【要請レポート】

豊後大野市あんしん研究会のあゆみ

大分県本部/豊後大野市職員労働組合・自治研部

1. はじめに

 「認知症になった母の介護に疲れ果てて、もう死にたいとまで思っていた私が、もう少しだけがんばってみようと思い直すことが出来たのは、この『あんしん研究会』があったからです」。
 これは、今年8月21日に行われた豊後大野市長とあんしん研究会役員との高齢者福祉を巡っての意見交換の席上、現在も介護を続けているある50歳代の女性からの発言だった。自らも居宅での介護経験がある市長も当時を思い出したのか、真剣なまなざしで彼女の話を聞いていた。
 ここに出てきた『あんしん研究会』は、自治研活動と市民とのつながりでできた研究会で、主に認知症になっても安心して暮らしていける地域づくりをテーマにした活動を地域で行っている会である。
 今回は、自治研活動からあんしん研究会に発展した経過と、今後の自治研活動と市民活動との協働について問題提起したい。

2. 豊後大野市職労自治研部の状況

 豊後大野市職労は、2005年3月31日、大分県南西部に位置する大野郡5町2村(三重町、清川村、緒方町、朝地町、大野町、千歳村、犬飼町)が合併して、豊後大野市が発足したのに伴って、誕生した組合である。旧町村職労と大野広域連合労が組織合同してできたこの組合は、公立病院や清掃センターなどを抱え、組合員は総勢で638人となっている。
 自治体としての豊後大野市は、面積が603平方キロ、人口42,783人(2006年3月31日現在)、65歳以上人口が14,592人(同)で高齢化率が34.1%と、高齢化が進展する過疎自治体である。
 さて豊後大野市職労では、組織発足と同時に自治研部を設置し、自治体が直面する課題について研究しており、将来的には課題解決のための政策提言を市当局に対して積極的に行っていきたいと考えている。自治研部には自治研推進委員会を設置し、その傘下に保育士部会、幼稚園部会、保健師部会、財政部会、健康福祉部会の5つの部会を設置している。
 このうち健康福祉部会は、合併以前から市民グループと協働で認知症高齢者の地域的な課題に「あんしん研究会」を通じて取り組んできた。合併直後は事務事業の混乱で、組合員の関わりが低調になってしまったが、今後は市職労自治研の中で、市民と行動する部会として確固たる位置づけを持たせたいと考えている。地域課題の発見と解決策としての施策の企画・立案は、自治体職員の視点だけでは分らないことが多く、特に認知症の課題は、当事者たる市民と一緒に行動して考えなければ、どんな施策が必要かが分らないからだ。

3. 自治研健康福祉部会とあんしん研究会の設立

(1) 自治研健康福祉部会設立経緯
  ① 徘徊による行方不明事件
    話は合併前に遡る。
    介護保険法が施行されて2年目の2001年、旧三重町に不幸な事件が起こった。町内の高齢者が相次いで2人、行方不明になってしまったのである。ちなみに、本当に残念なことに、このお二人は2006年8月1日現在、まだ見つかっていない。
    この当時、老人福祉と介護保険の担当者たちは、この事件の直後、(ア)国の推計によれば、65歳以上の約7%が痴呆性老人の患者といわれ、このうち10%に問題行動があるといわれている、(イ)これをもとに推計すると、三重町には340人ほどのかたに痴呆の症状があり、その内約35人のかたに問題行動があるという結果が出る(介護保険の訪問調査でもほぼ同数の結果が出ている)、(ウ)問題行動については、今のところ徘徊しか報告がないが、その他もっと重度の問題行動を家族が隠している可能性もある、(エ)3月と7月に、相次いで町内の老人が行方不明となっているが、内一人には直前まで問題行動がなかったということで、それまで問題行動がないからといっても安心できないという現実もある、という4点をまとめた。そして、この事件は、当事者の家族に大きな衝撃を与えたことは当然であるが、同じ境遇にあるその他の家族にも大きな衝撃が走ったと考えられるのではないか。我々の仕事の最大の目的は、住民が安心して生活できる町を実現していくことであり、そのため痴呆症老人及びその家族が、安心して生き老いることができる町づくりのために何をしなければならないか、という視点で事業を構築する必要があると結論付けた。
    しかし、行政からの視点だけでは本当に当事者たちの立場での事業を構築できるのか不安があった。このため先ず、認知症の高齢者を居宅で介護している家族たちの意見を聞くことにした。

