【自主レポート】
現在の松江市におけるバス停留所の
問題点と危険性について |
島根県本部/松江市職員ユニオン
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1. はじめに
公営交通事業をとりまく環境は、地方財政危機、規制緩和等から大都市・中小都市の別なく年々厳しさを増している。
このような厳しい環境の中で、各都市の労働組合・当局は、労使一体となって創意工夫をこらした先進的な施策を企画・実施するなど、事業の維持・存続に向けて積極的な取り組みを進めている。特に労働組合は、公営交通の維持・存続を最優先課題と位置付け、「市民・利用者に必要とされる公営交通」をアピールするため、知恵を出し合い様々な組合活動に取り組んでいる。
乗合バスの輸送人員は1970年代を境に減少に転じ、現在は全体でピーク時の48%程度まで落ち込んでいる。マイカーへの転移を主要因に、少子化による通学生の減少や都市部では自転車の普及、交通渋滞による定時性の喪失にともなうバスの信頼性低下などの要因が絡み合い、バス利用者の逸走を招いている。こうした結果として、乗合バス事業の経営は悪化しており、事業者の大半は赤字経営を強いられている。
2000年11月には、交通バリアフリー法が施行され、旅客施設及びその周辺地区の道路、駅前広場などのバリアフリー化について重点的に整備していくための枠組みが整備された。松江市においては人口構造の高齢化が急激に進展しており、高齢化率は20%を超え、同様に今後も上昇するものと見込まれる。障害者は人口の3%を占めており、松江市での増加率は18%となっている。このように、高齢者・身体障害者の増加とともにバリアフリーへの社会的要請が高まり、関連法令も施行されたことから、松江市のまちづくりの将来像を考える上で、高齢者、障害者等が公共交通機関等を利用して安心・安全で自由・快適に移動できる都市環境を整備することが早急に取り組むべき重要施策の一つとなってきている。
バスの乗客の大半は、高齢者・障害者・学生の(交通弱者)であり、近年交通局に導入されたバス車両は、乗降の容易なワンステップかノンステップバスが主流になり、利用者からも乗降が容易で負担が軽減されたと好評である。しかし、バス停留所の構造によっては、路線バスを停留所にうまく停車できない個所も多くあり、乗客が歩道から車道へ降り路線バスへ乗車するなど、運転技術でも補うことができない問題点もある。そこで、松江市におけるバス停留所施設の現状を分析するとともに、具体的な方策を提案してみたい。
2. バス停留施設の構造と種類
まずここで、バス停留所の基本的な規定と構造及び種類を紹介すると、
バス停留所は道路構造令第31条の3で、「自転車道、自転車歩行者道又は歩道に接続しない乗合自動車の停留所又は路面電車の停留場には、必要に応じ、交通島を設けるものとする。」とされ「乗合自動車停留施設は、設計車両に応じて無理のない停車および発進が可能なよう、その寸法と設置を定めるものとする。」と規定されている。
(1) 乗合自動車停留施設の定義
乗合自動車停留施設には次のように乗合自動車停車場と乗合自動車停留所とに分けられている。
バス停車帯:バス乗客の乗降のため、本線車道から分離し専用に使用するもの
バス停留所:バス乗客の乗降のため、本線の外側車線をそのまま使用するもの
(2) バス停車帯の設置基準
※第1種、第2種、第3種第1級(高速自動車国道及び自動車専用道路)の道路のように走行速度が高く、バスの停留により、交通流の混乱と、それに伴う事故発生のおそれが予想される道路には、原則として全面的に本線から分離したバス停車帯を設けるものとし、※第3種第2級、第4種第1級(交通量1日/10,000台前後)の道路でも交通流の混乱が予想される場合及びそれ以外の道路でも、バス停留所を設けることにより、その路線の交通容量が設計交通量に満たなくなる場合は、必要に応じてバス停車帯を設けるものとされている。
※用語解説
道路は、次の表に定めるところにより、第1種から第4種までに区分するものとする。
道路の存する地域
高速自動車国道及び自動車専用道路又はその他の道路の別 |
地方部 |
都市部 |
高速自動車国道及び自動車専用道路 |
第1種 |
第2種 |
その他の道路 |
第3種 |
第4種 |
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① 第1種の道路
計画交通量(単付 1日につき台)
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30,000以上
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20,000以上
30,000未満
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10,000以上
20,000未満
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10,000未満
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道路の種類 |
道路の存する地域の地形 |
高速自動車国道 |
平地部 |
第1級 |
第2級 |
第3級 |
山地部 |
第2級 |
第3級 |
第4級 |
