【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第8分科会 地域の子育て力が豊かな地域社会をつくる ~未来へつなぐ、子育て~

 厚沢部町の公立保育所で突如提案された民営化とその後の認定こども園建設に関わる住民運動の途中経過を報告する。労働組合が地域住民と協力してまちづくりにかかわる機会をどのようにデザインするかが問われている。



隣接する住民運動と労働運動
―― 厚沢部町常設保育所の民営化と認定こども園
建設をめぐる問題をとおして ――

北海道本部/厚沢部町職員組合・特別執行委員 石井 淳平

1. 突然の民営化提案と退職意向調査

(1) 議員協議会での保育所民営化提案
① 11月12日議員協議会での提案
 2015年11月12日、臨時議会終了後の議員協議会の席上で、唐突に厚沢部町常設保育所の民営化が提案された。当局は議員協議会での提案に先立つ11月2日に学校法人大谷学園と水面下で交渉を行い、保育所民営化についての協議を行っていたことが後に判明した。当局は民営化の目的として、老朽化保育所の立替費用の補助金を受けるために民設民営が必要と説明したが、議員からは民営化のメリットが十分説明できていないことなどを理由に、次回の議員協議会までに資料を整備するよう求められ閉会した。
② 12月2日大谷学園との協議
 12月2日に大谷学園の理事長及び専務理事が来町し、民営化に向けた協議が行われた。大谷学園側からは保育士については全て退職し大谷学園に再就職すること、運営費の赤字が出た場合には町で補填すること、2016年3月までに民営化の可否を確定することなどが申し渡された。さらに大谷学園側で準備した民営化に係る協定書案が提出された。
③ 12月9日議員協議会で再度の提案
 12月9日、臨時議会終了後の議員協議会で再度の民営化の提案がなされた。当局側からは民営化に向けて保育士の退職または職種転換を行うこと、大谷学園に再就職した場合の賃金は減額となること、民営化した場合の建設費と運営費の内訳や経費の総額について説明があった。

(2) 保育士に対する退職意向調査
① 12月15日保育士に対する意向調査
 議員協議会終了後の12月15日、保健福祉課長から3人の正規保育士に対して民営化にともなう処遇の意向調査が行われた。11月12日の議員協議会での民営化提案は厚沢部町職員組合では把握しており、組合員の保育士は状況を把握していたものの、非組合員の保育士にとってはまさに寝耳に水の意向調査だった。
 保健福祉課長は、「厚沢部町の保育を民営化することになったので退職して大谷学園に再就職するか、職種転換して事務職員になるか回答してほしい」と述べ、保育士からの説明をもとめる訴えには一切回答せず、「民営化はすでに決定した」、「意見があるなら町長に言ってほしい」などと述べた。意向調査を受けた保育士は「突然、退職か職種転換を選べと言われても回答できない」とし、後日書面で確認事項などを整理して提出することとした。
② 2016年2月1日保育士に対する再度の意向調査
 12月15日の意向調査の後、保健福祉課長に対して保育士から民営化や大谷学園での労働条件等に関する確認事項が書面で提出された。しかし、その後、保健福祉課長からの回答はなく、保育士側から幾度か回答を出してもらうよう申し入れを行っていた。
 2月1日、ようやく保健福祉課長から保育士に対して回答が示されたが、「民営化は決まっていることでどうしようもない」、「要望等は町長に直接言ってほしい」、「町職員のまま派遣することは考えていないので、退職してもらう」、「書面で確認を依頼されていたことの多くは総務課でなければわからないので回答できない」、「今の臨時職員の処遇をどうするかは大谷学園が決めることだし、知っていても教えない」などと、まともに回答する姿勢がまったくみられないものだった。