  ② 家族介護者との意見交換会
    2001年9月20日、痴呆症老人を居宅介護している家族12人が集い、初めての意見交換会が行われた。普段は、介護のためになかなか外出して交流できないという同じ境遇にある介護者たちが、初めて顔を合わせて、痴呆症高齢者の居宅介護の辛さ、自分自身の気持ちの変化などを語り合った。
    家族からは「叱ってはいけないと思っていても、つい叱ってしまい、自己嫌悪に陥ります」「生活環境の変化で痴呆の症状が違うのではないでしょうか」「男の私には母のおむつ交換は難しいですね」「母が痴呆症になったということを受入れるのに時間がかかりました」「夫がどこに行くか分らないので、私が杖をつきながら追いかけるんです」「お客が来たときにはしっかりしているのに。……何故でしょう」「一緒に住んでいると痴呆症と分るのに、時々来る兄弟には分らないみたいです」などの、深刻な話、また思わず笑いを誘われる話などが出された。一見取りとめのない話に終始したような会だったが、途中、家族の皆さんが泣き出す場面もあったように、家族にとっては、これまで行き場のなかった気持ちをやっと吐き出す場所を見つけたと言えるような会だった。
    意見交換会は、予定していた2時間があっという間に過ぎ、また次回開催することにして閉じた。

  ③ 自治研健康福祉部会としての活動
    2001年9月に行われた痴呆症家族との意見交換会が終わった後、担当者を中心に自治研部の中に健康福祉部会が作られた。当時はその前年に介護保険法が施行され、高齢者福祉の制度が大幅に変り大混乱が続いていた時期でもあった。そして前述した認知症高齢者を抱える家族の問題や、地域的な課題としての少子高齢化・核家族化による家庭内の介護力の低下(特に認知症介護の難しさ)があった。このような中で進められる第2次介護保険・高齢者保健福祉事業計画の策定に対して、組合による地域の介護サービス基盤整備に対する考察が必要ではないかという問題意識があった。
    そして部会の活動方針は、下記のとおりまとめられた。

三重町職労自治研部健康福祉部会活動方針

1. 部会の目的と活動
  三重町民のためのよりよい地域健康福祉制度の確立をめざし、現在、三重町で行われている健康福祉施策の問題点を分析し、提言を行う。
2. 部会の会員
 (1) 三重町職員労働組合員。
 (2) その他部会の目的と活動に賛同する者(自治労組合員以外でも資格は問わない)。
3. 当面の活動方針
  三重町で行われている健康福祉施策は、福祉、医療、保健、保険それぞれが相互に関係しながら行われており、個別の分野においても複雑・多岐にわたる制度が絡み合っている。
  そのため、各制度政策の課題や問題点の分析・提言には、相互関係の分析・議論が必要となり、その作業は膨大なものになる。
  そこで部会の限られた陣容と予算の範囲内で、当面以下の取り組みを行う。
 (1) 高齢者福祉施策について
 (2) 障害者福祉施策について
 (3) 先進地視察研修
 (4) 問題点の分析と提言
 (5) 当初予算交渉及び春闘交渉時の単組独自要求づくり

    また当面の研究課題を痴呆介護として、この課題の解決のためには議会との連携も重要、と言う認識から、議会議員を交えての定期的な学習会を行うこととした。そしてその手始めとして、各地で取り組まれていた認知症を地域や施設で支える仕組みについての先進事例を研究するため、高知県安芸市の宅老所「わすれな草」や熊本市のグループホーム「きなっせ」の視察研修を行った。また並行して痴呆性老人を抱える家族との学習会を行った。

