【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第11分科会 じちけん入門!! ~じちけんから始まる組合活性化~

 安来市職自治研の現状。
 全組合員に対し行ったアンケートの結果報告。
 2015年度自治研活動の状況「地域おこし協力隊の人的支援活動」



安来市職労自治研の課題と取り組み
―― 中山間地振興から自治研の浸透 ――

島根県本部/安来市職員労働組合・書記次長 左右田 征

1. 安来市職労の現状

 現在、安来市職労としては自治研として、調理職組合員による市民への学校給食提供イベントへの参加や、他労組と協力しての窓ふきボランティア、平和活動や講演会事業等恒例事業としては行っているものの、主だった政策課題に対する研究等は行っていない状態にあります。
 また、組合員にも自治研活動が浸透していないため、新たな政策課題の発想も出にくい状態であり、自治研活動に対しても、日々の業務の多忙さから余計な手間が増えることを懸念している人も増えています。
 しかしながら、組合員の中には実行したい取り組みを持っている人、仕組みを変えたいと思っている人がいるため、今年度の取り組みとして、全組合員アンケート(別紙)を実施し、自治研がどれだけ認識されているか、何か政策課題を持っているか等把握し、当単組としての新たな自治研活動を模索していくこととしました。


2. アンケート主な内容と結果

① アンケート回収率=41.8%

② 自治研活動を知っていますか?
知っている 聞いたことはある 知らない 無回答
24% 25%

52%

1%

③ 住民から何か提案されたことはありますか?
ある ない
19% 81%

  意見内容の内訳
子育て 保育所、学童保育の料金、時間 乳幼児医療 40%
行政運営 休日の開庁 各種手続きの複雑さ 14%
環境衛生 ゴミの収集 環境整備 11%
公共交通 スクールバスや公共バスの運行 8%
観 光 宿泊施設 公園の整備 6%
給 食 中学校給食、夏休み期間等の学童保育給食の実施 6%
高齢者福祉 単身高齢者への支援 施設の充実 6%
健 康 がん検診の充実 3%
道路整備 道路の拡幅 3%
農業支援 単身農家、赤字農家への支援

3%

④ 業務を効率化して住民サービスの向上が図れることがありますか?
ある ない
24% 76%

  意見内容の内訳
部署の統合、新設 類似業務の統合 総合窓口の設置 43%
病院との連携 医療機関と行政の連携 22%
庁舎の統合 安来市の3分庁舎方式での不効率の是正 13%
システムの整備 システム統一 効率の良いシステムの導入 9%
社協との連携 介護分野の連携 9%
職員の配置 適正な配置 4%

⑤ 仕事以外で住民やNPO等と活動していますか?
はい いいえ
7% 93%

⑥ 取り組みたい事業や活動がありますか?
ある ない
13% 87%

  意見内容の内訳
市街地活性化・観光振興 大型商業施設の誘致 イベント開催 40%
市立病院の改善 病院施設の改修・移転 13%
IT関連 Rubyの活用 7%
子育て支援 子育て家庭への支援拡充 7%
障がい者支援 障がい者の活動支援 7%
スポーツ振興 スポーツ少年団への支援 7%
中山間地振興 地域おこし協力隊の支援 7%
財政問題 財政状況の改善 6%
職員のスキルアップ 幅広い知識をもった職員の育成