2. 組合として取り組む

(1) 情報収集から職場学習会へ
① 11月12日議員協議会直後の情報収集
 厚沢部町職から檜山地方本部へ保育所民営化の第1報がもたらされたのは11月26日のことだった。議員協議会資料を目にした組合員から「保育所の民営化の話が協議されたようだ」との情報が地方本部へ提供されたことから厚沢部町職、檜山地方本部が民営化対策に乗り出すこととなった。当局の警戒心が薄い段階で行動を起こしたことから、12月2日の大谷学園との打合せや12月9日の議員協議会なども事前に把握し、提出資料や協議内容についても入手することができた。
 また、直ちに北海道本部へも状況を報告し、以後の収集情報は全て北海道本部へ提供するとともに、組合としての取り組みは道本部の指示のもと行うこととした。
② 2016年1月13日学習会「保育所民営化ってどういうことですか?」
 2016年1月13日に保育士や役場職員を対象にした学習会を開催した。道本部自治体政策部長の瀬戸典仁氏と道本部衛生医療評議会議長種谷文秀氏を招き、公立保育所の果たす役割や函館市などの保育所民営化の実態、今後の取り組み方針について学習会を開催した。
 保育所からは所長や臨時保育士も含めて20人近い職員が参加し、「なぜ民営化をしなければならないのかわからない」、「現場にはまったく説明や相談もなく、全然関係ないところで議論が進められている」という不満が述べられた。
③ 1月28日議会報告会で保育所民営化について質問
 厚沢部町では議会による町政の説明会が毎年1回開催されている。筆者は厚沢部町職員組合として報告会に出席し、保育所民営化議論の進捗状況を確認した。高田一弥議員は次のように回答した。
 (保育所民営化については)たしかに、議員協議会の中で出てきた内容ではございます。ただ、実のところ、まだ具体的に進むというところまで行っておりません。こういう方法もあるよ、ああいう方法もあるよ、という提案の中の一つに民間委託もありだね、と。で、委託するとすればこういうやりかた、こういう方法がありますよ、ということが現実としてですね、お話としてはありました。ただし、今のまま、公設公営、町が運営するという方法もあります。それも両方含めて、やるとすればこういうぐらいの費用がかかって、こういう具合で進んでいきますよという提案があって、今後どうしたらいいでしょうか、というところで話は終わっているというところであります。民営にするよということではありません。
 以上の回答からは、保健福祉課長が保育士に対して述べた「民営化はもう決まっている」という発言が実際に議員協議会などの議論とかけ離れたものであることが明らかになった。

(2) 要求書の提出
① 1月18日要求書提出
 こうした情報収集により当局の目的や進め方などを把握し、2016年1月18日に以下の内容で要求書を提出した。
 ア 厚沢部・鶉・保育所の統合・新設及び民営化方針にかかる経過並びに考え方について、当労働組合および保育所職員に対して説明をすること
 イ 上記の説明に際しては、これまでの議員協議会提出資料及び大谷学園との協議資料を提出すること
 ウ 住民説明会及び保護者説明会の開催期日、回数を明らかにすること
 エ 保育所職員の身分、処遇、賃金及び労働条件の一切に関して、職員組合との事前協議及び合意のないまま一方的に変更しないこと
② 1月29日回答書提出
 議会報告会翌日、先に提出していた要求書に対する以下の回答書が当局から提出された。
 ア (民営化に係る経過及び考え方)12月15日に3保育所の所長に、認定こども園について状況を話し、12月22日には保育所長と各保育所の正保育士に状況を説明した。
 イ (議員協議会等への提出資料) 議員協議会資料2点、大谷学園が素案として提案してきた協定書案の提出があった。
 ウ (住民説明会等)できるだけ早い時期に保護者等へ説明会を行う。
 エ (職員組合への協議)職員組合への説明は行う。