  ④ 成果と今後の展開について(中間総括-2002年7月時-)
    部会ではそれまでの活動を振り返って、以下のとおり中間総括を行い併せて今後の展開について検討した。その結果を次のとおりまとめている。
    まず成果の一つとしては、部会の活動がきっかけになって、それまで見過ごされていた痴呆症老人を居宅で介護している家族の問題に、行政が光を当てて事業に取り組み始めたことがあげられる。そして一連の部会の取り組みによって、結果として行政側が痴呆症老人やその家族を地域で支えていくことの重要性を認識しているというメッセージを、家族に発信していることを、当事者たちに認識してもらえたのではないか。それまでは家族は孤立していたが、家族同士の交流の支援や、近県への視察研修を通じて、家族が孤立しているわけではないことが分ってもらえたと思う。
    そしてそれからの展開として、(ア)地域の高齢者を支えるボランティアの育成支援、(イ)認知症介護を行うNPO法人の設置や運営に対する支援策、そして(ウ)将来的には認知症老人の介護者(当事者)とボランティア意識のある一般住民、そして部会とが一緒になって、認知症になっても安心して暮らしていける地域づくりのための課題の整理をしたり事業を検討したりして、必要に応じて行政や地域に提案していくような組織づくりを検討していくこととした。

(2) あんしん研究会の設立
   以上の活動と方向性の中から、部会では、痴呆症高齢者とその家族を地域で支える地域づくりを考えるためには、当事者や地域住民と一緒に取り組みことが必要と考え、部会と住民との協働の組織づくりを模索した。

  ① 認知性老人と家族を支える地域づくりを進める準備会
    2003年6月14日に開催した準備会では、「痴呆症高齢者を抱える家族の会」に関ってきた家族、事業者、一般の住民と保健師(部会員)が出席し、認知性老人と家族を支える地域づくりについて、雑談を含めて話し合いが持たれた。
    以後、12月まで定期的に10回にわたって準備会が持たれて、認知性老人と家族を支える地域づくりを進めるための組織づくりの議論が交わされた。
    その結果、『認知性老人と家族を支える地域づくりを進める会(仮称)』として、その会の性格は以下のようにまとめられた。

1. 痴呆性老人と家族を(普通に)支える地域づくりを進める会(仮称)の性格
  三重町に暮らす痴呆性老人が、痴呆という疾患を持ちながらも、どのように生きたいかと願っているかを模索し、在宅において家族と一緒にその人らしく豊かな人生をまっとうできるよう住民レベルで地域におけるケア体制を考え、できる範囲で行動し、また発言し、住みやすい豊かな地域づくりを身の丈で進めることを目的とする。
2. 会員資格
  == 誰でも結構。町内外を問わない。
  例えば
  ・「痴呆」は他人事ではないと思われる方
  ・「痴呆」は他人事だが痴呆の学習をしたい方、関心のある方
  ・介護する者同士の仲間が欲しい、または仲間を知りたい方
  ・痴呆介護に携わっている専門職の方
  == 会費は無理のない程度
  ・個人会員(一口) 1,000円/年
  ・法人会員(一口) 5,000円/年
3. どのような活動を行うか
 ① 定期的な痴呆の学習会
   == 学術的な研究だけでなく、生活者の視点からの情報交換
   == 会員に対する痴呆介護の研修(言葉遣いも含めて)
 ② 地域での見守りネットワークづくりへのアプローチ
   == 将来的には見守りのネットワークができるように。
 ③ 一年に一度、総会と音楽会の実施
   == 総会で、活動内容を振り返る。
   == 痴呆の研究者や専門家との交流
   == 「ボケているからいい加減な音楽でいい」はダメ。
   == 会の理念を共有できるプロミュージシャンとの人間同士の交流
 ④ 広報紙の発行
   == 無理をせずに、できる範囲で。
 ⑤ 長期展望を常に頭の隅に置いて。
   == 将来的にNPO法人化を目指しては。
   == 痴呆性老人やその家族の駆け込み寺的な事業の展開も視野に

