と謳うと、労働組合的な立場からの提言と誤解を受けるかもしれないが、我々のワーキンググループは、議会、当局、労働組合いずれの立場にも偏ることなく、それぞれの立場で今後の方向性を見出す参考となるレポートを作成したいという思いで議論を重ねたところである。
 今回、県内各市町の臨時・非常勤職員へのアンケート実施に当たっては、各自治体での諸事情があるにもかかわらず、快くご協力をいただいたことに感謝したい。なにより、拙いアンケート内容にもかかわらず、臨時・非常勤職員の皆様から多くの回答をいただき、さらに、日頃どのような思いで業務に向き合っているかをつぶさに記述していただいたことについて、ワーキンググループ一同改めて感謝するとともに、真摯に受け止めたところである。