(3) 交渉へ
① 北海道本部を最大限に利用
 1月29日の回答書提出を待って直ちに交渉準備に入りました。厚沢部町職作成の交渉台本素案をもとに道本部の修正案を最終的な交渉台本としました。また、交渉当日は道本部から2人の役員を派遣いただき、交渉直前の最終確認と交渉会場外での待機をお願いした。
② 労使協定違反を指摘
 交渉の冒頭に厚沢部町職佐藤執行委員長から、11月の議員協議会以降、職員組合に対して一切事前協議のないまま議員協議会へ提案したことや大谷学園との協議を進めたこと、保育士への意向調査を行ったことは、2012年に締結した労使協定の違反であり、一連の経緯は極めて残念なものであることを申し渡した。
③ なぜ民営化が必要なのか
 佐藤執行委員長は、1月29日付回答書では民営化にかかる当局の方針や考えかたが示されていないことを指摘し、「昨年3月に策定された子ども子育て支援事業計画を踏まえて、今後の環境整備や子育て支援の考え方について説明をお願いしたい」と、当局の考え方を確認した。
 当局からは、民営化は決定事項ではないこと、今後、人口減少が進むことから保育所を公立で維持することは難しいことなどが説明されたが、組合側は「十分な根拠も提示せず、公立で維持することが難しいという見解に説得力はない」と反論した。
 最終的には佐藤委員長が「厚沢部町常設保育所のあり方等については、保護者・地域住民の意見を聞き、議論する期間を保証し、拙速な判断はしないものとする、ということでよろしいか」との確認し、当局もこれを了承した。
④ 事前協議の徹底を求める
 佐藤執行委員長は「民営化ありきで話が進み、保育士に対して『民営化は決まっている』などと保健福祉課長が述べたことなどを問題視し、組合への事前協議も行わずになぜこのような進め方をしたのか」と問いただした。
 当局からは「民営化が決まっていると言うつもりではなかった」、「大谷学園と協議するために待遇の確認が必要だった」などと回答があった。
 交渉に同席した保育士は「保健福祉課長からは何を聞いても民営化の話しか出てこない。公立でやる話は一切出てこない」、「自分たちも色々意見はある。聞きたいことがたくさんがあるが、保健福祉課長は『僕にはわからない』と言うばかりで意見を受け付ける状態ではない。自分たち保育士は、なぜ公立ではやれない方向で進んでいるのかわからない。しかし、そのことを問いただしても、課長は『ここでする話ではないから』ということで説明に応じようとしない。」などと、当局の不誠実な態度を批判した。
 佐藤委員長の「保育所の統廃合や経営形態の変更、施設の更新については、管理運営事項ではなく、職員の労働条件の変更に係る課題であることから、職員組合との事前協議事項であり、一方的な決定を行わないものとする、ということを改めて確認したいがこの点は、よろしいか。」との問いかけに対して、副町長は「合意できるかどうかはわからないが、協議はする」と回答した。


3. 現場の意思が当局を動かす

(1) 住民説明会と傍聴
① 全地区で傍聴体制を敷く
 交渉後、職員組合の要求にしたがい、当局は3月4日~6日にかけて町内3箇所で認定こども園建設に向けた住民説明会を開催した。厚沢部町職員組合では道本部、地方本部と連携して、全会場で傍聴体制を敷き、当局の発言や質疑の内容の把握を行うこととした。
② 残念な住民説明会
 住民説明会に臨んだ当局側の準備はお世辞にも十分とは言えず、住民からは「たたき台も用意せず、役場は何を説明に来たのか」、「何を聞いても『まだ決まっていない』の一点張りで、本当に意見を聞く気があるのか」など、厳しい声があがった。
③ 建物は譲れても先生は譲れない
 3箇所の保育所の統合については、バスの送迎体制の充実や送迎が必要な保護者への助成が必要との意見があり、条件付きではあるものの、保育所統合をやむを得ないとする雰囲気となった。しかし、保育所の民営化については、「保育士の先生が仕事をしやすい環境にならない民営化には反対する」、「建物は譲れても先生は譲れない」など、町営での保育所運営を求める意見が全ての地区で出され、安易な民営化を許さない雰囲気となった。

(2) 春闘での再交渉
① 2016春闘独自要求書で当局の方針を確認する
 厚沢部町職員組合では、春闘期に再度保育所に関する独自要求書を提出し、保育所運営の方針について再度確認した。3月25日付の回答書では「町営で行うか民営(大谷学園)で行うかの結論はでていない。現時点では方向性について検討している段階である。」とされた。
② 保育所民営化案が撤回される
 5月11日、当局と厚沢部町職のやや遅い春闘交渉が行われた。この交渉中、当局から民営化案を撤回し、保育所は公営のままで認定こども園化することが表明された。渋田町長からは「住民説明会などで住民の意見を聞いてきたが、それらを踏まえて新設される認定こども園は町営でやっていきたい」と説明された。