   以上の会の性格を踏まえて、具体的な会として名称も「痴呆あんしん研究会」と簡素化して、その設立に向けて進み始めた。会の趣意書は準備会で以下のとおりまとめられた。

痴呆あんしん研究会設立趣意書

 今日、私たちは、痴呆あんしん研究会を設立する運びとなりました。なぜ、三重町か。お集まりの皆さんに、少しだけこれまでの経緯を説明しなくてはなりません。
 今から2年前の平成13年9月20日。三重町内で痴呆性老人を抱え、介護に追われている家族のかたがた12人が、初めて顔を合わせました。場所は、「エイトピアおおの」2階会議室。普段はご家族の介護のため、なかなか交流できない皆さんが、この日、介護の辛さ、苦しさ、そして介護を続けていく間に変ってきた自分自身の気持ちについてなど、それまで、伝えたくても伝えられなかった胸の中を語り合いました。
 もちろん、皆さんがはじめから上手に話せたわけではありません。ある方はとめどなく長く、またある方はポツリポツリと。初対面なのに、誰かが泣き出すと、また一人もらい泣いき、そのうち皆が鼻をすすり始めて。ズーズー、チーンという音がそこらから聞こえ始めた、そんな少しずつ少しずつ心を開きながら進めていく、交流会でした。でも最後は「うちのおばあちゃんってこうなんですよ」「うちだってああなんだから」と何だか介護の自慢話になって笑いがこぼれるようになりました。
 「また集まって話そうね」
 誰からともなく出たこの言葉が、今日、設立する痴呆あんしん研究会の始まりです。
 さて、どうしたら痴呆の問題が解決できるのだろうかと考えると、気が遠くなるほどたくさんのことが関係していることに気づきます。本人や家族はもとより、医療、地域、行政など。それから、この地域特有の問題として高齢化があります。今は他人事かもしれないけど、5年先は当事者になるかもしれない、いわば予備軍もたくさんいます。
 多分、これらの課題は、時間がかかるけれど少しずつ自分たちで無理をせずに解決していくしかないのだと思います。一人では大変です。でも多くの仲間がいれば、そしてその仲間が痴呆について理解を深めたとき、少なくともこの町で安心して暮らしていける地域づくりが始まるのではないでしょうか。
 あの交流会から2年3ヶ月。今日、私たちは、痴呆あんしん研究会を設立します。自分たちのできる範囲で、無理をせず、価値観の違いを認め合う中で、しっかり目標を持って前に進んでいきたいと思います。
 「また集まって話そうね」
 この気持ちを大切に歩いていこうと思います。

  ② 痴呆あんしん研究会設立総会
    2003年12月20日15時40分、痴呆あんしん研究会設立総会が関係者ら約50人の出席を得て開催された。
    規約の承認の後、活動方針が下記のとおり提案され原案どおり承認された。

≪活動方針≫
 〇痴呆性高齢者と痴呆疾患を正しく理解するため、定期的な学習会と研修会・交流会を行う。
  当面、年2回
 〇年1回の総会と、フォーラムを開催する。
 〇情報の発信をする
  具体的には、会報、冊子の作成等。
 〇地域での見守りネットワークづくりへのアプローチを目指す。
 〇長期展望を常に考える
  将来的にNPO法人化を目指す。

    また、会員心得5ヵ条も下記のとおり申し合わされ、その考え方について具体的な説明も付け加えられた。

≪会員心得5ヵ条≫
  無理をしない
  一緒に楽しむ
  学びあう
  気持ちを寄せ合う
  ユーモアを忘れない
 心得ってこんなことです。
  〇個々に持っている特技をできるだけ生かす
  〇自分の価値観をおしつけず心を傾けて聴く
  〇自分しか知らない情報を提供する
  〇無理せず自分にできることをする
  〇会員同士の思いやりを持つ
  〇自分と家族の健康に気をつけ頑張り過ぎない
  〇基本的に楽しく気楽に長続きできるようにする
  〇1年に1回自分の考えをみんなと話し合う

    設立総会の出席者からは、「肩ひじ張らず、楽しく学び合っていきたい」や「痴呆を正しく理解すれば、楽しく介護ができるようになる。会のぬくもりが地域に広がり、痴ほうのお年寄りをみんなで支えるまちづくりができれば」などの声があがった。