6%

⑦ 自治研活動をしますか?
喜んで協力します お手伝い程度ならOK 忙しくて無理です 興味がありません 無回答
7% 30%

41%

10% 12%


3. アンケート分析

 「自治研活動」の認知度については、半数以上は「知らない」という状態であり、「知っている」もしくは「聞いたことはある」という人を超える結果になりました。これは自治研活動を個として実践していないという結果では必ずしもなく、言葉は知らずとも実際には活動を結果として行っているという潜在的な数値を含んでいます。しかしながら、「知らない」という回答が多いため、PRを含め組合員に対する活動を反省しなくてはならず、「自治研活動」という言葉や内容等について、組合員への周知方法を検討する必要があると考えます。
 「住民からの提案」については、子育てに関する関心が最も高いことから、子育て環境や子育て支援に対しての不満がまだまだ存在することが顕著であると言えます。急速に核家族化が進み家庭環境が大きく変化する中、とりわけ子育てについて行政に求められることも変化していますが、対応できていない状態が市民の声として跳ね返ったものと考えられます。
 また、各種行政サービスの向上、行政手続きの手間や複雑さに対する意見も多くありました。各種行政サービスについて市民の要望に応えきれておらず、行政手続きは住民の方々にとって非日常であるという状態が浮き彫りとなっています。一方で、ハード面に関しての意見が少ないことから、住民意識として充足しているか若しくは、その他のソフト面での支援について視点が向いており、行政側とすると、逆に意識が足りない可能性も否定できません。
 「業務効率化」については、縦割り行政の改善を意識し、改善しなくてはならないと考える組合員が多く、仕組み自体の見直しを検討する必要があります。このことは、以前から必要性が認識されながら実現にいたっていない現状があり、特に安来市は分庁舎方式を合併時から継続しており、分庁舎による弊害がある中で、効率化しなくてはならないということが特に大きな労力や精神的負担を必要とする要因となっています。
 また、その他の意見として、社会福祉協議会や医療機関など公共的サービスを行っている団体との連携強化を求めるものもありました。単組としても病院労組や公共民間サービスを受け持つ関係団体労組との連携を労働組合運動だけでなく、日頃の業務の中での連携を強化していく必要を改めて感じました。
 「住民との協働・取り組みたい事業・自治研の取り組み」については、意識の低さが見られました。地域に出て活動している組合員は少数であり、「取り組みたいと思う事業がある」という前向きな組合員も多くありません。実際に市民からも職員に対する地域での活動が低下していることに批判の声も届いています。組合員も目の前にある業務に追われ、考えたり、活動したりすることが難しい組合員がいる一方で、公務職員への地域に対する期待があるのにも関わらず、極めて消極的である者が存在することに目を覆ってはいけません。
 今回のアンケートを行ったことで、組合員の中で意識および行動に大きな違いがあることが判明しました。意識が低い組合員がいる一方で、業務改善の必要性、新たな政策を考えている組合員も多いことから、意識が高い組合員を起点として、その意識を組合全体として発展させる行動が必要であると考えます。


4. 2015年度の取り組みについて~地域おこし協力隊の人的支援~

 今後の課題としては、まずは単組内で自治研活動への意識を高めていく必要があると考えます。今回のアンケートにより「自治研」という言葉には触れたことになるため、次は自治研の意義の周知と取り組み意識の向上が必要と考えます。
 これまで同様の活動も重要ですが、政策課題に対する新たな取り組みを「まずは実行すること」を第一と考え、2015年度の活動として、市としての最重要課題である「人口対策・中山間地振興」の一環として、今年度から受け入れを開始した「地域おこし協力隊の人的支援活動」を行うことといたしました。
 安来市では、本年度より大阪府出身20代男性(妻子あり)と、京都府出身20代女性の2人の「地域おこし協力隊」が市南部の比田地区(住民約1,000人)で活動されています。
 行政からの補助による経済的支援についてはありますが、県外から来られたことで当然人脈がなく、一部の地域住民の協力はあるものの、実情は高齢の方が多く、同世代の協力者は少ないため、何か活動を思いついても人的な支援は十分とは言えない状態にあります。
 そこで、比田地区在住組合員、協力隊と同世代の若手組合員を中心に賛同者を確保し、協力隊との意見交換会を開催し、協力隊が思っていることの確認、不安感の解消に努めつつ、今後の活動の参考にすることとしました。
 現在想定される活動としては、協力隊が居住している「元空き家」の軽微なリフォーム、発案された事業の活動拠点となる耕作放棄地、空き店舗等の改善の支援です。協力隊との信頼関係を深めつつ「地域おこし協力隊」の成功の一翼を担えればと考えます。また、共に活動を行う中から、今後の人口対策・中山間地域振興へ活かせるよう情報収集にも努めて行く考えです。
 そして、組合員に対して活動報告を周知する中から、自治研活動への意識醸成と、新たな取り組みの発案に繋げていきたいと考えます。


5. おわりに

 安来市職労で自治研活動が停滞している中、組合員の自治研意識醸成を図ることは必要不可欠でありますが、非常に難しい問題です。
 停滞の原因としては、定員適正化による人員削減により、日々の業務が増え、組合員に余裕がなくなっていること、また、家庭における役割の変化により家庭や業務以外で費やせる時間が減少していること、そして、組合活動自体が合理化・効率化されているとは言い切れず、拘束時間が長いこと等が考えられます。この社会環境という外的要因と組合自体に起因する内的要因によって、自治研活動だけではなく組合活動自体を敬遠する組合員が増えたのも事実です。
 とにもかくにも、組合活動に参加しやすい環境作りが何よりも重要なことであり、その流れの中で、個人の業務負担の軽減を図るための政策提言をすることも自治研活動であることを周知しつつ、地域貢献活動の必要性など自治研活動の意義を多くの組合員に理解してもらうことが重要になります。今後は、実際に行動し結果を出すことで自治研活動の活性化から組織強化に取り組んでいきたいと考えます。