(3) 保育士と担当課の粘り
① 認定こども園に向けた検討を一気に加速
 春闘交渉で当局がそれまでの民営化案をひるがえした背景には、2016年4月以来の担当課の熱意ある取り組みがあった。厚沢部町職の書記長が担当係長として着任し、これまで停滞していた認定こども園に向けた作業に次々と着手した。担当の保健福祉課では毎晩のように保育士、保健師、担当職員らが新設される認定こども園について議論を行った。
② 公立園へのこだわりとスタッフの意思
 こうした熱の入った議論の結果、新設される認定こども園の運営は、これまでの保育の現状をよく知るスタッフで運営するべきとの機運が高まり、さらに、民営化された場合には保育士が確保できない(民営化された場合には現職の保育士が民営化園へ就職しない可能性)との懸念が広がった。こうしたことから、強引な民営化を進めることは難しいと当局も判断した。


4. 保護者を巻き込んだ運動をめざして

(1) 新たな認定こども園の構想づくり
① 施設の視察と新たな課題
 こども園の町営での運営が確定したことで、担当課ではさらに開設に向けた検討を進めた。道内各所の特徴ある認定こども園の視察を行い、新しい認定こども園のイメージを固める作業を進めた。こうした視察には正規の保育士や担当職員、保健師だけでなく臨時保育士も派遣して関係者全員で作業にあたった。こうした作業によって、認定こども園のイメージが固まるとともに、新たな課題が浮上した。
② 狭すぎる敷地と不便な環境
 認定こども園の建設予定地はすでに取得されていた。厚沢部町では2016~17年にかけて給食センターの建設が予定されており、認定こども園は給食センターに隣接して設置される予定となっていた。しかし各地のこども園を視察する中で、充実した子育て保育環境のためには当初考えていたよりも余裕のある敷地が必要だということがわかってきた。町当局は昭和30年代に建設された現在の保育所を基準に面積算定を行って用地取得をしたようだが、最新の認定こども園に必要とされる面積からはほど遠い狭小な面積の土地が用意されていた。

(2) 充実したこども園を求めるお母さんたち
① 保護者の不満
 敷地面積の不足は、まもなく保護者の知るところとなった。また、厚沢部町の保育料は檜山管内でもトップクラスの高額で、隣町の上ノ国町では保育料が無料化されたこともあり、保育料に対する不満も高まっていた。
 新たに建設される認定こども園が当初考えられていたような充実したものにはならないのではないか、との不安が保護者に間に広がった。
② 認定こども園建設にかかる保護者説明会
 こうした中、保健福祉課ではこれまで調査した各地の認定こども園の情報を踏まえ、新たな認定こども園に必要な要件を整理し、2016年7月4日~6日にかけて保護者説明会を開催した。こども園予定地の不足についても隠さずに説明し意見を求めた。
 厚沢部保育所の保護者からは、「都市部の保育所ならともかく、広い厚沢部で十分な敷地が確保できないのは納得できない」、「管内に最近建てられた認定こども園のように、広くてのびのびした環境が必要だ」、「こども園の検討には保護者を含めた話し合いの場が必要だ」などの意見が出された。また、父母会として充実したこども園のために町に嘆願書を提出することが提案された。
 統合によって保育所がなくなる館地区や鶉地区では、「不十分な敷地で新たな認定こども園を開設するくらいなら、古くても良いから今のままでよい」、「今になってなぜ必要な土地の算定を誤るなどという話が出てくるのか」、「今まで何を検討していたのか」という厳しい意見が出された。
③ 保護者による署名活動
 認定こども園の保護者説明会は、厚沢部町の子育て環境に対する不満が爆発した格好となった。しかし説明会に集まった保護者は、単に担当課に対して不満を述べるだけではなく、保育士や担当者が認定こども園に対して前向きに努力していることを評価していた。こうした担当者らの努力を後押しするために、前述の嘆願書を署名として集めることとし、署名活動が開始された。署名活動は知友人に依頼するだけではなく、街頭でも行われた。 
 また、説明会の翌日の7月5日には先行して集まった署名をもち、町長と面会し、子育て支援に対する十分な配慮を求める要請を行った。