4. 痴呆あんしん研究会の歩み

(1) 活動状況
   当初、研究会の幹事会レベルの会議は、定期的に行えるだろうと簡単に考えていた。幹事といっても、部会員(組合員)以外は、介護真っ最中の家族に行政経験が全くない(当たり前のことであるが)住民、そして問題意識が高いものの事業者に勤めている職員であり、こういう職員は概して忙しく時間がない。しかも夜の会議になるため、家族の介護時間の問題などもあって、幹事会の開催時間、議事の進め方そのものから手探りで進めることになった。そんな中でも2004年度は何とか幹事会を毎月1回開催できた。また研修活動も4回行うなど、初年度にしては出来すぎの感があった。
   そして年を重ねるごとに、幹事会や家族支援が定期的に行えるようになり、会員同士の交流事業も活発になりつつある。
   さらに2006年度には、これらの事業のほか、県社協から補助金を受けて、一般住民などを対象に認知症理解のための研修を主催するようになった。
   ちなみにこれまでの歩みをまとめると以下のようになる。
  ① 2004年度
   ア 幹事会
     2004年1月27日 第1回幹事会
        2月20日 第2回幹事会
        3月11日 第3回幹事会
        6月22日 第4回幹事会
        9月27日 第5回幹事会
        11月2日 第6回幹事会
     2005年1月14日 第7回幹事会
        2月4日 第8回幹事会
        3月10日 第9回幹事会
   イ 研修(学習)活動
     2004年8月21日 近隣のグループホーム・デイサービス視察・研修
              ▽養老の泉、よしちゃん家(大野町)
              ▽宮尾の家、おさかの里(三重町)
        11月20日 講演会「ふれ愛・中津の取組み」講師 堀幸子さん
        11月25日 先進的なグループホームの取組み研修
              ▽きなっせ(熊本市)
     2005年2月12日 先進的なデイサービスの取組み研修
              ▽わすれな草(高知県安芸市)
  ② 2005年度
   ア 2005年度痴呆あんしん研究会総会
    a 日 時 3月19日(土)15時
    b 場 所 介護予防拠点施設「ひなたぼっこ」
    c 2005年度活動方針
      ・交流活動 認知症高齢者と認知症疾患を正しく理解するため、定期的な学習会と研修会、交流会を行うこと。
      ・啓発活動 会報等を発行し、地域に向けて啓発活動を行うこと。
      ・連  携 地域での見守りネットワーク作りを目指して、他団体との連携を進めること。
    d 「痴呆症」の呼称が「認知症」と変ったことで、「あんしん研究会」と名称を変更した。
   イ 幹事会
     2005年5月31日 第1回幹事会
        6月21日 第2回幹事会
        7月11日 第3回幹事会
        8月30日 第4回幹事会
        9月29日 第5回幹事会
        12月7日 第6回幹事会
     2006年1月10日 第7回幹事会
        2月16日 第8回幹事会
        3月10日 第9回幹事会
   ウ 認知症を抱える家族への支援活動
     2005年4月20日 意見交換会
        5月18日 05年度活動内容について
        6月15日 家族会チラシづくり
        7月20日 認知症についての講話
        8月24日 日出町家族会との交流会
        9月21日 清川町家族会との交流会と認知症予防についての講話
        10月19日 ビデオ学習会
        11月16日 ビデオ学習会
        12月21日 意見交換会
     2006年1月18日 脳活性化ゲームの実践
        2月15日 施設見学
        3月15日 意見交換会
   エ あんしん研究会交流会
     2005年10月14日 脳活性化レクリエーション及び世界アルツハイマーデー記念講演会報告会
        11月11日 脳活性化レクリエーション及び意見交換会
        12月9日 警察署の講話「高齢者の安全な生活について」
   オ 講演会の開催
     2006年1月28日 認知症の症状の理解と上手な対応(呆け老人を抱える家族の会大分県支部事務局長 藤田淳子さん)
        3月19日 ボケない老後のために~認知症予防について(高齢者リフレッシュセンタースリーA所長 増田末知子さん
  ③ 2006年度
   ア 2006年度あんしん研究会総会
    a 日 時 3月19日(日)12時
    b 場 所 豊後大野市三重町農村環境改善センター
    c 2006年度活動方針
      ・交流活動 認知症高齢者と認知症疾患を正しく理解するため、定期的な学習会と研修会、交流会を行うこと。
      ・啓発活動 会報等を発行し、地域に向けて啓発活動を行うこと。
      ・連  携 地域での見守りネットワーク作りを目指して、他団体との連携を進めること。
   イ 幹事会
     2006年4月27日 第1回幹事会
        5月18日 第2回幹事会
        7月20日 第3回幹事会
 現在に至る。