高速自動車国道以外の道路 |
平地部 |
第2級 |
第3級 |
山地部 |
第3級 |
第4級 |
② 第2種の道路
道路の存する地区道路の種類 |
大都市の都心部以外の地区 |
大都市の都心部 |
高速自動車国道 |
第1級 |
高速自動車国道以外の道路 |
第1級 |
第2級 |
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③ 第3種の道路
計画交通量(単位 1日につき台) |
20,000以上
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4,000以上
20,000未満
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1,500以上
4,000未満
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500以上
1,500未満
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500未満
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道路の種類 |
道路の存する地域の地形 |
一般国道 |
平地部 |
第1級 |
第2級 |
第3級 |
山地部 |
第2級 |
第3級 |
第4級 |
都道府県道 |
平地部 |
第2級 |
第3級 |
山地部 |
第3級 |
第4級 |
市町村道 |
平地部 |
第2級 |
第3級 |
第4級 |
第5級 |
山地部 |
第3級 |
第4級 |
第5級 |
④ 第4種の道路
計画交通量(単位 1日につき台)
道路の種類 |
10,000以上
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4,000以上
10,000未満
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500以上
4,000未満
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500未満
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一般国道 |
第1級 |
第2級 |
都道府県道 |
第1級 |
第2級 |
第3級 |
市町村道 |
第1級 |
第2級 |
第3級 |
第4級 |
(3) バス停留所の構造
① バスベイ型
歩道に切り込みを入れてバスの停留所を設けるものであり、後続車の追越しを容易にさせることができる。ただし、切り込みの形状や周辺の路上駐車の状況によっては停留所から離れずに停車することが困難となることから、バスの停車が困難となる。
② テラス型
車道側(路肩、停車帯、または車道)に張り出して停留所を設けるものであり、歩道の有効幅員を狭めることなく、路上に車両等が駐停車している場合にも停留所へ離れず停車することができる。ただし、広い路肩や停車帯を持たない道路では適用が困難であり、また、適用された場所においても遠方(特に夜間)から設置が判断できるよう安全対策に留意する必要がある。
③ ストレート型
歩道の幅員を変えることなく歩道内に停留所を設けるものであり、道路の全幅員に余裕がなく歩道に切り込みを入れて停車帯を設けることができない場合に設けるものである。ただし、後続車に影響を与える、または、駐車車両などが停車している場合には停留所へ停車が困難である。
3. 松江市におけるバス停留所施設の現状について
現在、交通局が使用しているバス停留所の数は430箇所あまりある中、半数以上のバス停留所の構造が車道と歩道が平行している「ストレート型」である。また、歩道に切れ込みを入れて停車帯を設ける「バスベイ型」の2種類がある。
そこで、市内中心部に多く見られる「バスベイ型」について分析すると、
① 停車帯で乗客の乗降中に後続車の追い越しを容易にさせ渋滞を防ぐ効果はあるが、マイカーを中心とした考えといえる。むしろ、乗用車の駐車スペースとして違法駐車が行われているのが実態である。
② バスの停車及び発進時にもより大きなハンドル操作を必要とし危険性が高くなり、発車の際には追い越しする車両に注意しなくてはならない。
③ 最大の欠点が、歩道・待合スペースを狭くし、バス待合者と自転車等との接触する事故の要因にも繋がる。
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ストレート型「矢田バス停」 |
このように、車両の方はバリアフリー化され安全装備や乗降面でも容易になったが、バス停留所は「バスを待つ場所」という従来の構造のままで、不便な面が多い。
竹矢方面で使用されている「矢田バス停」(ストレート型)は、上屋はあるが安全対策のためガードレールが車道側に設置され歩道が狭い上、ワンステップバス又はノンステップバスが運行しているが縁石が高いことから、バス停留所を利用される乗客は危険性が高いといえる。
一方、南循環線外回りで使用されている「茶山バス停」(バスベイ型)は、片側2車線で交通量も多く、発車をする際に後方を見落とせば大事故に繋がる。
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