(3) まちを変える主役は住民と行政職員、労働組合
① 声が届いた
 町長への面会は、一見、不満足なものに思えた。町長と面会したお母さんたちは「全く相手にしてもらえなかった」、「厚沢部町の保育料は十分に安いし見なおす必要はないと言われた」と不満を口にした。しかし、その後、担当課が保護者説明会の報告を行った際には、認定こども園の建設用地が狭小であることに対して理解が示され、建設場所の再検討が認められることとなった。
② 保護者の意見を集めてよりよいこども園をめざす
 7月26日、3地区の保育所父母会の役員が集まり、これまでの経過の報告や今後の取り組みが話し合われた。新たな認定こども園建設への危機感からはじまった活動だったことから、ここまでの取り組みは必ずしも組織的には行われず、一部の「有志」による活動となっていた。
 この日、3地区の保育所父母会が改めて会合し、他町のこども園の視察や、視察結果の報告会の開催、今後設置が予定されている「認定こども園検討委員会(仮称)」での要望・提案事項の整理を行うことなどが確認された。


5. 住民と労働組合のかかわりをデザインする

(1) 「私たちの問題だ」という意思 
 厚沢部町の公立保育所の民営化に端を発した認定こども園新設にかかる一連の状況は、職員や住民が徹底して当局に説明をもとめ、説明に窮した当局が方針を変更する、という道筋をとっている。
 民営化は職員にとって究極の労働条件の変更であり、「なぜ民営化が必要なのか」という説明を求めることは当然である。これに対して当局は満足のいく説明を最後まで行うことができなかった。最終的には、現在のスタッフが新設される認定こども園の計画にしっかりとかかわることが大切だと判断され、町営で存続することとなった。
 また、その後の建設予定地の問題は、担当課が提示した「敷地が狭い」という問題を保護者が深刻に受け止めて、「なぜその場所でなければいけないのか」ということの説明や、より良いこども園の建設のために、土地の選定からしっかりと進めてほしいという願いのもとに、町当局の説得に成功したものである。
 いずれのケースも、「私たちの問題だ」という強い意思が当局を動かしたといえる。

(2) 権力者に「不都合な真実」を突きつける
 行政職員の中には、意思決定を放棄しているように思える者がいる。確かに、決定権者と事務吏員では決定への関与の度合いは大きく異なる。しかし、そのことは職員が意思決定を放棄して良いことの理由にはならない。
 行政職員として、与えられた条件の中で業務を行うことは当然だ。しかし、与えられた条件の中でより良い選択肢を提示することは行政職員の責務である。その責務を果たす過程では多くの取捨選択がある。それには無数の意思決定を経なければならない。最終決定権がないことは、決定権者の意向を忖度して業務を遂行することを正当化しない。与えられた条件の範囲で時には決定権者に「不都合な真実」をつきつけなければならない場面がある。

(3) 厚沢部町認定こども園の今後
 筆者には、民営化の提案から認定こども園建設問題までの一連の過程は、労働組合運動から住民運動へとシームレスな連続を示したようにみえる。運動の担い手が労働組合から保護者・住民に変わったが、そこでは一貫して保育所に関わる労働者=保育士の意見が町政に反映されることが望まれている。
 今後、厚沢部町職が取るべき選択は、保護者とともに新たな認定こども園建設に関わることだろう。学習会の開催、多様な意見の収集と取りまとめ、要望の当局への提示、議会等への働きかけなどは労働組合が日常的に行っている基本的な活動だ。現在、厚沢部町保育所の保護者はこうした作業を手探りで進めている。自治体の労働組合が地域住民と手を取り合って、よりよいまちづくりに貢献するチャンスが目の前にあるのだと確信している。