5. 一連の経過を通じて現れてきたもの

 ここでは、これまでの活動を通じて現れてきた成果と課題についてまとめてみたい。

(1) 活動の成果
   まず、認知症問題は家族の問題という意識から、地域的な課題という認識が住民に少しずつではあるが広がり始めたこと。そして家族(当事者)と会員とが交流を継続してきた結果、家族がオープンに自らの経験を語り始め、その結果、情報の共有が出来るようになった。
   次に、会に参加しているグループホームスタッフも、グループホームでのケアの質の向上をめざし、地域に溶け込み地域の認知症ケアの拠点となる試みが始まったことも、大きな成果の一つだ。そして、素人集団のあんしん研究会が認知症高齢者を抱える家族に対する地域支援事業を受託して、相談に乗ったり、講演会を開催したりし始めたことも大きな成果と言える。

(2) 課題と今後の方向
   しかし一方で、課題もある。
   まず、あんしん研究会については、合併後、行政の範囲が広がったことによる新市での運動をどのように拡大していくかということ。それは、新市の広い範囲で、それまでつながりの薄かった旧他町村の介護者(当事者)から頼られる組織づくりをどのようにしたらいいかという問題でもある。
   次に、広くなった新市において、表面に出てこない介護者(当事者)へ、どのようにアプローチしていけばいいのかと言う課題もある。その他にも、会費だけで運営しているあんしん研究会の財政確立の課題、会員相互間の連絡体制の整備という課題などいくつもある。
   一方、市職労側としては、合併後飛躍的に組合員が増え、組合員同士が顔の見えない関係になり、組合員が地域課題に無関心になってきた中で、認知症問題に関心を持つ組合員を増やす取り組みをどのように行っていくかと言う課題。併せて市民と一緒に地域づくりを行っていく組合員の発掘と育成などの課題もある。
   自治研の時代。自治研活動の充実度が組合の活性化の鍵を握る、などと言われて久しい。しかし多くの単組で行われている自治研活動は単組内の活動に終始してしまっているのが現状ではないだろうか。併せて、私たちは空前絶後の公務員バッシングの真っ只中に置かれている。しかし、このような中で、地域課題に直面する場所で働いている組合員が、その地域課題を真正面から受け止め、地域住民と協働しながら解決していくことが出来れば、きっと自治体職員(組合員)の信用は地域住民に揺るぎないものになるはずだ。
   例えば、自治研で地域課題を整理して、住民と一緒に施策を構築し、それを春闘交渉の単組独自要求として当局にぶつける。実現できるかどうかは、組合と当局との時の力関係に負う所が大きいが、少なくとも地域住民の意見を背負って当局と交渉するのだから、当局も簡単には拒否できるはずはない。お互いに地域住民の視点で、真摯な交渉ができるのではないか。
   あんしん研究会での歩みは、決して早いものではない。会が設立されるまで市民と歩み始めて2年3ヶ月。それから、認知症の家族の相談事業を請け負えるようになるまで2年かかった。官から民へ、民間で出来るものは民間へという潮流の中で、人材が集中している都市部では短時間で出来るかもしれないが、過疎の進む中山間地域では安心して任せることが出来る団体を育成するまで5年以上の歳月と、粘り強い住民へのアプローチが必要なのだ。

6. おわりに

 冒頭の市長との意見交換会では、こんな意見も出た。
 「1人暮らしの高齢者がすぐ近所にいる。夕食ぐらいは、ちょっと多めに作って、持って行ってあげることもできる。でも、近所と言っても段々と気持ちが通じなくなってきて、週に一回帰ってくる子どもさんから『つまらないことをして。大きなお世話だ』と思われるのではないかと思ってしまう。地域には少しだけだが身の丈の善意を持っていて、何かに役立てたいと思っている人がたくさんいると思う。その少しだけの善意を持寄る場所や環境を行政につくって欲しい。たくさんの人が持寄れば、一人ひとりの善意は小さくても、持寄ったものは大きな善意になるのではないでしょうか。私たちもその環境づくりにもちろん参加したいと思います」。
 あんしん研究会は会の設立後3年目を迎えている。これからも数多くの課題はあるにしても、「無理をしない」、「一緒に楽しむ」、「学びあう」、「気持ちを寄せ合う」、「ユーモアを忘れない」の会員心得5か条に立ち返って、のんびりやっていけば、なんとなく何もかも解決していきそうな気がする。